
駐車場で他人の車にぶつけてしまった、ガードレールに接触したまま走り去ってしまったなど、物損事故を起こして現場を離れた場合は、当て逃げとして逮捕される可能性があります。
当て逃げは単なる物損事故とは異なり、道路交通法違反として刑事責任を問われることがあります。また、被害者への損害賠償だけでなく、運転免許の停止や取消しといった行政処分を受けるおそれもあるため、早めの対応が重要です。
この記事では、当て逃げで逮捕される可能性や刑事・民事・行政上の責任、示談金の考え方、弁護士に相談するメリットについて詳しく解説します。すでに事故現場を離れてしまった場合の対処法も紹介するので、参考にしてください。
目次
当て逃げでも逮捕される?警察に発覚するきっかけと逮捕後の流れ
当て逃げは、物損事故であっても道路交通法違反として逮捕される可能性があります。ただし、すべての当て逃げ事件で逮捕されるわけではなく、事故の状況や逃亡・証拠隠滅のおそれなどによって判断されます。
物損事故でも、事故後の対応によっては道路交通法違反で逮捕される可能性がある
当て逃げとは、一般的に、車や建物などに損害を与える交通事故を起こしたにもかかわらず、必要な措置を取らずに現場を離れる行為を指します。道路交通法第72条では、事故を起こした運転者に対し、直ちに停止して道路上の危険を防止する措置を講じ、警察へ報告することを義務付けています。
例えば、駐車中の車にぶつけたことを認識しながら、何もせず立ち去った場合は問題になるでしょう。被害が小さい物損事故でも、必要な措置を怠れば刑事責任を問われる可能性があります。
ただし、当て逃げが発覚したからといって必ず逮捕されるわけではありません。逃亡や証拠隠滅のおそれなどを踏まえ、逮捕の必要性が判断されます。
防犯カメラやドライブレコーダーの映像から車両や運転者が特定されることがある
当て逃げが発覚するきっかけの一つが、防犯カメラやドライブレコーダーの映像です。商業施設の駐車場や道路沿いにはカメラが設置されていることがあり、事故の瞬間が記録されている場合があります。
映像に車のナンバープレートや車種、車体の色などが映っていれば、警察が車両を特定する手がかりになります。被害者側の車に搭載された駐車監視機能付きドライブレコーダーが、接触の瞬間を記録していることもあるでしょう。
車両の所有者が判明した後、警察が運転していた人物を調べることもあります。周囲に人がいなかったからといって、事故の証拠が残っていないとは限りません。
被害者の通報や目撃者の証言、車体に残った傷などから当て逃げが発覚することがある
当て逃げは、映像以外の情報から発覚することもあります。例えば、被害者が車の損傷に気づいて警察へ通報した場合、事故現場の状況や目撃情報をもとに捜査が進められます。
事故を目撃した人が車のナンバーや特徴を覚えていれば、運転者を特定する重要な手がかりになるでしょう。また、加害車両に残った塗料や傷の位置が、被害車両の損傷と一致するかどうかが調べられる場合もあります。
事故から時間が経過していても、証拠が残っていれば捜査が進む可能性があります。そのため、当て逃げをしてしまった場合は、発覚するかどうかを考えるより、速やかに警察へ報告することが大切です。
逮捕されなくても、警察から呼び出しを受けて事情聴取される場合がある
当て逃げの疑いがある場合でも、必ず逮捕されるわけではありません。警察から連絡を受け、指定された日時に警察署へ出向いて事情聴取を受けるケースもあります。
このように、身柄を拘束せずに捜査を進めることを在宅捜査といいます。警察は事故当時の運転状況や接触の認識、現場を離れた理由などを確認します。
ただし、在宅捜査であっても、事件が検察官へ送致され、起訴される可能性はあります。呼び出しを軽く考えず、事故の経緯を整理して対応する必要があります。説明に不安がある場合は、事前に弁護士へ相談するとよいでしょう。
逮捕後は警察・検察による捜査が行われ、勾留や起訴・不起訴が判断される
当て逃げで逮捕された場合は、警察による取り調べが行われます。通常の刑事手続きでは、警察は逮捕から48時間以内に被疑者を検察官へ送致するか判断し、検察官は受け取ってから24時間以内、かつ逮捕から72時間以内に勾留請求などを判断します。
