2023年7月の刑法改正によって、不同意性交等罪・不同意わいせつ罪が新設されました。
そして、不同意性交等罪・不同意わいせつ罪の構成要件が抜本的に見直された結果、「性行為に対して同意があったかどうか」が構成要件該当性を判断するときの重要なポイントに位置付けられています。
ところが、性行為に対する同意・不同意は本人の内心でしかありません。そのため、「同意をしていないのに性行為やわいせつ行為を強要された」と主張されたときには、「同意があった事実」を証明するための客観的証拠が必要になると考えられます。
そこで、この記事では、性行為の相手から「同意がなかった」と主張されて刑事訴追リスクを抱えている人や、性行為に対する同意があったと証明する証拠の準備方法などを知りたいと考えている人のために、以下の事項についてわかりやすく解説します。
- 性行為の同意を証明する方法
- 不同意性交等罪の構成要件・法定刑
- 性行為に同意がなかったと主張されたあとの刑事手続きの流れ
- 性行為に同意がなかったことを理由に刑事訴追されたときに生じるデメリット
- 性行為に同意がなかったと主張されたときに弁護士に相談・依頼するメリット
弁護士に相談・依頼するタイミングが早いほど、刑事手続きを有利に進めやすくなります。性行為の同意・不同意が問題になったときには、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談をして、示談交渉などの対応を進めてもらいましょう。
目次
性行為の同意が必要とされる理由
まずは、性行為に対する同意をめぐる法的問題を整理します。
各人の尊厳を守らなければいけないから
セクシャリティは重要な人権のひとつで、性行為に及ぶかどうかは各個人が自由に決定できます。
ですから、同意のない性行為は人権侵害に該当するので、性行為に対する同意は不可欠だと考えられます。
刑法改正で不同意性交等罪が新設されたから
2023年7月の刑法改正で、不同意性交等罪が新設されました。
第百七十七条 前条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第百七十九条第二項において「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、五年以上の有期拘禁刑に処する。
2 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、性交等をした者も、前項と同様とする。
3 十六歳未満の者に対し、性交等をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。
※参照:「前条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由」
(不同意わいせつ)
第百七十六条 次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕がくさせること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
引用:刑法|e-Gov法令検索
ここからわかるように、不同意性交等罪・不同意わいせつ罪の成否を判断するにあたっては、「被害者の同意しない意思」が重要なポイントになります。
被害者が性行為に同意していない状況で性交等に及んだ場合には不同意性交等罪が成立し、相手方が性行為に同意している状況なら刑事責任が問われることはありません。
同意の証明ができないと重い刑事罰を科されるから
性行為に対する同意が存在しないと判断された場合には、不同意性交等罪が成立します。
不同意性交等罪の法定刑は「5年以上の有期拘禁刑」です。法定刑に罰金刑が定められていないため、執行猶予がつかない限り、実刑判決が下されます。
ところが、執行猶予付き判決を獲得するには、「3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の言渡しを受けたとき」という要件を満たさなければいけません。つまり、不同意性交等罪の容疑で刑事裁判にかけられると、防御活動を丁寧に尽くして酌量減軽などが認められない限り、刑務所に収監される可能性が高いということです。
このように、同意のない状態で性行為に及ぶと厳しい刑事罰を科されるため、性行為に対して相手方の同意を得ることは非常に重要だと考えられます。
