殺人未遂はどこから成立する?成立要件や減刑ポイントについて詳しく解説

NO IMAGE

殺人未遂罪とは「殺意を持って相手に危害を加える(加えようとする)行為」を指します。つまり、人を殺そうとしたけど未遂に終わってしまったような場合は、殺人未遂罪として処罰されることになります。

この記事では、殺人未遂罪の成立要件や罪に問われた場合の対処法について詳しく解説しています。殺人未遂罪について疑問を持っている人はぜひ参考にしてください。

目次

殺人未遂罪の成立要件

殺人未遂罪が成立するためには以下の要件を満たしている必要があります。

  • 殺意があること
  • 人が死亡する恐れのある危険な行為であること

また、上記条件を満たしている場合は、たとえ相手が無傷であったとしても殺人未遂罪が成立する可能性があります。まずは、殺人未遂罪の成立要件について詳しく解説します。

殺意があること

殺人未遂罪は殺意がなければ成立しません。殺意とは「この人を殺そう」と考える意思のことです。たとえば「この人を殺そう」と考え、相手の腹部を包丁で刺したが、死亡させられなかった場合に殺人未遂罪の成立要件を満たします。

また「相手を殺そう」と考え、突き飛ばしたり殴ったりした場合も殺人未遂罪が成立し得るため注意しなければいけません。

もし、殺意を持たずに包丁で相手のことを指した場合は、傷害罪が成立し、刑罰も軽くなります。たとえば「喧嘩でついカッとなって、包丁で刺してしまった」というようなケースです。この場合は、殺意が認められないため殺人未遂罪は成立しません。

人が死亡する恐れのある危険な行為であること

殺人未遂罪が成立するためには、人が死亡する恐れのある危険な行為であることが条件です。たとえば「包丁で相手を刺す」という行為は、大半の人が「死亡する危険な行為である」と考えるでしょう。そのため、殺人未遂罪は成立します。

また、「殴る」や「突き飛ばす」といった行為でも殺人未遂罪が成立する可能性があります。たとえば、「電車のホームで殺意を持って線路へ突き落とした」や格闘家経験のある人が「殺すつもりでボコボコになるまで殴った」というようなケースです。

「人が死亡する恐れのある危険な行為」が認められる場合は、犯罪として成立するため注意しなければいけません。

また、過去に実際にあった事例として「車を故意に追突させた場合」に殺人未遂罪が成立した事例もあります。つまり、客観的に見て人が死亡する可能性のある行為である場合は、殺人未遂罪が成立する可能性があるため要注意です。

相手が無傷でも殺人未遂罪は成立し得る

相手が無傷であったとしても殺人未遂罪が成立する場合があります。たとえば、「相手を殺す」といった強い意志を持って包丁などの武器を用意し、相手に襲いかかったが抵抗されてしまったような場合です。この場合も殺人未遂罪が成立するため要注意です。

殺人未遂は「殺意を持って相手を怪我させた場合」などを想像する人が多いです。しかし実際は、相手に怪我がなくても殺人未遂罪が成立し得ることを覚えておきましょう。

殺人未遂罪が成立しない事例

殺人未遂罪は「殺意を持って相手を殺そうとすること」です。そのため、殺意がない場合や依頼されて殺人を行おうとした場合はその他の犯罪が成立することになります。

たとえば「包丁を持って相手を刺した」というような状況であっても、必ずしも殺人罪が成立するとは限りません。次に、上記例であってもその他の犯罪が成立する具体事例について詳しく解説します。

殺意がない場合は「傷害罪」やその他犯罪が成立

殺意がなかった場合は殺人未遂罪ではなく「傷害罪」という犯罪が成立します。傷害罪とは、「不法な有形力の結果、相手に怪我をさせた場合」に成立する犯罪です。

たとえば「喧嘩相手の腹部を包丁で刺した」という状況であっても、そこに殺意(殺そうとする意志)がなければ傷害罪になります。

傷害罪の法定刑は「15年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。殺人未遂罪の場合は「死刑または無期もしくは5年以上の有期懲役」であり、比較すると傷害罪のほうが明らかに軽いことがわかります。

