友人や家族、あるいは知り合いが刑務所に収容されていると「どのような流れで生活を送っているのだろうか?」と興味を持ったり心配になったりしている人も多いのではないでしょうか。
今回は、刑務所暮らしの流れについて平日・休日ごとに細かく詳しく解説します。刑務所暮らしに興味がある人は、ぜひ参考にしてください。
【平日】刑務所暮らしの流れ
刑務所内での生活は、平日と休日によって大きく異なります。懲役囚は、原則刑務所内での刑務作業が義務付けられているため、主に刑務作業を行って過ごすことになります。また、規則正しい生活を送るため、数分単位で細かいスケジュールが定められているのが特徴です。
普段通りの生活をしていると刑務所内での生活を知ることはありません。そのため、受刑者がどのように生活を送っているのか?と疑問を抱えている人も多いでしょう。
まずは、平日の刑務所暮らしの主な流れについて詳しく解説します。興味がある人は、ぜひ参考にしてください。
6時45分:起床
刑務所によって起床時間は多少前後しますが、平日の起床時刻は6時45分前後としている刑務所が多いです。起床時は目覚まし時計代わりに音楽が流れますので、その音楽と共に起床します。
早い時間帯に目を覚ましても、周りの受刑者に迷惑をかける可能性もあるため、布団の中で静かにしていなければいけません。逆に、どれだけ眠たくても二度寝は許されません。
6時45分〜7時05分:清掃・洗面・整頓・点呼
起床後はおおよそ20分程度の間に部屋の清掃、洗面、整頓、点呼を行わなければいけません。
起床後は、初めに布団を畳みます。布団の畳み方や敷布団・毛布・掛け布団・まくらの置き方はすべて決められているため、順番に従って綺麗に畳まなければいけません。清掃は、部屋の掃除を行います。主に掃き掃除を行うなど簡易的な清掃を行って終了します。
その後、洗面として顔を洗ったり歯を磨いたりして点呼を迎える流れです。20分しかないため、初めは少し焦ってしまうかもしれませんが、慣れてくると時間に余裕もでき始めるため安心してください。
7時05分〜7時35分:朝食
点呼が終了すると朝食の時間です。朝食の時間となります。朝食の時間も刑務所によって異なりますが、20分〜30分程度の時間を与えられるため、この時間内で食事を済ませなければいけません。
刑務所内での生活はさまざまな制限があるため、食事を唯一の楽しみと考えている人も多いです。刑務所内での食事は管理栄養士が付いており、栄養に配慮したものが用意されています。
たとえば、ご飯は麦飯と呼ばれ、米7麦3で炊かれたものが用意されています。朝食の一例をあげるとシャケフレークとのり、味噌汁のようになっているため初めは物足りなさを感じるかもしれません。
また、曜日によってはパンが朝食として出されることもあるため、受刑者が飽きないよう最低限の配慮もされています。
7時35分〜8時:出室
食事が終了すると刑務作業へ向けて出室となります。懲役囚は刑務作業が義務付けられているため、平日は毎日刑務作業を行わなければいけません。
8時〜:刑務作業開始
8時頃から刑務作業が開始します。刑務作業は大きく分けて「A作業」「B作業」「C作業」に分類されます(刑務所によって呼び方が異なります)。
A作業は炊事や介助、理髪や指導補助、その他高度な知識や技術が必要となる作業を担当します。B作業ではA作業およびC作業に該当しない作業を担当。C作業は居室内もしくは工場等で行う軽作業が担当です。主に高齢受刑者や体が弱いもしくは不自由な受刑者が担当します。
また、細かい分類として1等工〜10等工まで分類され、若い数字になればなるほど優遇される仕組みです。受刑者のモチベーションを保つためにも、細かく等工で分類し、受刑者の作業成績や就業態度によって昇等していきます。
昇等すればするほど給料(報奨金)の金額も上がるため、真面目に作業を行い、上を目指しましょう。
9時50分〜10時:休憩
