本人が突然逮捕された、家族が警察に連れて行かれた。その瞬間に多くの人が直面するのが「今すぐ、誰に弁護を頼むべきか」という問題です。刑事事件は早い者勝ちに近い側面があり、逮捕直後から72時間前後で勾留の可否が判断され、そこから身柄拘束が長期化するか、在宅で生活を立て直せるかが分かれます。
さらに、示談の着手、不起訴に向けた働きかけ、取調べで不利な調書を作られないための助言など、初動の質がその後の結果を大きく左右します。では、焦る中で何を基準に弁護士を選べばいいのでしょうか。
ポイントは「刑事事件の経験が豊富か」「逮捕・勾留案件で実績があるか」「初回接見までが速いか」「夜間・休日でも動ける体制があるか」といった実務の強さです。また、国選弁護人は原則として勾留後に選任されるため、勾留回避の勝負所に間に合いにくいという現実もあります。
この記事では、逮捕時に失敗しない弁護士の選び方、弁護士が必要な理由、逮捕後にできる具体的なこと。さらに、国選と私選の違い、事件類型別の注意点、選び方でつまずきやすい落とし穴までを、家族目線で整理して解説します。
目次
逮捕時の弁護士の選び方
本人が逮捕されてしまった。または、ご家族が逮捕された。そんなとき、最初に直面するのが「どの弁護士に依頼すべきか」という問題です。刑事事件では、初動の弁護活動が結果を大きく左右します。
勾留を回避できるか、不起訴を勝ち取れるか、早期の身柄解放が可能か。それらは、弁護士の選び方にかかっていると言っても過言ではありません。では、どんな弁護士に依頼すれば良いのでしょうか?まずは、逮捕時に本当に信頼できる弁護士を選ぶためのポイントを、わかりやすく解説します。
刑事事件の実務経験が豊富であること
刑事事件は、民事や企業法務とはまったく異なる専門領域です。警察・検察・裁判所とのやり取り、証拠収集の進め方、身柄解放の交渉など、刑事特有のノウハウが求められます。そのため、弁護士選びでは「刑事事件に強い」「逮捕案件を多く扱っている」かどうかを最優先に確認しましょう。
具体的には、以下の点をポイントに弁護士を選ぶのが好ましいでしょう。
- 弁護士が刑事事件の解決事例をどれくらい持っているか
- 勾留阻止や不起訴獲得の経験があるか
- ホームページなどで刑事弁護を専門分野として明記しているか
これらの情報から、信頼できる弁護士を見極めることができます。
逮捕・勾留事件の対応実績があること
刑事事件の中でも「逮捕・勾留案件」に強いかどうかは、非常に重要です。理由は、逮捕後72時間以内に勾留されるかどうかが決まり、この短期間に弁護士が動けるかどうかで、身柄拘束が長期化するかどうかが決まるからです。
対応実績がある弁護士は、以下のような動きを迅速に行えます。
- 速やかな接見(面会)で本人と事実確認
- 勾留不要を主張する資料作成
- 家族と連携して身元引受人の手配
- 検察官や裁判官への働きかけ
「対応実績」は、実際の過去事例の掲載や口コミなどで確認するのが有効です。
初動対応のスピードが早いこと
逮捕後は時間との勝負です。初動対応が1日遅れるだけで、勾留や起訴に進んでしまうことも珍しくありません。とくに注意したいのが以下のタイミングです。
- 勾留請求される前に、弁護士が動けるか
- 初回接見を24時間以内に行えるか
- 保釈や釈放を見据えた準備がすぐに始められるか
夜間や休日でも連絡が取れる、24時間体制の刑事弁護チームなどは、初動対応の早さが特に期待できます。刑事事件に対応している弁護士の多くは、24時間対応可能なケースが多いです。
とはいえ、弁護士は複数の案件を同時に抱えているため、すぐに対応できないケースも多いでしょう。そのため、すぐに動いてくれる弁護士かつ、刑事弁護に慣れている実績豊富であることを条件に探したほうが良いでしょう。
