供述調書とは、警察等の捜査機関が被疑者や参考人に対して行う取り調べの際に作成される書類です。供述調書は「証拠」として扱われるため、しっかりと確認をしたうえで作成してもらう必要があります。
もし、誤った供述をした場合やニュアンスが異なる場合は、訂正を求めることが可能です。この記事では、供述調書の訂正方法や取り調べを受ける際の注意事項について解説しています。これから取り調べを受ける人は、ぜひ参考にしてください。
目次
供述調書とは
供述調書とは、警察等の捜査機関が被疑者や参考人等に取り調べを行った際に得られた証言を、書面にしたものを指します。供述調書は、刑事裁判において「証拠」として扱われてしまうため、良くも悪くも注意が必要です。
まずは、そもそも供述調書とは何か?について、詳しく解説します。供述調書の訂正方法を確認するうえで、とても重要な内容であるため、ぜひ参考にしてください。
証言をまとめた供述証拠
供述証拠とは、被疑者や参考人等、警察等の捜査機関から取り調べを受けた人が供述した内容を書類にまとめたものです。
被疑者とは、犯罪の疑いを掛けられている人のことを指します。逮捕された人のみならず、在宅捜査で取り調べを受けている人も被疑者になります。
参考人とは、その事件について何らかのことを知っている可能性が高い人です。参考人の種類は、「重要参考人」と単なる「参考人」の2種類あります。前者は犯罪の疑いを賭けられている可能性が高い人、後者は、被疑者や被告人(起訴された人)以外の者を指します。
被疑者や参考人は、警察等の捜査機関から取り調べを依頼されることがあります。取り調べに応じた際は、その人が話した内容を自分が話しているような形で書面にまとめます。
たとえば、殺人の犯人である場合に「私が〇〇をやりました」と、具体的な話をしたとしましょう。この場合、供述調書には「私は、◯月◯日〇〇で被害者である〇〇の腹部を包丁でさし、殺害しました」といったように自分が話した内容がそのまま供述調書に書かれます。
上記のように話した内容は、刑事裁判において「証拠」として扱われます。否認事件である場合は、否認している事実として証拠になりますし、罪を認めている場合は「自白証拠」として扱われるため、慎重に供述する必要があるのです。
供述調書は「証拠」として提出される
供述調書は、良くも悪くも「証拠」として残る点に注意が必要です。たとえば、実際に罪を犯していたにも関わらず、「私はやっていません」と供述していた場合、それが証拠として残ります。
その他証拠があり、あなたが罪を犯したことが明らかである場合は、「実際に罪を犯しているにも関わらず、嘘の供述をしている」と見なされてしまう恐れがあるのです。結果的に、反省していないなどと見なされて、厳しい判決が下されてしまうことになるでしょう。
一方で、初めから罪を認めていた場合は、「罪を認めて反省している」という見方もできます。つまり、良くも悪くも供述調書が証拠として扱われ、判決等に影響を与えるということです。
なお、「私がやりました」と供述して作成された供述調書は、自白証拠として扱われます。自白証拠は、罪を認めたという事実が証拠として扱われるため、有力な証拠となる可能性が高い点に注意しましょう。
供述調書の訂正方法
供述調書は、訂正ができる書類です。ただし、供述調書にサイン・押印をしてしまった場合は、原則訂正できなくなる点に注意が必要です。次に、供述調書の訂正方法について詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
供述調書の訂正は原則可能
供述調書の訂正は可能です。供述調書を訂正する場合は、取り調べを行っている警察官等に「違います」と伝えるだけで訂正してもらえます。
まず、供述調書の作成の流れとして、取り調べます。取り調べと同時に警察等の捜査機関が供述調書を書きます。最後に供述調書に書かれた内容を読み上げ、間違いがなければサイン・押印をするまでが一連の流れです。
そのため、訂正をする場合は最後の読み上げの際に「〇〇とは言っていません」「〇〇と書いてください」のように伝えればその場で訂正してもらえます。また、供述調書を作成している間も「〇〇で良いか?」といった確認が行われるため、このときに指摘しても良いです。
あなたが話した内容を他の人が供述調書として書くため、ニュアンスの違い等が発生する可能性があります。そのため、訂正を求める場合は必ず読み上げ時に「〇〇と書いてください」などと伝えましょう。
