複数人で犯罪を行った際の責任とは?共同正犯の成立要件と処分を解説

複数人で犯罪を行った際の責任とは?共同正犯の成立要件と処分を解説
複数人で犯罪を行った際の責任とは?共同正犯の成立要件と処分を解説

「自分は直接手を下していないから関係ない」「現場にいなかったから罪には問われないはずだ」グループでの犯行やトラブルにおいて、このように安易な自己防衛の言い訳を口にする人は後を絶ちません。

近年、SNSを介した匿名グループによる「闇バイト」の指示役や、強盗・詐欺の実行グループなどが連日のように世間を騒がせています。彼らの多くは「見張り役だから」「車を運転していただけだから」と主張しますが、刑事司法の現場が導き出す結論は、甘くありません。

法律では、直接手を汚していない者であっても、他のメンバーが引き起こした最悪の結果について「全員が主犯(正犯)と同じ重さの連帯責任を負う」という原則が存在します。これが、刑法第60条に定められた「共同正犯」の正体です。

軽い気持ちで仲間に付き合ったり、内容も知らずに高額な報酬の誘いに乗ったりした結果、気がつけば一生を棒に振る重罪の容疑者として刑務所に入る人も少なくありません。

本記事では、複数人で犯罪に関わってしまった場合に適用される「共同正犯」の成立要件を徹底的に解説します。不注意が連鎖して起きた事故での過失の重なり、途中でメンバーが暴走した際の予測できない連帯責任の範囲など、実務で問題となる境界線を網羅しました。

さらに、途中でグループから離脱して責任を断ち切るための厳格な条件や、嘘の供述から身を守るための弁護士活用法まで、自分の身を守るために知っておくべき知識を解説します。

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目次

複数人で犯罪を行った場合の責任と単独犯との違い

1人で犯罪を実行する単独犯に対し、複数人が関与する犯罪は社会的な影響や被害が大きくなりがちです。そのため、刑法では複数人で関わった者たちに対して非常に厳しい責任追及の枠組みを用意しています。

「自分は少し手伝っただけだから軽い処分で済むだろう」という安易な言い訳は、司法の場では通用しません。まずは、複数人で犯罪を計画・実行した際にどのようなペナルティが科されるのか、その全体像を整理します。

1人ではなく複数人で計画・実行した際のペナルティ

複数人で犯罪を計画して実行に移した場合、単独犯と比べてペナルティが著しく重くなる傾向があります。組織的に行われる犯罪は防ぐことが難しく、被害規模が拡大しやすいため、裁判でも悪質と判断されやすいからです。

実際に刑が言い渡される量刑の段階では、主導的な立場にあった者に対して極めて厳しい実刑判決が下されます。さらに、複数人での犯行は組織的犯罪処罰法や、暴力団対策法といった特別法の適用対象にもなり得ます。

これらの法律が適用された場合、通常の刑法が定める上限を超える極めて重い刑罰が科される仕組みです。軽い気持ちで誘いに乗り、グループ犯罪に加担する行為は、一瞬で自らの人生を破滅させる選択に他なりません。

見張り役や手伝い役など他の関わり方との実務的な区別

複数人で犯罪に関わる際、全員が同じ役割を果たすわけではなく、実行犯以外の関わり方も存在します。実務においては、直接手を下した「実行犯」のほか、周囲を警戒する「見張り役」や物資を提供する「手伝い役」に分かれるでしょう。

これらの関わり方は、刑法上で「共同正犯」「幇助犯(ほうじょはん)」「教唆犯(きょうさはん)」に区別されます。単に犯行を手助けしたに過ぎない「幇助犯」と判断された場合は、刑法第63条により刑が減軽される規定があります。

しかし、現場で手を下していなくても、意思決定に関わっていれば「共同正犯」として扱われるケースは少なくありません。自分がどの役割に分類されるかによって、その後の刑事手続きや刑罰の重さは実務上、天と地ほどの差が生まれます。

全員が同じ重さの責任を背負うことになる法的な根拠

役割が分かれていたとしても、一定の要件を満たせば「全員が主犯(正犯)と同じ責任」を負うことになります。この法的な原則を定めているのが、刑法第60条です。現場で直接暴力を振るっていない者や、財物を盗み出していない者であっても、この規定によって等しく処罰されます。実際の刑法第60条には、以下のように明記されています。

