防犯カメラは、防犯目的で設置されているケースがほとんどです。しかし、カメラに映っている映像のみで証拠能力を有しているとは限りません。
この記事では、防犯カメラの証拠能力や証拠能力をあげるためにできることなどについて詳しく解説しています。防犯カメラの証拠能力について知りたい人は、ぜひ参考にしてください。
防犯カメラの証拠能力
防犯カメラに映された映像は、基本的には証拠として利用できます。しかし、カメラ映像のみでは、証拠能力としては不十分であるケースがあるため注意しなければいけません。
まずは、防犯カメラの証拠能力について詳しく解説します。
映像を証拠として利用できる
防犯カメラに残された映像は、証拠として利用できる可能性があります。ただし、証拠として利用するためには、証明したい事実を鮮明な状態で撮影されていることが条件です。
たとえば、窃盗事件(万引き)の場合は、万引きをした明らかな姿が映っていなければいけません。不鮮明で人を特定できないような場合は、証拠能力としては不十分であるため注意しましょう。
あくまでも、映っている姿が鮮明で犯行状況が明らかに確認できる場合に防犯カメラ映像が証拠となります。
カメラの映像のみでは証拠能力として不十分
カメラの映像のみでは証拠能力として不十分であるケースが多いです。なぜなら、鮮明に記録されているケースが少なかったり、死角になって犯行状況を録画できていなかったりするケースが多いためです。
そのため、必ずしもカメラの映像のみで証拠として扱ってもらえるものではないことを覚えておきましょう。
とはいえ、一部防犯カメラの映像が証拠として利用されるケースもあります。たとえば、犯人として疑われているが犯行現場を歩いている姿が撮影されていた場合、「犯行日時にその場所にいた可能性が高い」という裏付けが取れます。
他にも、轢き逃げや当て逃げ事件の場合、防犯カメラの映像を辿ることによって逃亡ルートを大まかに把握することが可能です。このように、防犯カメラの映像が少なからず証拠として扱われ、犯人検挙につながるケースもあるのです。
必ずしも万能なものではないものの、少なからず証拠能力を有するため、防犯カメラは必要な設備であると言えるでしょう。
防犯カメラの映像のみで証拠能力不十分となるケース
先ほども紹介したとおり、防犯カメラの映像のみでは証拠能力として不十分であるケースがあります。主に、以下のケースの場合は証拠能力が不十分となるため注意しなければいけません。
- 解像度不足による識別困難
- 保存期間・データ・保存日時の欠落
- しかく・設置位置の不適切さ
次に、防犯カメラの映像が証拠能力不十分であると判断されてしまうケースについて詳しく解説します。
解像度不足による識別困難
防犯カメラを証拠として扱うためには、行為や人が識別できなければ意味がありません。解像度が不足し、人を特定できないような場合は、防犯カメラの映像のみで犯行を特定することができず、結果的に他の証拠も必要となります。
解像度の低い映像であっても、ある程度は解像度を上げられることはあります。しかし、解像度を上げられたとしても、あくまでも犯行や人を特定できる状態でなければ意味がないことを覚えておきましょう。
保存期間・データ・保存日時の欠落
防犯カメラの映像を記録していたとしても、保存期間が短く、確認したいときに確認できなければ意味がありません。防犯カメラの映像は、長時間にわたって録画されるため、上書きされる仕組みのものが多いです。
上書きされる防犯カメラの場合は、時間の経過に伴って古いデータから削除されていきます。結果的に、防犯カメラを確認したいときに確認できないということが起こり得ます。
そして、データの保存欠落の可能性もあります。たとえば、SDカードの破損によって録画できていなかったということがあるため注意しなければいけません。こまめに確認をし、何かあった際に確認できるようにしておく必要があります。
そして、保存日時が記録されていなければ、証拠として扱えなくなる可能性もあるため注意しなければいけません。多少のずれであれば問題がないものの、日時の記載がない、数時間〜数カ月単位で時間がズレているような場合は要注意です。
死角・設置位置が不適切
防犯カメラの設置場所が不適切であり、死角ができてそこで犯行が行われていた場合、防犯カメラの映像を確認しても意味がありません。当然、証拠としても扱えません。
防犯カメラを設置する際は、可能な限り広範囲を撮影できるような状態にしておくことが好ましいです。
防犯カメラの証拠能力を高めるためにできること
防犯カメラの映像は、撮影方法次第で証拠能力を有します。少しでも、防犯カメラの映像の証拠能力を高めるためには、以下のことを検討しておきましょう。
- 解像度の高いカメラを設置
- 死角・設置位置に注意
