ホテルに隠しカメラを設置すると逮捕される?盗撮事件で問われる罪状と弁護士に相談するメリットを解説

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「ホテルに設置した隠しカメラが原因で警察から出頭するように連絡が来た。出頭命令を無視するとどうなる?」
「息子がホテルに隠しカメラを設置して逮捕された。今後の刑事手続きの流れについて知りたい」

ホテルに隠しカメラを設置して盗撮行為に及ぶと、性的姿態撮影等罪や迷惑防止条例違反などの容疑で逮捕される可能性があります。逮捕されたあとに勾留されて数週間に及ぶ強制的な身柄拘束を強いられたり、起訴処分が下されて実刑判決が確定したりしかねません、

ですから、隠しカメラなどを使って盗撮行為に及んだ事案では、できるだけ早いタイミングで被害者との間で示談交渉を開始して、早期の身柄釈放や不起訴処分獲得を目指す防御活動を展開するべきだと考えられます。

そこで、この記事では、盗撮事件を起こした加害者側の方が抱くさまざまな不安・疑問を解消するために、以下の事項についてわかりやすく解説します。

  • ホテルに隠しカメラを設置して盗撮行為に及んだときに適用される犯罪類型と法定刑
  • ホテルに隠しカメラを設置して逮捕されたあとの刑事手続きの流れ
  • ホテルに隠しカメラを設置して逮捕されたときに生じるデメリット
  • ホテルに設置した隠しカメラが原因で刑事訴追されたときに弁護士に相談するメリット

今後の社会復帰の可能性を考えると、できるだけ軽い刑事処分を獲得するべきだと考えられます。弁護士に相談するタイミングが早いほど有利な状況を作り出しやすいので、少しでも不安があるときには当サイトに掲載中の法律事務所までお問い合わせください。

目次

ホテルに隠しカメラを設置して盗撮したときに成立する犯罪類型

まずは、ホテルに隠しカメラを設置し、盗撮したときに成立する犯罪類型について解説します。

性的姿態撮影等罪(撮影罪)

性的姿態撮影等罪は、2023年(令和5年)7月13日に施行された「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(通称「性的姿態撮影等処罰法」)」で新設された犯罪類型のことです。後述の迷惑防止条例違反とは異なり、全国一律に適用されます。

ホテルに隠しカメラを設置して逮捕される事例では、以下のように規定される性的姿態撮影等罪が適用される可能性があります。

(性的姿態等撮影)
第2条第1条 次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金に処する。
第1号 正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
イ 人の性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
ロ イに掲げるもののほか、わいせつな行為又は性交等(刑法第百177条第1項に規定する性交等をいう。)がされている間における人の姿態
第2号 刑法第176条第1項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
第3号 行為の性質が性的なものではないとの誤信をさせ、若しくは特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信をさせ、又はそれらの誤信をしていることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
第4号 正当な理由がないのに、13歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影し、又は13歳以上16歳未満の者を対象として、当該者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者が、その性的姿態等を撮影する行為

※刑法第百177条第1項に規定する性交等:性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの

性的姿態撮影等罪の法定刑は「3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金刑」と定められており、未遂犯も処罰対象です。

性犯罪厳罰化の傾向が強くなっている現在の状況を踏まえると、行為態様の悪質性や取り調べでの供述内容次第では、初犯でも実刑判決が下されかねません

軽い刑事処分を獲得し、社会復帰の可能性を高めたいと考えるのなら、できるだけ早いタイミングで刑事事件に強い弁護士に相談・依頼をしてください。

ここからは、性的姿態撮影等罪に該当する4つの行為態様について解説します。

性的姿態撮影等罪の行為類型①:典型的な盗撮行為

性的姿態撮影等罪の1つ目の構成要件は以下のとおりです(第1号)。

  • 正当な理由なく
  • 対象性的姿態などを
  • ひそかに撮影する

たとえば、ラブホテルに盗撮用カメラを設置して利用者の性行為を撮影した事案、ビジネスホテルの浴室やトイレなどにカメラを設置して盗撮した事案、電車内で女性のスカート内にスマートフォンを差し向けてカメラ機能を使って撮影した事案などは、典型的な盗撮行為として、性的姿態撮影等罪が成立すると考えられます。