二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。
引用元:刑法|第60条

この「すべて正犯とする」という文言こそが、関与した全員に同じ重さの責任を背負わせる法的根拠です。たとえ見張り役や運転手であっても、犯罪を成功させるために不可欠な役割を担っていれば、主犯と同罪に問われます。複数人の犯罪における「一部実行・全部責任」の原則を正しく理解し、安易な加担が招く致命的なリスクを知るべきです。

グループでの犯行において全員が処罰される基本条件

「自分はただ、車の中で待機していただけだから関係ない」そんな言い訳は、警察の取り調べ室や裁判所では通用しません。たとえ手を下していなくても、グループで行われた犯罪では、全員が同じ「主犯」として裁かれる可能性があります。

では、どのような状態になれば「お前も主犯だ」と判定されてしまうのでしょうか。ここでは、法律がグループ全員を地獄へ引きずり込む3つの基本条件を、わかりやすく解説していていきます。

一緒に悪いことをしようと合意したことを指す共謀の定義

最初の条件は、メンバーの間で「よし、これをやろう」という共通の意思があること、すなわち「共謀(きょうぼう)」です。「共謀なんて大げさな誓い合意はしていない」と思うかもしれません。しかし実務上、この合意は「契約書」のように明確に交わす必要は一切ないのです。

たとえば、リーダー格の人間から「今夜、あいつを脅しに行くからついてこい」と言われ、無言で頷いただけでも合意が成立します。さらに、お互いにアイコンタクトを交わした、あるいはなんとなく雰囲気で察してその場に同行した、という「暗黙の了解」であっても共謀とみなされます。「はっきりと返事をしていないからセーフ」という逃げ道は、司法の現場には最初から用意されていません。

役割分担に基づいて実際の犯行に加担したという事実

2つ目の条件は、グループ内で割り振られた自分の役割を、実際に果たしたという「実行」の事実です。犯罪は、現場で被害者を殴ったり、金庫からお金を奪ったりする人だけで成り立つものではありません。

逃走用の車を運転する、ターゲットの居場所をLINEで教える、周囲の警戒に立つなど、あらゆる役割が存在します。裁判では、これらすべてのピースが組み合わさることで、1つの犯罪が完成したと判断されます。

そのため、「自分は人を殴っていない。ただ見張りを頼まれただけ」という言い分は、罪を軽くする理由にはなりません。むしろ、あなたのその「手助け」があったからこそ、仲間は安心して犯罪を行えたのだと厳しく追及されることになります。

自分の行動が結果に影響したかを判断する実務上の着眼点

最後のポイントは、「あなたのその行動が、犯罪を成功させるためにどれほど役に立ってしまったか」という影響度です。専門用語では「因果関係」と呼びますが、実務上ではもっと単純で泥臭いチェックが行われます。

警察や検察は、あなたの行動を指して「もしあなたがその役割を拒否していたら、この犯罪は成立しなかったのではないか」という点を徹底的に突き詰めるのです。たとえば、あなたが「運転手」としてグループに車を提供していなければ、犯行現場からの逃走は不可能だったはずです。

このように、あなたの行動が犯罪の成功を強く支えていたと判断されれば、責任の重さは一気に跳ね上がります。「全体の計画の中で、自分のピースがどれだけ不可欠だったか」という現実的な着眼点によって、主犯としての運命が決まります。

現場にいなかった指示役の責任を追及する認定基準

「自分は現場に行っていないし、ただ自宅でメッセージを送っただけだ」SNSの匿名グループや特殊詐欺、あるいは強盗のニュースで、いわゆる「闇バイト」の指示役たちがよく口にする言い訳です。しかし、日本の法律はそんなトカゲの尻尾切りのような逃げ道を、絶対に許しません。

むしろ、裏に隠れて他人の手を汚させた「黒幕(指示役)」こそが、重い責任を背負うべきだと判断されるのです。ここでは、現場に指一触れなかった者が、なぜ、そしてどのようにして「主犯」として起訴され、重い刑罰を受けるのかについて解説します。

