冤罪で捕まった場合には、誤認逮捕に対抗するために、できるだけ早いタイミングで弁護士へ相談するべきでしょう。
なぜなら、冤罪による誤認逮捕であったとしても、”正式な”逮捕手続きによって身柄拘束処分を受けた以上、通常の刑事手続きプロセスに乗せられて起訴処分や有罪判決を下されるリスクがあるからです。また、冤罪であることを理由に取調べで反抗的な態度を取り続けると逮捕・勾留によって長期間身柄拘束されますし、厳しい取調べのなかで思いもよらない不利な供述調書を作成されかねないでしょう。
そこで今回は、冤罪なのに警察から参考人として出頭要請がかかって不安を抱えている方や、ご家族が冤罪で捕まった方のために、以下4点についてわかりやすく解説します。
- 冤罪で捕まった場合の刑事手続きの流れ
- 冤罪で捕まった場合の対処法や注意事項
- 冤罪で捕まった場合に弁護士へ相談するメリット
- 冤罪で捕まった後に無罪を証明できたときに実施するべきこと
冤罪で捕まった場合に弁護人へ相談すれば、捜査機関に働きかけて早期の身柄釈放を実現できるだけでなく、「嫌疑なし」を理由とする不起訴処分獲得の可能性も高まるでしょう。
刑事裁判の段階に移行すると極めて不利な状況に追い込まれるので、検察官による公訴提起判断が行われる前に、冤罪事件や無罪実績豊富な私選弁護人までご依頼ください。
目次
冤罪で捕まった場合の刑事手続きの流れ
冤罪で捕まった場合でも、「冤罪」ということが証明できない限りは通常の刑事手続きが進められます。
具体的な刑事手続きの流れは以下の通りです。
- 警察に逮捕されて身柄を拘束される
- 警察及び検察官による取調べが実施される
- 冤罪事件で否認をし続けると「勾留請求」によって長期の身柄拘束を強いられる
- 検察官が起訴処分を下すと冤罪事件でも刑事裁判にかけられる
- 刑事裁判で有罪判決が下されると冤罪でも刑が執行される
- 冤罪で有罪になると刑事責任を全うした後も前科によるデメリットに晒される
逮捕処分によって身柄拘束される
身に覚えのない冤罪事件でも、警察側の間違った判断によって誤認逮捕されるケースは少なくありません。
たとえば、満員電車のなかで痴漢に間違われて現行犯逮捕された場合、スーパーで買い物をしていただけなのに万引きを疑われて店員に取り押さえられて通報を受けてやってきた警察官に準現行犯逮捕された場合、職務質問の際に実施された簡易キットの誤判定結果に基づいて薬物使用の罪で現行犯逮捕された場合、SNSアカウントがのっとり被害に遭って見ず知らずの投稿が名誉棄損に該当するとして通常逮捕される場合など、誤認逮捕による冤罪事件は日常生活のさまざまなシチュエーションで起こり得ます。
冤罪で逮捕されたとしても、「適法な逮捕処分」に基づいて身柄を拘束された以上、「被疑者」として身体・行動の自由が奪われることに変わりはありません。捜査機関に身柄を押さえられた後は、家族や会社などに連絡を入れることも許されず、そのまま警察署に連行されることになります。
- 通常逮捕:裁判官が事前に発付する逮捕令状に基づいて実施される身柄拘束処分
- 現行犯逮捕:まさに罪を行った者に対して実施される無令状の身柄拘束処分
- 緊急逮捕:一定の重大犯罪を対象とする身柄拘束処分のことで、緊急逮捕処分実行後に令状発付手続きが履践されるもの
警察及び検察官から取調べを受ける
冤罪だったとしても、捕まった場合には、警察及び検察官による取調べが実施されます。
原則として、警察段階で実施される取調べは「48時間以内」、検察段階で実施されるものは「24時間以内」、捜査段階で実施される取調べ時間は「合計72時間以内」です(刑事訴訟法第203条第1項、第205条第1項)。この時間制限が到来するまでに、検察官が事件を刑事裁判にかけるか決定します。
逮捕処分が下されると、冤罪だとしても警察や検察官が実施する取調べを拒絶することはできません。取調べ中に黙秘を貫くのは自由ですが、あくまでも取調べ自体は受ける必要があります。また、取調べが行われない間は拘置所・留置場に収容されますし、スマートフォンなどの所持品はすべて押収されるので、自宅に戻ったり、会社や家族に電話連絡を入れたりすることも許されません。