裁判官が勾留を認めると、原則10日間、延長された場合は合計で最長20日間の身柄拘束が続く可能性があります。その間も捜査が進められ、検察官が起訴・不起訴を判断します。
もっとも、すべての事件で勾留されるわけではなく、途中で釈放される場合もあります。早期釈放や不起訴を目指すためには、逮捕後できるだけ早く弁護士の助言を受けることが重要です。
当て逃げで問われる3つの責任|刑事罰・損害賠償・免許停止や取消しを解説
当て逃げをした場合は、刑事責任・民事責任・行政責任という3種類の責任を問われる可能性があります。それぞれ内容や目的が異なるため、示談が成立してもすべての責任がなくなるわけではありません。
| 責任の種類 | 主な内容 |
|---|---|
| 刑事責任 | 拘禁刑や罰金など |
| 民事責任 | 修理費などの損害賠償 |
| 行政責任 | 違反点数の付加、免許停止・取消し |
刑事責任|危険防止措置義務違反は1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金の対象になる
交通事故を起こした運転者には、道路上の危険を防止するために必要な措置を取る義務があります。例えば、事故によって道路上に車の部品が散乱した場合は、二次事故を防ぐための対応が必要です。
道路交通法第72条第1項前段に違反し、危険防止措置を怠った場合は、同法第117条の5により、1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金が科される可能性があります。
実際にどのような措置が必要だったかは、事故の状況によって異なります。また、事故後の義務違反が成立するかどうかは、事故の認識なども踏まえて判断されるため、単に車が接触したという事実だけで直ちに犯罪が成立するとは限りません。
刑事責任|警察への報告義務違反は3か月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金の対象になる
事故を起こした運転者には、警察へ事故を報告する義務もあります。道路交通法第72条第1項後段では、事故の日時や場所、損壊した物の状況などを警察官へ報告することが定められています。
この報告義務に違反した場合、同法第119条第1項第17号により、3か月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金が科される可能性があります。
被害者と連絡先を交換したり、修理代の支払いを約束したりしても、警察への報告義務がなくなるわけではありません。物損事故だから警察への連絡は不要だと自己判断せず、事故が起きたら速やかに報告しましょう。
民事責任|被害車両の修理費や代車費用などの損害賠償を請求される可能性がある
当て逃げによって他人の車や建物などを損傷させた場合、加害者は民法上の損害賠償責任を負うことがあります。具体的には、車の修理費や代車費用、レッカー移動費用などが問題になります。
例えば、駐車中の車に接触してドアを損傷させた場合、事故との因果関係が認められる適切な修理費を負担する可能性があります。被害車両が営業に使用されていた場合には、休業損害が認められるケースもあるでしょう。
ただし、被害者が請求した金額を必ず全額支払う必要があるとは限りません。事故との関係、必要性、金額の相当性などを確認することが重要です。
行政責任|当て逃げによる危険防止措置義務違反では5点が加算される
当て逃げをした場合は、運転免許の点数制度に基づく行政上の責任も問題になります。物損事故で必要な危険防止措置を怠った場合には、当て逃げの付加点数として5点が加算されます。
この5点は、交通違反に対する基礎点数とは別に加えられる点数です。例えば、事故の原因となった運転について別の交通違反が成立する場合、その違反点数と合わせて計算される可能性があります。
なお、当て逃げによる5点は、すべての物損事故に自動的に加算されるものではありません。危険防止措置義務違反に該当するかどうかが重要な判断ポイントになります。