裏で操っていた首謀者やリーダーに刑罰を科す法理

現場に行かない首謀者を、実行犯とまったく同じ「共同正犯」として裁くための法理を、専門用語で「共謀共同正犯(きょうぼうきょうどうせいはん)」と呼びます。「犯罪の計画を立てて、他人を実行人形のように使って犯罪を成し遂げたのであれば、それは自分で直接手を下したのと同じことだ」という考え方です。

この法理のもとでは、裏で糸を引いていた人物こそが「犯罪の主役(正犯)」として扱われます。実際に、この首謀者と実行犯の扱いの違いを整理すると、以下のようになります。

役割 実際の行動 法的な責任(実務上の扱い)
指示役(首謀者) 自宅や海外からスマホで犯行の手順やターゲットを指定する 共同正犯(主犯)最も強い意思決定をした者として、実務上最も重い刑罰が科される。
実行役 指示通りに現場へ行き、実際に物を盗んだり暴力を振るったりする 共同正犯(主犯)主犯として裁かれるが、指示に従っただけの従属的な立場として、首謀者より刑が軽くなることもある。

このように、手を汚したかどうかは重要ではありません。「その犯罪の計画を誰が支配し、誰のために行われたのか」という、犯罪の核心部分を握っている人物が、主犯としてすべての責任を負わされるのです。

はっきり口に出さなくても成立する黙示の合意の解釈

「指示役からは『様子を見てこい』としか言われていない。強盗しろなんて言われていない」そんな言い訳も、警察の捜査では通用しません。共謀の合意は、言葉で「強盗をしよう」とはっきりと確認し合う必要はないからです。

これを「黙示の共謀(もくしのきょうぼう)」と呼び、実務上でも非常に重要な認定基準となっています。たとえば、以下のようなシチュエーションを想像してみてください。

  • 「金目のものがあるから入るぞ」と言われ、無言のまま武器になりそうなバールを受け取った。
  • 相手が明らかに他人の家に侵入しようとしているのを横で見ながら、無言で玄関の外に立って周囲を警戒した。
  • 事前に具体的な目的は聞かされていなかったが、「怪しい仕事だ」と気づきながら、指示された通りに高額な報酬と引き換えに車を走らせた。

こうした「状況から考えて、悪いことをしていると分かっていて協力したよね」と言える関係性があれば、言葉による明確な契約がなくても「黙示の合意(お互いに納得していたこと)」があったとみなされます。「そんなつもりはなかった」と心の中でどれほど弁解しても、客観的な行動が合意の存在を雄弁に証明してしまうのです。

事前の準備や計画への関与度合いから関わりの深さを測る手順

警察や検察が「この人は現場にいなかったけれど、本当のボスだ」と立証する際、犯行前のあなたの行動を徹底的に分析します。現場に不在だった人物の関与の深さを測るため、実務では以下のような手順に沿って、事前の準備や計画段階での行動を一つずつ積み上げていきます。

まずはスマホの通信履歴です。LINE、Telegram、Signalなどのメッセージアプリのやり取りを解析し、誰が誰に指示を出していたか、その「主従関係」を特定します。発言の頻度や、具体的な段取りの決定権がどちらにあったのかが調べられます。

次に、物理的な準備への関与です。レンタカーの手配、犯行に使う道具(バールや粘着テープ、マスクなど)の購入履歴、ターゲットとなる企業のリストや家の間取り図の作成など、「誰がその犯罪の準備を整えたのか」を突き止めます。

お金の流れも重要な証拠です。「犯罪資金を誰が出したのか」「成功報酬の配分ルールを誰が決めていたのか」を調査します。これらの調査手順を通じて、「この人物がいなければ、この計画自体が立ち上がらなかった」という事実が証明されると、現場にいなかった指示役は完全に「首謀者」として起訴される運命をたどります。

裏からコソコソと人を動かす行為は、法律の前では無意味であり、むしろその卑劣さゆえに重い処罰が待っているのです。

複数人の不注意が重なって事故が起きた場合の扱い

これまでは、泥棒や詐欺のように「よし、悪いことをしよう」とわざと行う犯罪(故意犯)の話をしてきました。では、「誰もそんな事故を起こすつもりはなかったのに、お互いの油断や不注意が重なって大事故が起きてしまった」というケースはどうなるのでしょうか。

