保釈制度とは、被告人の身柄を一時的に解放し、社会生活を送らせることでさまざまな準備をさせる制度です。保釈制度は、一時的に社会へ戻ることができるため、中には「逃亡しよう」と考える人がいます。
逃亡を防止するために担保、人質的な役割を担っているのが「保釈保証金(通称:保釈金)」です。保釈金の相場は150万円〜300万円程度ですが、被告人にとって痛手となる程度の金額である必要があります。
今回は、そもそも保釈制度とはどういった制度なのか、保釈金の相場やどのように決まるのかについて詳しく解説します。保釈制度について知りたい人はぜひ参考にしてください。
目次
保釈とは
保釈とは、保釈制度に基づいて被告人の身柄を一時的に保釈(解放)するための制度です。保釈が認められた場合は、保釈金を支払わなければいけませんが、その費用は罪の重さや被告人の状況等によって大きく異なります。
まずは、保釈請求とはどういった制度なのかについて詳しく解説します。
保釈制度に基づいて被告人の身柄を一時的に保釈する制度
保釈を一言で表すと「保釈制度に基づいて被告人の身柄を一時的に保釈する制度」です。日本では、保釈制度というものがあり、この制度に基づいて保釈が行われます。
多くの人は「罪を犯すとそのまま逮捕されて裁判を受けて刑務所に収監される」と考えているのではないでしょうか。しかし、日本では保釈制度があるため、必ずしも逮捕されたからといってそのまま裁判を受けて刑務所に収監されるわけではありません。
まず、逮捕されるとその人の身柄は拘束されて警察署内にある留置所という場所に入れられて取り調べを行います。その後、検察官へ事件を送致して勾留請求というものを行うのが一般的な流れです。
勾留請求が認められると最長で20日間の間、被疑者(罪を犯した人)の身柄を拘束することができます。この間は検察官等から事件について取り調べを受けることになります。
その後、勾留期間中に被疑者を起訴するか不起訴とするかを検察官が決定しなければいけません。不起訴となった場合や略式起訴となった場合は、そのまま被疑者の身柄を釈放(解放)して事件は終了します。
一方で、起訴された場合は呼び名が「被疑者」から「被告人」に変わり、収容される場所も留置所から拘置所へ変わります。そして、起訴された被告人はその後に保釈請求をできることになっており、これが認められると「保釈」という流れです。
日本の司法では「無罪の推定」が原則です。無罪の推定とは、裁判にて有罪判決が下されるまでは、「推定無罪」であるとされることを言います。つまり、罪を犯したと疑われる十分な証拠があったとしても、裁判が確定するまでは無罪(罪を犯していない人)として扱われなければいけません。
上記のことから被告人の権利を必要以上に侵害しないようにするための制度が「保釈制度」です。保釈請求が認められると、一時的に社会に戻ることができるため、被告人の自由を確保できます。これが保釈制度の概要です。
保釈には「権利保釈」「裁量保釈」「義務的保釈」がある
保釈には「権利保釈」と「裁量保釈」、「義務的保釈」の3種類があります。
権利保釈とは、被告人が持つ権利に基づいて「保釈されることが原則である」という考え方に基づいています。先ほども解説したとおり、有罪判決が確定するまでは罪を犯していない人(無罪)として扱われなければいけません。
そのため、被告人には保釈される権利があります。この権利に基づいて保釈することを「権利保釈」と言います。とはいえ、たとえば連続殺人犯のように保釈を認めることによってさらに罪を犯す可能性のある人を保釈することはできません。
そして、「裁量保釈」とは権利保釈の要件を満たさない場合であっても、裁判官の裁量で保釈されることを言います。
権利保釈は被告人の権利ではあるものの、すべての被告人が保釈されるわけではありません。最低限「権利保釈の要件」というものがあります。たとえば「重大な事件ではないこと」や「逃亡の恐れがないこと」「被害者や証人等に危害を加える可能性がないこと」などが要件です。
上記恐れのある場合は、権利保釈は認められません。しかし、上記要件を満たしていない場合であっても裁判官の判断で保釈を認める場合があり、これを「裁量保釈」と言います。
