取り調べ拒否は可能?事情聴取の種類によって拒否の可否が異なる!

NO IMAGE

警察等が行う取り調べは、拒否できる「任意聴取」と拒否ができない「強制聴取」があります。それぞれ対象者や身柄拘束の有無によって、任意か強制かが変わります。

この記事では、取り調べを拒否することは可能なのか?について解説しています。警察から呼び出しを受けている人、取り調べに不安を感じている人は、本記事で紹介している内容を参考にしてください。

取り調べの種類に応じて拒否の可否が決まる

「取り調べ」といっても拒否が可能な任意聴取と強制的に行われる強制聴取があります。前者の場合は拒否することが可能ですが、後者の場合は拒否することはできません。しかし、強制聴取であっても、言いたくないことは言わなくても良い「黙秘権」があります。

まずは、取り調べの種類や拒否が可能・不可能な取り調べの種類について詳しく解説します。

取り調べの種類

取り調べといっても対象にしている人によってさまざまな種類があります。例を挙げると以下の取り調べの種類があります。

  • 被疑者に対する取り調べ
  • 参考人に対する取り調べ
  • 重要参考人に対する取り調べ

それぞれ拒否ができるかどうかは異なります。まずは、それぞれの取り調べの概要と拒否が可能かどうかについて詳しく解説します。

取り調べと事情聴取は同じ意味

刑事事件において「取り調べ」と「事情聴取」という言葉が使われることが多いです。いずれも、「被疑者や参考人等に対して話を聞くこと」という意味で使われる言葉であり、違いはありません。

ただ、使い分けをする場合は取り調べを「逮捕・勾留されている者(身柄を拘束されている人)に対して使う言葉」として使用されることが多いです。一方で、上記以外の対象者に対して行う取り調べを事情聴取ということが多いです。

とはいえ、明確な違いの基準はないため、どちらも同じ意味であると思っておいて良いです。

【状況によって変わる】被疑者に対する取り調べ

被疑者に対して行われる取り調べは、任意聴取と強制聴取があります。まず、被疑者とは犯罪の疑いをかけられている人であり、起訴される前の人です。起訴された場合は呼び名が「被告人」に変わります。

被疑者は、逮捕・勾留をされている場合に行われる取り調べは強制聴取となり、拒否することはできません。一方で、在宅事件として扱われている刑事事件においては、任意聴取となるため拒否が可能です。

前提として罪を犯したからといってすべての人が逮捕されるわけではありません。逮捕されたり勾留されたりする被疑者は、逃亡や証拠隠滅の可能性がある、もしくは重大な罪を犯したなど一定の条件を満たした人です。

身柄事件となった場合は、留置場もしくは拘置所に収容されるため、強制聴取となります。逮捕せずに在宅事件となった場合は、自宅に帰ることが許され、警察官や検察官の呼び出しに対しては原則応じる必要があります。

在宅事件の場合は、あくまでも任意聴取であるため拒否をしても罰せられるようなことはありません。しかし、被疑者である以上、犯罪の疑いをかけられている状態です。そういった状態で任意聴取を拒否した場合は、逃亡や証拠隠滅の可能性があると判断され、逮捕・強制聴取となる可能性もあるため注意してください。

【拒否可能】参考人に対する取り調べ

刑事事件における「参考人」とは、事件に関して何らかのことを知っている可能性のある人を指します。罪を犯したのではないか?と疑われているわけではなく、事件について協力をしてほしいというスタンスであるため、拒否できます。

また、拒否をしても罪を犯していない以上、逮捕されたり強制聴取を受けたりするようなことはありません。ただし、参考人としている人物が犯罪に関与していることが明らかとなった場合、逮捕される可能性もあるため注意してください。

参考人は被疑者の家族や事件の目撃者、専門家など、事件と関係性はないものの、事件もしくは被疑者について何らかの情報を持っている人です。

【拒否可能】重要参考人に対する取り調べ

重要参考人とは、現時点で参考人という立場ではあるものの、被疑者の嫌疑もかけられている人のことです。参考人は広義で「事件について知っている可能性のある人」という意味で使用されます。