「あいつが確認を怠ったからだ」「いや、あいつの指示が曖昧だったせいだ」と、責任のなすり合いになりがちなシチュエーションです。実は、こうした「不注意(過失)」による事故であっても、複数人が主犯(共同正犯)として同時に罪に問われる現実があります。

1人のミスではなく複数の油断で被害が出た際の責任

「自分1人のせいじゃない。みんなで確認していなかったんだから、お互い様だ」そうやって責任を分散させようとする言い訳は、警察や裁判所では通用しません。複数の人間がそれぞれ少しずつ油断し、その不注意がドミノ倒しのように重なって誰かを怪我させたり死亡させたりしたとしましょう。この場合、その全員が「過失運転致死傷罪」や「業務上過失致死傷罪」の共同正犯として裁かれる可能性があります。

この場合、責任が「人数分で割り算」されて軽くなるわけではありません。「全員が、発生した結果(被害者の死傷など)に対して100%の重い刑事責任を負う」ことになります。「あいつもミスをしていた」という事実は、あなたの罪を軽くする免罪符には一切ならないのです。

過失による連帯責任が認められるための具体的な条件

わざとではない「不注意の重なり」について、全員を共同正犯として連帯責任(すべて正犯)にするためには、裁判実務において極めて厳格な条件が求められます。ただ「たまたま同じ現場で、2人が同時に不注意だった」というだけでは、共同正犯にはなりません。
過失による共同正犯が認められるためには、主に以下の条件が満たされている必要があります。

  • お互いに注意し合うべき、共通の義務(共同の注意義務)があること
  • お互いの行動を信頼し、協力して1つの危険な作業を行っているという認識があること
  • それぞれの不注意が、最終的な事故の発生に直接結びついていること

たとえば、医療現場での共同手術や、建設現場での共同クレーン作業などがこれに該当します。「自分がミスをすれば、相手のミスと合わさって大変なことになる」と予測できたはずの状況で、お互いに確認を怠った場合にのみ、この連帯責任の網がかけられます。

仕事上のミスが重なって大きな被害が出た過去の事例

実務上、この「過失の共同正犯」が認められた最も有名な事例が、1991年に発生した信楽高原鐵道(しがらきこうげんてつどう)の列車正面衝突事故です。この痛ましい大事故では、運行管理や信号システムの扱いにおいて、複数の担当者たちの「不注意な指示」や「思い込みによる確認の省略」が連鎖的に重なりました。

誰か1人がルール通りに動いていれば防げたはずの事故でした。しかし、お互いに「相手が正しく処理しているだろう」と過信し、やるべき安全確認を怠った結果、担当者たちが等しく刑事責任を問われる事態となりました。

この事例からも分かるように、仕事での「これくらい大丈夫だろう」「きっと相手が確認してくれている」という些細な甘えは、時に重大な人命事故を引き起こし、あなた自身を刑事罰の対象へと引きずり下ろす致命的な引き金になります。

途中で仲間が暴走して予定外の事件になった際の責任

「ただの空き巣だと言われて、見張り役を引き受けただけだった」「それなのに、部屋に入った仲間が住民に見つかって暴行を加え、怪我をさせてしまった」このように、グループの誰かが現場でパニックになり、あるいは独断で暴走して当初の計画をはるかに超える凶悪な事件に発展してしまうケースは珍しくありません。

「そんな暴力を振るうなんて聞いていない」という言い訳は、果たして司法の場で通用するのでしょうか。ここでは、仲間が予定外の暴挙に出た際、あなたにどこまでの刑事責任が及ぶのかという、恐ろしい現実を解説します。

実行犯が当初の計画を無視して暴力を振るった際の見解

結論から言うと、「全く聞いていなかった暴走」であっても、あなたがその責任を一切負わずに済むとは限りません。実務では、当初の計画(共謀)の範囲をメンバーが超えてしまった場合、それを「共謀の逸脱」と呼びます。

