贖罪寄付とは?メリットや注意事項についても詳しく解説

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贖罪寄付とは「贖罪」の意味を込めて「寄付」することです。具体的には、犯罪加害者が被害者支援団体や弁護士会といった団体に寄付をすることを指します。

贖罪寄付をすることによって、検察官や裁判官に良い心象を与えられます。結果的に、処分や判決に影響を与える可能性があり、加害者にとっても大きなメリットとなり得るでしょう。

この記事では、贖罪寄付とは何か?や、贖罪寄付のメリット、注意事項について詳しく解説しています。犯罪加害者であり、贖罪寄付について検討されている人は、ぜひ本記事を参考にしてください。

目次

贖罪寄付とは

贖罪寄付とは、罪を犯した人が弁護士団体や被害者支援団体、慈善団体に「寄付」することです。寄付をする理由はさまざまであり、中には刑事処分への影響を考慮して寄付を検討している加害者もいます。

まずは、「贖罪寄付とは何か?」について詳しく解説します。

加害者が寄付をすること

贖罪寄付を簡単に言うと、犯罪の加害者である人が寄付をすることです。その目的はさまざまですが、贖罪寄付をすることによって刑事処分へ良い影響を与えることがあります。そのため、経済的に余裕のある被疑者や心の底から反省している被疑者は寄付を検討します。

そもそも「贖罪」とは、善良な行いや金品を寄付することによって自分の犯した罪を償うことです。贖罪寄付は「寄付」と書かれているとおり、贖罪の気持ちがある加害者が寄付をすることを指します。

つまり、犯罪加害者が自分の罪を償う目的から、「寄付」することを贖罪寄付と呼ぶと考えておけば良いでしょう。

とはいえ、犯罪者の償いは、通常、刑事裁判を受けて刑が確定します。たとえば、懲役刑や禁錮刑、拘留といった自由刑であれば一定期間刑務所や拘置所に収監され、刑務作業を行ったり拘置所の中で過ごさなければいけません。

一定期間刑務所や拘置所の中で生活をすることによって、刑事上は「罪を償った」と言うことになり、社会へ戻れます。罰金刑や科料といった財産刑の場合は、金銭を納めることによって罪を償ったことになります。

死刑(生命刑)であれば、自分の死を持って罪を償わなければいけません。このように、罪を犯した人は、刑事上で何らかの「償い」を強制的にしなければいけません。

また、被害者のいる罪を犯した人は、被害者に対して損害賠償責任(民事上の責任)を負います。

そのため、「あえて自分の財産を支払ってまで贖罪寄付をする加害者の考えがわからない」と考える人も一定数いるでしょう。実際、加害者が贖罪寄付をする理由はさまざまですが、主な理由は被害者から示談交渉等を断られてしまった場合や、反省している態度を示すためといった意味合いが強いです。

贖罪寄付は「贖罪」とはいっているとおり、何らかの形で罪を償おうとしている人が検討する行為です。どのような形であっても罪を償おうとしている姿勢の受け入れ先として、贖罪寄付があると考えておけば良いでしょう。

寄付先は弁護士会・被害者支援団体

贖罪寄付は贖罪の意味を込めて寄付することを意味します。その寄付先は、主に弁護士会や被害者支援団体、その他慈善団体となるケースが多いです。

犯罪加害者が弁護士会や被害者支援団体に贖罪寄付をする目的は、「犯罪被害者のためにお金が使われて欲しい」と考えるためです。

贖罪寄付は任意であるため、「〇〇に寄付をしなければいけない」といった決まりはありません。しかし、たとえば弁護士会に寄付をすることによって、経済力の乏しい犯罪被害者が弁護士へ相談をした際に、贖罪寄付されたお金で弁護士報酬を支払うことができます。被害者支援団体に寄付をしていれば、何らかの形で被害者に対して支援がされるでしょう。

このように、犯罪加害者であることを鑑みて「自分は2度と同じことを繰り返さない」と深く誓うとともに、「自分のような犯罪加害者によって、人生を狂わせてしまった人の助けになれば良い」という考えから上記団体に寄付されるのが一般的です。

贖罪寄付と示談・被害弁償・供託との違い

罪を犯した加害者は、経済的な償いとして贖罪寄付のほかに「示談」や「被害弁償」、「供託」といった選択肢があります。そのため、そもそも「贖罪寄付と何が違うのか?」についても把握しておくべきでしょう。

