監護者わいせつとは?成立要件や逮捕される可能性について詳しく解説

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監護者わいせつ罪とは、監護者が監護されるべき者に対してわいせつな行為をした場合に成立する犯罪です。監護者という立場を利用して立場の低い者に対してわいせつな行為をするのは、絶対に許されるべきではありません。

この記事では、監護者わいせつ罪の成立要件や罪に問われた場合の流れについて、詳しく解説しています。監護者わいせつに悩まされている人、監護者わいせつを行ってしまった人は、本記事で解説している内容をぜひ参考にしてください。

監護者わいせつとは

監護者わいせつとは、監護者がその立場を利用して監護されている者に対してわいせつな行為をした場合に成立する犯罪です。まずは、監護者わいせつ罪の概要や法定刑、「わいせつ」と「性交等」の違いについて詳しく解説します。

監護者が監護されている者に対してわいせつな行為をした場合に成立する犯罪

監護者わいせつ罪は、監護者が監護されている者に対してわいせつな行為をした場合に成立する犯罪です。つまり、本犯罪が成立するためには「監護者」が「監護されている者」を対象に「わいせつな行為」が条件です。

監護者とは「身の回りの世話をする人」という意味合いがあります。たとえば、監護される者が子どもである場合、監護者は親となります。つまり、一例をあげるとすれば、親が子どもに対してわいせつな行為をした場合に監護者わいせつ罪が成立するということです。

「わいせつな行為」とは、陰部に触れる行為や胸を触る行為、接吻をしたり洋服を脱がせたりする行為が該当します。小さい子どもの世話の一環として、洋服を着替えさせたり体を洗ったりする行為に違法性はありません。

監護者わいせつ罪と監護者性交等罪の違い

監護者わいせつ罪と監護者性交等罪の違いは、監護すべき者に対して行ったことが「わいせつな行為」なのか「性交等なのか」です。また、刑罰にも違いがあります。

わいせつな行為とは、先ほども解説したとおり陰部に触れる行為や胸を触る行為、接吻をしたり洋服を脱がせたりする行為です。一方で、性交等とは、通常の性行為や肛門性交、口淫性交等が含まれています。

なお、監護者わいせつ罪の法定刑は「6カ月以上10年以下の拘禁刑」であるのに対し、監護者性交等罪は「5年以上の有期拘禁刑」です。

【拘禁刑とは】
拘禁刑とは、自由刑の一つであり懲役刑と禁錮刑が一本化された刑罰です。2025年6月1日以降、従来の懲役刑と禁錮刑が廃止され、拘禁刑に統一されます。

監護者わいせつ罪の法定刑は「6カ月以上10年以下の拘禁刑」

監護者わいせつ罪の法定刑は「6カ月以上10年以下の拘禁刑」です。拘禁刑は、先ほども解説したとおり、懲役刑と禁錮刑が統一された自由刑の一つです。

罰金刑の定めがないため、執行猶予付きの判決が下されなければ、刑務所へ収監されてしまうことになるため注意しなければいけません。

【執行猶予とは】
執行猶予とは直ちに刑の執行をせずに一定期間猶予することです。たとえば、懲役3年執行猶予5年の判決が確定した場合、懲役3年の刑罰は直ちに執行せずに5年間猶予されます。猶予されている期間中に罰金刑以上の刑罰が確定しなければ、懲役刑は執行されません。

監護者わいせつの成立要件

監護者わいせつが成立するための要件は以下のとおりです。

  • 被害者が18歳未満であること
  • 被害者の監護者であること
  • 被害者にわいせつな行為をしたこと
  • 被害者に対する影響力に乗じたこと

次に、監護者わいせつ罪の成立要件について詳しく解説します。

被害者が18歳未満であること

監護者わいせつ罪は、被害者(監護される者)が18歳未満である場合に限られます。監護者わいせつ罪が18歳未満に限定されている理由は、18歳になると成人し、監護権が消滅するためです。

たとえば、監護者(親)が自分の子ども(監護されている者)に対してわいせつな行為をしていた場合、通常は監護者わいせつ罪が成立します。しかし、子どもの場合は18歳になった時点で監護権が消滅するため、そもそも監護者わいせつ罪が成立しないということになります。