この逸脱行為に対して、あなた自身の責任がどこまで及ぶかは、以下の2つの視点から厳しく判断されます。

  • 当初の計画(窃盗など)の延長線上として、その暴走が「予測できた範囲(客観的予見可能性)」であったか
  • 暴走が始まったことを知った時点で、あなたがそれを止めたり離脱したりする余地があったか

たとえば、夜間に他人の家に忍び込む計画であれば、「住人と鉢合わせて揉み合いになり、暴力を振るうかもしれない」ということは、常識的に考えて予測できたはずだと判断されます。そのため、直接手を下していなくても、「予測できた範囲の暴走」については、あなたも共同の責任を追及される可能性が極めて高いのです。

想定より結果が重くなってしまった場合の処分の範囲

当初の計画より結果が重くなってしまった場合の処分の範囲は、法律上、非常に重く設定されています。これを「結果的加重犯」と呼び、実務上でもグループ犯罪で頻繁に問題となるポイントです。

たとえば、「脅して大人しくさせるだけ(傷害の共謀)」のつもりだったのに、仲間が激しい暴行を加えて相手を死なせてしまった(傷害致死の結果)というケースを想定してみましょう。
この場合、あなた自身に「殺すつもり」や「死なせるつもり」が一切なかったとしても、以下の表のように重い責任が等しく科されます。

当初の計画(認識) 実行犯の暴走による結果 あなたに適用される処分の範囲
窃盗(物を盗む) 住人を脅して金を奪った 強盗罪の共同正犯(鉢合わせ時の暴行・脅迫を予見できたと判断される場合)
傷害・暴行(痛めつける) 相手が死亡してしまった 傷害致死罪の共同正犯(死亡させるつもりがなくても、結果に対する重い責任を全員で負う)

このように、「そんな結果(死亡や強盗)は望んでいなかった」という主観的な気持ちは関係ありません。不法な行為に手を貸した以上、そこから生じた最悪の結果に対する責任は、グループ全員で連帯して背負わされることになります。

自分は知らなかった罪名まで適用されてしまうリスク

グループ犯罪に関わる最大の恐怖は、自分の全く知らないところで「聞いたこともない重罪の罪名」が適用され、一瞬で人生のすべてを失うリスクにあります。「万引きの手伝い(窃盗)」だと思って車を運転していただけなのに、仲間が現場で店員を突き飛ばして逃走すれば、その瞬間にあなたの罪名は「事後強盗罪」という、執行猶予が付きにくい重罪に切り替わります。

さらに、仲間が店員に全治数日でも怪我を負わせていれば「強盗致傷罪」が適用されます。強盗致傷罪の法定刑は「無期又は六年以上の拘禁刑」のみであり、裁判官が同情しても、法律上、一発で刑務所に入ることになる(実刑判決)極めて重い罪です。

「本当に知らなかったんです」と取り調べ室で泣きながら訴えても、客観的な状況から「そのリスクは分かったはずだ」と認定されれば、その重い罪名から逃れることはできません。
他人の犯罪計画に片足でも突っ込むということは、仲間の「狂気」や「暴走」の責任まで白紙委任状で引き受けることと同義なのです。

犯罪が完了する前に途中で抜けた際の実務的な扱い

「悪い計画に名前を連ねてしまったが、怖くなって直前で逃げ出した」「現場まで行ってしまったけれど、どうしても怖気づいて途中でグループを抜け出した」このように、一度は犯罪の片棒を担ごうとしたものの、良心の呵責や恐怖心から、完了する前にその場を離脱しようとするケースがあります。

しかし、ただ「その場から走り去った」「連絡を無視して帰宅した」というだけで、これまでの責任がすべてリセットされるほど法律は甘くありません。グループから物理的に抜けた後、自分の刑事責任を完全に断ち切るためには、実務上で極めて厳格な「関係の解消」が求められます。

実行に移す前にグループから抜ける場合の解消の条件

まだ誰も現場で手を下していない「実行の着手前(計画段階)」であれば、比較的グループからの離脱を認められやすい傾向にあります。ただし、単に「LINEグループを退会した」「当日の集合場所に行かなかった」というだけでは、離脱したとは認められません。