場合によっては勾留請求によって身柄拘束期間が延長される
警察及び検察段階の身柄拘束期間は「原則72時間以内」ですが、各事件の個別事情次第では、この時間制限以内に公訴提起判断に必要な証拠が充分に集まらないケースも多いです。
特に、冤罪で捕まった場合には被疑者が黙秘・否認するため、捜査機関は被疑者本人の供述内容によって犯行を証明したり、立証に役立つ証拠を収集できません。客観的な証拠によって犯罪事実を立証するには多方面の捜査活動が必要になるので、必然的に捜査に要する時間が増えざるを得ないでしょう。
このように、被疑者が供述を拒否しているなどの「やむを得ない理由」によって「72時間以内」の時間制限を遵守できない場合には、検察官による「勾留請求」が認められています(刑事訴訟法第206条第1項)。検察官による勾留請求が認められた場合には裁判所から勾留状が発付されて、被疑者の身柄拘束期間が「10日間~20日間」延長されます(同法第208条各項)。
つまり、冤罪で捕まった場合には、捜査活動の初期段階から熱心な私選弁護人に働きかけをしてもらわなければ、身に覚えのない犯罪を理由に最大23日間に及ぶ長期の身柄拘束を強いられかねないということです。
結果として不起訴処分を獲得できたとしても、長期に及ぶ身柄拘束を強いられるだけで社会生活への悪影響が生じかねません。冤罪で逮捕された場合にはすみやかに冤罪事件の実績豊富な私選弁護人までご連絡ください。
検察官が起訴処分を下すと刑事裁判にかけられる
逮捕・勾留期限が到来するまでに、検察官が当該事件を刑事裁判にかけるか判断します。
刑事裁判にかける判断を「起訴処分」、刑事裁判にかけずに検察官限りの判断で刑事手続きを終結させることを「不起訴処分」と呼びます。
日本の刑事裁判の有罪率は99%を超えるのが実情です。つまり、検察官が起訴処分を下して刑事裁判にかけられることが決まった時点で、ほとんどの事件で有罪判決が下されることを意味します。
そして、冤罪で捕まった場合、警察及び検察官が収集した証拠によって犯罪事実をでっち上げられるような事態に陥ると、まったく身に覚えもない誤認逮捕でも、起訴処分が下されかねません。また、刑事裁判で無罪判決獲得を目指すとなると、検察官側が持ち出す証拠を覆すために防御活動に相当力を入れる必要があります。
したがって、冤罪で捕まった場合には、冤罪事件や不起訴処分獲得実績豊富な私選弁護人にご依頼のうえ、供述方針などを明確化してもらって不起訴処分獲得を目指すべきでしょう。
刑事裁判で有罪が確定すると刑が執行される
冤罪で捕まった後、起訴処分が下されると、公開の刑事裁判にかけられます。
公訴事実に争いがない事件の場合には、第1回公判期日ですべての手続きが終結するのが一般的です。これに対して、冤罪で捕まった場合のような否認事件では、複数回の公判期日のなかで弁論手続き・証拠調べ手続きが行われて判決言い渡しに至ります。
そして、誤認逮捕きっかけで刑事訴追された場合でも、刑事裁判において無罪を証明できなければ(検察官の主張内容を否定できなければ)有罪判決を下されかねません。執行猶予付き判決や罰金刑なら日常生活に復帰できますが、実刑判決ならそのまま刑務所に服役し、刑期を満了するまで厳しい刑務所生活を強いられます。
冤罪で捕まったケースで無罪判決を獲得するには、被告人サイドで証人や証拠を用意しなければいけません。かならず刑事裁判の経験豊富な私選弁護人に相談のうえ、少しでも有利な判決内容の獲得を目指しましょう。
冤罪で実刑判決が下されると刑事責任を果たした後も前科がつく
冤罪で捕まって有罪判決が下されると「前科」がつきます。実刑判決だけではなく、執行猶予付き判決や罰金刑が付された場合でも、前科は回避できません。
前科が残ると、今後の社会生活に以下のデメリットが生じます。
- 前科情報は履歴書の賞罰欄に記載しなければいけないので、就職活動や転職活動が難しくなる