とはいえ、18歳以上の子どもに対してわいせつな行為をしても良いというわけではありません。相手の意に反してわいせつなことを行った場合は、不同意わいせつ罪という他の犯罪が成立することになるでしょう。

なお、監護者わいせつ罪も不同意わいせつ罪も法定刑は同じです。よって、いずれの場合であっても厳しく処罰されることになるため注意しましょう。

被害者の監護者であること

監護者わいせつは、「監護者という立場を利用して」という前提があります。たとえば、親と子どもという関係性がもっともわかりやすい監護関係です。親は子どもの監護を行う立場にある人間であり、その立場を利用して子どもに対してわいせつな行為をします。

児童養護施設に入所している子どもと職員も監護関係にあるとされます。監護関係とは「監護されるべき者の監督・保護を行うべき人のこと」とされているためです。

被害者にわいせつな行為をしたこと

監護者わいせつ罪は、被害者に対して「わいせつな行為」をした場合に成立する犯罪です。わいせつな行為とは、陰部に触れる行為や胸を触る行為、接吻をしたり洋服を脱がせたりする行為です。

性行為等とは異なる点に注意しましょう。性交やや口淫、肛門性交等はすべて「性交等」に含まれます。性交等の場合は、監護者わいせつ罪ではなく、監護者性交等罪に問われ、より厳しい刑罰が下されます。

被害者に対する影響力に乗じたこと

被害者に対する影響力に乗じたこととは、具体的に脅していなくても成立します。たとえば、「学校に行きたければわいせつな行為をしなさい」といった場合は、監護者という立場を利用してわいせつな行為をしたと認められます。

しかし、実際に上記のような発言をしていなくても、自分の立場を利用して被害者に対する影響力に乗じた場合は、監護者わいせつ罪が成立するため注意しましょう。

たとえば、親が子どもに対してわいせつな行為をした場合は、被害者に対する影響力に乗じた行為であると認められ、犯罪として成立します。

監護者わいせつに問われた場合のリスク

監護者わいせつ罪に問われた場合、さまざまなリスクが発生します。具体的には、以下のようなことが起こり得るでしょう。

  • 長期勾留のリスク
  • 思い刑事罰を受けるリスク
  • 社会的リスク

次に、監護者わいせつ罪に問われた場合のリスクについて、詳しく解説します。もし、自分が罪を犯してしまった場合、どのようなことが起こり得るのか?について参考にしてください。

長期勾留のリスク

監護者わいせつ罪に問われた場合、長期勾留のリスクがあります。初めに逮捕されてその後、勾留されます。さらに、起訴されれば判決が確定するまで身柄拘束が続くため、最短でも半年〜1年程度の身柄拘束は覚悟しておいたほうが良いでしょう。

さらに、実刑判決が下された場合、監護者わいせつには罰金刑がないため長期間刑務所に収監されてしまうことになります。最短でも半年、最長で10年間刑務所内で過ごさなければいけません。

出所後も「元受刑者」や「性犯罪者」のレッテルを背負って生きていかなければいけず、生きづらさを感じてしまうでしょう。

重い刑事罰を受けるリスク

監護者わいせつ罪に問われた場合、法定刑は「6カ月以上10年以下の拘禁刑」です。罰金刑の定めがない犯罪であるため、実刑判決となれば必ず刑務所に収容されてしまいます。

社会的リスク

長期間の身柄拘束が行われることによって、さまざまな社会的リスクが懸念されます。たとえば、突然逮捕されてしまうことによって、急に会社に出社できなくなってしまいます。結果的に無断欠勤扱いとなってしまい、何らかの処分が下される可能性があるでしょう。

仮に、会社へ連絡ができたとしても、逮捕されたり刑事罰を受けたことが発覚することにより、何らかの懲戒処分が下されることになるでしょう。刑期を全うし、出所した後であっても元の会社へ戻ることは難しいです。