【注意!】夫婦やカップルでも性行為の同意は必要
「夫婦なのだから性行為をするのは当たり前だ」「カップルなのだから性行為を求められたら応じなければいけない」というのは間違いです。
当事者それぞれに性行為に応じるかどうかの権利が認められている以上、夫婦・カップルであったとしても、同意がない性行為を強要すると、不同意性交等罪が成立します。
刑事実務では、夫婦やカップルが別れたり喧嘩をしたあと、一方当事者が「同意がないのに性行為を強要された」などと被害申告するケースが散見されます。
ですから、夫婦やカップル間で性行為に及ぶときでも、事後的に不同意性交等罪の容疑で刑事告訴されたときに備えておくことが重要だと考えられます。
【注意!】性行為以外にも同意が必要になる場面は多い
同意なしで性行為に及んだ場合には不同意性交等罪が成立します。
これに対して、性行為に及ばなかったとしても、以下のような行為を相手の同意なくおこなったときには、不同意わいせつ罪の容疑で刑事訴追されるリスクがある点に注意が必要です。
- キスをする
- 服の上から胸や足、臀部を触る
- 抱きつく など
不同意わいせつ罪の法定刑は「6ヶ月以上10年以下の拘禁刑」です。不同意性交等罪よりも法定刑は軽いですが、罰金刑が定められていないため、特に起訴された事案では、適切な防御活動を展開して執行猶予付き判決獲得を目指す必要があります。
【注意!】性的同意年齢に満たないと同意があったとは認められない
まず、相手方が13歳未満の場合には、性行為やわいせつ行為に対する相手方の同意は無効です。13歳未満の相手方に対して性行為やわいせつ行為に及んだ場合には、どのような状況であったとしても、不同意性交等罪・不同意わいせつ罪が成立します。
次に、相手方が13歳以上16歳未満のケースでは、相手方よりも5歳以上年上の場合に限り、不同意性交等罪・不同意わいせつ罪が適用されます。年齢差が5歳以内であれば、刑事訴追されることはありません(中学生の同級生同士で性行為に及んだ場合など)。
【注意!】性的同意の立証責任は検察官にあるが防御活動は不可欠
「性交等に対して同意がなかったこと」は不同意性交等罪の構成要件要素です。
そして、「疑わしきは被告人の利益に」「無罪推定」の原則が適用されるため、「性行為に対して同意がなかったこと(不同意であったこと)」の立証責任は検察官が負担します。
ただし、検察官が性行為に対する不同意の立証責任を負うからといって、被疑者・被告人側が何もしなくていいというわけではありません。性行為に対して相手方の同意があったことを証明できる証拠を用意すれば、刑事手続きを有利に進めやすくなるでしょう。
性行為の同意の証明に役立つ証拠
不同意性交等罪の容疑をかけられないようにするためには、性行為に対して相手方の同意があったことを証明できる証拠があると安心です。
ここでは、性行為に対して相手方が同意していた旨を証明するときに役立つ証拠を紹介します。
性交同意書を作成する
性交同意書とは、性交、キス、手を繋ぐなどの行為に対して同意する旨の内容を記載した契約書のことです。
相手方から「同意がなかった」と主張されたとしても、性的同意があった旨が書面化された性交同意書があれば、刑事訴追のリスクを軽減できます。
ただし、性交同意書があるからといって、常に刑事訴追リスクをゼロにできるわけではありません。たとえば、「無理やり性交同意書にサインをさせられた」「性交同意書は偽造されたものだ」「同意書作成当時は同意をしていたが、その後気分が変わって不同意になった」などと反論される可能性がある点にも注意が必要です。
性交同意アプリを活用する
性行為の同意があった事実を記録するための性交同意アプリを利用するのも選択肢のひとつです。有名な性交同意アプリとして、「キロク」が挙げられます。
性交同意アプリを利用すれば、性交同意書を作成するほどの手間はかかりません。
ただし、性交同意書と同じように、相手方から偽造などの反論が出される可能性があります。
性行為に同意している旨の録音データを残す
相手方が性行為に同意している旨の発言や様子を録音・録画しておくのも選択肢のひとつです。
性交同意書や性交同意アプリとは異なり、「自分は同意をしていない」「偽造された証拠だ」などの反論をされる可能性は低いでしょう。