面会・接見にすぐ行ける体制があること
弁護士しかできない重要な行動が「接見」です。接見を通じて、被疑者本人は取り調べへの備えや黙秘権の理解、今後の方針などを学べます。
迅速な接見は、以下のような効果があります。
- 調書への不用意な署名を防ぐ
- 取調官の誘導に対する心構えを作る
- 早期釈放・不起訴に向けた材料を収集する
そのため、「接見にすぐ行ける距離に事務所があるか」「即日対応してくれるか」は、実務的に非常に重要なポイントです。
逮捕された場合の弁護士の必要性
逮捕という重大な局面に立たされたとき、弁護士の有無が人生の行方を大きく左右することをご存じでしょうか。「逮捕されただけで大きな不利益があるのでは」と不安になる人も多いでしょう。
刑事手続きは専門性が高く、逮捕直後から適切な対応を取るかどうかで勾留・起訴・前科・社会復帰の可能性が変わります。次に、逮捕時に弁護士がなぜ必要なのか、結論・理由・実際の効果を詳しく解説します。
【結論】逮捕直後こそ弁護士が不可欠
逮捕は、何の前触れもなく突然訪れることがあります。逮捕されると、まず警察署や拘置所での取り調べが始まり、勾留されるかどうかが72時間程度の間に決まります。この段階では、検察官や裁判官が「勾留の必要性」を判断しますが、その判断材料は弁護人の主張があるかどうかで大きく変わります。
実際の刑事事件の統計や弁護実務でも、逮捕後すぐに弁護士が介入したケースと、そうでないケースとでは、勾留判断や不起訴獲得の確率に明確な差があるといわれています。
身柄解放・勾留回避は初動対応で決まる
逮捕時に弁護士が大きな役割を果たすのは、勾留の回避や身柄解放の交渉です。勾留が認められてしまうと、その後の身柄拘束が最大で10日、さらに延長請求が認められると最長20日程度まで続きます。
この間、本人は外に出ることができないません。そのため、仕事・家庭・社会生活への影響が大きくなります。このことから、弁護士は被疑者に代わって、逮捕直後に以下のような行動を行います。
- 被疑者との接見(被疑者とののコミュニケーション)
- 保釈や釈放に向けた準備と書面の作成
- 裁判官・検察官への釈明資料の提出
- 反省や社会的信用の評価資料の収集
これらは単なる形式的な手続きではなく、裁判官が勾留請求を認める・認めないという判断に直接影響します。つまり、初動対応が早ければ早いほど、勾留回避・身柄解放の可能性が高まるのです。
本人や家族だけでの対応には限界がある
家族や本人が警察署で必死に説明したり、「自分は反省している」と訴えたりしても、刑事手続きは専門性が極めて高いため独自の判断だけで勝負できるものではありません。警察や検察は法的根拠に基づいた捜査を進め、裁判所は法令に基づいた勾留判断をします。
このプロセスは法律の専門的な知識・経験がなければ十分に理解できません。たとえば、以下のような対応は専門家でなければ非常に難しいことが多いです。
- 捜査機関が作成した調書の法的評価
- 不起訴獲得に向けた証拠の分析
- 被害者対応を含む示談交渉
- 量刑や反省の情状を裁判官に正しく伝える方法
これらは「気持ちだけで伝わるもの」ではなく、法理・裁量基準・判例の積み重ねに基づくテクニックが必要です。弁護士は法律だけでなく、捜査機関・裁判所の判断プロセスを知り尽くしているため、家族や本人が単独で対応するのとは質と結果が大きく異なります。
逮捕後に弁護士ができること