次に、贖罪寄付と示談・被害弁償・供託との違いについても詳しく解説します。

示談とは

刑事事件における示談とは、裁判等を行わずに被害者対加害者で話し合いを行い、和解を目指すことを指します。刑事事件における示談では、必ず金銭のやり取りが発生します。簡単にいえば、「加害者が被害者に対して金銭を支払うことによって、被害者に対して許しを乞う行為」です。

たとえば、暴行事件を犯した加害者が被害者に対して謝罪と共に金銭を支払います。といった提案をします。被害者側が納得をした場合は示談が成立する流れです。

示談のメリットとしては、被害者側から見ると早期に事件を解決できる点と示談金の受け取りができる点です。加害者からすると、刑事処分を免れたり減刑されたりする点がメリットです。

示談が成立することによって、被害者は検察官や裁判官に対して嘆願書というものを提出します。嘆願書は、「加害者である〇〇と示談が成立しているため、刑事罰を望みません」といった内容の書類です。

嘆願書に法的効力はないものの、被害者の処罰感情がないことが明らかであるため、刑事事件においては有利な判決や処分を受けられます。ただし、示談は必ずしも応じなければいけないものではないため、被害者の処罰感情が厳しければ示談に応じてもらえません。

贖罪寄付との大きな違いは、お金の行き先です。贖罪寄付の場合は、何らかの団体に対してお金が支払われます。しかし、示談の場合は被害者に対して金銭が支払われます。

また、贖罪寄付は一方的に寄付することが可能ですが、示談は被害者側の意思に左右されるため、必ず応じてもらえるとは限りません。

さらに異なる点は、贖罪寄付は被害者がいない犯罪に対しても対応している一方で、示談は被害者がいなければ成立しない点です。たとえば、覚せい剤取締法違反で逮捕された場合、被害者はいません。そのため、示談交渉をする相手がそもそもいません。しかし、示談は「被害者と和解を目指す行為」であるため、大きな違いがあります。

被害弁償とは

被害弁償とは、罪を犯した人の行為によって失われた損害を弁済するための制度です。いわゆる「弁償」と同じであると考えておけば良いです。たとえば、万引き(窃盗罪)で罪に問われた被疑者がお店に対して万引きした金額を支払うことを「被害弁償」と言います。

他にも、故意に人の物を壊した場合は器物損壊罪に問われますが、壊した物の弁償することも被害弁償です。

贖罪寄付と被害弁償の違いは、「被害者の有無」と「義務」、「被害者の意思」です。被害弁償は、窃盗や器物損壊罪など、被害者に対して何らかの弁償を行うべき場合に成立する制度です。そのため、そもそも被害者がいない犯罪である場合は、被害弁償はできません。

一方で、贖罪寄付はどのような犯罪に対しても行えます。被害者がいなくても、一方的に行うことができます。

被害弁償も贖罪寄付も「義務」ではありませんが、犯罪被害者に対する賠償責任は加害者が負います。つまり、仮に義務ではないからといって被害弁償を行わなかったとしても、いずれは賠償責任を負うのです。

具体的には、「損害賠償命令制度」の申し立てが行われた場合に、賠償責任を負う可能性があるのです。たとえば、万引きを例に見ると被害者であるお店側が加害者に対して損害賠償命令制度の申立てを行い、認められれば加害者は賠償責任を負うということです。

つまり、被害弁償は義務ではないものの、いずれ支払い義務を負う可能性のあるものであるということです。一方で、贖罪寄付はあくまでも「寄付」であるため、義務はありません。

そして、被害弁償は被害者から断ることができます。しかし、贖罪寄付の場合は、相手が団体であるうえに寄付であることから、基本的に拒否されることはありません。こういった違いもあります。

供託とは

供託とは、犯罪加害者が「自らが妥当である」と考える金額を法務局に預け入れておく(供託)ことを指します。たとえば、被害弁償や示談交渉を被害者に拒否された場合に検討すべき選択肢です。

被害者の処罰感情が厳しい場合は、示談や被害弁償を拒否されることがあります。この場合、供託をしておくことによって被害者が後から、被害弁償等を受け入れる場合があります。