そして、義務的保釈とは被告人の勾留が不当に長くなったと認められる場合に認められる保釈です。被告人は刑が確定していないため、罪を犯していない者と同様に扱われなければいけません。
そのため、不当に勾留が長引いている場合は義務的保釈により、保釈される仕組みとなっています。
金銭(保釈金)を預けることによって保釈される
保釈金とは「お金」のことです。保釈制度による保釈を目指す場合は、必ず保釈金(お金)を支払わなければいけません。保釈金は「保証金」のような役割を担っており、原則は被告人へ返金されます。
わかりやすい例で言うとお金を借りる際に担保を入れることがあります。この「担保」が保釈制度における「保釈金」であると思っておけば良いです。
担保は、万が一貸したお金が返ってこなかった場合に預けられていた担保を換価処分して返済費用に充てられます。一方で、保釈金は万が一被告人が逃亡したり証拠隠滅を試みたりした場合に没収をするためのお金です。
たとえばあなたの金融資産が300万円あり、保釈をするための保釈金として200万円の預け入れを要求された場合、あなたとしては200万円が返ってこなければ経済的に厳しいでしょう。そのため、「200万円が返ってこなかったら困る」という意識を持つはずです。この意識を持たせることが保釈金の役割なのです。
ただ、中には「200万円を失ってでも良いから保釈されたら逃げてしまおう」と考える人がいるかもしれません。そのような人は、そもそも保釈請求が認められない仕組みになっています。
保釈請求をできる人は限られている
保釈されるためには保釈請求というものをしなければいけません。しかし、この保釈請求をするためには以下の要件を満たしている必要があります。
- 被告人本人
- 被告人の弁護人
- 被告人の父親・母親・保佐人
- 婚姻関係にある被告人の妻・夫
- 直系姻族
つまり、内縁関係にある妻・夫や彼氏・彼女、友人からの保釈請求は認められません。勾留された時点もしくは起訴された時点で私選弁護人が選任されていない場合は、国選弁護人が選任されるため、通常は弁護人から保釈請求が行われます。
保釈可能なタイミングは「起訴後」に限られている
保釈請求ができるタイミングは「起訴後」であることを覚えておきましょう。起訴までは、逮捕→勾留請求→勾留確定→起訴の流れとなります。
逮捕から起訴まで最長で23日間かかるため、最長で23日間は保釈請求ができないことになります。この間は当然社会へ戻ることもできないため注意してください。
保釈金の相場
保釈金の相場は「150万円〜300万円」ですが、実際は罪の重さや被告人の経済力によって大きく変動します。また、保釈金は一括納付しかできないため、経済力のない人の場合はそもそも保釈請求をしたところで保釈金を支払えず、保釈が認められないケースが大半です。
次に、保釈金の相場と納付方法について詳しく解説します。
保釈金の相場は150万円〜300万円
保釈金の相場は、罪の重さや判決の重さ、被告人の経済力等によって総合的に判断されます。ただ、平均的に見ると「150万円〜300万円」が相場です。
保釈金は保証金という意味合いがあるため、被告人にとって「万が一没収されたら厳しい程度」でなければいけません。つまり、相場はあるものの、実際は被告人の痛手となる程度の金額で決定することになると覚えておきましょう。
保釈金は一括納付しかできない
保釈金の納付方法は一括のみです。分割払い等は対応していないため、すべて耳を揃えて支払えなければ保釈はされません。
ただし、家族や友人等が保釈金を用意して支払うことは可能です。そのため、自分での用意が難しい場合は家族もしくは友人へ相談を検討しましょう。
保釈金の決まり方
保釈金が決定する方法は主に以下の2つです。
- 罪の重さ・判決の重さ
- 被告人の経済力
保釈金には「相場」というものがありますが、実際は上記の内容で保釈金額が決定します。次に、保釈金の決まり方について詳しく解説します。
罪の重さ・判決の重さ
保釈金が決まる方法として「罪の重さ」と「判決の重さ」があります。つまり、犯した罪の法定刑と犯行の内容等を考慮したうえで判決の重さを予測し、保釈金が決定します。
たとえば、比較的軽微な犯罪である場合は保釈金は安くなります。一方で、保釈請求が認められる罪であっても、比較的重たい罪であり、思い判決が予想される場合は保釈金が高額になる傾向です。