逮捕されてからの数日間は、刑事手続き全体の流れを決める重要な局面です。弁護士が介入することで、ただ「付き添う」だけでなく、捜査機関とのやり取りや供述方針の検討など、法的なリスクを最小化しつつ結果を変える具体的な行動が可能になります。ここでは、逮捕後に弁護士が実際に何をできるのかを、現場感のある視点で丁寧に解説します。
警察・検察との交渉を代理できる
逮捕後、警察や検察は被疑者に対して取り調べを進めるとともに、勾留請求や釈放の判断材料を集めています。弁護士の役割は単に書類を出すことではなく、「法的根拠と実務経験に基づいた交渉」です。
弁護士は次のような交渉を代理できます。
- 勾留請求に対する意見書の提出
- 一時釈放(在宅捜査)を求める申し立て
- 取調べへの同席・供述内容の整理
- 被害者対応や示談交渉の窓口
法的には、弁護士が介入することで捜査機関側の見方が変わることが少なくありません。たとえば「逃亡のおそれがない」「反省が見える」といった主張は、弁護士が専門的に立証することで信用性が高まります。
このように、弁護士は捜査機関との間で法的・戦略的に有利な交渉を行う専門家として機能します。
勾留阻止や早期釈放を目指せる
逮捕後、注意すべきなのが「勾留決定」です。勾留が決まると、被疑者は最長20日程度もの長期拘束を受ける可能性があります。こうした不利益を回避するためにも、弁護士による対応は不可欠です。
弁護士は逮捕後すぐに次のような活動を行います。
- 勾留請求時に裁判官宛の意見書を提出
- 釈放・在宅捜査を求める法的主張
- 勾留請求の根拠となる事情(逃亡・証拠隠滅のおそれ)への反論
- 客観的資料の収集(勤務先・家族・地域での評判等)
これらの活動を逮捕直後の段階で行うかどうかで勾留判断が変わってくることは、刑事弁護の現場ではよくあることです。専門家が戦略的に動くことで、勾留阻止や早期釈放の可能性を最大化できます。
取調べ対応や供述方針を助言できる
逮捕後に待ち構えているのが取調べです。取調べでは、警察官や検察官によって被疑者の供述が誘導されることがあります。刑事手続きでは、供述内容が後の公判や量刑に大きく影響するため、方針選択が極めて重要です。
弁護士が介入することで、以下のアドバイスを受けられます。
- 供述すべき内容と黙秘すべき内容の判断
- 調書署名押印を求められた場合の法的助言
- 誘導的な質問に対する対処法
- 供述の法的評価とその根拠
取調べは慣れない状況で行われるため、冷静な判断が難しい場面が多いです。しかし、弁護士は客観的事実と法理にもとづいて助言することで、誤った供述や不利な証拠として確定してしまうリスクを下げることができます。
家族や職場との連絡調整を行える
逮捕後、被疑者本人が外部と自由に連絡できない間、家族や職場との調整を弁護士が代行することは非常に重要です。被疑者自身が直接連絡できない状況では、以下のようなサポートが役立ちます。
- 逮捕の事実を家族へ正確に伝える
- 公的機関との連絡調整
- 勤務先への事情説明(就業規則や欠勤対応)
- 家族が行うべき手続きの案内(本人保証人、書類提出等)
これらは「弁護士だからできること」ではなく、弁護士だからこそ正しく・不利益なく行える対応です。誤った説明や不正確な情報は、結果として本人に不利益をもたらす可能性があるため、専門家による代行は安心につながります。
国選弁護士と私選弁護士の違い
逮捕・刑事事件で弁護士が付く場合、「国選弁護士」と「私選弁護士」という二2の形があります。両者は法律上どちらも弁護活動を行う点では同じですが、選任のタイミング・弁護士を選べるか・対応の幅が大きく異なります。
次に、国選弁護人と私選弁護人の誤解しやすいポイントについて解説します。
国選弁護士は原則として勾留後に選任される