被害者に弁済が済んでいるかどうかは、刑事罰を判断するうえで重要視されるため、「少しでも可能性があるのであれば……」といった思いから供託を検討するのです。

贖罪寄付と供託はとても似ています。贖罪寄付は、犯罪被害者が被害弁償等の受け取りを拒否した場合に贖罪として寄付をする。といった加害者も多いためです。ただ、被害者の有無によって対応可否が異なる点は、贖罪寄付と供託の大きな違いであると言えるでしょう。

贖罪寄付を検討する事件とは

贖罪寄付を検討すべき事件は主に以下のとおりです。

  • 被害者がいない事件の場合
  • 被害者が特定されていない場合
  • 被害者と示談できなかった場合

次に、贖罪寄付を検討すべき主な事件について解説します。

被害者がいない事件の場合

被害者がいない事件の場合、贖罪寄付を検討するべきでしょう。被害者がいない事件は、相手に対する賠償責任を負うことはありません。そのため、金銭等で償いの意思を示す事は難しいです。

そのため、被害者など特定の人に対してではなく、何らかの団体に一方的に寄付ができる贖罪寄付を検討します。贖罪寄付をすることによって、金銭での償いを行っていることが認められるため、判決や処分に何らかの影響を与える可能性があります。

被害者が特定されていない場合

被害者が特定されていない場合も贖罪寄付を検討するべきです。その理由は、被害者が特定されていないため、賠償を行うことができないためです。

被害者が特定できなかった場合は、先ほど解説した「供託」を検討しても良いですが、供託とは別に贖罪寄付を検討しても良いでしょう。

贖罪寄付をすることによって、自分の事件とは関係のない犯罪被害者に対して間接的に経済的なサポートを行うことができます。また、経済的な贖罪も行うことができるため、判決や刑事処分に影響を与える可能性があります。

被害者と示談できなかった場合

被害者と示談交渉を成立させることができなかった場合は、その分を贖罪寄付の検討をしたほうが良いです。通常、示談交渉を行う場合は、被害弁償とは別に慰謝料を含めた金額の支払いをする必要があります。

そのため、被害弁償もしくは供託を行ったうえで示談金として支払う予定であった差額分を贖罪寄付することを検討しましょう。

刑事事件において、被害者の処罰感情は判決や処分に大きな影響を与えます。そのため、とくに処罰感情の厳しい被害者は、示談交渉を拒否する場合があります。この場合、一方的に被害者に対して金銭を支払う事はできないため、加害者が検討すべきは被害弁償です。

しかし、示談交渉を拒否する被害者の場合は、被害弁償も拒否するケースがあります。この場合は、一方的に行うことができる供託を検討することになるでしょう。供託では、「自分が妥当であると思う金額」を支払うことができます。

そのため、一部を供託として支払い、残りを贖罪寄付をすることによって、供託と贖罪寄付をしたことが明らかとなり、判決や処分で有利になるでしょう。

贖罪寄付のメリット

贖罪寄付は「罪を犯したことについて反省している」という態度を示すことができます。なぜなら、贖罪寄付の目的は「贖罪の意味を込めて、自分の意思でお金を寄付していること」となるためです。

贖罪寄付をすることによって、以下のようなメリットが発生するため、罪を犯してしまった人は検討してみても良いでしょう。

  • 反省している態度を示せる
  • 不起訴の可能性がある
  • 量刑判断へ影響を与える

次に、贖罪寄付のメリットについて詳しく解説します。

反省している態度を示せる

贖罪寄付をすることによって、反省している態度を示すことができます。刑事事件においては、被害者の処罰感情はもちろんのこと、被疑者自身が「反省しているかどうか」も量刑判断や処分へ与える影響は大きいです。

贖罪寄付はその名のとおり「贖罪」を目的とした「寄付」であるため、何らかの形で反省している態度を示している人にとってはとても良い制度です。

たとえば、覚せい剤取締法違反のような被害者のいない罪を犯してしまった被疑者が、自分の財産の大半を贖罪寄付したとしましょう。理由は「お金がなければ、覚せい剤を購入することはできない」であれば、相当な覚悟を持っていること、しっかり反省して改心しようとしていることが窺えます。

反省している態度は、言葉で何とでも言い表すことができます。「申し訳ない」「反省しています」等々と言うことはできますが、何らかの目に見えた形で反省している態度を示すことも大切です。