性的姿態撮影等罪の行為類型②:拒否できない状態などを利用した撮影行為

性的姿態撮影等罪の2つ目の構成要件は以下のとおりです(第2号)。

  • 刑法第176条第1項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて
  • 対象性的姿態などを
  • 撮影する

「刑法第176条第1項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由」は以下のとおりです。

  • 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
  • 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
  • アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
  • 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
  • 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
  • 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
  • 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
  • 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。

これらの手段を使って、被撮影者が撮影行為に対して拒絶できない状態を作り出し、対象性的姿態などを撮影したときには、被害者が撮影されている事実を認識していようがいまいが、性的姿態撮影等罪が成立します。

性的姿態撮影等罪の行為類型③:被害者の誤信を利用した撮影行為

性的姿態撮影等罪の3つ目の構成要件は以下のとおりです(第3号)。

  • 行為の性質が性的なものではないとの誤信をさせ、若しくは特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信をさせ、又はそれらの誤信をしていることに乗じて
  • 対象性的姿態などを
  • 撮影する

たとえば、「誰にも見せないから性行為中の動画を撮らせて欲しい」という嘘で被害者を騙して撮影した事案などについては、被害者の誤信を利用した撮影行為として、性的姿態撮影等罪が適用されます。

性的姿態撮影等罪の行為類型④:16歳未満の被害者に対する撮影行為

性的姿態撮影等罪の4つ目の構成要件は以下の2類型に分類されます(第4号)。

  • 正当な理由なく
  • 13歳未満の被害者の
  • 性的姿態などを
  • 撮影する
  • 正当な理由なく
  • 13歳以上16歳未満の被害者の
  • 性的姿態などを
  • 被害者よりも5歳以上年上の者が
  • 撮影する

被害者が年少者の場合には、正当な理由なく性的姿態などを撮影しただけで性的姿態撮影等罪が成立します。

たとえば、観光ホテルの利用者をランダムに盗撮する目的で、大浴場の脱衣所に隠しカメラを設置した場合、そこには当然子どもの裸が映り込むことも想定できるので、16歳未満の被疑者に対する撮影行為として、性的姿態撮影等罪が成立します。

なお、16歳未満の子どもに対する撮影行為について正当な理由があると判断されるのは、親や親戚などが子どもの成長記録のためにプールで遊んでいる様子などを撮影するような場面に限られる、というのが現在の通説的見解です。つまり、見ず知らずの他人の子どもの裸などが映り込む可能性がある状況で撮影行為に及んだ場合には、常に性的姿態撮影等罪が適用される可能性があるということです。

迷惑防止条例違反

ホテルなどに隠しカメラを設置した場合、迷惑防止条例違反が問題になる場合があります。特に、2023年7月13日以降の盗撮事件については上記の性的姿態撮影等罪が適用される可能性が高い一方で、2023年7月12日以前の盗撮事件については迷惑防止条例違反を理由に逮捕されることになります。

たとえば、東京都の迷惑防止条例(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例)では、盗撮行為について以下のような規定を置いています。

(粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止)
第5条第1条 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
第2号 次のいずれかに掲げる場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。
イ 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所
ロ 公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物(イに該当するものを除く。)

東京都の迷惑防止条例では、盗撮行為について「1年以下の懲役刑または100万円以下の罰金刑」と定めています。また、盗撮行為について常習性が認められる場合には、「2年以下の懲役刑または100万円以下の罰金刑」まで法定刑が引き上げられます。

なお、迷惑防止条例で禁止されている盗撮行為の範囲・対象・法定刑などは自治体によって異なる点に注意が必要です。ですから、隠しカメラによる盗撮事件について迷惑防止条例違反の適否が問題になる事案では、盗撮行為に及んだ場所の自治体が規定する迷惑防止条例の内容を精査する必要があります。

建造物等侵入罪

ホテルに盗撮カメラを設置した場合、建造物等侵入罪の容疑で逮捕される可能性があります。

建造物等侵入罪とは、「正当な理由がないのに、人の住居もしくは人の看守する邸宅、建造物もしくは艦船に侵入したとき」に成立する犯罪類型のことです(刑法第130条)。建造物等侵入罪の法定刑は「3年以下の懲役刑または10万円以下の罰金刑」と定められています。