行政責任|累積点数や過去の違反歴によっては免許停止や免許取消しになる
運転免許の停止や取消しは、原則として過去3年間の累積点数や行政処分歴などをもとに判断されます。過去3年間に行政処分歴がない場合、一般的には6点から停止処分、15点から取消処分の対象になります。
例えば、当て逃げの付加点数5点に加え、別の違反による点数が付けば、免許停止の基準に達する場合があります。また、過去に行政処分を受けている場合は、より少ない点数で停止や取消しの対象となることもあります。
運転免許を仕事で使用している人にとって、行政処分は生活に大きな影響を与えかねません。ただし、示談が成立したからといって、違反点数や行政処分が自動的に取り消されるわけではない点に注意してください。
負傷者がいる場合は当て逃げではなく、ひき逃げとしてさらに重い責任を問われる可能性がある
事故によって人が負傷している場合は、物損事故の当て逃げとは異なり、ひき逃げとして扱われる可能性があります。人身事故では、運転者に負傷者を救護する義務があり、この義務に違反すると重い刑事責任を問われるおそれがあります。
特に、運転者の運転に起因して人を死傷させた事故で救護義務に違反した場合は、道路交通法上、10年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象となります。さらに、過失運転致死傷罪などが成立する可能性もあります。
被害者が「大丈夫」と話していた場合でも、負傷している可能性があれば安易に立ち去ってはいけません。人身事故では救護措置を優先し、必要に応じて救急車を呼び、警察へ報告することが重要です。
当て逃げをしてしまった場合の対処法|警察への報告・被害者への謝罪・保険会社への連絡
当て逃げをしてしまった場合は、事故後の対応によって、その後の捜査や被害者との交渉が変わる可能性があります。すでに現場を離れてしまっていても、放置せず、できるだけ早く適切な対応を取りましょう。
事故現場を離れてしまった場合でも、速やかに警察へ連絡して事故の状況を報告する
事故現場から離れてしまった場合は、気づいた時点で速やかに警察へ連絡してください。事故を起こした場所や日時、接触した相手、損傷の状況など、把握している情報を正確に伝えることが大切です。
現場に戻る必要があるか、どのような対応を取るべきかについても、警察の指示を確認しましょう。負傷者がいる可能性がある場合には、救護を最優先に考えなければなりません。
後から報告したからといって、すでに生じた義務違反が必ずなくなるわけではありません。しかし、事故を隠さず、自ら報告することは、その後の事情を判断するうえで考慮される可能性があります。
事故の日時・場所・車両の損傷などを記録し、ドライブレコーダーの映像を保存する
当て逃げに関する事実関係を整理するため、事故当時の状況を記録しておくことが重要です。時間が経つと記憶が曖昧になり、警察への説明や示談交渉で認識の違いが生じるおそれがあります。
具体的には、次のような情報を整理しておくとよいでしょう。
- 事故が発生した日時と場所
- 接触した車両や物の種類
- 事故当時の速度や周囲の状況
- 自分の車両に残った傷や損傷
- ドライブレコーダーの映像や写真
ドライブレコーダーは古い映像が上書きされることがあるため、早めに保存する必要があります。自分に不利と思われる記録も削除せず、事故当時の状態を保つことが大切です。
被害者が判明している場合は、相手の意向に配慮しながら謝罪と被害弁償を申し出る
被害者が判明している場合は、謝罪や被害弁償について適切に対応することが重要です。被害者に誠意を示し、実際に生じた損害を補償することで、示談に向けた話し合いが進む可能性があります。
ただし、被害者が直接の連絡を望んでいない場合に、何度も電話したり、突然自宅を訪問したりすることは避けましょう。相手に精神的な負担を与え、かえって解決を難しくするおそれがあります。
連絡方法に迷う場合は、弁護士や保険会社を通じて対応する方法があります。謝罪を急ぐだけでなく、被害者の意向を尊重しながら進めることが大切です。