とはいえ、身柄を拘束されている被疑者がたとえば、ボランティア活動に参加することは物理的に不可能です。しかし、贖罪寄付であれば、自分の財産を弁護士を通じて動かすだけであるため、身柄拘束中でも行うことができます。

そのため、「何らかの形で反省している態度を示したい」と考えている人は、贖罪寄付をすることによって「自分は反省しています」といった態度を示しましょう。

不起訴の可能性がある

事件の内容にもよりますが、贖罪寄付をしている事実が影響して、不起訴処分となる可能性もあるでしょう。不起訴処分とは、被疑者を刑事裁判にかけることなく事件を終了させることを言います。

刑事裁判が行われないため、刑事処分を受けることもありません。また、前科も付かないため、被疑者にとってみると大きなメリットになり得ます。

不起訴処分の種類はさまざまであり、「罪を犯したと疑うに足りる十分な証拠が揃わなかった(嫌疑不十分)」という場合や「無実であった(嫌疑なし)」等々があります。他にも、罪を犯したことは明らかではあるものの、あえて起訴をせずに社会で生活をしたうえで更生させる場合もあります。これを「起訴猶予」と言います。

被疑者が贖罪寄付をするということは、罪を犯したことは明らかです。当然、罪に問えるだけの証拠も揃っていることでしょう。しかし、贖罪寄付をしていることなどを考慮して、検察官が「起訴をしない(起訴猶予)」と判断するケースもあるのです。

不起訴処分(起訴猶予)となった場合は、「無罪」ではないものの、この事件については終了します。今後、同じ事件で罪に問われることはなく、前科も付きません。そのため、早期に釈放され、今後の社会生活に与える影響を少なくできる点がメリットです。

なお、前科は付かなくとも「前歴」は付いてしまう点に注意が必要です。前歴とは、罪を疑いをかけられた事実です。もし今後、何らかの犯罪の疑いをかけられた場合は、前歴が影響して量刑判断や処分に不利な影響を与えるため注意しましょう。

量刑判断へ影響を与える

仮に起訴されてしまったとしても、量刑判断にある程度の影響を与えることが考えられます。通常、罪を犯した被疑者は法定刑の範囲でさまざまな事情を考慮して量刑が判断されます。

たとえば、窃盗罪の場合は法定刑が「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。窃盗罪であれば、被害額や常習性のほか、被害弁償の有無、被害者の処罰感情などが量刑判断へ大きな影響を与えます。さらに、贖罪寄付の有無によって、量刑が軽くなることがあります。

具体的には、初犯で被害者の処罰感情が厳しくない場合は、罰金刑で済むケースもあるでしょう。

贖罪寄付による減刑は、明確に定められているわけではありません。たとえば、「万引き(窃盗罪)」であり、被疑者Aと被疑者Bのどちらも贖罪寄付をしていたとしても、どちらも同じ量刑が下されるとは限りません。

なぜなら、被害者の処罰感情や前科・前歴の有無、被害額などによって量刑が異なるためです。一概に、「贖罪寄付をしたから〇〇程度減刑される」といったことは言い切れません。

贖罪寄付の注意事項

贖罪寄付をする際は、以下のことに注意しましょう。

  • 重大な効果を期待できない
  • 必ずしも量刑・処分が軽くなるとは限らない
  • 寄付金額は決められていない
  • タイミングは「できるだけ早め」がポイント

次に、贖罪寄付を行う際の注意事項について詳しく解説します。これから贖罪寄付を検討している人は、ぜひ参考にしてください。

重大な効果を期待できない

贖罪寄付は、あくまでも「寄付」であるため示談や被害弁償と比較して重大な効果は期待できません。

示談や被害弁償は、実際に被害を受けた被害者が経済的な損失の補填を受けられます。その分、処罰感情も気薄化するため、不起訴処分となったり大幅に減刑されたりする可能性が高いです。

しかし、贖罪寄付は被害者とはまったく関係のない所に寄付をする手続きであるため、被害者の処罰感情へ与える影響は限定的です。そのため、示談が成立しなかった被疑者が贖罪寄付をしたからといって、示談成立時と同等の減刑は見込めないため注意しましょう。

なお、贖罪寄付は検察官や裁判官の心象を良くするための行為であると考えておけば良いです。自分の財産から寄付をしていることが認められることによって、「贖罪の気持ちがある」と判断され、処分や判決に影響を与えるのです。