国選弁護人とは、裁判所(国)が弁護士費用を負担して選任する弁護士のことです。被疑者・被告人が経済的理由で自分で弁護士を雇うことが難しい場合に利用されます。
裁判所の判断で国選弁護士が付くのは、勾留後や起訴後など一定の条件が整った段階で選任される場合が多いのが特徴です。国選弁護人は、国が費用を負担して選任する制度であり、費用負担がないという利点があります。
ただし、裁判所が選任するのは「弁護士会の名簿から選ばれた弁護士」であり、被疑者や家族が自分で弁護士を選べるわけではありません。そのため、相性が悪い、刑事弁護の実績が少ない弁護士に当たる可能性もあるでしょう。
弁護士を選べない点が最大のデメリット
国選弁護人の最大のデメリットは、自分で選べない点です。裁判所や弁護士会から割り当てられる仕組みのため、必ずしも刑事弁護の経験が豊富な弁護士に当たるとは限りません。経験の少ない弁護士が担当になってしまうリスクもあります。
また、逮捕後の初動段階(逮捕直後〜勾留判断前)に介入できるタイミングが限定されるため、勾留回避や身柄解放に向けた早期対応が遅れるケースもあります。これは、逮捕から勾留決定までの72時間前後という短い期間で動かなければならない刑事手続きの実務面で大きな差につながります。
私選弁護士は逮捕直後から対応できる
私選弁護人とは、被疑者本人や家族が自分で費用を負担して弁護士を選び契約する弁護人です。費用は発生しますが、逮捕直後の初動段階から弁護活動が可能です。これは、勾留阻止や示談交渉、不起訴の働きかけといった初期の対応において大きなメリットになります。
私選弁護士は、依頼時期に制約がなく、被疑者がまだ在宅捜査中であっても早期から助言や交渉が行えるため、結果として勾留回避や不起訴獲得の可能性を高める役割が期待できます。
費用はかかるが対応の幅が広い
私選弁護士は自ら弁護士を選んで依頼するため、費用はかかりますが、対応の範囲と質が広がるのが大きな特徴です。費用は弁護士との契約で自由に設定できますが、それに見合った積極的な弁護活動が期待できます。
たとえば、被害者対応の調整や証拠収集、取調べ対策なども含めて綿密な戦略を立てるなど、ケースに即したオーダーメイドの弁護が可能です。一方で国選弁護士は費用負担がないメリットがありますが、弁護士を選べない、活動が最低限の範囲に制限される可能性があるなど、対応の幅が限られることがあります。
事件内容別に見る弁護士選びの注意点
「弁護士」と一口に言っても、事件の内容によって勝負どころや必要なスキルはまったく異なります。逮捕・勾留・起訴・量刑・示談までの流れは事件ごとに求められる知識や弁護戦略が変わります。
つまり、同じ刑事弁護でも、事件の種類に最適な弁護士を選ぶことが重要です。次に、代表的な事件タイプごとに、弁護士選びで重視すべきポイントを具体的に整理します。
暴行・傷害事件は示談交渉の経験が重要
暴行・傷害事件で弁護士を選ぶ際に重視したいのは示談交渉の実務経験です。暴行・傷害事件は被害者と加害者という当事者間の関係性が刑事処分の行方に大きく影響します。弁護士は、単に裁判手続きを担当するだけではなく、以下の内容まで深く関与します。
- 被害者との早期示談成立
- 示談金(金銭的補償)の妥当性判断
- 被害者感情に配慮した交渉
- 再発防止策や反省状の作成支援
示談が早期に成立すると、不起訴(刑事処分がつかない)、あるいは量刑が軽くなる可能性が大きく上がります。逆に示談交渉の経験が乏しい弁護士では、被害者との折衝において適切なタイミングや説得方法を逃し、結果として不起訴を取りこぼすケースもあります。
そのため、暴力案件では示談の成功事例や示談交渉能力の高さを確認することが弁護士選びの最大のポイントです。
性犯罪は被害者対応に慣れているかが鍵