そのため、もし殺人未遂の罪に問われた場合で殺意がなかったのであれば、「殺意がないため傷害罪」という方向で弁護活動を行っていくことになります。

依頼された場合は「嘱託殺人未遂罪」が成立

被害者側に依頼をされて殺人行為を行った場合は、「嘱託殺人罪」という犯罪が成立します。また、行為の結果相手を死亡させられなかった場合は、「嘱託殺人未遂罪」という犯罪が成立します。

たとえば、「殺意を持って相手の腹部を包丁で刺した」という事例であっても、相手を刺した要因が相手から依頼されていた場合に成立する犯罪です。

嘱託殺人(未遂)罪の法定刑は「6カ月以上7年以下の懲役または禁錮」であり、傷害罪や殺人未遂罪と比較すると軽微です。そのため、未遂で終わった場合は被害者からの証言も取れるため、「嘱託殺人であった」という事実の方向で弁護活動を行っていくことになります。

【禁錮とは】
禁錮とは刑務作業が義務付けられていない刑罰のことを指します。刑務所へ収監される刑事罰は、大きく分けて「懲役刑」と「禁錮刑」の2種類があります。前者は刑務作業が義務付けられていますが、後者は義務付けられていないという違いです。

殺人未遂罪の法定刑

殺人未遂罪の法定刑は殺人罪同様に「死刑または無期懲役もしくは5年以上の有期懲役」です。しかし、殺人罪と殺人未遂罪では、被害者が死亡しているかどうかという点で大きな差があります。そのため、通常は殺人罪よりも刑罰が軽くなる傾向にあります。

次に、殺人未遂罪の法定刑について詳しく解説します。

殺人未遂罪は「死刑または無期懲役もしくは5年以上の有期懲役」

殺人未遂罪は刑法にて「未遂罪も罰する」と書かれており、殺人罪の法定刑によって裁かれることになります。殺人罪の法定刑は「死刑または無期懲役もしくは5年以上の有期懲役」であるため、この範囲で刑罰が下されます。

「死刑」とは、罪を犯した人が自らの死を持って罪を償う刑罰です。そして、無期懲役とは「期間の定めがない懲役刑」です。そして、5年以上の有期懲役とは、5年以上で刑期の定めがある懲役刑のことを指します。

まず、殺人未遂罪で死刑になる確率はほぼゼロであると考えて良いです。いわゆる人を殺めている生命犯ではない限り、死刑判決が下される例はほとんどありません。

そして、無期懲役は日本の刑罰において死刑の次に重い罪です。殺人未遂罪に問われた場合で無期懲役という刑罰が下される例もほとんどありません。

ちなみに、無期懲役と死刑は紙一重と言われています。また、被告人としても死刑判決が下されるか無期懲役が下されるかによって、自分の命にも関わるため重要な部分になるでしょう。

殺人未遂罪では少ないですが、死刑にすべきか無期懲役にすべきか悩んだ場合は「永山基準」と呼ばれる基準を参考にして判断するケースがあります。

【永山基準とは】
昭和43年に発生した「​​永山則夫連続射殺事件」で判決の基準となったことを「永山基準」と呼びます。永山基準では、1.犯罪の罪質2.動機3.態様4.結果の重大性(被害者人数)5.遺族の被害感情6.社会的な影響7.被告人の年齢8.前科の有無9.情状、以上9つの基準を元にして判断します。

また、無期懲役は「期限の定めがない懲役刑」を指します。有期懲役であれば、たとえば懲役10年の判決が下された場合は、10年間刑務所で刑務作業を行うことによって出所できます。

一方で、無期懲役は期限の定めがないため、刑務所から出られるかどうか、出られるとしても何年後になるのかは決められていません。一般的には、有期懲役の最長が30年とされているため、30年以上の服役で順次審査が行える仕組みになっています。