なぜなら、保釈制度というものは被告人の身柄を一時的に解放するための手続きであるためです。比較的軽微な犯罪であり、判決も比較的軽いと予想される場合は逃亡のリスクは少ないと考えるのが一般的です。
一方、法定刑が重く、予想される判決が重い場合は「多少お金を支払ってでも逃げたい」と考える人も多いでしょう。そのため、お金によってある程度拘束するために保釈金を高額に設定します。
被告人の経済力
保釈金は被告人の経済力によっても大きく左右します。たとえば、同じ罪を犯した人であっても10億円の資産を持っている人と300万円程度の資産を持っている人であれば、保釈金にも大きな差があります。
そもそも保釈制度は被疑者の身柄を一時的に保釈するための手続きであるため、被告人にとって痛手となる程度の費用を保証金として預けてもらう必要があるためです。
たとえば上記例で10億円の資産がある人の100万円と300万円の資産しかない人の100万円では、同じ100万円であっても感じる価値はまったく違います。10億円の資産を持っている人であれば「100万円くらいなら良いか」と考える人がいるかもしれません。
しかし、300万円の資産しかない人の場合は、「100万円失ったらキツイな……」と考えることでしょう。そのため、同じ罪状であっても被告人の経済力によって保釈金は変わります。
【事例】罪を犯した有名人の罪状および保釈金
過去に罪を犯したことのある有名人の罪状および保釈金について解説します。
カルロス・ゴーン氏
大手自動車メーカーである日産自動車の元会長であったカルロス・ゴーン氏は、金融商品取引法違反および会社法違反の罪に問われています。
具体的には、自分の報酬を有価証券報告書に少なく記載した罪(金融商品取引法違反)と中東オマーンの知人宛に日産自動車の資金を流出させた罪(会社法違反)によって、日本で起訴されました。
カルロス・ゴーン氏は日産自動車の元会長であったこともあり、潤沢な資産を持っていたことから保釈保証金は「15億円」という高額です。ただ、カルロス・ゴーン氏は保釈後にレバノンへ逃亡したことにより、15億円が没収されています。
堀江貴文氏
ホリエモンこと堀江貴文氏は、証券取引法違反の罪に問われました。具体的には、粉飾決算により時価総額を高めて高い企業価値を偽装した罪(証券取引法違反)の罪に問われ、起訴されました。
堀江貴文氏の保釈保証金は「3億円」であり、相場と比較しても超高額です。しかし、実業家でもある堀江貴文氏の資産を考慮したうえで「3億円」という金額が保釈保証金として決定しました。
田口淳之介氏
人気アイドルグループKAT-TUNのメンバーとして活動していた田口淳之介氏は、大麻取締法違反の罪に問われました。具体的には大麻を所持していた疑いで逮捕・起訴された事件です。
田口淳之介氏の保釈保証金は「300万円」と相場の範囲内です。とくに芸能人の場合は社会的知名度も高く、逃亡の可能性が低いことから保釈保証金も(経済状況を考慮したうえで)低めに設定されるケースが多いです。
清原和博氏
元プロ野球選手としてさまざまな場面で活躍をしていた清原和博氏は、覚せい剤取締法違反の罪に問われました。具体的には、覚せい剤の使用です。
清原和博氏の保釈保証金は「500万円」であり、相場と比較すると高額です。ただ、常習性や経済状況などを考慮して保釈保証金500万円という金額で決定した事例です。
新井浩文氏
俳優として活動をしていた新井浩文氏は、強制性交等罪の罪で逮捕されました。具体的には、派遣マッサージ店の女性に対して暴行を加えた罪で起訴されています。
新井浩文氏の保釈保証金は750万円と、やはり高額です。芸能人であることを考慮したうえで経済状況を鑑みてこの金額で保釈を認めています。
東谷義和氏
東谷義和氏はYouTubeチャンネルで「ガーシー」として活動し、著名人の暴露話をすることで利益を上げる活動をしていました。YouTubeチャンネルでは著名人の暴露話を繰り返しており、名誉毀損罪で起訴された事案です。
名誉毀損罪は「相手の名誉を毀損する行為」で成立する犯罪であり、暴露した内容が嘘か本当かは問われません。また、暴力行為法違反の罪にも問われ、起訴された事案です。