おおむね10時前後に約10分間の小休憩を挟みます。休憩とは言っても、その場で作業の手を止めて疲労回復に努めるだけです。当然、トイレ等にはいけますが、周囲の人と話をしたり自由に歩き回ったりすることはできません。休憩が終了すると、正午まで刑務作業を再開します。
12時〜12時20分:昼食
12時〜12時20分までの間、昼食休憩を挟んで午後の刑務作業が開始します。昼食も主食は麦飯となり、おかずや味噌汁が付いた栄養バランスを考えられた食事が与えられます。
受刑者ごとにおかずの量に差は無いものの、主食の量に差があるため覚えておくと良いでしょう。たとえば、体格の良い人や刑務作業の内容によって主食の量が変動する仕組みです。これは、朝・昼・晩同じです。
14時30分〜14時40分:休憩
午後の刑務作業が開始されると、午前同様に14時30分〜14時40分まで休憩を挟みます。休憩中も私語は厳禁です。ただ、手を止めて体を休める時間帯であり、何らかの行為が認められているわけではありません。
ただし、用便(トイレ)は休憩中も作業中も可能であるため、看守に申し出たうえで用便が可能です。
16時40分:刑務作業終了
刑務作業が16時40分に終了します。朝早くから刑務作業を開始するため、社会生活を営んでいる人たちと同じ程度の刑務作業時間があると思っておけば良いでしょう。
16時40分〜16時50分:入室
刑務作業が終了すると、自分の部屋へ戻ります。部屋に戻るまでの時間はおおむね10分程度です。もちろん刑務施設内や刑務作業等によって時間等は変動することはありますが、基本的には16時40分に刑務作業が終了し、入室すると思っておけば良いです。
16時50分〜17時:点検
入室後は点検を行います。夕方に行われる点検は、刑務作業を終了してすべての受刑者が入室したかどうかを確認します。これを通称「点検」と呼び、正式には「閉房点検」です。また、刑務作業前に行われる点検は「開房点検」と呼びます。
17時〜17時30分:夕食
17時になると刑務所内で唯一の楽しみとなる食事の時間になります。夕食も主食はいわゆる麦飯であり、味噌汁とちょっとしたおかずが2品程度ついています。
朝食及び昼食同様に栄養管理が徹底されており、バランスが良くて健康的な食事が提供されているため安心してください。
また、正月やクリスマスなどイベントがある際は、特別な食事が提供されることもあります。たとえば、大晦日にはカップ麺(天そば)が提供されたり、元旦の早朝にはおせち料理の折り詰めが提供されます。
夕食の時間はおおよそ30分程度で確保されているため、少しゆっくりとした食事を摂れるのが特徴です。
18時〜:仮就寝
食事が終了すると余暇時間となります。この時間は、テレビを見たり本を読んだり、手紙を書いたりできるなど、居室内で自由な時間を過ごせます。
また、この時間は就寝時間よりも早いですが、仮就寝として布団の中で寝転がることも許されています。基本的に仮就寝や就寝時間を除いて寝転がることは許されていないため、1日の中で唯一ゆっくりと過ごせる時間であると考えておけば良いです。
なお、大晦日はテレビ放送の紅白歌合戦が終了するまで放送されていたり、年越しまでラジオ放送が流れていたりなど、特別な1日を過ごせる日もあります。
21時〜就寝
通常時は余暇時間を過ごして21時には就寝となります。この時間になると必ず布団の中に入って就寝しなければいけません。トイレ等は可能ですが、居室内の人と話をしていたり本を読んでいたりすると指導もしくは懲罰の対象になるため注意しましょう。
【休日】刑務所暮らしの流れ
平日は刑務作業が行われるため、刑務作業メインで1日が過ぎていきます。休日の場合は1日中居室内で過ごすことが多く、起床時間等にも変化があります。
次に、刑務所内で生活する休日の過ごし方について見ていきましょう。
7時20分:起床
休日の起床時間は7時20分頃です。平日は6時45分であるため、少しゆっくりとした朝を迎えられるでしょう。
休日も早めに目が覚めてしまっても起床の音楽が鳴るまでは、布団の中で静かに過ごさなければいけません。他の受刑者もまだ眠っている可能性があるため、迷惑をかけないようにすることが大切です。