事前の共謀関係を法的に「解消」したと認められるためには、以下の条件をクリアする必要があります。

  • リーダー格や他のメンバーに対し、自分はもう協力しないという意思を明確に伝えること
  • 自分が提供した準備(車の貸与、情報の提供、ツールの購入など)をすべて物理的に回収し、使えない状態にすること
  • 残されたメンバーだけで犯罪をそのまま実行できないような状態を、自分が主体となって作り出すこと

たとえば、あなたが「逃走用のレンタカーを提供する役」だったとしましょう。直前で怖くなって車を持ち帰れば、残されたメンバーは移動手段を失い、計画は頓挫するか大幅に狂います。

このように、自分がグループに与えた影響力を「完全にゼロ」に戻すことこそが、離脱を認められるための最低条件です。

実際の犯行が始まった後に離脱を認めてもらう防衛措置

すでに誰かが犯行をスタートしてしまった場合は、「実行の着手後」の離脱です。たとえば、仲間が他人の家に押し入ったのを見届けた後、怖くなって自分だけ車で逃げ帰ったようなケースが該当します。

この段階での単なる「敵前逃亡」は、法律上、ただの「共同正犯(主犯)」として扱われ、最後まで現場に残った仲間と等しく処罰されます。なぜなら、あなたの最初の加担によって仲間は犯罪に踏み切る勇気を得ており、あなたの逃亡後も犯罪の危険性は進み続けているからです。

実行着手後に、自分の責任をそこでストップさせる(共謀関係からの離脱を認めてもらう)ためには、極めて強力な防衛措置が必要です。具体的には、以下のような「物理的な因果関係の切断」を自ら行わなければなりません。

状況 単なる逃亡(離脱と認められない行為) 防衛措置(離脱と認められ得る行為)
強盗の現場 怖くなって仲間を残して車で立ち去る 仲間を力ずくで羽交い締めにして制止する、またはその場で自ら警察に通報して犯行を阻止する
詐欺の受け子 被害者の家に向かう途中でスマホを切って帰る 被害者に直接連絡して「騙されている」と伝え、お金の受け渡しを完全に未然防止する

つまり、「自分が原因で作ってしまった危険な状況を、自分の手で物理的に消し去った」と言えるレベルの行動を起こさない限り、着手後の離脱は法的に認められないのが実務上の冷徹な現実です。

途中で仲間を止めたことで刑罰が軽くなる判断基準

万が一、あなたが自発的に仲間を止め、犯罪が完了するのを未然に防いだ場合、法律は「中止犯」という救済措置を用意しています。刑法第43条のただし書に規定されているルールであり、自らの意思で犯罪を思いとどまった者に対しては、かならず刑罰が「減軽(軽くする)」または「免除(チャラにする)」されます。

しかし、この中止犯としての減免措置を受けるためには、以下の厳しい判断基準をすべて満たす必要があります。

  • 「自己の意思」によって中止したこと(警察のサイレンが聞こえたから諦めた、などの外部的な要因ではないこと)
  • 結果の発生(被害の完了)を、自分の真摯な努力によって確実に防いだこと
  • ただ傍観するだけでなく、自ら行動を起こして仲間を説得したり、通報したりして結果を阻止したこと

「やめよう」と声をかけたけれど仲間が無視してそのまま盗みを働いてしまった、という場合では、結果を防げていないため中止犯にはなりません。あなたの行動が「結果を絶対に防ぐ」という形となって結実した時に初めて、司法はあなたに対して刑を軽くするという恩恵を与えてくれるのです。

事件の途中から計画に加わった際のリスクと処分

「友達から『今すぐここに来て車を出してほしい』と頼まれた」「現場に行ってみたら、どうやら彼らは泥棒の真っ最中だったが、断りきれずに手伝ってしまった」このように、最初から犯罪を計画していたわけではなく、すでに誰かが始めている犯罪の「途中から」加担してしまうケースがあります。

「自分は途中からちょっと手伝っただけだから、大した罪にはならないはずだ」と思ったら大間違いです。途中からの参加であっても、主犯としての重い責任を突きつけてきます。