東谷義和氏の保釈保証金は「3,000万円」であり、相場と比較しても著しく高いことがわかります。理由としては、YouTubeで相当な利益をあげており、潤沢な資産があったこと、犯罪の内容が著名人の名誉を著しく毀損するものであったなど、犯罪の性質によるものです。
保釈金の役割
保釈保証金は、逃亡を抑止するためのお金です。万が一、保釈中に逃亡したり証拠隠滅を図ったりした場合は、保釈金が没収されます。一方で、しっかりと決められたルールを守り、決められた期日に出廷をすることによって保釈保証金は返金される仕組みです。
次に、保釈金の役割とはどういったものなのかについて詳しく解説します。
逃亡を抑止するための保証金
保釈保証金は、被告人の逃亡を抑止するために預け入れなければいけないお金です。保釈が認められると、被告人は一時的に社会へ戻れます。そのため、逃亡をしようと思えば逃亡できてしまいます。
また、証拠隠滅を図ったり証人となり得る人に直接会って脅したりなど、今後裁判を受ける際に自分が不利益を受けないように悪い意味での準備も可能です。しかし、これらの行為は決して許されるべきではありません。
検察官や裁判官は被告人が逃亡の恐れもしくは証拠隠滅の恐れがないかどうかを判断し、保釈を認めるか否か決定しなければいけません。しかし、超能力者ではない限り、100%の確率で見極めることは困難です。
上記のことから、物理的に被告人を縛りつけるために「保釈保証金」として金銭を預入させ、万が一、ルールに反した場合は没収することで逃亡等を抑止しています。
逃亡等をした場合は保釈金が没収される
保釈中はいくつかのルールを守らなければいけません。もし、ルールを守らなければ、預け入れた保釈金が全額没収されます。また、即時釈放は取り消され、身柄を拘束されるため注意しなければいけません。
有名人の事件で言うとカルロス・ゴーン氏は15億円もの保釈保証金を預け入れておきながらレバノンへ逃亡し、15億円は全額没収されています。
また、保釈中のルールは被告人ごとに決められることが多いですが、共通のルールとしては以下のようなものが挙げられます。
- 裁判所からの呼び出しには必ず出頭すること
- 居住地の変更は裁判所の許可が必要
- 被害者への連絡は必ず弁護人を介すること
- 被害者・共犯者等、事件関係者と接触しない
- 違法薬物に近寄らない
等
上記条件を守らなければ、預け入れた保釈保証金はすべて没収されるため注意してください。
出廷して判決を受ければ保釈金は返ってくる
保釈保証金は、裁判へ出廷して判決を受けることによって全額返金されます。保釈保証金の性質上「支払ったら終わり」ではなく、「必ず返金するもの」としています。
保釈されるために金銭を支払わなければいけない場合、「支払ったところで返金される見込みがないのであれば、逃亡してしまおう」と考える人がいるかもしれません。そのため、約束を守ることによって返金する仕組みにし、金銭によって拘束する役割を担っています。
保釈金を支払って保釈されるまでの流れ
保釈請求をしてから実際に保釈されるまでには、通常2〜3日程度の日数がかかります。次に、実際に勾留が確定してから保釈請求を行い、保釈されるまでの流れについて詳しく解説します、
起訴・勾留
保釈請求は勾留され、起訴された被告人のみが行える手続きです。起訴までには、逮捕→勾留請求→勾留→起訴のステップがあり、長ければ逮捕から23日後となります。起訴された時点で直ちに保釈請求を行うことができるため、保釈を検討している人は直ちに請求しましょう。
なお、勾留後は呼び名が被疑者から被告人へ変わり、勾留される場所も留置所から拘置所へ移動します。このタイミングで保釈請求が可能であると覚えておけば良いです。また、保釈請求は判決が確定するまでの間であれば、いつでも何度でも行うことができます。
保釈請求を行う
保釈請求は被告人本人もしくは被告人の弁護人等、限られた人のみが行える手続きです。一般的には、勾留・起訴された時点で必ず弁護人がついているため、被告人の弁護人経由で保釈請求を行う流れになります。
保釈請求は、「保釈請求書」という書類を裁判所へ提出することによって行われます。通常は弁護人等に対して「保釈請求を依頼したい」と伝えると弁護人の方で作成して裁判所へ提出してくれます。
裁判官面接・検察官意見を行う