7時20分〜7時40分:清掃・洗面・整頓・点呼
起床後の流れは基本的に同じです。起床してから清掃・洗面・整頓・点検を行います。その後に朝食が提供される流れです。
朝食後は余暇時間となるため、手紙を書いたり読書をしたりして過ごします。刑務所によっては、夕食後の余暇時間まで会話が禁止されているところもあるため、室内で自分のできる範囲で過ごしましょう。
12時〜12時30分:昼食
12時〜12時30分までの間で昼食が提供されて、昼休憩となります。休日であっても食事の量に変動はなく、通常通り提供されます。
昼食後も余暇時間となるため、読書をしたり手紙を書いたりするなどして自由に過ごしましょう。
16時30分〜16時40分:点検
16時30分〜16時40分に点検が行われます。休日は部屋の出入りがないため閉房点検を行う必要がないように思うかもしれませんが、必ず行われます。
点検は受刑者が全員いるかどうかに加え、異常がないか、トラブルが発生していないかなどさまざまな様子を伺うためのものです。そのため、休日であっても必ず行われます。
16時40分〜17時10分:夕食
休日は夕食の時間も少し早いです。16時40分〜17時10分までの間で夕食を摂り、その後は部屋の清掃を行うなどして余暇時間になります。
18時〜:仮就寝
夕食後は余暇時間となり、テレビを見たり読書をしたり、あるいは同室の人と会話を楽しんだりして過ごします。そして、18時になると仮就寝となるため、横になって眠っても構いません。
21時〜就寝
21時には完全就寝となり、すべての受刑者が布団の中で過ごさなければいけません。眠くなくても他の受刑者に配慮し、必ず布団の中で静かに過ごしましょう。
刑務所内での居室環境
刑務所内での居室環境は、基本的に複数人の人が同じ部屋で過ごすことになります。また、刑務所内でいじめや喧嘩が発生してしまうケースもあるため注意しなければいけません。
そのため、近しい人や知り合いが刑務所に入っていると、不安を感じる人も多いのではないでしょうか。次に、刑務所内での居室環境について解説します。
複数人と同じ部屋に収容される
刑務所内には一人で過ごす「単独室」と複数人で共同生活を送る「共同室」の2種類があります。単独室は、共同生活を送るのが難しい人が収容される場所です。そのため、基本的には共同室で生活を送ることになります。
共同生活を送るのが難しい人とは、同性愛者や喧嘩等を頻繁に起こす人などが該当します。単独室は一人部屋となり、中には「共同室より快適に過ごせるのではないか?」と考える人も多いでしょう。
しかし実際は、とても孤独を感じるでしょう。とくに、共同作業も難しいと判断されてしまった場合は、単独室の中で一人で作業を行わなければいけません。そのため、誰と話すこともできず、何をするにも一人でとても孤独を感じます。
一方で、共同室は一般的に4人〜6人程度の人が同じ部屋に収容されて生活を行います。刑務所に入った順番や罪の内容によって上下関係が出来上がるケースもあるため注意が必要です。
刑務所内でいじめ・喧嘩が発生することもある
刑務所内は外と切り離されている空間です。また、受刑者はさまざまなルールの中で生活を送らなければいけず、ストレスが溜まってしまい、いじめや喧嘩が発生してしまうケースも珍しくはありません。
とくにいじめは陰湿であり、看守に知られてしまえば自分が懲罰の対象になり得ます。そのため、誰にも気づかれないようにいじめを行うケースがあります。
また、刑務所に収容されている人は何らかの犯罪を起こしている人です。血の気の多い人も多く、中には我慢できずに喧嘩をしてしまう人もいるため注意しなければいけません。喧嘩に巻き込まれてしまった立場の人であっても、最悪の場合は懲罰の対象となるため注意しなければいけません。
刑務所の暮らしでよくある質問
刑務所内の暮らしでよくある質問を紹介します。
Q.刑務所内で歯間ブラシやスキンケアの使用は認められていますか?