サイン・押印後は原則訂正ができない
供述調書は、取り調べ終了時に読み上げを行ってサイン・押印を求めます。サイン・押印をした場合は、その後の訂正が原則できないため注意してください。
原則というのは、違法捜査等による場合は証拠として扱うことができないためです。そのため、違法捜査等による供述調書ではない限り、訂正できないことに注意しましょう。
なお、供述調書にサイン・押印をしたあとに証言を変えても良いです。たとえば、初めは罪を認めてサイン・押印をしたけど、やっぱり「やっていません」と供述を変えても良いです。
この場合、罪を認めた事実も証拠として扱われますし、後に「やっていない」と否認した事実も証拠として扱われます。当然、裁判では「なぜ、一度罪を認めたにも関わらず、後からやっていないと証言を変えたのですか?」と問われることになるでしょう。
サイン・押印をした場合は、どのような場合であっても「証拠」として扱われてしまうことに十分注意しましょう。
違法捜査による場合は証拠として扱われない
供述調書は、一度サイン・押印をした場合は証拠として扱われます。その後の訂正は、できません。しかし、違法捜査による場合は供述調書を「証拠」として扱うことはできないため覚えておきましょう。
違法捜査とは、たとえば「警察等に脅されて自白をした」というような場合です。他にも、長時間にわたる取り調べ、トイレに行かせない、食事を与えないなどの行為を指します。いわゆる自白の強要です。
「お前がやったんだろ?自白をしなければ、〇〇するぞ」などと脅す行為も違法捜査に該当します。このような状況下で自白をした場合は、違法捜査による供述となるため、証拠としては扱われません。
もし、上記のようなことがあって自白を強要されたのであれば、担当している弁護士へ相談をしたうえで対応を検討しましょう。
供述調書作成の流れ
供述調書作成の流れは以下のとおりです。
- 弁解録取書の作成
- 身上経歴調書の作成
- 供述調書の作成
初めに逮捕もしくは警察等からの呼び出し、任意聴取が行われます。逮捕という行為は、「被疑者の身柄を強制的に拘束する手続き」であり、罪を犯したからといって必ずしも行われるわけではありません。
また、被疑者ではない場合はそもそも逮捕されることはありません。警察等から連絡が来て任意という形で聴取が行われます。まずは、聴取の対象となった人が実際に供述調書を巻かれるまでの流れについて、詳しく解説します。
1.弁解録取書の作成
事情聴取を受けた場合は、初めに「弁解録取書(べんかいろくしゅしょ)」というものを作成するのが一般的です。弁解録取書とは、簡単に言えば犯罪に関する認否についての確認です。
まずは、警察等の捜査機関から「〇〇の事件で、〇〇容疑で逮捕状が発布されており、逮捕しました」といった内容の話を聞きます。この事件について、罪を認めるのか、罪を認めないのかを話し、記録としてまとめます。
弁解録取書は、通称「弁録(べんろく)」とも呼ばれます。弁解録取書に費やされる時間は、おおよそ10分〜15分程度と短時間です。主に、被疑者の弁解をする機会ではあるものの「罪を犯したかどうか」「被疑者の簡単な言い分」についてまとめた書類の作成をする流れです。
なお、弁解録取書も最終的にサイン・押印をすることによって証拠として扱われるため、訂正する場合はサイン・押印前に必ず申し出ましょう。
2.身上経歴調書の作成
次に、身上経歴調書というものを巻きます。身上経歴調書とは、被疑者であるあなたがこれまでどのような生活を送ってきたのか?についてまとめた調書です。簡単に言えば、調書形式の履歴書であると考えれば良いです。身上経歴調書も調書の一種であり、証拠としても扱われます。
身上経歴調書では、以下のことについて記載されます。
- 出身地
- 職業
- 家族関係
- 生活状態
- 前科・前歴
等
身上経歴調書を作成する目的は、被疑者がこれまでどのような生活を送り、どのような交友関係があるのか?などについて把握するためです。これまでの生活が犯罪に与えた影響などを把握するためにも、必要な調書となります。
3.供述調書の作成
次に、犯罪の内容についての供述調書を作成します。被疑者や取り調べに応じている人は、警察官等に聞かれたことについて回答すれば良いです。たとえば「〇〇ですか?」と聞かれ、間違いがなければ「はい、そうです」と答えれば、後は警察官等で供述調書を作成します。