【終身刑と無期懲役の違い】
海外へ目を向けると「終身刑」という刑罰があります。終身刑は「一生刑務所の中で過ごす刑罰」と思われている人がいるかもしれませんが、無期懲役同様に仮釈放制度のある国が大半です。また、無期懲役であっても一生涯刑務所から出られない受刑者もいるため、終身刑と無期懲役は同様と考えて良いです。

殺人が未遂で終わった場合は、人を殺めているわけではないため死刑や無期懲役の判決が下されるケースはほとんどありません。しかし、その他の刑罰は「5年以上の有期懲役」であるため、長期間の刑務所収監は覚悟しておいたほうが良いでしょう。

「未遂罪」は減刑の余地がある

刑法では、未遂罪について減刑の余地があると定めています。つまり、殺人罪の法定刑は「死刑または無期懲役もしくは5年以上の有期懲役」ですが、実際はこの刑罰から減刑される可能性がとても高いです。

そのため、殺人罪の法定刑では最低でも「5年以上の有期懲役」ですが、減刑されて5年未満の有期懲役判決が下されるケースもあります。さまざまな事情によって判断されるため、一概には言えませんが「殺人罪の刑罰よりは軽くなる」と思っておいて良いでしょう。

情状により執行猶予が付く可能性もある

殺人未遂罪に問われた場合、情状次第では執行猶予付き判決が下される可能性があります。

執行猶予とは、直ちに刑の執行をせずに一定期間猶予することです。たとえば「懲役3年執行猶予4年」の刑が確定した場合、あなたに下された刑罰は「懲役3年」です。しかし、この刑罰を直ちに執行せずに4年間猶予します。

執行猶予期間中は日常生活に戻って生活を送ります。この間で罰金刑以上の刑を受けることなく終了した場合は、「懲役3年」という刑罰は執行されません。しかし、罰金刑以上の刑罰を受けることがあった場合は、直ちに刑が執行されることになるため注意しなければいけません。

ちなみに、執行猶予付き判決が下されるためには「3年以下の懲役または禁錮以下であること」が条件です。そのため、殺人未遂罪の法定刑「死刑または無期懲役もしくは5年以下の有期懲役」から考えると執行猶予が付きません。

しかし、先ほども解説したとおり殺人未遂罪は減刑が可能であるため、減刑されたのちに執行猶予付きの判決が下される可能性があるということです。とくに犯罪の内容が軽微である場合や情状の余地がある場合は執行猶予付きの判決が下される可能性が高まります。

執行猶予付きの判決が下された場合であっても、有罪判決であることに変わりはありません。そのため、前科が残るため注意してください。

殺人未遂罪で減刑される主なポイント

殺人未遂罪で減刑されるためのポイントは以下のとおりです。

  • 犯行の背景など罪を犯した情状
  • 殺意の有無
  • 被害者との示談交渉有無

次に、殺人未遂罪での減刑ポイントについて詳しく解説します。

犯行の背景など罪を犯した情状

罪を犯した背景などにより情状酌量が認められることがあります。情状酌量が認められることにより、刑罰が軽くなるため、罪を犯してしまった理由をすべて話したほうが良いでしょう。

たとえば、日頃からいじめを受けていた人がついに堪忍袋の尾が切れて「殺してやる」と相当な意志を持って実際に犯行に及んだ場合です。この場合は、いじめの内容を考慮したうえで酌むべき事情があると判断された場合は、その分減刑されます。

たとえば、日頃から暴行を受けており、殺人未遂を犯した人が「このままでは自分が殺されてしまうのではないか」と考えるほど悩んでいたような場合です。暴行の程度がひどく、客観的に見てもそのように考えられる場合は相当年数の情状酌量が見込まれるでしょう。

なお、情状酌量を主張していくためには適切な弁護活動を行う必要があります。そのため、できるだけ早めに弁護人へ相談をしたうえで情状酌量を目指して準備していくと良いでしょう。