性犯罪事件は社会的関心が高く、誤解も生じやすいジャンルです。他の事件以上に被害者対応への慎重さ・専門的なコミュニケーションスキルが求められます。性犯罪事件では次のような特徴があります。
- 被害者の心情が刑事判断に大きく影響する
- 社会的評価や報道リスクが高い
- 再犯評価が量刑に反映されやすい
ここで重要なのは、単に法律知識がある弁護士ではなく、以下のような知識があるかどうかです。
- 被害者支援の実務知識
- 心理的配慮のある交渉スキル
- 客観資料による反論立証のノウハウ
- プライバシー保護や匿名報道対応の知識
性犯罪は証拠や証言が争点になることが多く、弁護士の慎重な戦略立案が不起訴・執行猶予・量刑の鍵になります。情報開示や報道対応にも配慮する必要があるため、性犯罪に豊富な対応実績のある弁護士の選択が非常に重要です。
薬物事件は否認・自白の判断力が問われる
薬物事件は証拠の性質や立証方法が独特であり、自白戦略の適否や否認の方針設定が重要です。薬物事件では、以下の特徴があります。
- 自白の有無が裁判官の評価に直結
- 客観証拠(所持品など)の有無・押収手続の適法性が争点
- 再犯評価が厳しく量刑が重くなりやすい
- 逮捕段階から証拠精査が必要
弁護士には、取調べ時点での対応方針(自白するか否認するか)、科学的な証拠の合法性のチェック、証拠開示請求のタイミングなど高度な判断が求められます。薬物案件は自白により不利益な認定になりやすく、弁護士が取調べ対応の助言・署名押印の是非判断を行うことで、不起訴や軽い処分を勝ち取る可能性が大きく変わります。
そのため、薬物事件では薬物事件の実務経験・科学的証拠の知識・取調べノウハウを持つ弁護士選びが不可欠です。
窃盗・詐欺は前科回避の戦略が重要
窃盗・詐欺事件で弁護士を選ぶときには、前科の回避戦略・前科が残った場合の社会的影響を理解しているかが非常に重要です。窃盗・詐欺事件は、以下の点が特徴です。
- 被害者が個人・法人どちらでもあり得る
- 示談が不起訴に直結する可能性が高い
- 社会的信用に影響しやすい
- 再犯歴が量刑評価に大きく響く
弁護士は示談交渉だけでなく、前科を避けるための法的・心理的戦略を構築します。たとえば、以下のとおり単なる示談ではない、前科回避に特化した戦術が必要になります。
- 被害者との早期・丁寧な示談
- 被害弁償のスケジューリング
- 社会的背景や反省状の整理
- 被害者の心証を改善するための働きかけ
前科が付くかどうかは、その後の就職・転職・資格取得にも影響する重要な部分であるため、窃盗・詐欺事件では前科回避戦略に長けた弁護士を選ぶことが最優先です。
弁護士選びで失敗しやすいパターン
逮捕・勾留という状況では、誰でも不安になり、「できるだけ早く弁護士を」と考えるものです。しかし、慌てて決めた弁護士選びは結果として不利益が出ることが非常に多いため、注意が不可欠です。
次に、弁護士選びでよくある失敗パターンを深掘りし、なぜそれが失敗なのか・どんな不利益が生じるのかを具体例とともに解説します。
費用の安さだけで選んでしまう
「費用が安ければ安心」と思いがちですが、刑事事件では費用の安さ=質の高さではありません。安さだけで選んだ弁護士は次のようなケースが多く見られます。
- 他の事件(離婚・相続など)を中心にしていて刑事事件の対応が不慣れ
- 初動対応の優先順位が低く、接見や書面準備が遅い
- 勾留阻止・釈放交渉の経験が乏しいため戦略が弱い
結果として、勾留を阻止できず長期拘束になったり、不起訴を逃したりするケースが起こります。刑事事件は時間との勝負であり、費用の安さを重視することが失敗につながる最大の理由です。