- 録画日時が記録されるようにしておく
- 大容量録画できる状態にしておく
次に、防犯カメラの証拠能力をあげるためにできることについて詳しく解説します。
解像度の高いカメラを設置
可能な限り解像度の高いカメラを設置しておきましょう。
防犯カメラの映像を証拠として扱うためには、鮮明に犯行や人が映っていなければいけません。そのため、解像度の低いカメラで撮影をしてしまうと、識別できずに証拠として扱うことができません。
そのため、可能な限り解像度の高い防犯カメラを設置しておくことをおすすめします。とはいえ、解像度の高いカメラを設置した場合、その分、容量も大きくなってしまいます。そのため、バランスを考慮しながら防犯カメラを選択する必要があります。
死角・設置位置に注意
防犯カメラの種類によって、撮影できる範囲が限定されています。可能な限りすべてを網羅するために、広範囲の撮影が可能なカメラの導入を検討したり、設置場所を意識して死角を可能な限り減らしたりするなどの工夫が必要です。
必要に応じて、複数台の防犯カメラ導入も検討したほうが良いでしょう。
録画日時が記録されるようにしておく
かならず、録画日時が記録されるように設定しておきましょう。また、定期的に時間のズレを確認したり修正したりすることも大切です。
防犯カメラの日時と犯行日時に大きな差がある場合、せっかく撮影できていた映像でも証拠として扱えなくなってしまう恐れがあるためです。定期的に確認することを忘れずにしておくことも大切です。
大容量録画できる状態にしておく
可能な限り、大容量の録画をできる状態にしておくことが好ましいです。録画データの上書きや、容量不足による撮影不可などさまざまなことが懸念されます。
そのため、常に大容量の録画ができる状態にしておくことを意識しましょう。不要なデータは適宜削除したり、新たなSDカードを用意しておくなどの対策が必要です。
防犯カメラの証拠能力に関するよくある質問
防犯カメラの証拠能力に関するよくある質問を紹介します。
Q.防犯カメラの映像はプライバシー侵害にならないのですか?
A.基本的にはなりません。
防犯や監視などを目的としたカメラの設置は、プライバシーの侵害にはなりません。プライバシー侵害となるケースは、撮影データを公表した場合です。また、警察等の要望によって防犯カメラの映像を提供する行為もプライバシー侵害にはなりません。
Q.一般の人が店舗のカメラ映像を確認させてもらうことはできますか?
A.基本的には難しいでしょう。
防犯カメラの映像は、一般の人も映されているケースが多いです。そのため、何らかの目的があったとしても、店舗に設置された防犯カメラの映像を確認させてもらうことはできません。
また、警察であっても店舗に設置された防犯カメラの映像を確認できるとは限りません。あくまでも、店舗側の任意提出という形になります。強制的にカメラ映像を確認するためには、捜索するための令状が必要となります。
とはいえ、基本的に警察官から防犯カメラの映像提出を求められた際は、応じたほうが良いでしょう。
Q.防犯カメラの映像を開示請求することはできますか?
A.開示を求めることは可能です。
防犯カメラの映像を開示するよう求めることは誰でも可能です。ただし、一般人に対して開示するケースはほとんどありません。たとえば、「配偶者の浮気を確かめたいから防犯カメラを確認したい」と依頼をしても、応じてもらえることはありません。
開示請求自体、可能ではあるものの、必ずしも応じてもらえるとは限らない点に注意しましょう。
なお、正当な理由がある場合は警察官が確認する可能性があります。たとえば、車上荒らしなどの刑事事件の可能性がある場合です。
Q.防犯カメラ映像のみで罪を問うことはできますか?
A.証拠能力を有していれば、可能です。
防犯カメラの映像のみでその人が何らかの罪を犯したと疑うに足りる十分な証拠がある場合は、罪に問える可能性があります。
たとえば、防犯カメラの映像で「ポケットに商品を入れる姿が鮮明に映っていた」というような場合です。ただ、防犯カメラに映っている人と似ている人が誤認逮捕される可能性もあります。そのため、かならずしも防犯カメラの映像のみで罪に問えるとは限りません。
防犯カメラの映像をもとにその他の証拠も集め、結果的に罪に問えるようになるケースも多いです。いずれにせよ、防犯カメラの映像が重大な証拠となることもあるため覚えておきましょう。
まとめ
今回は、防犯カメラの映像の証拠能力について解説しました。
防犯カメラの映像は、証拠能力を有します。ただ、必ずしも万能なものではないため、設置する際には注意が必要です。防犯の目的を持って防犯カメラを設置する場合は、かならず専門業者へ依頼をしたうえで適切な箇所・方法での設置を検討しましょう。