たとえば、盗撮カメラを設置する目的でホテルの敷地内に侵入することは、ホテルの管理権者の意思に反する行為だと考えられるので、ホテルに侵入した時点で建造物等侵入罪が成立します。

ホテルに侵入して盗撮カメラを設置したような事案では、「最初に証拠を収集しやすい建造物等侵入罪で逮捕されたあと、取り調べなどの過程で容疑が固まった時点で性的姿態撮影等罪で再逮捕される」という流れで刑事手続きが進むことがあります。この場合には、身柄拘束期間が長期化するおそれが高いので、早期に刑事事件に強い弁護士に依頼をして、適切な防御活動を展開するべきでしょう。

軽犯罪法違反

ホテルに盗撮カメラを設置した場合、軽犯罪法違反の容疑で逮捕される可能性があります。

第1条 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
第23号 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者
第2条 前条の罪を犯した者に対しては、情状に因り、その刑を免除し、又は拘留及び科料を併科することができる。

条文上は「のぞき見た」という行為が処罰対象にされていますが、ここには、直接目視する行為だけではなく、カメラなどの機器を通じて視認する行為も含まれると考えられています。

【注意!】盗撮行為の状況次第で成立する他の犯罪類型

ホテルに盗撮カメラを設置するなどの犯行に及んだ場合、個別具体的な状況次第では、他の犯罪類型が適用されることがあります。

犯罪類型 内容 法定刑
性的影像記録提供等罪 盗撮カメラなどで取得した画像や動画などの性的影像記録を第三者に提供した場合に成立する。 ・特定かつ少数の者に対して提供した場合:3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金刑
・不特定または多数の者に提供した場合、公然と陳列した場合:5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金刑(併科あり)
性的影像記録保管罪 盗撮カメラなどで撮影した画像や動画などの性的影像記録を第三者に提供する目的で保管した場合に成立する。 2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金刑
性的姿態等影像送信罪 盗撮カメラなどで得られた画像や動画をライブストリーミングなどの技術によって不特定または多数の者に映像送信した場合に成立する。 5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金刑(併科あり)
性的姿態等影像記録罪 性的姿態等映像送信罪に該当する行為によって映像送信された画像や動画を記録した場合に成立する。 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金刑
不同意わいせつ罪 被害者が抵抗できない状況を作り出すなどして、わいせつな行為に及んだ場合に成立する。 6ヵ月以上10年以下の拘禁刑
不同意性交等罪 被害者が抵抗できない状況を作り出すなどして、性交等に及んだ場合に成立する。 5年以上の有期拘禁刑
器物損壊罪 ホテルに盗撮カメラを設置するときに、壁などを壊した場合に成立する。 3年以下の懲役刑または30万円以下の罰金もしくは科料

複数の犯罪類型で摘発される事態におちいると、再逮捕・再勾留が繰り返されて身柄拘束期間が長期化するだけでなく、初犯でもいきなり実刑判決が下される可能性が高まります。

ですから、ホテルに盗撮カメラを設置するだけではなく、他の犯罪行為に及んだ場合には、できるだけ早いタイミングで刑事事件に強い弁護士に相談・依頼をしたうえで、刑事手続きの初期段階から適切な防御活動を展開してもらうべきでしょう。

ホテルに隠しカメラを設置して逮捕されたときの刑事手続きの流れ

ホテルに隠しカメラを設置して逮捕されたときの刑事手続きの流れについて解説します。

警察で取り調べを受ける

逮捕されると、警察段階の取り調べが実施されます。逮捕処分に基づく警察段階の取り調べの制限時間は48時間以内です。期限が到来するまでに警察は取り調べを済ませて、被疑者の身柄を検察に送致します。

逮捕されている間は、捜査機関に身柄を押さえられた状態がつづきます。取り調べでどのような供述をするかは自由ですが、取り調べ自体を拒否することはできません。また、取り調べが実施されていない間は留置場に身柄を押さえられるので、自宅に戻ったり会社に出社したりできませんし、電話などで外部と連絡をとることも不可能です。