必ずしも量刑・処分が軽くなるとは限らない

贖罪寄付は、必ずしも量刑や処分が軽くなるとは限りません。あくまでも、贖罪を前提とした寄付であるため、検察官や裁判官の心象に多少なりとも影響を与えるというだけです。

そのため、そもそも「減刑されるために贖罪をする」という考え方が間違っていると考えたほうが良いでしょう。本心は、減刑が目的であっても、前提は「自分の犯した罪と向き合い、贖罪をしたい」と考えて行います。

上記のことから、法律による減刑規定もありません。たとえば、残忍な連続殺人事件を起こした被疑者が数万円程度の贖罪寄付をしたとしても、社会的な影響や被害者の処罰感情を鑑みても、厳しい判決が下されることは間違い無いでしょう。

つまり、贖罪寄付はあくまでも「贖罪」の気持ちを持っての行為であり、減刑を前提として行う場合は注意したほうが良いということです。

寄付金額は決められていない

贖罪寄付の金額は、決められていません。極端なことを言うと数百円や数千円程度でも良いです。一方で、数千万円〜数億円の高額な贖罪寄付を検討しても問題ありません。

ただし、極端に少ない贖罪寄付は意味がありません。もし、経済的に余裕がないのであれば、無理をして贖罪寄付をする必要はないでしょう。本記事で解説しているとおり、贖罪寄付によって得られる効果は限定的であるため、少額であれば贖罪寄付をしないほうが良いです。

一方で、数千万円〜数億円など高額な贖罪寄付をした場合、財産の大半を贖罪寄付に充てることになるでしょう。この場合は、反省度合いが高いと判断されて、処分や判決の決定に良い影響を与える可能性は高いです。

贖罪寄付を検討されている人は、まずは担当弁護人に相談をしたうえで、自分の財産状況と照らし合わせて金額を検討すると良いでしょう。

タイミングは「できるだけ早め」がポイント

贖罪寄付を検討されている人は、「できるだけ早め」に寄付するのがポイントです。なぜなら、贖罪寄付をすることによって、処分や判決に少なからず影響を与える可能性があるためです。

たとえば、身柄を勾留されている被疑者の場合は、逮捕〜勾留の間で起訴・不起訴の判断がなされます。逮捕〜勾留までの期間はわずか最長でも23日であるため、この間に検討と実行をしておかなければ、起訴されてしまいます。

日本の刑事裁判においては、起訴された場合の有罪判決率が99%であると言われています。そのため、比較的軽微な犯罪で贖罪寄付をすることによって不起訴処分を得られる可能性があるのであれば、遅くても勾留期間中に実行までしておくべきでしょう。

贖罪寄付を検討されている人は、まずは弁護人へ相談をします。逮捕された被疑者・勾留されている被疑者の場合は、国が無料で弁護人を付けてくれます。そのため、「贖罪寄付を希望している」という旨を伝えて早めに手続きを進めていきましょう。

贖罪寄付金の主な使い道

贖罪寄付の主な使い道は、寄付先によって異なります。贖罪寄付で寄付できる主な場所は、先ほども解説しましたが、以下のとおりです。

  • 弁護士会
  • 被害者支援団体

弁護士会の場合は、さまざまな法律援助として使用されます。被害者支援団体の場合は、犯罪被害者の支援に使われます。

次に、贖罪寄付の主な寄付先によるそれぞれのお金の使い道についても詳しく解説します。自分が寄付したお金がどのように使用されるのか?について知りたい人は、ぜひ参考にしてください。

さまざまな法律援助

弁護士会に贖罪寄付をした場合は、主に犯罪被害者の法律援助の費用として使用されます。

そもそも、弁護士は法律の専門家であり、法律に詳しくない一般の人をサポートするためにいます。たとえば、贖罪寄付を検討している犯罪加害者も法律に詳しくはない一般の人であるため、サポートをするための弁護人が付きます。

加害者の場合は、警察や検察の取り調べ、刑事裁判などさまざまな法律的な手続きが発生するため、刑事的に余裕がない人は国選弁護人が付く仕組みです。国選弁護人の場合は、加害者がお金を支払う必要はなく、基本的には無料で弁護活動を行ってもらえます。