供述調書が作成された最後に読み上げられ、「間違いがないか?」と尋ねられます。このとき、自分が話した内容とは異なることが書かれていた場合は、訂正をしましょう。また、伝わり方の違いによるニュアンス的な問題もあります。この場合も、訂正を求めましょう。
本記事で何度もお伝えしているとおり、供述調書は「証拠」として扱われるため、良くも悪くも判決へ影響を与える恐れがあります。そのため、自分が納得するまで何度でも訂正を求めましょう。
なお、取り調べを行うのは警察官のみではなく検察官も行います。通常は、送致されたあとに検察官からの取り調べが行われることを覚えておきましょう。
供述調書の注意事項
供述調書の作成をする際の注意事項として、以下のことが挙げられます。
- ニュアンス次第で印象が変わる
- 供述調書は「証拠」となることを意識
- 誘導に乗るのは避けるべき
次に、供述調書作成時の注意事項について解説します。これから取り調べを受ける人は、解説する内容を参考にしてください。
ニュアンス次第で印象が変わる
供述調書は、ニュアンス次第で印象が変わります。供述調書は、話す人と書く人が異なります。そのため、取り調べの対象者となっている人が話した内容とは、若干異なる内容で書かれてしまう可能性があります。
提出される供述調書は、話した内容ではなく書かれている内容で提出される点に注意が必要です。若干のニュアンスの違いであっても、裁判官等に与える影響は大きいです。
そのため、最後に供述調書を読まれた際に少しでも、自分が話した内容と異なる印象を受けたり、ニュアンスが異なったりする場合は訂正を求めましょう。話を聞いて書く側の人も、話し手の話した内容を最大限そのまま記載するよう努力はしています。
しかし、うまく伝わらずにニュアンスが変わってしまう可能性もあるため、必ず供述調書の内容をよく確認したうえで、必要であれば訂正を求めてください。
供述調書は「証拠」となることを意識
本記事で何度もお伝えしているとおり、供述調書は良くも悪くも「証拠」として扱われます。ニュアンス一つで印象が変わり、刑罰へ影響を与える可能性があることも注意しなければいけません。
取り調べを受けている間は、常に「自分の話している内容が証拠となる」ということを意識しておきましょう。たとえば、罪を犯していないのであれば、一貫して「罪を犯していない」と言い続ける必要があるでしょう。
もし、罪を認めて反省しているのであれば、しっかりと反省している態度を示すことが大切です。すべて、「証拠」として扱われるため注意してください。
誘導に乗るのは避けるべき
供述調書においては、警察等の捜査機関から誘導される可能性があります。取り調べにおける誘導とは、期待する供述をさせるための質問をすることです。
たとえば、あなたの記憶が曖昧であるにも関わらず「〇〇じゃないのか?」「〇〇だったのではないのか?」などといった質問をしてくることがあります。そこであなたが「そうだったかもしれないです」などと答えたとしましょう。
上記の場合、供述調書では「私は、〇〇をしました」などのように書かれます。そもそも、警察等の捜査機関はあなたが犯人であると仮定しています。そのため、自白が欲しいために「〇〇ではないか?」などと言った質問の仕方をするのです。
あなたの記憶が曖昧であれば、曖昧な回答をするでしょう。しかし、捜査官は「〇〇をしました」などと断定的な書き方をするのです。そのため、誘導質問に乗るのではなく、わからないものは「わかりません」と答えたり、供述調書の訂正を求めたりすることがとても大切です。
供述調書の内容が違う場合の対処法
供述調書の内容が違う際の対処法は、以下のとおりです。
- 焦らずにしっかり対応する
- 訂正を求める
- サイン・押印をしない
- 弁護士へ相談をする
次に、供述調書の内容が違う場合の対処法について解説します。先ほども解説したとおり、供述調書はサイン・押印をした場合は基本的に訂正できません。そのことを念頭においたうえで、これから解説する内容を元に訂正を求めてください。
焦らずにしっかり対応する
何度もお伝えしているとおり、供述調書は「証拠」として扱われます。そのため、「証拠となる」ということを頭に入れたうえで焦らずにしっかり対応することがとても大切です。
中には、「早く取り調べを終わらせたい」と考え、誘導質問に乗ったり供述調書をよく確認したりしないでサイン・押印をしてしまう人がいます。これらの対応は、自分にとって不利な判決等を受ける可能性があるため注意しましょう。