検察で取り調べを受ける

被疑者の身柄が検察に送致されると、検察段階の取り調べが実施されます。検察段階の取り調べの制限時間は原則として24時間以内です。警察段階の48時間以内と、検察段階の24時間、合計72時間以内の身柄拘束期間中に、検察官が盗撮事件を公訴提起するかどうかを判断します。警察段階の取り調べと同じように、検察段階の取り調べ期間中も被疑者の身体・行動の自由は大幅に制約されます。

ただし、盗撮事件の個別事情次第では、捜査機関が72時間以内に公訴提起判断に必要な証拠を収集できない可能性があります。たとえば、隠しカメラで盗撮された被害者の人数が多くて参考人聴取に相当の時間を要する場合、盗撮カメラで撮影されたデータが破壊されて復元に時間を要する場合などがこれに当たります。

このように、やむを得ない理由によって捜査機関が身柄拘束期間を遵守できない場合には、勾留によって身柄拘束期間が延長される可能性があります。検察官による勾留請求が認められて勾留状が発付された場合、被疑者の身柄拘束期間は10日間以内の範囲で延長されます(再勾留請求が認められた場合には、さらに10日間延長可能)。

以上を踏まえると、警察段階と検察段階を合わせて、検察官が公訴提起するかどうかを判断するまでに、最長23日間の身柄拘束期間が生じる可能性があるといえるでしょう。

ここまでで紹介した取り調べの制限時間は、個々の被疑事実ごとに判定されます(事件単位の原則)。つまり、建造物等侵入罪の容疑で逮捕・勾留されたあと性的姿態撮影等罪で再逮捕・再勾留されるなどという事態が発生すると、身柄拘束期間が数ヵ月に及びかねないということです。捜査段階でこのような長期間の身柄拘束期間を強いられると、仮に不起訴処分獲得に成功したとしても社会生活には甚大なデメリットが生じてしまいます。このような事態が想定される場合には、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談・依頼をして、身柄拘束期間短縮化を実現するための防御活動を展開してもらいましょう

検察官が公訴提起するかどうかを判断する

逮捕・勾留の期限が到来するまでに、検察官が盗撮事件を刑事裁判にかけるべきか否かを判断します。

刑事裁判にかける必要があると判断したときには「起訴処分」が、これに対して、刑事裁判にかけずに検察官限りの判断で刑事手続きを終了させてよいと判断された場合には「不起訴処分」が下されます。

刑事裁判を回避したいと考えるのなら、何としても検察官から不起訴処分の判断を引き出さなければいけません。そのためには、取り調べの初期段階から一貫した供述を徹底したり、情状証拠・証人を用意したりする必要があるので、刑事事件を得意とする弁護士への依頼が不可欠だといえるでしょう。

盗撮事件について起訴処分が下されるケースでは、検察官が刑事裁判において最初から罰金刑を求刑すると決めている場合があります。このような事案では、検察官が「略式起訴」をすることが可能です。略式起訴(略式命令・略式裁判)とは、簡易裁判所の管轄に属する事件について、被疑者側の同意があるときに限って、100万円以下の罰金または科料を確定させる刑事処分のことです(刑事訴訟法第461条)。罰金刑を避けることはできませんし、前科がついてしまいますが、公開の刑事裁判手続きを省略できるので、早期に社会復帰を目指すことができます。略式起訴に同意するのか、略式起訴に応じずに公開の刑事裁判で防御活動を展開するのか、どちらを選択するべきかは個別事案によって異なるので、弁護士に判断してもらいましょう

刑事裁判にかけられる

盗撮事件を起こして起訴処分が下された場合には、公開の刑事裁判にかけられます。

刑事裁判が開かれるのは、起訴処分が下されてから1ヵ月〜2ヵ月後が目安です。公訴事実に争いがない場合には、第1回公判期日で結審します。これに対して、事実関係を争ったり酌量減軽を狙ったりする場合には、数回の公判期日をかけて証拠調べ手続きや弁論手続きがおこなわれます。そして、裁判所が下した判決が確定すると、刑事手続きが終了します。

懲役刑や禁錮刑が確定した場合には、そのまま刑務所に収容されます。また、罰金刑は判決確定後30日以内に金銭を納付することになります。執行猶予付き判決が確定すると、すぐに通常の社会生活に復帰できます(ただし、執行猶予期間中は、社会生活を送るうえでさまざまな決まりを守らなければいけません)。