加入している任意保険会社に連絡し、対物賠償保険の補償内容と示談代行の可否を確認する
当て逃げをしてしまった場合は、加入している自動車保険会社にも速やかに連絡しましょう。対物賠償保険に加入していれば、契約内容や事故の状況に応じて、被害者に対する損害賠償が補償される可能性があります。
また、保険会社が示談交渉を代行できる契約もあります。ただし、補償対象や免責事項、示談代行が可能な範囲は保険契約によって異なります。
特に、保険会社による示談代行は、刑事事件における弁護活動とは異なります。刑事処分を見据えた示談交渉や警察への対応が必要な場合は、弁護士への相談も検討してください。
警察から呼び出しを受けた場合は、弁護士に相談してから取り調べに対応する
警察から当て逃げの疑いで呼び出された場合は、できるだけ早く弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に事故の経緯を説明することで、取り調べで注意すべき点や今後の刑事手続きについて助言を受けられます。
取り調べでは、自分が認識していたことと、後から知ったことを区別して説明することが重要です。また、供述調書への署名を求められた場合は、内容を十分に確認する必要があります。
被疑者には黙秘権があり、供述を強制されるものではありません。事実と異なる内容を認めたり、推測で説明したりすることを避け、必要に応じて弁護士の助言を受けましょう。
当てたことに気づかなかった場合は、事故当時の状況を整理して正確に説明する
車を運転していて、接触したこと自体に気づかなかったというケースもあります。その場合は、事故当時の状況を具体的に整理し、警察や弁護士に正確に伝えることが大切です。
例えば、周囲の騒音が大きかったか、車内で音楽を流していたか、接触による衝撃を感じたかなどが確認事項になります。車両の損傷や映像などの客観的な証拠も重要です。
事故の認識がなかったことは、故意による義務違反の成否を判断するうえで問題になる場合があります。ただし、「気づかなかった」と説明するだけで必ず責任を免れるわけではありません。虚偽の説明をせず、客観的な事実に基づいて対応しましょう。
当て逃げの示談交渉を弁護士に依頼するメリット|被害者との交渉と刑事処分への影響
当て逃げの示談交渉を弁護士に依頼すると、被害者との連絡や損害賠償の話し合いを任せられます。さらに、刑事処分への影響を踏まえた対応についても助言を受けられるため、早めに相談するメリットがあります。
弁護士が被害者との連絡や示談交渉を代行するため、直接交渉によるトラブルを避けやすい
当て逃げの被害者は、車を損傷されたことに加え、加害者が現場を離れたことに強い不満や不安を感じている場合があります。そのため、加害者が直接連絡しても、冷静な話し合いが難しいケースがあります。
弁護士に依頼すれば、被害者の意向を確認しながら、適切な方法で連絡や示談交渉を進めてもらえます。感情的なやり取りを避けやすくなり、損害賠償や解決条件について整理した話し合いが期待できるでしょう。
また、被害者が直接連絡を望まない場合も、弁護士を通じて交渉できる可能性があります。ただし、弁護士が介入しても、被害者に示談を強制することはできません。
修理費や代車費用などの請求内容を確認し、適切な損害賠償額について交渉できる
当て逃げの示談では、被害者から修理費や代車費用などを請求されることがあります。しかし、請求された金額がすべて事故による損害として認められるとは限りません。
例えば、事故前から存在していた傷の修理費や、必要性が認められない代車費用まで請求されている場合は、金額の妥当性を確認する必要があります。車両の時価額と修理費の関係が問題になることもあるでしょう。
弁護士に依頼すれば、見積書や事故の資料などを確認したうえで、損害賠償額について交渉できます。必要な被害弁償を行いながら、不合理な請求への対応を任せられる点がメリットです。
謝罪や被害弁償を適切に進めることで、被害者の処罰感情を和らげられる可能性がある
当て逃げ事件では、被害者への謝罪や被害弁償が重要になります。被害者が受けた損害を補償し、加害者が問題に向き合っていることを伝えることで、処罰を求める気持ちが和らぐ可能性があります。