一方で重要参考人は、「事件に関与している可能性がある人」もしくは証拠が揃っていないものの「犯人である可能性が高い人」です。重要参考人として取り調べを依頼された場合、任意聴取であるため拒否できます。

しかし、重要参考人である以上、被疑者としての嫌疑もかけられている状態です。そのため、仮に重要参考人として取り調べに応じ、嫌疑が固まり次第逮捕状を発布して逮捕することもあります。

逮捕を避けるために重要参考人としての取り調べを拒否していた場合、最終的には証拠を固めて逮捕状を発布後に逮捕される可能性もあります。とくに、重要参考人としての取り調べを拒否し続けていた場合は、「逃亡もしくは証拠隠滅の可能性がある」と判断されて逮捕される可能性が高まります。

【注意】取り調べを拒否し続けると逮捕される可能性がある

在宅事件における取り調べ、参考人や重要参考人に対して行われる取り調べはいずれも任意聴取であるため、拒否をしても良いです。しかし、とくに在宅事件の取り調べの場合、あなたは被疑者であるため、逃亡・証拠隠滅の可能性があるとして逮捕される可能性があります。逮捕されると、長期間にわたって身柄を拘束されるため注意しましょう。

重要参考人の場合も被疑者としての嫌疑をかけられている可能性もあります。取り調べ自体を拒否しても良いですが、容疑が固まり次第、逮捕状を発布して逮捕される可能性があります。

初めから任意聴取に応じていれば、在宅事件となる可能性もあるため取り調べに応じないのは避けたほうが良いでしょう。

取り調べを求められるケースとは

警察等の捜査機関が行う取り調べの目的は、主に以下のとおりです。

  • 職務質問
  • 犯罪の疑いをかけられている場合
  • 事件について知っている可能性がある場合

次に、取り調べを求められるケースについて詳しく解説します。

職務質問

職務質問は、警察官等が不審に思った人を対象に行う警察活動の一つです。取り調べや事情聴取とは少し異なりますが、不審に思った人に対して行う警察活動の一つであるため、一種の取り調べと同じであると考えて良いです。

職務質問は、任意で行われる行為であるため拒否することができます。しかし、拒否をしたところで警察官が「わかりました」といって引き下がることはまずありません。任意ではあるものの、社会秩序を守るために行われている行為です。

また、犯罪を未然に防止する目的もあり、実際に職務質問で防げている犯罪も多くあります。そのため、職務質問をされた場合は素直に応じるようにしましょう。

犯罪の疑いをかけられている場合

犯罪の疑いをかけられている場合は、被疑者としてもしくは重要参考人として取り調べを受けます。先ほども解説したとおり、被疑者で身柄事件の場合は強制聴取となります。

一方で、在宅事件の場合は任意聴取です。しかし、任意だからといって拒否をし続けていると逮捕されてしまいます。そのため、被疑者である場合は必ず取り調べに応じるようにしましょう。

もし、何らかの事情で日程が合わない場合は、事前に連絡をしたうえで改めて日程調整をするようにしてください。被疑者という立場であることを理解し、必ず取り調べには応じてください。

重要参考人の場合も任意聴取ではあるものの、取り調べを拒否し続けているといずれ証拠を固めて逮捕状を発布し、逮捕されてしまう可能性があります。事件の内容等にもよりますが、在宅事件で進められる場合であっても重要参考人のときに取り調べを拒否していたことが影響する可能性があります。

事件について知っている可能性がある場合

事件について何らかの情報を知っている可能性がある場合は、参考人として取り調べの依頼をされる場合があります。あくまでも、任意聴取であり警察等の捜査機関としても「協力してほしい」という姿勢であるため、拒否をしても問題ありません。

しかし、犯人を匿っていたり嘘の情報を伝えたりすると、犯人蔵匿罪・犯人隠避罪に問われる可能性があるため注意しましょう。任意聴取に応じられない事情があるのであれば、正直にその旨を伝えるようにしてください。