実刑判決が確定すると、刑期を満了するまで社会生活から完全に隔離されるので、出所後の社会復帰が極めて困難になります。ですから、ホテルに隠しカメラを設置するなどして刑事裁判にかけられた場合には、罰金刑や執行猶予付き判決を獲得して実刑判決回避を目指すべきでしょう

ホテルに隠しカメラを設置して逮捕されたときに生じるデメリット5つ

ホテルに設置した隠しカメラの存在がバレて逮捕されたときに生じるデメリットを5つ紹介します。

一定期間強制的に身柄拘束される

盗撮事件を起こして逮捕されると、一定期間、捜査機関に強制的に身柄を拘束されます。身柄拘束される期間は、警察段階で48時間以内、検察官段階で24時間以内、勾留請求されると10日間〜20日間です。

捜査機関に身柄拘束されている間は、完全に社会生活から隔離された状態が発生します。たとえば、スマートフォンなどの所持品は捜査機関に取り上げられるので、家族や恋人、会社などに自分で直接連絡することはできません。また、当然のことならが留置場から外に出れない日々がつづくので、会社や学校に通うのも不可能です。さらに、取り調べや留置場生活は過酷なので、心身に多大なるストレスが発生します。

つまり、仮に不起訴処分の獲得に成功して有罪にならなくて済んだとしても、一定期間身柄拘束期間が生じるだけで社会生活・社会復帰に大きな支障が生じかねないということです。

したがって、盗撮事件を起こして逮捕された場合には、軽い刑事処分を獲得することだけではなく、身柄拘束期間の短縮化を目指した防御活動を展開するべきだといえるでしょう。

学校や会社にバレる

盗撮事件を起こして逮捕されると、学校や会社にバレる可能性が高まります。

というのも、逮捕・勾留期間中は被疑者本人が学校や会社に休む旨の連絡をすることができず、不自然に無断欠席・無断欠勤の状態が継続してしまうからです。

たとえば、長期間無断欠勤がつづくと、それだけで会社を普通解雇されるリスクに晒されます。また、会社の就業規則次第ですが、有罪判決が確定したり、逮捕された事実が報道された結果、会社の信用を大きく毀損することになったりすると、懲戒解雇処分を下されかねません。さらに、学生の場合には、停学や退学などの処分が下される可能性があります。

ですから、学校生活・社会人生活への影響を軽減したいなら、学校や会社にバレずに刑事手続きを終了させることや、学校や会社に発覚したとしても重い処分を回避するためにしっかりと弁明の機会を活用することなどが重要だと考えられます。

実名報道されて社会生活にさまざまな支障が生じる

ホテルに隠しカメラを設置して逮捕された場合には、テレビの報道番組やインターネットニュースなどで実名報道される危険性があります。

どの事件を実名報道するかを決定するのは報道機関側です。実名報道の基準は公開されていませんが、世間の関心が高いニュースが報道対象になる傾向が強いです。そのため、性犯罪のような社会的課題に関わる事件を起こしたときには、実名報道されることを覚悟しなければいけません

一度でもメディアで実名報道されると、SNSやインターネット上に半永久的に盗撮事件を起こした事実が残りつづけてしまいます。たとえば、知人や会社の同僚に知られてしまうでしょうし、今後の転職活動や結婚などにも大きな支障が生じかねません。

したがって、盗撮事件を起こしたときには、報道機関に実名報道しないように働きかけをするなどの早急な対応が不可欠でしょう。

有罪になると刑事責任を問われる

盗撮事件を起こして逮捕されると、有罪になって刑事罰を科されるリスクに晒されます。

刑事裁判では、裁判官が検察官側と被告人側からそれぞれ提出された証拠や証人を精査して、有罪・無罪や刑罰の重さを判断します。

ただし、実際の刑事手続きでは、刑事裁判で有罪判決を獲得できるだけの客観的証拠が集まったときに限って、検察官が起訴処分を下すのが実情のところです。つまり、刑事裁判にかけられた時点で有罪になる確率が極めて高いということです。そして、有罪になると判決で示された刑が執行されますし、たとえば実刑判決が確定すると、刑期を満了するまで社会生活から隔離されてしまいます。

したがって、盗撮事件が原因で有罪になる事態を回避したいなら、刑事裁判で無罪判決を狙うのではなく、検察官から不起訴処分を引き出すことを防御目標にするべきだと考えられます。