殺意の有無

殺人未遂罪においては、殺意の有無が非常に重要です。そもそも殺意がなければ殺人未遂罪は成立せず、傷害罪が成立します。

殺人未遂罪の法定刑は何度もお伝えしているとおり「死刑もしくは無期懲役または5年以下の有期懲役」です。一方の傷害罪の法定刑は「15年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金」です。

上記のことから、どちらの罪が成立するかによって大きな差があります。もし、殺意がなかったのであれば、「殺意はなかった」という旨を主張していくことになります。傷害罪となれば罰金刑もあり得るためまずは弁護人へ相談をしましょう。

被害者との示談交渉有無

殺人未遂罪の場合、被害者は死亡していないため直接話をできるケースが多いです。そのため、被害者と示談交渉を進めておくことがとても大切です。

とくに被害者側にも非がある事件の場合は、被害者も寛大な処分を求めるケースがあります。たとえば、被害者のいじめが原因で殺人未遂を犯してしまった場合、被害者としても「自分が悪いところがあった」と感じているでしょう。そういったところをうまくついて示談交渉を進めていきます。

もし、示談交渉が成立した場合は被害者から検察官や裁判官宛に「嘆願書」というものが提出されます。嘆願書では「被害者である私は、〇〇(加害者)と示談交渉が成立しており、処分を求めません。寛大な処分をお願いします」のような書面を提出します。

嘆願書に法的効力がないものの、被害者側の処罰感情の有無は判決に大きな影響を与えます。そのため、できるだけ早めに示談交渉を進めておくようにしましょう。

自分勝手な犯行の場合、示談交渉を行おうとすると被害者の感情を逆撫でしてしまう原因になりかねません。そのため、示談交渉についてはしっかり見極め、弁護人に任せると良いでしょう。

「殺意がなかった」という事実を証明するためにできること

殺意がなかった場合は、殺人未遂罪は成立せず「傷害罪」という犯罪が成立します。傷害罪の法定刑は「15年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金」となり、殺人未遂罪とは大きな差があります。

そのため、本当に殺意がなかったのであれば「殺意がなかった」という事実を証明しなければいけません。殺意の有無を判断する大きなポイントは以下のとおりです。

  • 凶器の有無
  • 怪我の程度・場所
  • 動機・犯行前後の言動

次に、殺意がなかったという事実を証明するためにできることについて詳しく解説します。

凶器の有無

殺意があったかどうかを判断するうえで「凶器の有無」は事情に重要です。たとえば、確実に殺そうとしている場合、さまざまなことを考えて着実に準備を進めていくでしょう。咄嗟に「殺そう」と思ったとしても、周辺にあるもので確実に殺せるものを選んで相手に攻撃をするはずです。

上記のように、凶器を用意して犯行に及んだ場合は「殺意があった」と認定されやすくなります。具体的には「包丁を持って被害者の前に現れ、胸を思い切り刺した」という場合であれば包丁を用意している時点で殺意認定されやすくなります。

実際、料理人でもない限り包丁を持って外を出歩く人は少ないでしょう。そのため、「あらかじめ包丁を用意していた」という事実から殺意認定されやすくなります。

一方で、凶器を持っていなかった場合、状況次第では殺意がなかったと認められやすくなるでしょう。たとえば「被害者に腹が立って殴った」という事例で、「殴った後に相手が倒れて頭を打った」という場合は傷害罪になり得ます。なぜなら人を殴って殺せる人はそう多くないためです。

ただし、被害者の状況にもよります。たとえば、「高齢者の家に強盗に入り、気付かれたため思い切り殴った」という場合、一般的に考えれば「死んでしまうかもしれない」と考えるはずです。この場合は武器がなくても殺意があったと見なされる可能性があります。