A .刑務所や受刑者に応じて許可される場合があります。
刑務所内では使用できるものがある程度限られています。そのため、歯間ブラシやスキンケアについても制限されているところが多いです。
しかし、歯間ブラシは歯の病気を予防するためにも必要であると世間的に認識されています。このことから、許可が出された場合のみ使用できるケースが多いです。
また、スキンケアについては原則認められていません。ただし、女性受刑者の場合は認められている刑務所が大半です。
Q.刑務所内の暑さ、寒さはどのような感じでしょうか?
A .刑務所の暑さや寒さは適切に管理されています。
「刑務所の中は外気温の影響を受けやすい」と考えている人が多いでしょう。しかし実際は、刑務所内はある程度一定の温度になるように調整されているため、極端に暑いもしくは極端に寒いといったことはありません。
また、刑務所内での入浴は、1週間の間で夏場は3回冬場は2回までです。そのため、とくに夏場は暑さの影響で汗をかき、そのままにしていると衛生面でも大きな影響を与えます。このことからもわかるように、ある程度の温度調整はなされているため安心してください。
Q.いびきがうるさい受刑者の対応はどうしているのでしょうか?
A .耳栓の購入が認められているため、耳栓にて対応します。
共同室の場合、同じ部屋にいる人のいびきがうるさくて眠れずに苦労するケースもあります。また、自分のいびきが原因で他の受刑者に迷惑をかけてしまっていると考え、眠れない受刑者もいることでしょう。
基本的には、共同室内にいる人が耳栓を購入し、耳栓をしたうえで就寝を認めます。それでもなおイビキによる睡眠不足が認められる場合は、単独室への転房が認められるケースがあるため、まずは看守に相談をすることとなるでしょう。
Q.慣れれば刑務所内も居心地が良いのでしょうか?
A .居心地が良いと感じることはないでしょう。
刑務所内は何らかの犯罪を犯し、罪を償う場所です。そのため、快適とは程遠い場所です。
ただし、交通事故を起こしたような人が入る交通刑務所と呼ばれる場所は、通常の刑務所と異なりある程度快適に過ごせる環境が整えられています。
交通刑務所は一般的な刑務所のイメージとは異なり、高い塀はなく鉄格子、厳重な警備体制もありません。刑務所内でもある程度自由に過ごすことが認められています。そのため、一般的な刑務所と比較すると快適に感じられるでしょう。
交通刑務所の居心地が良い理由としては、再犯の可能性が低いことや反省している受刑者が多いからです。交通刑務所に入所する人は、重大な交通違反を犯した人や交通事故の結果、人を死傷させてしまったような人たちです。
つまり、過失はあるものの故意がないため、同じことを繰り返す可能性は低く、逃亡の可能性も低いことからある程度自由な環境が認められているのです。
Q.刑務所内でもっとも辛いことは何ですか?
A .人によりますが、多くの受刑者は「人間関係」と答えるでしょう。
刑務所内での人間関係は、原則上下関係は認められていません。しかし、実際には上下関係があります。そのため、そういった人間関係で苦労する人が多いです。
まとめ
今回は、刑務所内の生活の流れについて解説しました。
刑務所内での生活は規則正しく、数分単位で細かくスケジュールが決められています。そのため、健康的な日々を送れていることは間違いありません。
しかし、毎日毎日同じことの繰り返しを何年も繰り返すことに苦痛を感じる受刑者も少なくはありません。刑務所は「罰を与える場所」であるため、決して楽に感じることはないでしょう。