他の人がすでに始めた犯罪の途中から手伝う危険性

すでに開始されている犯罪の途中から参加し、残りの行為を共同して実行することを、実務上「承継的共同正犯(しょうけいてききょうどうせいはん)」と呼びます。「途中から入ったのだから、自分が関わった後のことだけ責任を持てばいい」と考えがちですが、実務の判断はそう単純ではありません。

途中からであっても、すでに生じている犯罪の状況(たとえば、先行者が被害者を脅して怯えさせている状態など)を利用して自分の役割を果たした場合、あなたは「それまでのすべての犯罪状況を自分のものとして引き継いだ」とみなされる危険性があります。その結果、最初から計画していたメンバーと全く同じ、重い罪名の共同正犯として処罰される恐れが極めて高いのです。

自分が参加したタイミング以降の責任だけを負う限界点

実務における責任の「引き受け限界点」は、以下の基準に沿って判断されます。

  • 自分が参加する前に「すでに終わってしまった結果」については、原則として責任を負わない
  • 参加する前の行為によって作られた「有利な状況」を利用して、その後の犯罪をスムーズに進めた場合は、全体の責任を負う可能性がある
  • 参加した時点で「これから発生する結果」については、当然ながらすべて共同正犯としての責任を負う

たとえば、仲間がすでにターゲットの家に侵入して引き出しを漁っている最中に、あなたが外で見張りを始めたとします。この場合、あなたが参加した後に家から盗み出されたすべての財物について、あなたは「窃盗罪の共同正犯」としての責任を完全に背負うことになります。

「自分が侵入したわけではない」という言い訳は、参加したタイミング以降の実行行為を支えているため、一切通用しません。

強盗や泥棒などの事件で問題になりやすい実務上の課題

途中参加(承継的共同正犯)のルールが、実務や裁判で激しく争われるのが「強盗致傷事件」や「空き巣(窃盗)事件」です。具体的にどのような罪のなすり合いや判断の難しさが発生するのか、以下の比較表にまとめました。

実際の状況 あなたの関与のタイミング 実務上の判断と問われる罪名
強盗致傷事件 先行者が被害者を殴って大怪我をさせた後に、あなたが現場に到着。脅された被害者から金を奪うのを手伝った 強盗罪の共同正犯(または強盗致傷)
大怪我という結果が「自分が加わる前」に確定していた場合、傷害の責任は負わないとするのが近年の判例傾向ですが、脅迫状態を利用したとして「強盗罪」の重い主犯になります。
空き巣事件 仲間がすでに窓ガラスを割って侵入した後に呼び出され、家の中から荷物を運び出すのを手伝った。 窃盗罪の共同正犯 + 邸宅侵入罪(幇助)
「ガラスを割った犯人(器物損壊)」の責任は免れても、荷物を運び出した時点で「窃盗」の主犯となり、不法侵入の手助けをした責任も同時に追及されます。

「自分はただ、頼まれて後から合流しただけ」という言い分は、法律の前では無力です。
少しでも違法な空気を察知したならば、その場に留まることも、手を貸すことも絶対に拒否しなければなりません。途中からであっても、その犯罪の片棒を担いだ瞬間に、あなたは最初からのメンバーが犯した罪の泥沼へと一緒に引きずり込まれることになるのです。

共同正犯の要件に関するよくある質問

共同正犯の要件に関するよくある質問を紹介します。

Q.現場で見ていただけの加害者も共同正犯になりますか?

A.ただ「見ていただけ」であっても、共同正犯(主犯)として処罰される可能性は十分にあります。

実務上、その場にいることが「仲間の心理的支え」になっていたり、被害者の反抗を抑え込む無言のプレッシャーになっていたりしたと判断されるからです。たとえば、仲間が被害者に暴力を振るっている横で、腕を組んで周囲を威圧するように見つめていた場合などが該当します。

「自分は手を出していないから無罪だ」という言い分は通用しません。その場に居合わせ、犯行を容認してグループの力を強めていた事実は、立派な実行行為の分担とみなされます。

Q.途中で逃げ出した場合でも全ての責任を問われますか?