ただし、謝罪の方法や時期を誤ると、相手に負担を与えてしまうことがあります。被害者が連絡を拒否している場合は、その意向を尊重する必要があるでしょう。
弁護士は、被害者の状況を踏まえて謝罪や弁償の進め方を検討できます。示談を成立させることだけを目的とせず、被害回復を適切に進める姿勢が大切です。
示談の成立や被害弁償の状況を捜査機関に伝え、不起訴や刑の軽減を求められる
当て逃げ事件で示談が成立した場合、その事実は刑事処分を判断する際に考慮される可能性があります。特に、被害が回復されていることや、被害者が処罰を望んでいないことなどは、事件の事情として検討される場合があります。
弁護士は、示談書や被害弁償を示す資料などを検察官へ提出し、不起訴処分を求める活動を行えます。すでに起訴された場合も、示談の成立を有利な事情として裁判所に伝えることが考えられます。
ただし、示談が成立すれば必ず不起訴になるわけではありません。事故の悪質性や違反の内容、過去の違反歴などを含めて総合的に判断されます。
警察の取り調べへの対応について助言を受け、逮捕や勾留を避けるための弁護活動を依頼できる
当て逃げの疑いがある場合、弁護士に依頼することで、取り調べへの対応や刑事手続きについて助言を受けられます。事故の認識や現場を離れた事情など、争点になりやすい部分を整理できる点もメリットです。
また、必要に応じて、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを示す資料を提出するなど、逮捕や勾留を避けるための弁護活動を行うこともあります。逮捕後であれば、勾留請求への対応や釈放に向けた活動を依頼できます。
ただし、弁護士に依頼すれば必ず逮捕を避けられるわけではありません。事件の状況に応じた適切な対応を、早期に検討できることが大きなメリットです。
示談書の作成を任せられるため、解決後の追加請求などのトラブルを防ぎやすい
示談が成立した場合は、合意内容を示談書にまとめることが重要です。口頭だけで約束すると、後になって支払い金額や解決条件について認識の違いが生じるおそれがあります。
示談書には、事故の内容、支払金額、支払期限、支払方法などを明記するのが一般的です。また、合意した範囲について追加の請求を行わないことを確認する清算条項を設ける場合もあります。
弁護士に依頼すれば、事件の事情に合わせて示談書を作成してもらえます。ただし、示談書で合意した範囲や記載内容によって効力が異なるため、将来のあらゆる請求を必ず防げるわけではありません。
当て逃げの示談金の相場は?修理費・損害賠償の範囲と示談が成立しない場合のリスク
当て逃げの示談金は、車両の損傷や事故によって生じた損害などによって異なります。あらかじめ決まった金額があるわけではないため、被害内容を確認して適切な補償額を検討することが重要です。
当て逃げの示談金に一律の相場はなく、被害の程度や損害額によって異なる
当て逃げの示談金には、一律の相場がありません。主に、被害車両の修理費や代車費用など、事故によって発生した損害をもとに金額が決められます。
例えば、バンパーに小さな傷が付いた事故と、ドアや車体の複数箇所が大きく損傷した事故では、必要な修理費が異なります。また、部品の交換が必要かどうかによっても金額が変わるでしょう。
当て逃げという行為だけを理由に、一定額の示談金が必ず上乗せされるわけではありません。示談金を検討する際は、実際に発生した損害と合意条件を分けて考えることが大切です。
車の修理費や買い替え費用は、事故による損傷や車両の時価額などをもとに判断される
被害車両の修理費は、事故によって生じた損傷を回復するために必要かつ相当な範囲で判断されます。修理工場の見積書や車両の写真などが、損害額を確認するための資料になります。
修理が可能であっても、修理費が事故当時の車両の時価額などを大きく上回る場合は、請求できる金額が制限されることがあります。一方、修理が困難な場合は、車両の時価額や買い替えに必要な相当額の費用などが問題になります。