さらに、「元受刑者」や「性犯罪者」のレッテルを背負わなければ行けず、出所後も生きづらくなるでしょう。

監護者わいせつで逮捕された場合の流れ

監護者わいせつ罪は、重罪であるため逮捕される可能性があります。万が一、罪を犯して逮捕されてしまった場合、どのような流れで事件が進んでいくのか?と、不安や疑問を抱えている人も多いのではないでしょうか。

次に、監護者わいせつ罪で逮捕された場合の流れについて、詳しく解説します。

逮捕

監護者わいせつ罪は逮捕される可能性のある犯罪です。逮捕された場合は、身柄を拘束されます。その後、48時間以内に検察官へ事件を送致します。ここまでが逮捕の一連の流れです。

なお、罪を犯したからといって、必ずしも逮捕されるとは限りません。逮捕をするためには「証拠隠滅の恐れがあること」もしくは「逃亡の恐れがあること」など、一定の条件を満たしている必要があります。

とはいえ、監護者わいせつ罪は重罪であり、ましてや監護すべき者に対してわいせつな行為を行っていることから、被害者に対して何らかの行為をすることが予想されます。たとえば被害者と接触をしたうえで「何もされていないと言いなさい」と言って、証拠隠滅をする恐れがあるでしょう。

上記のことから、逮捕をしたうえで身柄拘束を行い、捜査を行うのが一般的です。

勾留請求

逮捕後に検察官へ事件を送致します。送致された場合、検察官は引き続き被疑者の身柄を勾留する必要があるかどうかを判断する流れです。

勾留の必要があると判断された場合は、被疑者を裁判所へ連れて行き、勾留質問を行います。勾留質問では、事件のことやあなたのことについて詳しく聞かれます。最終的に裁判官が、勾留の必要があると判断した場合に、勾留が認められることになるでしょう。

なお、勾留請求も逮捕同様に証拠隠滅もしくは逃亡の恐れがある場合に限って認められます。検察官や裁判官が「勾留の必要はない」と判断した場合は、身柄拘束されません。

勾留請求が認められた場合は、初めに10日間の身柄拘束が可能となります。その後、勾留延長請求されて延長が認められるケースが大半です。よって、この時点で最長23日間の身柄拘束が行われます。

勾留期間中は弁護士以外との接見(面会)はできません。当然、家族や会社の人とも合うことはできず、さまざまな社会的リスクが発生することが予想されます。

起訴・不起訴の判断

勾留されている事件の場合、勾留期間中に被疑者を起訴するか不起訴とするかを判断します。起訴された場合は、引き続き身柄拘束が続きます。ただし、起訴されて被告人となった場合は、保釈請求を行うことが可能です。

保釈請求とは、保釈金を支払って一時的に社会へ戻れる制度です。すべての人が保釈を認められるとは限らないものの、保釈請求制度があることを覚えておくと良いでしょう。

なお、保釈請求を行わない場合や認められなかった場合は、判決が確定するまで引き続き身柄拘束が続きます。初公判は、起訴から2カ月程度かかります。その後、判決が確定するまでに半年程度の期間がかかるため、この間は引き続き身柄拘束が続くことになるでしょう。

起訴には「正式起訴」と「略式起訴」があります。前者は通常通り刑事裁判を受ける起訴方法ですが、後者は刑事裁判を開かずに行える起訴方法です。ただし、監護者わいせつ罪は略式起訴という選択肢はありません。なぜなら、略式起訴は100万円以下の罰金にのみ適用できる起訴方法であるためです。

刑事裁判を受ける

正式位起訴された場合は、刑事裁判を受けます。刑事裁判は公開された場所で行われ、あなたの犯した罪について審理します。罪を犯した事実がある以上、無罪となる可能性はゼロであるため、どの程度の刑罰に処するかを決定します。

判決に従って刑に服する

判決が確定した時点でその刑罰に従って刑に服します。監護者わいせつ罪の場合、執行猶予付きの判決が下されなければ、刑務所に収監されることになります。

監護者わいせつ罪は「拘禁刑」であるため、刑務作業は義務付けられていません。とはいえ、更生や社会復帰を目指すためにも多くの人が刑務作業を行うことになるでしょう。

監護者わいせつに関するよくある質問

監護者わいせつ罪に関するよくある質問を紹介します。

Q.成人を対象にわいせつな行為をした場合はどうなりますか?