一方で、犯罪被害者は犯罪加害者で言うところの国選弁護人のような制度がありません。経済的に余裕がない被害者の場合は、法テラスによる無料相談や弁護士費用の立替制度もありますが、利用できる人は限定的であるうえにあくまでも「立替」であるため返済義務が発生します。

本来、犯罪被害者である人たちが自分たちの身銭を削って弁護士に相談をしなければいけない仕組みがあるのです。そのため、経済的に余裕がない人は弁護士に相談をすることができず、結果的に不利な影響を受けてしまうこともあるのです。

そこで、犯罪加害者が贖罪寄付をすることによって経済的に支援し、自分の事件とは関係のない犯罪被害者が安心して法律的なサポートを受けられる仕組みを作っています。つまり、間接的に自分の事件とは関係のない被害者をサポートできるのが弁護士会への贖罪寄付です。

犯罪被害者の支援に使われる

犯罪支援団体に寄付をした場合、犯罪被害者の支援にお金を使われます。たとえば、贖罪寄付をできるような経済力がある加害者であれば良いですが、中には被害者に対する弁済すらも行えない加害者が多くいます。

そういった加害者から被害を受けた被害者を支援するための団体が被害者支援団体です。たとえば危険運転で両親を亡くし、幼い子供だけが残った場合、本来であれば犯罪加害者が被害者遺族(子ども)に対して賠償責任を負います。

しかし、支払い能力がなければ子どもの生活が危ぶまれてしまいまうため、犯罪支援団体がサポートをするケースがあるのです。サポートをする際の資金となるのが、贖罪寄付によって集められた寄付金であると言うことです。

また、犯罪被害によって「働くことが難しくなった」というケースもあるでしょう。こういった場合に、サポートをするケースもあります。

他にも、犯罪被害者の相談窓口として設置されている機関の職員に対する報酬や施設費等さまざまな場面で利用されるケースが多いです。そういったことに利用して欲しいと考える場合は、「犯罪支援団体」への贖罪寄付を検討しましょう。

いずれにせよ、まずは担当弁護人に贖罪寄付について相談をしたうえで、寄付先や寄付金額について検討してみましょう。

贖罪寄付をする流れ

贖罪寄付を検討されている人は、まず担当している弁護士への相談をします。その後、弁護士を通して寄付が行われ、領収書が発行される流れです。刑事事件において、贖罪寄付は情状を訴える際の材料の1つになります。そのため、可能であれば積極的に検討すべきでしょう。

次に、贖罪寄付をするまでの流れについて詳しく解説します。贖罪寄付を検討している人は、ぜひ参考にしてください。

弁護士へ相談をする

贖罪寄付を検討している人は、初めに弁護士へ相談をします。基本的に、贖罪寄付を検討している人は、犯罪被疑者であるため担当している弁護人がいるはずです。その担当弁護人に対して「贖罪寄付を検討している」と伝えれば良いです。

逮捕された被疑者の場合は、初めに当番弁護人を呼ぶことができます。当番弁護人は、「逮捕後に一度だけ」という制限があり、そもそも弁護活動を前提としている制度ではないため、当番弁護人に相談をしてもあまり意味がありません。

その後、基本的には私選弁護人を選任することになりますが、私選弁護人は実費です。そのため、経済的に余裕がない人は、国選弁護人を利用することとなるでしょう。国選弁護人は、勾留(身柄の拘束)されている被疑者の場合は勾留後、勾留されていない被疑者の場合は起訴後に付けられます。

そのため、刑事事件においては必ず弁護人がつけられるため、その弁護人に対して「贖罪寄付を検討している」と伝えれば良いです。

なお、先ほども解説したとおり贖罪寄付は、早めに相談をすることが大切です。そのため、経済的に余裕があるのであれば、早期に私選弁護人を選任したうえで「贖罪寄付を検討している」と伝えましょう。

ちなみに私選弁護人の場合は、自分のタイミングで自由に選任することができます。警察官等を通して「〇〇弁護士会の〇〇弁護士を呼んでほしい」と伝えれば良いです。必ず弁護人を呼んでくれるので安心してください。

逮捕直後は接見禁止がついているため、家族や友人等と接見(面会)できません。ただし、弁護人であれば、接見禁止であっても何度でもいつでも接見が可能であるため安心してください。