したがって、被害者が新しい車を購入したからといって、その購入代金がすべて賠償対象になるとは限りません。車の価値や損傷の程度を踏まえ、合理的な金額を判断する必要があります。
代車費用・レッカー費用・営業車の休業損害なども請求対象になる場合がある
当て逃げによる損害賠償は、車の修理費だけに限られません。事故によって車を使用できなくなった場合は、代車費用やレッカー費用などが認められることがあります。
例えば、通勤や業務で車を使用する必要があり、ほかに利用できる車がない場合は、合理的な期間の代車費用が問題になります。また、タクシーや配送車などの営業車が使用できなくなった場合、売上や経費などの資料に基づいて休業損害が認められるケースもあります。
ただし、すべての費用が無条件で認められるわけではありません。代車の必要性や利用期間、事故と損害の因果関係などを確認して判断されます。
物損事故では原則として慰謝料は認められないが、事情によっては別途解決金を支払うことがある
交通事故によって車や物だけが損傷した場合、原則として慰謝料は認められません。慰謝料は精神的な苦痛に対する賠償ですが、通常の物損事故では、財産的な損害の賠償によって回復が図られると考えられているためです。
ただし、例外的な事情によって精神的損害の賠償が問題になることはあります。また、被害者との話し合いによって、修理費などとは別に解決金を支払う合意をするケースもあります。
もっとも、解決金の支払いは必ず必要になるものではありません。示談金の内訳や支払う理由を明確にしたうえで、納得できる条件で合意することが重要です。
示談が成立しない場合は、損害賠償請求訴訟や刑事処分につながる可能性がある
当て逃げの示談交渉がまとまらない場合、被害者が損害賠償請求訴訟を起こす可能性があります。裁判では、事故の状況や損害額、事故と損害の関係などが争われることがあります。
また、示談が成立していないことは、刑事処分を判断する際の事情の一つとなる場合があります。被害弁償が進んでいない場合などは、不起訴を求めるうえで不利に働く可能性も否定できません。
ただし、示談が不成立であることだけを理由に、必ず起訴されるわけではありません。相手が示談に応じない場合でも、弁護士と相談しながら被害回復の方法を検討することが大切です。
示談が成立しても刑事責任や免許停止などの行政処分が必ず免除されるわけではない
当て逃げの示談が成立すると、民事上の損害賠償問題について解決できる場合があります。しかし、それだけで刑事責任や行政責任がなくなるわけではありません。
刑事処分については、検察官が事故の内容や違反の悪質性、被害弁償の状況などを踏まえて判断します。また、免許停止や免許取消しなどの行政処分も、法律上の基準に従って別に判断されます。
そのため、示談交渉だけでなく、刑事手続きや運転免許への影響まで見据えた対応が必要です。弁護士に相談する際は、事故の状況や過去の交通違反歴なども伝え、今後の見通しを確認しましょう。
当て逃げで逮捕される可能性がある場合は、刑事・民事・行政責任を理解して早めに弁護士へ示談を相談しよう
当て逃げは物損事故であっても、必要な措置や警察への報告を怠れば、道路交通法違反として逮捕される可能性があります。さらに、被害者への損害賠償や、違反点数の付加による免許停止・取消しなど、さまざまな責任を問われるおそれがあります。
すでに事故現場を離れてしまった場合は、速やかに警察へ報告し、事故の状況を記録したうえで、保険会社への連絡や被害者への対応を進めることが重要です。事故を隠そうとしたり、証拠を処分したりすることは避けてください。
弁護士に依頼すれば、被害者との示談交渉や損害賠償額の確認だけでなく、取り調べへの対応や不起訴を求める活動についても相談できます。示談の成立が刑事処分や行政処分の免除を保証するわけではありませんが、適切な被害回復は重要な対応の一つです。
当て逃げで逮捕されるのではないかと不安を感じている場合は、問題を放置せず、早めに交通事故や刑事事件に詳しい弁護士へ相談しましょう。事故の状況に応じた対応を検討することが、被害者との問題解決や今後の生活への影響を抑える第一歩になります。