性行為に至るまでのやり取りや関係性などの情状証拠を積み重ねる
直接的に性行為に対して同意をしている旨の発言がなかったとしても、カップルとして仲睦まじく過ごしている様子などが記録されたデータなどがあれば、性行為に対して同意があった事実を強く推認させる証拠として活用可能です。
また、当事者ふたりの普段の様子を知る共通の知人などの証言も役立つでしょう。
性行為の同意を証明できず不同意性交等罪の容疑をかけられたときの刑事手続きの流れ
性行為などに対する被害者の同意が存在しないと判断された場合、不同意性交等罪や不同意わいせつ罪などの容疑をかけられます。
ここでは、不同意性交等罪などの容疑をかけられたときの刑事手続きの流れについて解説します。
- 警察に逮捕される
- 警察段階の取り調べが実施される
- 警察から検察官に送致される
- 検察段階の取り調べが実施される
- 検察官が公訴提起するかどうかを判断する
- 刑事裁判が開かれる
警察に逮捕される
性行為などに対して被害者側が不同意だったと判断されると、不同意性交等罪などの容疑で警察に逮捕されます。
不同意性交等罪などの容疑で逮捕されるパターンは以下2種類に大別されます。
- 現行犯逮捕:レイプなどの犯行に及んでいる現場に駆けつけた警察官にその場で取り押さえられるパターン。
- 通常逮捕:同意のない性交等について捜査活動が進められた結果、逮捕状が発付されて、後日逮捕処分が実施されるパターン。
警察が逮捕処分を実行すると、その時点で被疑者の身体・行動の自由が大幅に制限されます。
たとえば、警察署に連行されるタイミングを調整することはできませんし、家族や会社に電話連絡をすることなどもすべて禁止されます。
警察段階の取り調べが実施される
同意なしで性行為に及び、不同意性交等罪などの容疑で逮捕されると、警察段階の取り調べが実施されます。
警察段階の取り調べには48時間以内の制限時間が設けられています。
48時間以内に実施される逮捕段階の取り調べは拒絶できません(どのような供述をするかは自由です)。また、取り調べが実施される時間以外は留置場に身柄をとどめられるので、帰宅したり出社したりすることも禁止されます。さらに、スマートフォンなどの所持品も取り上げられるため、外部と連絡をとることもできません。
検察官に送致される
警察段階の取り調べが終了すると、事件が検察官に送致されます。
不同意性交等罪や不同意わいせつ罪は微罪処分の対象にはなっていないので、警察段階で刑事手続きが終了することはありません。
検察段階の取り調べが実施される
事件が送検されたあとは、検察段階の取り調べが実施されます。
検察段階の取り調べには24時間以内の制限時間が設けられています。警察段階48時間以内と検察段階24時間以内の「合計72時間以内」の範囲で実施された取り調べで得られた証拠などを前提に、検察官が不同意性交等事件を公訴提起するかどうかを判断します。
ただし、以下のような事情が存在する事件では、原則的な制限時間の範囲内だけで実施される取り調べだけでは、公訴提起するかどうかの判断に資する十分な証拠を収集できない可能性があります。
- 同意のない性行為を強要されて被害者が入通院を強いられて参考人聴取のタイミングを調整せざるを得ない場合
- 性行為に同意があったかどうかを調査するために、削除されたスマホデータなどを解析するのに時間を要する場合
- 周囲の監視カメラ映像などを調査・解析するのに時間を要する場合
- 加害者が取り調べで犯行を否認したり、性行為に対して被害者の同意があったと主張したりしている場合 など
このようなやむを得ない理由がある場合には、検察官による勾留請求がおこなわれます。そして、裁判官が勾留状を発付した場合、被疑者の身柄拘束期間は10日間以内の範囲で延長されます(事案によっては、さらに10日間、合計で20日間の範囲で勾留期間の再延長が認められます)。
以上を踏まえると、同意のない性行為に及んだ容疑で捜査機関に逮捕・勾留された場合には、逮捕されてから公訴提起判断がおこなわれるまで、最長23日間の身柄拘束期間が生じる可能性があるといえるでしょう。
検察官が起訴・不起訴を決定する
警察段階及び検察段階の取り調べが終了すると、検察官が不同意性交等事件を公訴提起するかどうか(起訴か不起訴か)を判断します。