保釈請求が行われると、保釈を決定する前に裁判官面接と検察官意見聴取が行われます。初めに検察官が「保釈を認めても良い(相当)」もしくは「保釈はしないほうが良い(不相当)」、「しかるべく(裁判官へ任せる)」の3つの選択肢から意見を述べます。
保釈制度は被告人の権利でもあるため、不相当とする場合はなぜ、保釈をしないほうが良いのかについて理由書も提出しなければいけません。
その後、被告人に対して裁判官からの面接が行われます。面接には、被告人の弁護人も同席することが許されています。なお、面接の時点で検察官がどのような判断を下したのかはわかりません。
裁判官は検察官からの意見や被告人の意見などを聴取したうえで最終的に保釈を認めるかどうかを決定します。
保釈許可決定
検察官意見および裁判官面接が終了すると保釈許可の決定がなされます。保釈が認められた場合は、保釈金の金額が明確化されて支払う流れとなります。
保釈不許可となった場合は、今回の保釈請求で保釈は認められません。ただし、保釈請求は判決が確定するまで何度でも可能であるため、納得ができない場合は何度でも保釈請求を行いましょう。
保釈金の納付
保釈決定および保釈金が決定すると、保釈金を納付します。この間は、通常保釈請求から2日〜3日です。土日祝日を挟む場合は、審理に時間がかかるため注意してください。
保釈
保釈金を納付すると原則その日中に保釈が認められます。保釈された場合は、ルールを守ったうえで社会生活を送りましょう。
保釈請求を行うメリット
保釈請求を行うことによって一時的に社会へ戻ることができます。最終的には、裁判の判決次第で刑務所へ収監されることになるケースも多いですが、一時的にでも社会へ出られるメリットはたくさんあります。
たとえば、以下のようなメリットを受けられるでしょう。
- 社会生活における影響を最小限に抑えられる
- 弁護人と十分な打ち合わせができる
- 家族・親族との時間を作れる
- 身辺整理ができる
保釈請求が認められることによって得られるメリットについて詳しく解説します。
社会生活における影響を最小限に抑えられる
保釈されることによって、一時的に社会へ戻ることができます。そのため、働いている人であれば会社へ出社して仕事を行えたり、学校へ通っている人であれば通学して勉強ができるなど、社会生活における影響を最小限に抑えられます。
もし、保釈請求が認められなければ、裁判による判決が確定するまでは拘置所の中で生活をしなければいけません。長期間の身柄拘束となるケースも多く、社会的な影響も大きくなり得ます。
とくに重要なポジションにいる人であれば、会社の経営にも影響を与える恐れがあり、そういったリスクを最小限にできる点が保釈請求のメリットです。
弁護人と十分な打ち合わせができる
保釈請求が認められれば、社会へ一時的に戻ることができます。そのため、日常社会の中で弁護人と会い、今後の弁護活動について適切に打ち合わせを行える点がメリットです。
もちろん、拘置所の中で弁護人と2人きりで話し合いをできるものの、必要書類を用意したり証拠を集めたりなど、社会にいるからこそできる点は多いです。結果的に裁判による判決へ影響を与える可能性もあるでしょう。
家族・親族との時間を作れる
保釈請求が認められても、判決次第では最終的に刑務所へ収監されてしまう可能性があります。そのため、「ある日突然家族がいなくなってしばらく会えない」という状況にもなり得ます。
しかし、保釈請求が認められれば、最長23日間程度で一度社会へ戻ることができるため、家族や親族との時間を作れる点がメリットです。保釈期間中は、今後のことをよく考え、話をできるため、家族にとっても心の準備期間となり得るでしょう。
身辺整理ができる
判決次第では、長期間刑務所へ収監されてしまう恐れがあります。長期間いなくなることにより、さまざまな社会的影響が懸念されます。
保釈されることにより、一度社会に戻って身辺整理をできる点がメリットです。たとえば、不要な支払いが来ないように止めておく、いつでも帰って来れるように準備を進めておくなどさまざまな準備をできる点がメリットです。
また、自分自身も心の準備をしたうえで裁判に挑み、覚悟を持って刑罰を受けられるでしょう。
保釈金相場に関するよくある質問
保釈金相場に関するよくある質問を紹介します。
Q.保釈請求は何日程度で許可・不許可の決定がなされますか?