取り調べは一日8時間以内と決められています。そのため、どれだけ長くても8時間以内に終了します。そのことも覚えておいたうえで、適切に対応するよう心がけてください。
訂正を求める
供述調書に誤りがある場合は、訂正を求めましょう。サイン・押印をした後では基本的に訂正することはできません。そのため、必ず供述調書の作成途中もしくは最後に訂正を求めてください。
途中であっても「〇〇で良いのか?」などと聞かれることがあります。「言っていることは間違えていないけど、ニュアンスが違う」という場合であっても、面倒くさがらずに「〇〇と書いてください」のように伝えましょう。
サイン・押印をしない
基本的に、警察等の捜査機関における取り調べにて、最後の読み上げで訂正を求めればその場で訂正をしてもらえます。しかし、もしも訂正をしてもらえなければ、絶対にサインや押印をしてはいけません。
何度もお伝えしているとおり、サイン・押印をしてしまうとその供述調書が「証拠」として完成してしまいます。証拠となれば、良くも悪くも判決や処分へ影響を与えるため注意しましょう。
自分が納得できるまで、何度でも訂正を求め、「この供述調書で良い」と納得できた場合に初めてサイン・押印してください。
弁護士へ相談をする
供述調書の訂正を求めるにあたって、不明な点等がある場合は弁護士への相談を検討してください。不明な点があるままでサインや押印は絶対にしないようにしましょう。
逮捕されている被疑者であれば、一度だけ無料で弁護人を呼べる制度(当番弁護人制度)があります。有料であれば、いつでも弁護人を呼ぶことができます。弁護士であれば、接見禁止中や取り調べ中であっても接見(面会)することが可能です。
そのため、不安が残る場合や不満がある場合は、必ず弁護士へ相談をしたうえで供述調書へのサイン・押印をするようにしましょう。
供述調書が食い違う主な原因
供述調書の内容が食い違う主な原因は以下のとおりです。
- 認識の相違
- ニュアンスの違い
警察等の捜査機関は、あなたを陥れようとして「自分たちにとって有利な言い分を供述調書にまとめよう」と考えているわけではありません。取り調べに不慣れな被疑者等と日々、取り調べを行っている捜査官、それぞれが話し手と書き手になっているため、相違が発生してしまうことは致し方のないことでもあります。
そのため、被疑者として対応できるのは、「しっかり訂正を求めること」「サイン・押印を安易にしないこと」の2つです。次に、供述調書の内容が食い違ってしまう主な原因について解説しますので、ぜひ参考にしてください。
認識の相違
認識の相違によって、書き手側で脳内変換してしまっている可能性があります。たとえば、あなたは「罪を認めるけど、自分にとって有利な証言をしよう」と考えていたとしましょう。
一方で捜査官は、「罪を認めた」という認識のもとで、「以下に証拠を集めるか」という方向で考えます。そこで、認識の相違が発生してしまうケースが考えられます。
たとえば、殺人事件において殺意の有無は成立する犯罪にも大きな影響を与えます。しかし、被疑者が「殺すつもりはなかった(実際に殺すつもりはなかったとしましょう)」と供述をしていたとしましょう。
そこで捜査官が、「殺すつもりはなかったが、死んでしまっても仕方ないと思っていたか?」などと聞いてくることがあります。
そこで「はい」と答えてしまうと、供述調書には「殺すつもりはなかったが、死亡してしまう可能性を認識し、〇〇を刺した」などのように記載します。捜査官は、「殺意の有無」を確認したいため、上記のような質問をします。
捜査官は「殺意があった」という認識を持っている可能性があり、その前提で話を進めるため、上記のような認識の相違が発生します。
ニュアンスの違い
ニュアンスの違いによって、印象は大きく変わります。たとえば、「殺すつもりはなかったが、怒りで我を忘れ、結果的に殺害する結果に至ってしまった」と証言をしたとしましょう。
しかし捜査官が、供述調書へ「殺すつもりはなかったが、結果的に殺害してしまう結果となった。また、その結果も予見できていたが、怒りで我を忘れて殺害してしまった」と書いたとします。
一見すると同じような供述ないように見えますが、前者は「殺意の否認」をしている一方で、後者は「結果の予見」をしています。
たとえば上記例の場合、「被害者を殺害した」という結果では同じです。しかし、殺意がなければ「傷害致死罪」、殺意が認められれば「殺人罪」が成立します。それぞれの法定刑は以下のとおりです。
罪状 | 法定刑 |
---|---|