起訴処分とは、刑事事件を刑事裁判にかける旨の判断のことです。これに対して、不起訴処分とは、刑事事件を刑事裁判にかけずに検察段階で刑事手続きを終了させる旨の判断を意味します。
日本の刑事裁判の有罪率は極めて高いのが実情です。つまり、検察官が起訴処分を下して刑事裁判にかけられることが決まった時点で、有罪になって前科がつくことが事実上決まってしまうということです。
ですから、同意のない性行為の疑いをかけられて捜査機関に逮捕された場合には、「検察官から不起訴処分を引き出すこと」が重要な防御目標になるといえるでしょう。
刑事裁判にかけられる
不同意性交等罪の容疑で検察官が起訴処分を下すと、公開の刑事裁判で同意のない性行為について審理されます。
刑事裁判が開廷されるのは、起訴処分の1ヶ月〜2ヶ月後です。性行為に同意がなかったという事実に争いがない場合には第1回公判期日で結審する可能性が高いです。これに対して、性行為に対して被害者の同意があったなどと争う場合には、複数回の公判期日を経て、証拠調べ手続きや弁論手続きが実施されます。
不同意性交等罪の法定刑は「5年以上の拘禁刑」と定められているので、執行猶予がつかない限り、実刑判決が下されます。実刑判決が確定すると、刑期を満了するまで刑務所への服役を強いられるため、出所後の社会復帰が極めて困難な状態に追い込まれかねません。
ですから、不同意性交等罪などの容疑で起訴されたときには、執行猶予付き判決獲得に向けた防御活動が重要になるといえるでしょう。
不同意性交等罪の容疑で刑事訴追されたときのデメリット4つ
性行為に対する被害者の同意がなかったことを理由に刑事訴追されたときに生じるデメリットについて解説します。
- 実名報道されるリスクに晒される
- 逮捕・勾留によって一定期間身柄拘束されるリスクに晒される
- 刑事事件を起こした事実が会社や学校にバレるリスクに晒される
- 有罪になると、刑事罰に加えて前科によるデメリットにも悩まされつづける
実名報道されるリスクに晒される
刑事事件を起こすと、テレビの報道番組やインターネットニュースで実名報道される危険性があります。
もちろん、すべての刑事事件が実名報道の対象になるわけではありません。ただし、刑事事件が以下のような要素を含んでいる場合には、実名報道されるリスクが大幅に高まります。
- 社会的関心の高いトピックに関する刑事事件
- 被害が甚大な刑事事件
- 被疑者が逮捕された刑事事件
- 被疑者が著名人の場合 など
近年の刑法改正で不同意性交等罪などが新設されるなど、性犯罪に対する社会的関心は高い状況です。
ですから、同意のない性行為に及んだ容疑をかけられて警察に逮捕された場合には、実名報道の危険性が高いといえるでしょう。
そして、不同意性交等罪などの容疑で逮捕された事実が世間に公表されると、身近な人にバレるだけではなく、SNSなどで個人情報が特定されるなどの実害が生じかねません。また、半永久的にインターネット上に性犯罪に及んだ情報が残りつづけるので、結婚や就職・転職なども困難になる可能性が高いです。
逮捕・勾留によって一定期間身柄拘束されるリスクが生じる
同意のない性行為に及んだことを理由に逮捕・勾留されると、強制的に捜査機関に身柄拘束される期間が生じます。
逮捕・勾留によって捜査機関に身柄を押さえられている間は、社会生活から完全に隔離された状態を強いられます。
たとえば、検察官から不起訴処分の判断を引き出すことに成功したとしても、公訴提起判断までに数週間に及ぶ身柄拘束期間が生じると、それだけで学校や会社に刑事事件などのトラブルに巻き込まれた事実がバレてしまいます。また、数週間に及ぶ厳しい留置場生活が原因で、心身に過度なストレスが生じかねません。
会社や学校などにバレて処分を下される可能性がある
同意のない性行為が原因で逮捕・勾留された結果、会社や学校に発覚すると、何かしらの処分を下される可能性が高いです。
たとえば、勤務先企業が定めている就業規則の懲戒規程に抵触すると、戒告、譴責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇といった懲戒処分が下されます。また、所属している学校の校則の内容次第では、退学、停学、訓告などの処分の対象になります。
これらの処分が下されると、希望どおりに進学できなくなったり、キャリアを諦めたりしなければいけません。
有罪になると前科がつく