取り調べ時の権利

取り調べに応じる際、覚えておくべきことがあります。それは、取り調べ対象者に対して認められている「権利」です。権利には、主に以下の種類があります。

  • 黙秘権
  • 署名押印拒否権
  • 弁護人依頼権
  • 接見交通権

次に、取り調べに応じる際に必ず覚えておきたい権利の種類について詳しく解説します。

黙秘権

黙秘権は、取り調べ等にて「自分の言いたくないことは言わなくても良い」という権利です。刑事事件の取り調べにおいては、「これを言ったら罪に問われてしまうのではないか」「これを話すと罪が重くなるのではないか?不利になるのではないか?」など、さまざまな不安を抱えていることでしょう。

そういった場合、言いたくないことは言わなくても良い権利「黙秘権」を行使できます。黙秘権を行使することによって、事件の内容の一部または全部を言わなくても良いです。黙秘権を行使する際は、とくに宣言をする必要はありません。

なお、黙秘権を行使するのは自由ですが、嘘をついて良い権利ではないため注意してください。嘘をついてしまうと犯人隠避罪や虚偽告訴罪などに抵触する可能性があります。

署名押印拒否権

署名押印拒否権とは、警察官等が作成した調書への署名・押印を拒否する権利です。自分で話した内容が改変されている場合や、「取り調べで正直にすべて喋ってしまったけど、やっぱりなかったことにしたい」といった場合は、署名や押印を拒否できます。

長所は被疑者等の署名や押印がなければ証拠として扱うことはできません。そのため、たとえ取り調べで喋ってしまったとしても、署名・押印をしなければ供述調書を証拠として扱うことはできなくなります。

また、調書に書かれている内容が自分の話したことと違う場合は、変更を申し出ることもできます。これを「増減変更申立権」と言います。増減変更申立権が認められない場合は、署名・押印を拒否しましょう。

弁護人依頼権

被疑者もしくは被告人に対しては、いつでも弁護人を依頼できる権利があります。これを「弁護人依頼権」と言います。

弁護人依頼権については、日本の最高法規である憲法によって定められている権利です。具体的には「何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ、抑留又は拘禁されない」と定められています。

ただし、弁護人を呼ぶことはできるものの、費用は原則実費です。国で負担をしてくれる制度はあるものの、さまざまな条件があります。あくまでも「弁護人を依頼する権利」であり、費用まで全額国で負担をしてくれるわけではない点に注意してください。

接見交通権

接見交通権とは、被疑者や被告人など身柄の拘束を受けているものであっても弁護人等と自由に接見できる権利です。取り調べ中であっても弁護人との接見は自由に行うことができます。

取り調べの流れ

取り調べの大まかな流れは以下のとおりです。

1.逮捕・任意での聴取開始
2.指紋・DNA採取が行われることもある
3.黙秘権の告知
4.事件の事情聴取開始
5.調書の内容を確認
6.次回日時の確認

次に、取り調べの大まかな流れについて詳しく解説します。

逮捕・任意での聴取開始

初めに逮捕もしくは任意という形で取り調べが開始されます。逮捕されている場合は、取り調べが終了次第留置場と呼ばれる場所に収容されます。任意聴取の場合は、取り調べが終了次第解放されて自宅へ帰ることができます。

指紋・DNA採取が行われることもある

取り調べは一般的に被疑者や参考人あるいは重要参考人に対して、話を聞くことです。しかし、場合によっては指紋やDNAを採取することがあります。事件に関与している可能性が高い場合は、証拠となり得るためです。ただし、指紋やDNA採取に強制力はないため、拒否することができます。

身柄を拘束されている被疑者や身体検査令状が発布されている場合は、指紋採取およびDNA採取を拒否できません。

黙秘権の告知

取り調べが開始される前に、必ず黙秘権の告知が行われます。黙秘権は「言いたくないことは言わなくても良い」という権利です。中には、取り調べに応じるにあたって、「すべてのことを正直に話さなければいけない」と考えている人も多いでしょう。

そう言った人たちのために初めに黙秘権について説明をしたうえで取り調べが開始されます。

事件の事情聴取

黙秘権の説明が終了すると事件に関する取り調べが開始されます。取り調べは、特別な許可がない限り、朝の5時から夜の10時までの間で1日あたり最長8時間までと決められています。