刑事事件をほとんど扱っていない弁護士を選ぶ
弁護士には得意分野があります。交通事故・離婚・相続などの案件を多く扱っている弁護士が必ずしも刑事事件に強いわけではありません。
そもそも、刑事事件には次のような専門的なステップが含まれます。
- 逮捕直後の接見と証拠整理
- 勾留請求・保釈請求の戦略
- 示談交渉のタイミングと方法
- 取調べでの供述方針(何を話すべきか/話さないべきか)
これらは、民事事件ではほとんど経験しないスキルです。経験の浅い弁護士や刑事事件未経験の弁護士に依頼すると、以下のことが起こり得ます。
- 過去の事例と比較した戦略立案ができない
- 検察官・裁判官が重視するポイントを理解していない
- 被害者対応が曖昧で示談が成立しにくい
刑事事件は、戦術・戦略が結果に直結する分野です。経験豊富な刑事弁護士との比較で、対応の差が結果に大きく影響するのです。
連絡が遅く対応が消極的
逮捕・勾留という局面では「時間」が最も重要な資源です。弁護士を選んだ後でも、連絡や動きが遅い弁護士は結果を左右します。連絡が遅い弁護士に依頼をしてしまうと、以下のようなことが起こり得ます。
- 深夜や休日に弁護士に連絡しても返信が翌日
- 接見してくれるまで数日以上かかる
- 書類準備や検察官とのやり取りが遅い
刑事手続きは短期間で判断が進むため、遅延は不利益につながります。たとえば、接見が1日遅れただけで勾留阻止戦略の立て直しができなかったという事例は実務でも珍しくありません。
優れた弁護士は、初回相談時点で以下について説明をします。
- 連絡手段(電話・メール・LINE等)の確認
- 緊急時の対応フロー
- 夜間・休日の対応可否
これらがない弁護士は、緊急時の対応力が低いと判断できます。とくに刑事事件においては、依頼をしないほうが良いでしょう。
よくある質問
逮捕された場合のよくある質問を紹介します。
Q.逮捕されたらすぐ弁護士を呼べますか?
A.はい。逮捕された直後でも弁護士を呼ぶことができます。
逮捕された後でも、本人・家族・関係者が弁護士に連絡すれば、すぐに接見(面会)を手配できます。刑事手続きでは、逮捕直後〜勾留判断までの時間が勝負です。弁護士が早く接見すると以下のようなメリットがあります。
- 取調べでの供述方針について助言をもらえる
- 不利な調書を書かないようサポートできる
- 勾留阻止や早期釈放の働きかけが可能になる
- 示談交渉を始める準備ができる(被害者対応)
ただし、警察署や拘置所は面会制限や手続きが必要なため、弁護士側が事前に連絡・予約を行い、身分証明や接見許可の準備を整えておく必要があります。経済的に不安がある場合でも、後述の「当番弁護士制度」を利用するなどの方法がありますので、可能な限り早期に連絡することを強くおすすめします。
Q.当番弁護士と私選弁護士の違いは?
A.当番弁護士と私選弁護士は利用するタイミングと役割が異なります。
【当番弁護士】
- 逮捕直後の接見が主な役割
- 警察署で呼べる無料・立会い弁護
- 経済的に余裕がない場合の緊急安全弁護
- 勾留阻止・保釈などの長期的戦略は限定的
【私選弁護士】
- 依頼者が自分で選んで契約する弁護士
- 逮捕直後から勾留・起訴・示談・裁判まで一貫した戦略
- 被害者対応・量刑対策・示談交渉の実行力が高い
- 費用はかかるが対応の質と戦略の幅が圧倒的に広い
当番弁護士は「一時的な安心」を提供してくれる存在ですが、逮捕の本格対応は私選弁護士に依頼するのが一般的かつ結果につながりやすいです。逮捕案件では、当番弁護士に接見してもらい、その後すぐに私選弁護士に切り替えるケースも多く見られます。
Q.家族が勝手に弁護士を選んでもいい?