傷害致死罪 | 3年以上の有期懲役(最長20年) |
殺人罪 | 5年以上の懲役・無期懲役・死刑 |
上記のとおり、成立する犯罪の種類によって下される刑罰は大きく異なります。仮に「殺す気はなかった」と殺意を否認しても、結果を予見できているにも関わらず、その行為を行った場合は「未必の故意」が成立し、殺人罪に問われます。
そのため、殺人罪で逮捕された場合は、「被疑者に殺意がある」という前提のもとで取り調べが行われるのです。結果的に、上記のようなニュアンスの違いが発生してしまうことになります。
供述調書にサインする前にチェックすべき3つのポイント
供述調書は、最後にサイン・押印をして初めて証拠として成立します。そのため、サインや押印をする前に必ず以下のポイントを確認しておきましょう。
- 記載されている内容
- 相違がある場合はサイン前に指摘
- サインした後は「証拠」となることを覚えておく
次に、供述調書へサイン・押印をする前にチェックすべきポイントについて詳しく解説します。
記載されている内容
供述調書は、最後に書かれた内容を読み上げてサイン・押印をして終了します。つまり、最後の読み上げが終了すれば、その日の取り調べも終了するということです。そこで「早く終わらせたい」という一心で、聞き流してサイン・押印をしてしまうことがあるかもしれません。
しかし、証拠として扱われる以上、一語一句、ニュアンスの違い等がないか?についてよく確認をする必要があります。サイン・押印をしてしまえば訂正することはできません。少しでも気になる点があった場合は、必ずその場で訂正を求めてください。
相違がある場合はサイン前に指摘
相違がある場合は、サインをする前に指摘をしましょう。読み上げの途中、供述調書を書いている途中でも構いません。自分が納得できるまで、何度でも指摘し、訂正を求めてください。
サインした場合は「証拠」となることを覚えておく
供述調書を巻かれている最中、最後の読み上げまで、常に「サイン・押印後は証拠になる」ということを忘れずにいましょう。適当に対応していると自分にとって不利な供述調書が作成されてしまう恐れがあるため注意してください。
サインした供述調書が証拠にならないケース
サイン・押印した供述調書であっても、以下に該当する場合は証拠として扱われません。
- 長時間に及ぶ取り調べによって作成
- 脅迫によって作成
- 利益供与によって作成
一言でまとめるならば、「違法に作成された供述調書は証拠にならない」と考えておけば良いです。そのため、これからどのようなことが違法なのか?について解説しますので、参考にしてください。
長時間に及ぶ取り調べによって作成された
長時間に及ぶ取り調べによって作成された供述調書は、証拠として成立しません。取り調べの上限は1日8時間と決められています。この時間を超える取り調べを行うことは違法であり、許されません。
そもそも、いつ終わるかわからない取り調べを受けていた場合、「自分が不利になっても良いから、相手の求めることを供述して早く終わらせよう」と考えてしまいます。このような状況になること自体が許されるべきではありません。
上記のことから、長時間の取り調べによる供述調書は違法となり、証拠として扱えなくなります。
脅迫によって作成された
脅迫によって作成された供述調書も違法であり、証拠としては扱われません。脅迫とは、「大きな声を出す」「脅かす」「暴力を振るう」といった行為が該当します。恐怖に乗じて被疑者にとって不利な供述をする行為は禁止です。
現在は、多くの取り調べでカメラが設置されているため、違法な取り調べは行われないのが通常です。しかし、すべての事件の取り調べでカメラ設置が行われているわけではないため、脅迫等が起こる可能性がゼロではありません。
もし、不当な取り調べを受けてサイン・押印をしてしまった場合は、必ず弁護士へ相談をしてください。
利益供与によって作成された
利益供与とは「〇〇してくれたら〇〇するよ」といった内容のことを伝えた場合に成立します。この場合も、違法捜査になるため、証拠として扱われません。
たとえば、「サインしてくれれば、すぐに終わる」「トイレに行きたければサインしなさい」などという行為です。これらの元でサイン・押印をしてしまった場合は、必ず弁護士へ相談をしましょう。
供述調書の訂正方法に関するよくある質問
供述調書の訂正方法に関するよくある質問を紹介します。
Q.取り調べを早く終わらせたくて、署名・押印をしました。これから訂正することは可能ですか?