調書の確認

取り調べが終了すると、その日に話した内容を調書にまとめて最後に警察官等が読み上げます。誤りがある場合は指摘し、変更してもらいましょう。また、署名・押印の拒否をしても問題ありません。

次回日時の確認

調書の確認まで完了すると、次回日時の確認が行われます。都合が悪い場合は正直に伝え、必ず応じられる日程で調整しましょう。また、逮捕されている人の場合は、強制であるため翌日以降も取り調べが続きます。

取り調べ拒否に関するよくある質問

取り調べ拒否に関するよくある質問を紹介します。

Q.取り調べに応じてそのまま逮捕される可能性はありますか?

A.可能性はあります。

とくに重要参考人として取り調べを受けている場合、容疑が固まり次第逮捕状を発布してそのまま逮捕される可能性があります。だからといって、初めから取り調べを拒否していても、警察等が証拠を集めたうえで最終的に逮捕状を発布して逮捕される可能性があります。

上記のことから、罪を犯した事実がある以上は、遅かれ早かれ逮捕されてしまう可能性があることを覚えておきましょう。

Q.取り調べの内容を録音しておくことは可能ですか?

A.取り調べの内容を録音すること自体は、法律で禁止されていません。

取り調べの内容を録音することは法律上可能ですが、警察とのトラブルになる可能性もあるため注意しましょう。

取り調べの録音自体を禁止する法律はありません。しかし、ほとんどの場合警察の方から録音をやめるよう促されます。また、警察の取り調べを可視化するため、取り調べの内容を録画されるケースもありますが、ごく一部です。

もし、取り調べに不安がある場合は弁護士へ相談をしたうえで対応を検討したほうが良いでしょう。

Q.取り調べで嘘を付くとどうなりますか?

A.あなたが被疑者である場合は、嘘を付いても何ら問題はありません。

嘘を付くことは避けるべきですが、被疑者である以上、自分を守るために嘘をついてしまうこともあるでしょう。たとえば、罪を犯した事実があるにも関わらず「やっていない」と嘘を付くケースです。

上記の例では違法性はありません。ただ、実際に罪を犯しているにも関わらず、嘘を付いたという事実が処分や判決に大きな影響を与えるため注意してください。

また、参考人等として取り調べを受けている場合、嘘の内容次第では犯人隠避罪等に問われる可能性があるため注意したほうが良いでしょう。

Q.違法な取り調べを受けた場合はどうすれば良いですか?

A.弁護士へ相談をしてください。

違法な取り調べを受けた場合は、警察や検察等へ抗議することが大切です。しかし、一般の人が抗議をしても聞き入れられないケースが多いため、初めに弁護士へ相談をしたうえで代理人(弁護士)経由で抗議をすると良いでしょう。

Q.取り調べと事情聴取は違いますか?

A.意味は同じです。

取り調べも事情聴取も同じ意味で使用される言葉です。ただ、使い分けるとしたら逮捕・勾留されている被疑者に対して行う取り調べを「取り調べ」と言います。一方で、上記以外の人に対して行う取り調べを「事情聴取」と言うことが多いです。

とはいえ、それぞれ違いはないためどちらの言葉を使っても問題はありません。

まとめ

今回は、取り調べを拒否できるのか?について解説しました。

警察等が行う取り調べの中には、拒否をできる取り調べもあります。しかし、取り調べを拒否することによって、逮捕されて身柄を拘束されてしまう可能性もあるため注意しなければいけません。

取り調べに応じられない理由があるのであれば、あらかじめ警察等に話をしたうえで日程調整をしましょう。取り調べに対して不安がある場合は、弁護士に相談をしたうえで取り調べの応じ方について確認をすると良いでしょう。

刑事事件でお悩みの場合はすぐにご相談ください。

刑事事件で重要なのはスピードです。ご自身、身内の方が逮捕、拘留されそうな場合はすぐにご相談ください。

刑事事件コラムカテゴリの最新記事

PAGE TOP