- 前科は「法定離婚事由」に該当するので、誤認逮捕による冤罪であったとしても、配偶者から離婚を申し出られると拒絶できない(親権や慰謝料も不利になり得る)
- 前科を理由に就業が制限される職種・資格がある(士業、金融業、警備員など)
- 前科を理由にビザやパスポートが発給されないと、海外旅行や海外出張に支障が出る
- 前科者が再犯に及ぶと、刑事処分や判決内容が不利になる可能性が高い
前科によるデメリットを避けるには、刑事裁判で無罪を証明するか、検察段階で不起訴処分を獲得するしか方法は残されていません。冤罪事件で無実を証明するのはかなり労力がかかるので、すみやかに冤罪事件の実績豊富な私選弁護人までご相談ください。
冤罪で捕まった場合の対処法や注意事項4つ
冤罪で捕まった場合、捜査機関主導で刑事手続きを進められてしまうと、被疑者にとって不利な状況が作出されてしまいかねません。
そこで、冤罪で捕まった場合には、誤認逮捕に対して適切な防御活動を展開するために、以下4点の対抗策・注意点を踏まえて、取調べ等に向き合うことをおすすめします。
- 黙秘権を行使して迂闊な供述を控える
- 捜査機関が作成した供述調書に安易な判断で署名・押印しない
- 不用意に捜査機関が楽になることをしない
- すみやかに弁護士へ相談をして接見機会を設ける
冤罪で捕まった場合には黙秘権を行使する
冤罪で捕まった場合、警察に身柄を押さえられて取調べが実施されたとしても、弁護士と接見機会をもつまでは「黙秘権」を行使することをおすすめします。
黙秘権(供述拒否権)とは、「自己に不利益な供述を強制されず、終始沈黙し、個々の質問に対して供述を拒むことができる権利」のことです(憲法第38条第1項、刑事訴訟法第198条第2項、同法第311条第1項)。不利益な内容だけではなく、有利になる証言についても全面的に拒絶することが可能です。
弁護士と接見して供述方針を明確にするまで「黙秘権」を行使するべき理由は、迂闊な発言がその後の取調べや刑事処分の命取りになってしまうからです。たとえば、弁護士と接見する前後で主張するアリバイの内容に僅かな違いがあるだけで、供述内容に矛盾・変遷があることを理由に厳しい追及を受けかねないでしょう。
「罪を認めた方がすぐに釈放されるぞ」などと捜査員から脅されることもありますが、黙秘権は被疑者・被告人固有の権利なので、黙秘を貫いたとしてもペナルティが科されることはありません。弁護士と接見して今後の供述方針・防御方針が明確になるまでは、「弁護士を呼んでください」以外の発言は控えることをおすすめします。
冤罪で捕まった場合には供述調書への署名・押印に注意する
警察及び検察官による取調べを受けると、供述調書が作成されます。供述調書は、物的証拠と合わせて公訴提起判断や刑事裁判の判決内容に影響します。
被疑者の供述内容が記載された供述調書については、かならず取調べ時に被疑者の署名・押印が求められます。供述調書にサインをすると、「調書に記載された内容について被疑者が同意していること」の証拠と扱われます。
そして、冤罪で捕まった場合には、捜査機関が作成した供述調書に安易に署名・押印してはいけません。なぜなら、供述調書は取調べで交わされたやり取りを文字に起こす方法によって作成されるのですが、発言内容や記載内容が微妙に捻じ曲げられて、捜査機関側に有利な内容が記載されているおそれがあるからです。このようなミスリードに気付かないまま署名・押印をしてしまうと、「虚偽の自白」「自分の考えや防御方針とは違った証言」をしたと扱われて、冤罪の証明が難しくなりかねないでしょう。
したがって、冤罪で捕まった場合には、供述調書に対する署名・押印を拒絶することを基本とするべき(署名押印拒否権)だと考えられます。また、署名・押印するとしても、捜査員が読み上げる調書内容を精査したうえで、適宜内容の修正を求める(増減変更申立権)ことも可能です。
冤罪で捕まった場合は安易に捜査活動に協力しない
冤罪で捕まった場合、警察や検察官の捜査活動が楽になるような協力行為は避けるべきです。