A.違法性がなければ、訂正をすることはできません。
たとえば、長時間にわたる取り調べを受けており、早く終わらせるためにサイン・押印をした場合はその供述調書は証拠になりません。また、「早く終わらせたければサイン・押印をしてください」などと言われた場合も利益供与となり、証拠にはなりません。
上記以外であれば、基本的に訂正を求めることはできません。なお、供述を変えることはできます。たとえば、初めは罪を認めていたものの、後から否認するといったことが可能です。
もちろん、裁判において「なぜ初めは罪を認めていたのに、後から否認したのですか?」などと聞かれます。また、認めた供述調書も否認した供述調書も証拠として扱われるため注意しましょう。
Q.違法捜査とはどのような取り調べを指しますか?
A.法令に違反した取り調べを指します。
違法捜査とは、法令に違反した取り調べを指します。具体的には、以下のような取り調べが該当します。
- 長時間の取り調べ
- トイレに行かせない、食事を与えない
- 脅迫・暴行を加える
- 利益供与
等々
少しでも「違法ではないか?」と思った場合は、サイン・押印をせずに弁護士へ相談をしてください。捜査官からサインや押印を強制することもできません。
なお、過去には黙秘権を行使している被疑者に対して、暴言を吐き、違法であると認められた事例があります。些細なことでも不安が残る場合は、必ず弁護士へ相談をしたうえで対応を確認してください。
Q.警察と検察で異なる証言をした場合、証拠としてどのように扱われますか?
A.それぞれの証拠として扱われます。
たとえば、警察では素直に罪を認めてすべて証言をしていたとしましょう。その後、方針を変えて検察での聴取では否認を続けていたとします。それぞれで証言された内容が証拠として扱われます。
たとえば、警察での聴取時に「脅されて自白を強要された」という事実がある場合は、証拠としては扱われません。一方で、このような状況がなかった場合は、証拠として扱われます。
裁判においては、供述証拠のみならずさまざまな証拠を元に罪を犯したかどうかについて審理していきます。そのため、たとえば警察では罪を認めていたものの、その供述に信憑性がなく、検察で話した内容の信憑性が高い場合は、そちらを信用します。
Q.弁護士へ相談をすれば供述調書の訂正は可能ですか?
A.弁護士への相談有無に関わらず、サイン・押印前であれば訂正が可能です。
供述調書の訂正を求める場合は、サイン・押印前であることが条件です。サイン・押印前に訂正を求める場合は、弁護士への相談が必須ではありません。
また、サイン・押印後の訂正はできないため、仮に弁護士へ相談をしても訂正してもらうことはできません。ただし、違法な取り調べが認められる場合はこの限りではありません。
Q.取り調べを受ける前に弁護士へ相談をすることは可能ですか?
A.可能です。
取り調べを受ける前に弁護士へ相談をする場合は、基本的に私選弁護人となります。私選弁護人は、自分で費用を支払わなければいけないため注意しましょう。弁護士であれば、接見禁止中(面会禁止)であっても接見可能です。
ただし、弁護士を呼んだからといって数分〜数十分以内に来てくれるとは限りません。その間に取り調べが行われます。そのため、弁護士が来るまでは黙秘権(話さなくても良い権利)を行使し、「弁護士が来てから話ます」のように伝えても良いです。
まとめ
今回は、供述調書の訂正について解説しました。供述調書は、サイン・押印をした時点で証拠として扱われます。ニュアンスの違い一つで印象を変え、裁判へ影響を与える可能性もあるため注意しなければいけません。
今回解説した内容を踏まえ、供述調書の重大性を把握したうえで取り調べに応じるようにしましょう。