A.通常、保釈請求を行ってから2〜3日程度で決定されます。
保釈請求は2〜3日程度で審理が終了し、許可・不許可の決定がなされることが一般的です。しかし、土日や祝日を挟む場合は長引く場合もあるため注意が必要です。
たとえば、木曜日に保釈請求を行った場合は月曜日もしくは火曜日に許可・不許可の決定がなされるため、請求から4日〜5日程度の期間がかかります。ただし、保釈請求は土日祝日でも可能であるため、順調に審理が終了すると火曜日〜水曜日までに釈放の許可・不許可が決定します。
保釈請求は、起訴された時点で可能となるため、できるだけ早めに申請すると早期の結果、保釈を目指せます。
Q.保釈請求は何度でも行うことができますか?
A.保釈請求に制限はありません。
保釈請求に制限はないため、何度でも行うことができます。ただし、保釈請求を行える期間は起訴〜判決確定までです。通常、起訴から裁判が始まって判決が下されるまでには2〜3カ月程度の期間がかかります。上記期間内しか保釈請求を行えないため注意してください。
判決が確定すると判決に従って刑に服することとなるため、そもそも保釈されることはありません。罰金刑や懲役刑でも執行猶予付きの判決が下されれば、すぐに身柄を釈放されます。懲役刑の実刑判決であれば刑務所に収容され、仮釈放されるまでは釈放はできません。
Q.保釈中に逃亡した場合はどうなりますか?
A.保釈金が没収されます。
保釈中に逃亡した場合や裁判所からの出頭命令に応じなかった場合は、預けていた保釈金は没収され、保釈も取り消されます。そのため、見つかり次第直ちに身柄の拘束が行われます。
なお、刑務所から脱獄した者などに対して成立する「逃亡罪」という犯罪は、保釈中の被告人に対しては適用されません。つまり、逃亡したことによる刑事罰受けることはありません。
Q.保釈請求が認められても最終的に刑務所へ収監されるのですか?
A.その可能性は十分に考えられます。
保釈制度とは、あくまでも「無罪の推定」に基づいている制度です。無罪の推定とは、刑罰が確定していない被告人は罪を犯していない者と同様に扱う原則です。
つまり、裁判を受けて有罪判決を受けることにより、あなたは「有罪判決を受けた人」となるため、刑罰の程度によっては刑務所へ収監されることになります。
Q.どのような罪でも保釈請求は可能ですか?
A.どのような罪でも保釈請求は可能です。
保釈請求は被告人の権利であるため、どのような犯罪を犯した人であっても請求が可能です。そのため、たとえば連続殺人鬼であっても保釈請求を行えます。ただし、保釈請求が認められるかどうかは別問題です。
とくに裁判員裁判の対象となるような重大な罪を犯した被告人の場合、ほぼ100%の確率で保釈請求は認められません。基本的に保釈が認められない事件の場合、保釈請求をしても無駄です。そのため、基本的には重大事件の被告人は、保釈請求を行わないのが一般的です。
まとめ
今回は、保釈金の相場について解説しました。
保釈制度は被告人の権利を守るための制度です。また、金銭という担保を入れることによって一時的に社会へ戻ることを認めるための制度のことを指します。
そのため、保釈金の相場は罪の重さや被告人の経済力などを総合的に判断したうえで最終的に決定されます。一般的な相場としては、150万円〜300万円程度です。
保釈保証金は支払ったら終わりではなく、ルールを守っていればいずれ返金されるお金です。そのため、逃亡するつもりがないのであれば、被告人にとってとても良い制度であることがわかります。
今回解説した内容をもとに、保釈に関して不安がある場合はぜひ弁護士へご相談ください。