弁護士を通して寄付をする

弁護人へ贖罪寄付をしたい旨を伝え、申込用紙に必要事項を記入します。その後、弁護士を通して贖罪寄付が行われます。ここまでの流れとしては、以下のとおりです。

  1. 弁護人へ贖罪寄付の相談
  2. 寄付に関する必要書類の記入
  3. 弁護人が寄付金を預かる
  4. 弁護人が責任を持って寄付先へ寄付を行う

以上で贖罪寄付が完了します。その後のステップについてはこのあと解説しますので、ぜひ参考にしてください。

寄付証明書が発行される

寄付が完了すると、寄付先から「寄付証明書」と呼ばれるものが発行されます。寄付証明書には、寄付された寄付先の機関名や寄付金額について書かれています。

なお、寄付先によって処分や判決に与える影響が変わることはありません。ただし、金額によって贖罪の程度を判断されてしまう可能性があるため注意しましょう。

また、寄付先によって寄付証明書の発行までに1カ月程度の時間がかかってしまうケースがあるため注意しなければいけません。勾留されている被疑者の場合は、逮捕から23日間で起訴・不起訴の判断がなされます。

そのため、自分の事件や寄付金の使途のほか、寄付証明書の発行スピードについても確認したうえで寄付先を決定しましょう。

寄付証明書を検察官・裁判官へ提出する

寄付証明書が発行され次第、検察官や裁判官に対して提出します。贖罪寄付は、あくまでも「贖罪」の気持ちを前提に行う行為ではあるものの、結果的に処分や量刑判断へ影響を与える可能性があります。

そのため、少しでも影響を与える可能性があるのであれば、寄付証明書を提出したほうが自分にとっては良いでしょう。そのため、弁護人を通じて検察官や裁判官へ寄付証明書を提出します。

なお、先ほども解説したとおり、寄付証明書が必ずしも処分や判決に影響を与えるとは限りません。あくまでも「贖罪」を目的としている前提を忘れないでいましょう。

贖罪寄付に関するよくある質問

贖罪寄付に関するよくある質問を紹介します。

Q.贖罪寄付は弁護士を介さなければいけないのですか?

A.基本的には弁護士を介して行います。

贖罪寄付は、贖罪の意味を込めて何らかの団体や機関に寄付をすることを指します。贖罪寄付をすることによって、処分や判決で自分にとってもメリットを受けられる可能性があります。そのメリットを最大限活かすためにも、弁護士へ相談をしたほうが良いでしょう。

弁護士へ相談をすることによって、あなたにとって有利となるように弁護活動を行ってくれます。そのため、基本的には弁護士への相談を検討してください。

ただし、絶対に弁護士を通さなければいけないのか?と言えば、そのようなことはありません。弁護士を介すことによって、弁護士費用も発生するため、経済的な事情で弁護士への相談が難しい人もいるでしょう。

そういった人はたとえば、法テラスへの贖罪寄付を検討している場合は、その旨を法テラスへ直接相談することで案内を受けられます。

その他の団体も希望すれば案内を受けられることもあるため、まずは寄付先に直接相談をしてみても良いです。ただ、先ほども解説したとおり、メリットを最大限に活かすためには、弁護士への相談が必要となるため検討されたほうが良いでしょう。

Q.贖罪寄付は、処分・量刑判断にどの程度の影響を与えますか?

A.事件の内容等によっても異なるため、一概には言えません。

そもそも贖罪寄付は、被害者に関係のないところで行われる「寄付」です。寄付は、何らかの見返りを求めて行うものではないのが前提であるため、過度に期待をしないほうが良いでしょう。

また、法律的に「贖罪寄付をすることによって〇〇程度の減刑を見込める」といってしまえば、経済力のある人が有利になってしまいます。たとえ残忍な事件を犯した凶悪犯罪者でも多額の資金を寄付することによって大幅に減刑されてしまえば意味がありません。

そのため、あくまでも「寄付」であることを理解したうえで、過度な期待は持たないようにしましょう。

そして、贖罪寄付をしても被害者に直接関係のあることではないため、あくまでも検察官・裁判官に対する心象を良くするための材料にすぎません。被害者の処罰感情が厳しければ、その部分も考慮されるため注意しておきましょう。

Q.経済的な余裕はないのですが、贖罪寄付を検討しています。少額でも良いですか?