同意のない性行為に及んだ結果、刑事裁判で有罪になると、刑事罰が科されるだけではなく、前科によるデメリットも強いられます。
前科とは、有罪判決を下された経歴のことです。前科者になると、今後の社会生活に以下の支障が生じます。
- 前科情報は履歴書の賞罰欄への記載義務が生じるので、就職活動や転職活動が成功しにくくなる
- 前科を隠して内定を獲得しても、発覚した途端、経歴詐称を理由に懲戒処分が下される
- 前科を理由に就業が制限される職業・資格に就けない
- 前科は法定離婚事由に該当するので、配偶者から離婚を求められると拒否できない(慰謝料、親権、面会交流権などの離婚条件も不利になる)
- 前科を理由にビザ・パスポートが発給されないと、海外旅行や海外出張に制限が加えられる
- 前科がある状態で再犯に及ぶと、重い刑事処分が下される可能性が高い など
不同意性交等罪の容疑をかけられたときに弁護士に相談するメリット6つ
同意のない性行為に及んだ結果、刑事訴追のリスクに晒されたときには、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談・依頼をしてください。
ここでは、不同意性交等罪などの容疑をかけられたときに刑事事件を得意とする弁護士に相談・依頼するメリットについて解説します。
- 被害者との間で早期に示談交渉を開始してくれる
- 性行為に対する同意があったことを示す客観的証拠を用意してくれる
- 身柄拘束によるデメリットの回避・軽減を目指してくれる
- 起訴猶予処分獲得を目指してくれる
- 執行猶予付き判決獲得を目指してくれる
- 性依存症など、被疑者本人が抱えている現実的な問題の解決に向けたサポートを期待できる
なお、不同意性交等罪などの容疑で刑事訴追されたときには、当番弁護士や国選弁護人を利用できる場合がありますが、少しでも有利な刑事処分獲得を目指すなら、私選弁護人と契約することを強くおすすめします。所定の弁護士費用は発生しますが、キャリアや経験、人柄、熱意、専門分野などから、信頼できる専門家に刑事弁護活動を依頼できるでしょう。
被害者との間で示談交渉を進めてくれる
刑事事件を起こしたときには、できるだけ早いタイミングで被害者との間で示談交渉を開始し、スピーディーに和解契約を締結するのが重要です。
というのも、被害者との間で示談が成立することで、刑事手続き上も以下のメリットを得られるからです。
- 警察に発覚する前に示談が成立すれば、被害申告されずに、刑事事件化自体を回避できる
- 警察に通報されたとしても、示談成立によって不起訴処分獲得の可能性が高まる
- 検察官に起訴処分を下されたとしても、示談成立によって執行猶予付き判決獲得の可能性が高まる
もちろん、加害者本人やその家族が被害者との間で直接示談交渉をおこなうことも可能です。
ただし、特に性犯罪のような事件類型では、加害者本人が示談交渉をおこなうのではなく、弁護士に示談交渉を代理してもらうことを強くおすすめします。
なぜなら、同意のない性行為が問題になったような事案において弁護士に示談交渉を任せることで以下のメリットを得られるからです。
- 弁護士が代理人として就任することで、被害者の連絡先を入手しやすくなる(加害者本人が示談交渉を開始しようとしても、連絡先が判明しないことが多い)
- 怒りや不安を覚えている被害者も、弁護士相手なら冷静に話し合いに応じてくれやすくなる
- 相場どおりの示談条件での合意形成を目指しやすくなる
- 宥恕条項や清算条項など、示談書に盛り込むべき内容が漏れなく記載された示談契約書を作成してくれる
- 刑事手続きの進捗状況を踏まえて、スピーディに示談成立を実現してくれる
「言ったもん勝ち」にならないように客観的証拠を用意してくれる
不同意性交等罪などの構成要件である「性行為に対して同意がなかったこと」の立証責任は検察官が負っています。
ところが、実際の性犯罪事案の現場では、被害者側から事後的に「性行為に同意をしていなかった」という証言がなされただけで、不同意性交等罪の容疑をかけられるケースが少なくありません。このような状況で適切な防御活動を展開しなければ、いわゆる「言ったもん勝ち」の状況になり、被害者側に有利な証言や証拠だけが採用される可能性があります。
刑事事件に強い弁護士に依頼をすれば、客観的証拠や関係者の証言などを丁寧に収集して、性行為に同意があった(不同意ではなかった)旨を立証してくれるでしょう。