A.不同意わいせつ罪が成立します。

成人を対象にわいせつな行為をした場合、監護者わいせつ罪は成立しません。しかし、不同意わいせつ罪が成立します。不同意わいせつ罪は、同意を得ずにわいせつな行為をした場合に成立する犯罪です。

監護者わいせつ罪との違いは、対象者とやり方です。監護者わいせつ罪の場合は、監護者という立場を利用して被害者に対してわいせつな行為をします。一方で、不同意わいせつ罪は対象者は関係なく、同意を得ずにわいせつな行為をした場合に成立する犯罪です。

なお、いずれの場合も法定刑に変わりはなく、「6カ月以上10年以下の懲役」が科されます。

Q.監護者の定義とは何ですか?

A.監護する責任を負う者です。

監護する責任を負う者とは、親子関係であれば「親」が監護権を有しています。ただし、例外もあります。たとえば、子どもを祖父母の自宅に預けている場合、一時的に祖父母が監護者となります。

Q.相手の同意を得ている場合は罪に問われませんか?

A.同意を得ている場合であっても、当然、罪に問われます。

たとえば、監護者が監護すべき者の同意を得たうえでわいせつな行為をした場合であっても、監護者わいせつ罪は成立します。監護すべき立場を利用してわいせつな行為をしていると認められるためです。

また、仮に監護者わいせつ罪が成立しなかったとしても、不同意わいせつ罪が成立する可能性があります。不同意わいせつ罪は、13歳以上16歳未満の者に対して5歳以上年上の者がわいせつな行為をした場合、同意があっても犯罪として成立します。

なお、13歳未満の者に対してわいせつな行為をした場合は、無条件で不同意わいせつ罪が成立します。

Q.不同意わいせつ等罪・不同意性交等罪との違いは何ですか?

A.対象者が異なります。

監護者わいせつ罪は、監護者がその立場を利用して監護されるべき者に対してわいせつな行為もしくは性行為等を行った場合に成立する犯罪です。一方で、不同意わいせつ罪や不同意性交等罪は、対象者が限定されていません。相手の同意なしにわいせつな行為や性交等を行った場合に成立する犯罪です。

また、監護者わいせつ罪や監護者性交等罪は、同意の有無に関わらず成立する犯罪です。一方で、不同意わいせつ罪および不同意性交等罪は、同意の有無がポイントです。

なお、不同意わいせつ罪および不同意性交等罪は、「同意があったとしても13歳以上16歳未満の者に対して行った場合で5歳以上離れている場合」は、無条件で同意がなかったものとして見なされます。また、13歳未満の者に対して行った場合は、無条件で同意がなかったものと見なされます。

Q.監護者わいせつは性別に関係なく処罰されますか?

A.当然、監護者わいせつ罪は性別に関係なく処罰されます。

監護者わいせつ罪および監護者性交等罪、その他不同意わいせつ罪や不同意性交等罪は、いずれの場合も性別に関係なく処罰されます。

法改正前の法律では、「強姦罪」という犯罪がありました。この犯罪の対象者は、原則女性のみであり、男性が被害を受けた場合であっても処罰の対象とはなりませんでした。しかし、法改正により不同意わいせつ罪や不同意性交等罪、監護者わいせつ罪および監護者性交等罪が成立して以降、男性の被害も処罰対象となりました。

まとめ

今回は、監護者わいせつ罪について解説しました。

監護者わいせつ罪は、監護者にある立場を利用して監護されるべき者に対してわいせつな行為をした場合に成立する犯罪です。極悪非道な行為であり、絶対に許されるべきではありません。

被害者は一生、心に傷を負って生きていかなければいけません。罪を犯した側も、一生「元受刑者」や「性犯罪者」としてのレッテルを背負って生きていかなければいけません。

絶対に行うべきではないことであり、絶対に許されないことです。今回解説した内容を踏まえ、今一度、今後の対応方法について検討すべきでしょう。

刑事事件でお悩みの場合はすぐにご相談ください。

刑事事件で重要なのはスピードです。ご自身、身内の方が逮捕、拘留されそうな場合はすぐにご相談ください。

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