A.金額に決まりはないため、いくらでも構いません。

贖罪寄付はあくまでも「寄付」であり、金額が決められているものではありません。極端な話をすると、数百円〜数千円でも寄付は可能です。ただし、贖罪寄付の金額相場はある程度決められているため、その範囲内であることが好ましいでしょう。

そもそも、贖罪寄付は被害者がいない事件や被害者がいる事件で示談交渉が上手くいかなかった場合などに検討されるものです。被害者がいない事件である場合は、自分が思う程度で良いでしょう。

被害者がいて示談が成立しなかった場合に贖罪寄付を検討する場合は、示談金相当額を寄付するのが妥当です。「相手に対する謝罪」を金額で表して寄付を検討しましょう。

なお、金額の大小が処分等へ影響を与える可能性は低いです。極端に高い金額を支払ったとしても、それで大幅に減刑されるようなことはありません。なぜなら、経済力のある人が犯罪を犯して贖罪寄付によって大幅減刑されてしまえば、刑法として成立しなくなってしまうためです。

また、極端に金額が少ない場合は、逆に贖罪寄付をする意味がないためそもそも検討しないほうが良いでしょう。

Q.示談をしたうえで贖罪寄付をしても良いですか?

A.示談をしたうえで贖罪寄付をしても問題はありません。

示談と贖罪寄付は、まったく別のものであるためどちらを行っても良いです。ただし、いずれかを選択する場合は、必ず示談を優先してください。

被害者のいる事件の場合、示談の交渉成立有無が処分や量刑判断に大きな影響を与えます。被害者と示談交渉が済んでいる場合は、被害者の処罰感情も薄れているため、結果的に有利な処分や判決を受けられる可能性が高いです。

また、示談が成立している場合は、あえて贖罪寄付を検討する必要はないでしょう。示談が成立している時点で相当有利な処分や判決を受けられる可能性が高く、贖罪寄付をするメリットが限定的であるためです。

たとえば、示談が成立していることによって不起訴処分となる見込みがある被疑者の場合、あえて贖罪寄付をする必要はありません。なぜなら、不起訴処分よりも軽い処分はないためです。

「損得勘定なしに贖罪寄付をしたい」と考えている人は、示談を成立させたうえで贖罪寄付を検討しても良いでしょう。なお、示談が成立しなかった場合は、供託や贖罪寄付といった選択肢を検討することになります。

まずは、担当している弁護士へ相談をしたうえで贖罪寄付の有無についても検討してみると良いでしょう。

Q.贖罪寄付の寄付先は決められているのですか?

A.贖罪寄付の寄付先は決められていませんが、ある程度決められていると思っておきましょう。

贖罪寄付はあくまでも「寄付」であり、任意であることから寄付先は決められていません。自由に決定して良いです。ただし、基本的には犯罪被害者に使用される寄付先に寄付をしなければ意味がありません。そのため、実質的にある程度決められていると思っておいたほうが良いでしょう。

たとえば、贖罪の意味を込めて寄付をすることは、ある意味贖罪寄付と言えます。そのため、震災地に寄付を検討している人もいるかもしれません。

しかし、刑事事件において震災地に寄付をしたところで意味はありません。そのため、基本的には弁護士会や被害者支援団体といった、犯罪被害者に対する間接的な寄付ができる場所を検討すべきです。

まとめ

今回は、贖罪寄付について解説しました。

贖罪寄付とは、犯罪加害者が犯罪被害者を間接的に助けるために行われる「寄付」のことを指します。贖罪寄付をすることによって、検察官や裁判官に少なからず良い印象を与えることとなります。

結果的に自分にとって有利な判決や処分を受けられる可能性が高まるため、検討する余地はあるでしょう。

とはいえ、もっとも優先すべきは被害者との示談成立や被害弁償です。これらが上手くいかなかったり、そもそも被害者がいない事件である場合に贖罪寄付を検討すべきです。

贖罪寄付を検討する場合は、さまざまなメリットがある一方でいくつかの注意事項もあるため、まずは弁護士への相談を検討しましょう。金額面やメリットなど、さまざまな事情を考慮したうえで決定してください。

刑事事件でお悩みの場合はすぐにご相談ください。

刑事事件で重要なのはスピードです。ご自身、身内の方が逮捕、拘留されそうな場合はすぐにご相談ください。

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