つまり、武器の有無や死んでしまうかもしれないと思った可能性などを考慮したうえで殺意の有無を客観的に判断します。

怪我の程度・場所

怪我の程度や怪我をした場所によって殺意の有無は異なります。たとえば「包丁で刺した」という事例であっても、足を刺すのと胸を指すのでは殺意の有無は異なるでしょう。

「相手を動けなくするために足を刺した」ということであれば、殺意があったとは認め難いです。一方で、「心臓のある胸を刺した」ということであれば、相当な殺意があったと認められやすくなります。

また、心臓付近には助骨があるため、なかなか包丁で刺して殺害するのは難しいです。このことを考慮して刺す向きや位置、道具などを選定している場合は「相当な殺意があった」と認められるでしょう。

被害者の怪我の程度や傷害を負った場所などを総合的に判断して医学的な知見で「殺意があったかどうか」を判断します。

動機・犯行前後の言動

犯行の動機や犯行前後の言動も殺意の有無に大きな影響を与えます。たとえば、「被害者に対して相当な恨みがあった」という事実が認められる場合は、殺意も相当なものであっただろう、と考えるのが一般的です。

一方で、とくに恨みは無く突発的な犯行であった場合は、その他事情背景などを考慮して殺意の有無を認定していく流れになります。

また、犯行前後の言動によっても判断されます。たとえば、周囲に日頃から「〇〇(被害者)は絶対に殺す」などと漏らしていた場合は、殺意が認定されやすくなります。犯行後に「殺し切れなかった」などと言っている場合も同様です。

このように、犯行前後の言動等によっても殺意の有無は判断されます。

殺人未遂罪で逮捕された場合の流れ

殺人未遂罪で逮捕された場合は、逮捕されてそのまま刑事裁判を受けるケースが多いです。実際、どういった流れで事件が進んでいくのか?について詳しく解説します。

逮捕

殺人未遂を犯した場合、そのまま逮捕される可能性があります。逮捕は「通常逮捕」「現行犯逮捕」「緊急逮捕」の3種類ありますが、殺人未遂罪の場合はいずれの逮捕の可能性もあります。

通常逮捕とは、内定捜査を行って被疑者を特定して裁判所に逮捕状を請求、発布された令状を元に逮捕する流れです。殺人未遂事件の場合は、顔見知りの犯行も多く、犯人がすぐに特定されやすいため通常逮捕される可能性があります。

現行犯逮捕とは、現行犯で逮捕されることを言います。殺人未遂事件でその場で逮捕される場合や犯行直後に逮捕されたりなどさまざまな要因で現行犯逮捕の可能性があります。

緊急逮捕とは、重大な事件を犯した犯人を発見した場合に逮捕状が無くても逮捕できる方法です。ただ、緊急逮捕のあとに遅滞なく逮捕状を請求する必要があります。

逮捕には上記3つの方法がありますが、いずれの逮捕の場合であってもその後の流れに大きな差はありません。通常、逮捕された後はその時点から48時間以内に次のステップ(検察官への送致)をしなければいけません。

そのため、基本的に逮捕から48時間以内は警察署内にある留置所という場所に入れられ、取り調べを受ける流れとなります。その後、ある程度の取り調べが完了次第、検察官へ事件を送致します。

勾留請求

事件を引き継いだ検察官は、さらに24時間以内に引き続き被疑者の身柄を拘束する必要があるかどうかを判断します。これを「勾留」と言います。勾留の必要があると判断した場合は、24時間以内に裁判所に対して勾留請求を行う流れです。

勾留請求がなされると被疑者を連れて裁判所へ行き、勾留質問を経て最終的に裁判官が勾留の有無を判断する流れとなります。

裁判官が勾留の必要があると判断した場合は、初めに10日間の勾留が認められます。その後、一般的には勾留延長が認められるため、さらに10日間で合計20日間の勾留となるケースが大半です。