A.すでに犯行が始まってから途中で逃げ出した場合、原則として「それ以降に仲間が引き起こした結果」も含めて、すべての責任を問われます。

途中で怖くなって現場から走り去ったとしても、あなたが最初に加担したことで発生した犯罪の勢いは止まらないからです。自分の責任を途中で断ち切るためには、ただ逃げるのではなく、「仲間を力ずくで止める」「その場で警察に通報して被害を未然に防ぐ」といった、犯罪の連鎖を物理的にストップさせる命がけの行動が求められます。

それができない単なる敵前逃亡は、最後まで現場にいたメンバーと等しく「共同正犯」として裁かれるのが現実です。

Q.計画を知らされずに手伝った場合の処分は?

A.「荷物を運ぶだけの高額バイトと言われて行ったら、強盗の荷物持ちだった」というように、本当の計画を隠されて手伝わされた場合、あなたの「認識(故意)」の範囲によって変わります。

法律上、自分が全く認識していなかった重い罪(強盗など)の共同正犯に問われることは原則としてありません。しかし、「怪しい仕事だとは薄々気づいていた(未必の故意)」と判断されれば、知らされていなかったとしても重い処分が科されます。

また、完全に騙されていた場合でも、客観的に泥棒の手伝いをしてしまっていれば、過失や「幇助犯(手助けした罪)」として処罰されるリスクは残り、無罪にはなりません。

Q.SNSの指示役と実行役の処分に重さの違いはありますか?

A.実務上、現場に行かないSNSの指示役(首謀者)の方が、実際に手を下した実行役よりも重い処分を下されるケースが多いです。

日本の法律には「共謀共同正犯」という考え方があり、犯罪の計画を支配し、裏で糸を引いていた人間こそが最大の悪であると判断されるためです。

実行役は「指示に従わざるを得なかった従属的な立場」として、情状酌量により刑が若干軽くなる余地が残ることもあります。しかし、安全な場所からトカゲの尻尾切りのように人間を使い捨てにした指示役に対しては、裁判所は重い実刑判決を突きつける実態があります。

Q.共犯者が嘘の供述をした場合の自衛の手続きは?

A.仲間が保身のために「あいつが全部計画した」「あいつが一番暴力を振るっていた」と嘘の供述を始めた場合、そのまま放置すればあなたの罪は不当に重くなってしまいます。

これに対抗するための最大の自衛手続きは、警察の取り調べで「絶対に妥協せず、真実のみを話し、おかしな供述調書には署名・捺印を拒否すること」です。警察が作成する調書に一度サインしてしまうと、後から裁判で「あれは嘘だった」と覆すのは極めて困難になります。

仲間とのLINEのやり取りや通話履歴などの客観的な証拠をすべて警察に提出し、自分の本当の関与度合いを証明しましょう。また、同時に逮捕後すぐに「弁護士(当番弁護士や国選・私選弁護士)」を呼び、プロのサポートを受けて尋問に立ち向かうことが鉄則です。

まとめ

複数人で犯罪に関与した際、ただ犯行を手伝ったに過ぎない「幇助犯」とは異なり、意思決定や重要な役割を果たした者は全員が「共同正犯(主犯)」として扱われます。刑法第60条が定める「すべて正犯とする」の原則は、指示役や運転手であっても、グループの計画を支えたすべての者に等しく重い責任を負わせる法律です。

共謀の合意は、言葉を交わさずとも「黙示の合意」で成立し、自分がもたらした影響力が全体の犯罪を成功させた事実そのものが、主犯として処罰される確固たる証拠となります。

「強盗になるなんて知らなかった」という言い訳は、客観的に予見できた状況であれば一切通用しません。また、途中でグループから抜け出そうとしても、自分が与えた影響を物理的にゼロにし、犯罪の完了を自ら未然に防ぐレベルの行動を起こす必要があります。

事件の途中から加わる「承継的共同正犯」であっても、その時点以降の犯罪状況を引き継いで重い罪に問われます。万が一、怪しい誘いに巻き込まれたり、共犯者の嘘の供述で不当に重い罪をなすりつけられそうになったりした場合は、供述調書への署名拒否を検討しましょう。そして何よりも速やかな「弁護士への相談」によるプロのサポートが唯一の自衛手段です。

安易な加担はすべて主犯と同罪になる現実を深く胸に刻み、違法な空気には片足すら突っ込まない強固な意志を維持してください。

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