A.はい。家族が弁護士を選んで依頼することはできます。
逮捕・勾留事件では本人が自由に行動できないため、家族・親族・友人が代理で弁護士を選んで契約しても問題ありません。家族が弁護士契約する際の注意点は以下のとおりです。
- 弁護士への委任状や依頼書(書式は事務所に確認)
- 事件概要・逮捕状況を正確に弁護士に伝える
- 連絡可能な連絡先(家族の携帯・メール)を弁護士に伝える
とくに逮捕直後〜勾留判断前の段階では、家族が迅速に弁護士と連絡を取り、接見を手配することが重要です。家族が迅速に動くことで、勾留阻止・保釈申請・示談交渉のスタートが早まり、結果として有利な展開につながることが多くあります。
Q.弁護士を途中で変えることは可能?
A.はい。途中で弁護士を変更することは可能です。
弁護士を変えることは可能ですが、注意すべき点もあります。
- 事件処理が進んでいる場合、引継ぎが必要
- 掛かった費用や手続き上の手戻りが発生することもある
- 勾留中・保釈交渉中などタイミングによっては影響が出る
弁護士を変えるべきサインとしては、以下のとおりです。
- 連絡が遅く意思疎通が取れない
- 戦略や方針が不明瞭
- 専門性・対応力が不足していると感じる
- 説明が曖昧・不安だけが残る
弁護士はクライアントのために最善を尽くす義務があるため、対応に納得できない場合は変更を検討するのも自由です。ただし、その場合は新しい弁護士との引継ぎを早めに行うことが大切です。
Q.弁護士がいないとどうなりますか?
A.弁護士がいないと刑事手続きで不利益を被りやすくなります。
逮捕・勾留・起訴〜裁判に至るまで、弁護士が介入しない場合は以下のリスクが高まります。
- 取調べで不利な供述をしてしまう
- 調書への署名押印が安易に進んでしまう
- 勾留阻止や釈放申請が行われない
- 示談機会を逃し不起訴可能性が下がる
- 量刑交渉のタイミングを逃す
とくに勾留判断は「弁護士が主張しないと阻止しにくい」と言われるほど、弁護士の存在が結果に直結する場面です。弁護士は「法律の専門家」であるだけでなく、戦略的に捜査機関と渡り合う代理人としての役割も果たします。そのため、「弁護士がいないとどうなるか?」は単なる不在ではなく、刑事事件全体に大きな影響が出る可能性があるという認識が重要です。
まとめ
逮捕時の弁護士選びは、刑事事件の結果を左右する最重要ポイントです。刑事手続では逮捕後すぐに取調べが始まり、短期間で勾留の判断が下されるため、初動が遅れるほど身柄拘束が長期化し、仕事・家庭・社会生活への影響が拡大します。
信頼できる弁護士を選ぶ基準は、①刑事事件の実務経験が豊富で解決事例があること。②逮捕・勾留案件の対応実績があり勾留阻止や不起訴獲得に慣れていること。③初動対応が速く、相談から接見・書面提出までを即日〜短時間で動けること。④接見にすぐ行ける距離・体制があることです。
弁護士が入れば、勾留回避や早期釈放の主張、取調べ対応の助言、示談交渉、家族・職場との連絡調整など「本人や家族だけでは難しい対応」を進められます。国選は費用面の利点がある一方、原則勾留後の選任で弁護士を選べないため、勝負所の初動で不利になり得ます。
費用の安さだけで選ぶ、刑事事件を扱わない弁護士に依頼する、連絡が遅い弁護士を選ぶ。こうした失敗を避け、事件類型に合う弁護士を早期に確保することが、身柄解放と処分軽減の近道です。