前科がつくとさまざまなデメリットを強いられる

ホテルに隠しカメラを設置して逮捕された結果、有罪になってしまうと、前科によるデメリットにも悩まされつづけます。

前科とは、有罪判決を受けた経歴のことです。実刑判決だけではなく、罰金刑や執行猶予付き判決も有罪であるのには変わりないので、前科と扱われます。

前科者になると、今後の社会生活に以下のデメリットが生じます。

  • 前科情報は履歴書の賞罰欄に記載しなければいけないので、就職活動や転職活動の難易度が高くなる
  • 前科を理由に制限される仕事・資格に就業できない
  • ビザやパスポートの発給が制限されると、海外旅行や海外出張に支障が出る
  • 前科を理由に配偶者から離婚を求めれると拒絶できない(慰謝料や面会交流権などの諸条件も不利になる)
  • 再犯時の刑事処分が重くなる可能性が高い

日本の刑事裁判の有罪率は極めて高いので、刑事裁判にかけられた時点(起訴処分が下された時点)で有罪になって前科になるのが事実上確定してしまいます。

ですから、前科によるデメリットを避けたいなら、検察官から不起訴処分を引き出すための防御活動が不可欠だといえるでしょう。

ホテルに隠しカメラを設置して逮捕されたときに弁護士に相談するメリット6つ

ホテルに隠しカメラを設置して逮捕されたときや、逮捕されるリスクに晒されたときには、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談・依頼をしてください。

ここでは、盗撮事件を起こしたときに刑事事件に強い弁護士に相談・依頼をするメリットについて解説します。

早期に被害者との間で示談交渉を進めてくれる

弁護士に相談・依頼すれば、被害者との間で示談交渉を開始して早期の和解契約締結を目指してくれます。

示談交渉とは、刑事事件の当事者間で直接話し合いをおこない、民事的な解決方法について合意形成を目指すことです。示談が成立すれば、加害者が被害者に対して一定の示談金を支払う代わりに、被害届・告訴状を取り下げてもらったり、捜査機関に「処罰感情がない旨」を伝えてもらったりします

そして、示談交渉を弁護士に任せれば、以下のメリットを得られます。

  • 弁護士が就任したほうが、被害者が連絡先の開示に応じてくれやすくなる(加害者本人が直接示談交渉を進めようとしても、加害者に対して恐怖心などを抱いている被害者が連絡先の開示を拒否し、示談交渉をスタートすることさえ難しい)
  • 怒りや不安で感情的になっている被害者も、弁護士が代理人に就任することで、丁寧に示談交渉に応じてくれる
  • 被害者側から相場と乖離した示談条件を提示されたとしても、粛々と交渉を進めて、標準的な示談条件での合意成立を目指してくれる
  • 検察官による公訴提起判断までの示談成立を目指して、不起訴処分獲得の可能性を高めてくれる

ホテルに隠しカメラを設置したようなタイプの性犯罪の場合、見ず知らずの第三者が被害者になっていることが多いため、示談交渉を開始しようにも、被害者の連絡先がわからないということが少なくありません。その一方で、逮捕・勾留には厳格な制限時間が設けられているため、のんびり示談交渉を進めていると軽い刑事処分を獲得できるチャンスが失われてしまいます。

弁護士に相談・依頼をすれば、加害者本人やその家族が対応するときよりも、スムーズな示談交渉・示談成立を期待できるでしょう。

早期の身柄釈放を目指してくれる

逮捕・勾留されると、一定期間身柄拘束期間が生じるので、それだけで被疑者の社会生活にはさまざまな支障が生じかねません。

弁護士に相談・依頼をすれば、以下のような防御目標を掲げたり対抗策を講じたりすることによって、早期の身柄釈放を実現してくれるでしょう。

  • 逃亡または証拠隠滅のおそれがないことを示して、逮捕・勾留の根拠がなく、在宅事件に切り替えるべきだと主張してくれる
  • 勾留取り消し請求や準抗告などの法的措置を駆使してくれる
  • 捜査活動の進捗状況を踏まえたうえで、客観的証拠と反しない供述方針を明確化して、捜査員から不信感を抱かれないようにしてくれる