ここまでで最長23日間の身柄拘束が行われ、さまざまな社会的な影響も発生する点に注意が必要です。

起訴・不起訴の判断

勾留されている場合は勾留期間中に被疑者を起訴するか不起訴とするかを判断します。起訴された場合は、そのまま刑事裁判を受けることになります。

もし、不起訴となった場合は殺人未遂についての事件は終了し、そのまま身柄は釈放されてその後は何もありません。仮に殺人未遂という罪を犯していたとしても、情状次第では不起訴処分となることがあります。

刑事裁判を受ける

正式起訴された場合は、そのまま刑事裁判を受ける流れになります。刑事裁判では、主にあなたの犯した罪について審理し、有罪か無罪かを判断します。殺人未遂という罪を犯している以上、無罪判決が下される可能性はほぼゼロです。

しかし、中には「殺意はなかった」という方向で主張をする場合もあります。そのため、そもそも殺人未遂が成立するかどうか、罪を犯しているかどうかなどについて審理をしていく流れとなります。

判決に従って刑に服する

審理が終了するとその罪について有罪か無罪かを判断し、有罪である場合はどの程度の刑罰が妥当かを判断することになります。懲役刑であれば執行猶予を付けるかどうかを判断し、執行猶予が付かなければ一定期間刑務所へ収容されます。

執行猶予が付いた場合は身柄は釈放されて社会生活に戻ることが可能です。つまり、最終的に下された判決に従って刑に服すると考えておけば良いでしょう。

殺人未遂で逮捕された場合に検討すべきこと

殺人未遂罪で逮捕された場合は、直ちに以下のことを検討してください。

  • 弁護士へ相談をする
  • 被害者に対する治療費の負担
  • 示談交渉を完了させる

次に、殺人未遂罪で逮捕された場合に検討すべき3つのことについて解説します。

直ちに弁護士へ相談をする

初めに、できるだけ早めに弁護士への相談をしましょう。早期に弁護士へ相談をすることにより、取り調べに対するアドバイスなどを受けられます。今後、裁判を行っていくうえで早めに弁護活動の方針を決められることは、その後の流れにも大きな影響を与えます。

弁護人は、無料で付けられる制度もあります。それは「当番弁護人制度」と「国選弁護人制度」です。前者は逮捕後に一度だけ呼べる制度であり、弁護活動というよりは簡単なアドバイスや今後の弁護制度についての説明という意味合いが強いです。

国選弁護人は起訴後もしくは勾留確定後に付けられる弁護人制度であり、タイミングとしてはとても遅いです。とくに殺人未遂罪の場合は情状酌量を狙ったり傷害罪での立件を目指したりするケースが多いです。

上記のことから、勾留確定後の国選弁護人を待っていると弁護人との方針が合わず、判決への悪影響を与える可能性も懸念されます。

そのため、自分で費用を支払わなければいけないものの、私選弁護人を選任しておいたほうがメリットは大きいです。私選弁護人であれば自分のタイミングで自由に選任することができるため、ぜひ検討してください。

被害者に対する治療費等の負担

殺人未遂罪の場合、被害者が何らかの傷害を負っている可能性が高いです。そのため、被害者に対する誠意として、治療費を支払う旨を伝えることも大切です。

なお、被害者との直接のやり取りが難しいケースも多いです。とくに被害者の処罰感情が強い場合は、あなたと「会いたくない」「話をしたくない」と考えている人もいます。そのため、必ず弁護士を通して自分の意思を伝えてください。

示談交渉を完了させる

可能であれば被害者と示談交渉を完了させておきましょう。示談交渉が済んでいると被害者の処罰感情はなくなり、嘆願書というものを提出してくれます。

嘆願書に法的効力はないものの、被害者の処罰感情がないことが明らかであるため、判決へ影響を与える可能性が高まります。できるだけ早めに弁護士を通して示談交渉を開始し、済ませておくと良いでしょう。

殺人未遂に関するよくある質問

殺人未遂罪でよくある質問を紹介します。

Q.殺人未遂の結果、被害者が植物状態になった場合は何罪が成立しますか?