身柄拘束期間の短縮化、逮捕・勾留の回避を目指してくれる
逮捕・勾留といった強制処分は、それだけで被疑者の社会生活に大きなデメリットをもたらします。たとえば、被疑者がある日いきなり逮捕・勾留されて、会社に一切連絡もできないまま身柄拘束を強いられると、仮に不起訴処分を獲得できたとしても、長期の無断欠勤を理由に会社をクビになりかねません。
弁護士は身柄拘束処分によって生じるデメリットを理解しているので、「逮捕されずに在宅事件として処理されること」「逮捕されたとしても勾留を阻止してできるだけ早いタイミングで身柄釈放を実現すること」を目標に、捜査機関に対してさまざまな働きかけをしてくれるでしょう。
起訴猶予処分獲得を目指してくれる
性行為に対して同意がなく、不同意性交等罪の構成要件該当性を否定できない状況であったとしても、不起訴処分を獲得することは可能です。
というのも、不起訴処分は以下3種類に分類され、実際に罪を犯した状況であったとしても、起訴猶予処分を獲得する余地は残されているからです。
- 嫌疑なし:被疑者が刑事事件を起こした客観的証拠が存在しない冤罪のケース。
- 嫌疑不十分:被疑者が刑事事件を起こした客観的証拠が不足しているケース。
- 起訴猶予:被疑者が刑事事件を起こした事実に間違いはないものの、諸般の事情を総合的に考慮すると、刑事事件にかける必要はないと判断されるケース。
そして、検察官が起訴猶予処分に付するかどうかを判断するときには、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状、犯罪後の情況などの諸般の事情が総合的に考慮されます(刑事訴訟法第248条)。
刑事事件に強い弁護士に依頼をすれば、起訴猶予処分獲得に役立つ情状証拠や自力更生が可能と判断されるような環境を整備してくれるでしょう。
執行猶予付き判決獲得を目指してくれる
不起訴処分の獲得に失敗をして不同意性交等罪などの容疑で起訴された場合には、刑事裁判で執行猶予付き判決獲得を目指す必要があります。
そして、執行猶予付き判決を獲得するには、「3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の言渡しを受けたとき」という要件を満たさなければいけません。
ところが、不同意性交等罪の法定刑は「5年以上の有期拘禁刑」です。つまり、酌量減軽や自首減軽などの法的措置を尽くさなければ、執行猶予付き判決を獲得できないということです。
執行猶予が付くかどうかは、反省の態度を示しているか、示談が成立しているか、社会生活において再犯のリスクがないかなどの諸般の事情が総合的に考慮されます。
刑事裁判の経験豊富な弁護士に依頼すれば、執行猶予付き判決の判断を引き出すための証拠を用意してくれるでしょう。
性依存症などの疾患のケアに向けた現実的なサポートを期待できる
不同意性交等罪や不同意わいせつ罪などの容疑をかけられた人のなかには、性依存症などの精神疾患を抱えている人も少なくありません。
仮に今回立件された刑事事件で不起訴処分や執行猶予付き判決を獲得できたとしても、根本的な性依存症などの問題を解決しなければ、再犯に及んで重い刑事処分を科されるリスクに晒されつづけます。
性犯罪弁護に力を入れている弁護士に相談・依頼をすれば、提携しているカウンセラーやNPO法人、医療機関を紹介してくれるので、本当の意味での社会復帰・更生を目指せるでしょう。
「性行為に同意していなかった」と主張されて刑事訴追されたときには弁護士に相談しよう
明らかな性加害行為に及んだときだけではなく、性行為の相手方から「同意をしていなかった」と事後的に主張されたときには、できるだけ早いタイミングで刑事事件に強い弁護士に相談してください。
早期に弁護士の力を借りることで、身柄拘束処分によるデメリットを回避・軽減したり、不起訴処分や執行猶予付き判決などの軽い刑事処分獲得の可能性を高めたりできるでしょう。特に、同意・不同意の認定が微妙なケースでは、被疑者側でも「性行為の同意があったこと」を示す客観的証拠を用意する必要があります。
刑事事件相談弁護士ほっとラインでは、性犯罪弁護や刑事実務を得意とする弁護士を多数紹介中です。弁護士に相談するタイミングが早いほど刑事手続きを有利に進めやすくなるので、刑事訴追のリスクを抱えている状況なら、速やかに信頼できる弁護士までお問い合わせください。