盗撮事件を起こしたからといって常に逮捕されるわけではありません。最初から身元を明らかにして犯行に関する証拠を提出するなどすれば、在宅事件として処理される可能性を見出すことができます。また、仮に逮捕されたとしても、常に検察官による公訴提起判断まで身柄拘束期間が継続するわけではなく、取り調べへの対応方法次第では、途中から在宅事件に切り替わるケースも少なくありません。

身柄拘束を回避したり、身柄拘束期間の短縮化に成功したりすれば、会社や学校、家族などに盗撮事件を起こしたことを隠しとおすことも可能です。

起訴猶予処分獲得を目指してくれる

「ホテルに隠しカメラを設置した事実に間違いがない以上、刑事裁判にかけられるのは仕方ない」などと諦めるべきではありません。

というのも、検察官が下す不起訴処分は以下3つに分類することが可能であり、犯行に及んだ事実に間違いがなかったとしても、起訴猶予処分獲得の余地は残されているからです。

  • 嫌疑なし:犯行に及んだ証拠が存在しない冤罪事案。
  • 嫌疑不十分:被疑者が犯行に及んだことを立証するだけの十分な証拠が存在しない事案。
  • 起訴猶予:被疑者が犯行に及んだ事実は間違いないものの、諸般の事情を総合的に考慮すると、刑事裁判にかける必要はないと判断される事案。

起訴猶予処分に付するべきかを判断するときには、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状、犯罪後の情況などの諸般の事情が総合的に考慮されます(刑事訴訟法第246条)。

刑事事件を得意とする弁護士に依頼をすれば、起訴猶予処分獲得に役立つ情状証拠・証人などを用意してくれたり、取り調べでの供述方針を打ち立ててくれたりするでしょう。

実刑回避に向けた防御活動を展開してくれる

ホテルに隠しカメラを設置して、逮捕・起訴されると、公開の刑事裁判への対応を強いられます(略式手続きを除く)。

そして、日本の刑事裁判の有罪率を前提にすると、犯行に及んだ事実に間違いがない状況なら、無罪判決を獲得するのは不可能に近いです。

ですから、刑事裁判にかけられた場合、実刑判決を回避できるかがポイントになると考えられます。

執行猶予付き判決を獲得するには、酌量減軽や自主減軽などのテクニックを積極的に活用したり、社会生活を送りながらの更生が可能である証拠を丁寧に示したりする必要があります。

刑事裁判経験豊富な弁護士に依頼をすれば、執行猶予付き判決獲得を目指した訴訟対応を期待できるでしょう。

実名報道しないように働きかけをしてくれる

ホテルに隠しカメラを設置して逮捕されると、実名報道のリスクに晒されます。仮に不起訴処分をの獲得に成功したとしても、一度でも実名報道されてしまうと、今後の社会生活に大きな支障が生じかねません

報道機関による実名報道を強制的にやめさせることはできませんが、弁護士は報道機関に働きかけをして、実名報道をしないように陳情などを出してくれるでしょう。

性依存症などの精神疾患克服に向けた現実的なサポートを期待できる

隠しカメラを設置するなどして盗撮事件を起こした被疑者のなかには、性依存症などの精神疾患を抱えている人が少なくありません。

刑事事件や性犯罪の経験豊富な弁護士は、医師やカウンセラー、NPO法人などと提携しているので、性犯罪の再犯予防に向けたサポートも期待できるでしょう。

ホテルに隠しカメラを設置した容疑で逮捕されそうなときには弁護士へ相談しよう

ホテルに隠しカメラを設置してしまった場合や、家族が盗撮事件を起こして逮捕された場合には、速やかに弁護士へ相談・依頼をしてください。

刑事事件に強い私選弁護人が代理人として就任すれば、早期に被害者との間で示談交渉を進めて、身柄拘束期間の短縮化や起訴猶予処分の獲得を実現してくれるでしょう。

当サイトでは、刑事事件の実績豊富な弁護士を多数紹介中です。弁護士に相談するタイミングが早いほど有利な状況を作り出しやすいので、できるだけ早いタイミングで信頼できる弁護士までお問い合わせください。

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刑事事件で重要なのはスピードです。ご自身、身内の方が逮捕、拘留されそうな場合はすぐにご相談ください。

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