A.殺人未遂罪が成立します。

日本の法律では「植物状態=まだ生きている」と判断されます。そもそも植物状態とは無意識で生きるうえで必要な動作(呼吸、飲み込み等)はできるものの、脳が傷ついていることが原因で自分の意思で動けない状態にある人のことです。

死亡しているわけではないため、殺人罪は成立せず殺人未遂罪という犯罪が成立します。

Q.「相手が死んでしまうのではないか?」と考えて行った行為は殺人未遂罪ですか?

A.死亡してしまう危険性を理解していながら相手に危害を加えた場合は、殺人罪が成立し得ます。

殺人未遂罪は必ずしも「殺そう」とする意思でなくても良いです。たとえば、一般的に考えれば「胸を刺せば人は死ぬ可能性が高い」とほとんどの人が理解できてます。このことを理解したうえで胸を刺せば殺人罪もしくは殺人未遂罪が成立し得ます。

ただ、裁判では「死んでしまうのではないか?」といった可能性を理解していたかどうかが争点となります。そのため、弁護側はその可能性を理解していなかった可能性について伝え、弁護活動を行っていく流れが一般的です。

Q.強盗殺人未遂罪の法定刑や成立要件は何ですか?

A.強盗殺人未遂は強盗に入り、殺人未遂を犯した場合に成立する犯罪です。

  • 強盗殺人未遂罪の成立要件は以下のとおりです。
  • 強盗を行おうとしたこと
  • 殺人が未遂で終わったこと

強盗殺人罪の法定刑は「死刑もしくは無期懲役」であり、非常に厳しい刑罰が下されます。未遂罪の場合は、減刑の可能性があるものの「強盗」という自分勝手な行為をしようとしたうえに人を殺害しようとしている犯行から情状酌量は認められにくいです。

上記のことから未遂で終わった場合であっても相当年数の懲役刑が確定すると思っておいたほうが良いでしょう。

Q.殺人未遂罪は執行猶予が付きやすいですか?

A.執行猶予が付きやすいかどうかは一概に言えません。

殺人未遂罪の法定刑は「死刑または無期懲役もしくは5年以下の懲役」です。執行猶予付きの判決が下されるためには、3年以下の懲役であることが条件です。よって、殺人未遂罪であっても情状酌量等による減刑がなければ執行猶予は付きません。

執行猶予が付くかどうかは個別事情に判断されるため、一概に判断できるものではありません。ただし、殺人罪と比較すると執行猶予は付きやすいのが事実です。

Q.殺人未遂罪で死刑になる可能性はあるのですか?

A.ほとんどありません。

殺人未遂罪の法定刑は「死刑または無期懲役もしくは5年以下の懲役」であり、死刑の可能性もある犯罪です。しかし、殺人未遂で死刑になる可能性はほぼゼロであると思っておいて良いです。

死刑判決が下される犯罪の大半は生命犯と呼ばれ、人を殺めている事件ばかりです。殺人を犯そうとしても結果的にその目的を達成できなかった場合は、死刑になる可能性は限りなくゼロに近いです。

まとめ

今回は、殺人未遂罪はどこから成立するのか?について解説しました。

殺人未遂罪は「殺意を持って相手に危害を加え(もしくは加えようとして)、結果的に死亡させられなかった場合」に成立する犯罪です。その内容から重大な事件として扱われ、逮捕や実刑判決の可能性が高いです。

しかし、殺人未遂を犯すまでに至った経緯などを考慮して情状酌量が認められるケースも多いです。また、そもそも殺意がなければ殺人未遂罪は成立せず、傷害罪によって処罰されます。

今回解説した内容を踏まえ、不安がある場合は弁護士へ相談するなどの対応方法を検討されてみてはいかがでしょうか。

刑事事件でお悩みの場合はすぐにご相談ください。

刑事事件で重要なのはスピードです。ご自身、身内の方が逮捕、拘留されそうな場合はすぐにご相談ください。

刑事事件コラムカテゴリの最新記事

PAGE TOP