たとえば、逮捕された段階で被疑者の所持品が押収されたり、家宅捜査によってさまざまな証拠物が差し押さえられますが、スマートフォンやパソコンを解除するロック番号を教える必要はありません。また、捜査機関が探している証拠物の場所や、参考人とされる人物の連絡先などもわざわざ自ら進んで伝えるべきではないでしょう。
ただし、これらの行為が捜査妨害とみなされると身柄拘束期間が長期化するリスクが生じる点に注意が必要です。どのようなタイミングでどの証拠について供述をするかについては、取調べや捜査活動の進捗を踏まえて、適宜弁護士に判断してもらうことをおすすめします。
冤罪で捕まった場合はすみやかに弁護士へ連絡する
冤罪で捕まった場合には、できるだけ早いタイミングで弁護士へ連絡してください。被疑者には弁護人選任権が保障されているので、厳しい取調べに対して弁護士の支援を受けることができます。
弁護士選任権の行使に関して、被疑者には以下2つの選択肢が与えられています。
- 当番弁護士制度を利用する
- 私選弁護人と契約する
まず、すべての被疑者が利用できる制度が「当番弁護士制度」です。逮捕されて身柄を拘束された被疑者は、誰でも無料で1回限り、当番弁護士と接見機会を設けることができます。
次に、被疑者はそれぞれ自分の責任のもとで「私選弁護人」と契約することも可能です。国選弁護人制度と違って、私選弁護人に依頼をするには、各法律事務所が定める弁護士費用を支払わなければいけません。
そして、冤罪事件で捕まった場合、当番弁護士ではなく私選弁護人を選任することを強くおすすめします。なぜなら、冤罪事件で無罪を主張するには捜査活動と激しく対峙する必要がありますが、当番弁護士ではなく刑事事件に強い私選弁護人の方が効果的な防御活動を期待できるからです。
そもそも、当番弁護士制度を利用したとしても、どのような弁護士が接見当日にやってくるか分かりません。たとえば、刑事弁護の経験が浅かったり、冤罪主張に対して消極的な人物がやってくると、無罪獲得に向けた防御活動を期待できないでしょう。
これに対して、私選弁護人を選任する場合には、各専門家の得意分野や年齢、性別、話しやすさ、防御方針の展望などを総合的に踏まえて、信頼に値する人物を選ぶことができます。
特に、冤罪で捕まった場合のように、誤認逮捕に対して全面的に争う必要があるケースでは、冤罪事件や無罪獲得実績豊富な弁護士でなければ満足のいく結果を獲得しにくいのが実情です。誤認逮捕後の刑事手続きはかなりスピーディーに進行するので、できるだけ早いタイミングで優秀な私選弁護人までご依頼ください。
冤罪で捕まった場合に弁護士へ相談するメリット6つ
冤罪で捕まった場合に私選弁護人に依頼するメリットとして、以下6点が挙げられます。
- 誤認逮捕された被疑者の早期身柄釈放を目指してくれる
- 冤罪を証明するための防御活動に尽力してくれる
- 誤認逮捕された被疑者との接見機会を通じて取調べへの作戦を練ってくれる
- 実名報道や個人情報流出に対して法的措置をとってくれる
- 誤認逮捕されたことを会社や学校に説明して慎重な対応を求めてくれる
- 接見禁止処分の解除に向けた防御活動を尽くしてくれる
冤罪で捕まった被疑者の早期身柄釈放を目指してくれる
冤罪事件の実績豊富な弁護士に相談すれば、無実を主張しながら早期の身柄釈放に向けて尽力してくれます。
先ほど紹介したように、被疑者にとっては誤認逮捕であったとしても、正式なプロセスを経て逮捕手続きが履践された以上、逮捕・勾留によって数日~数週間に及ぶ身柄拘束を強いられます。特に、冤罪事件で被疑者が黙秘・否認をする場合には捜査機関側が躍起になって捜査活動を実施するので、勾留請求が行われる可能性が高いです。長期に及ぶ身柄拘束は、被疑者の心身に過度な負担を強いるだけではなく、社会人や学生という身分にも悪影響を及ぼしかねません。
このような逮捕・勾留という不利益処分に対して、弁護士は以下の防御活動によって早期の身柄釈放を目指してくれるでしょう。
- 「証拠隠滅や逃亡のおそれがないため、逮捕・勾留という身柄拘束処分をする根拠がない」ことを主張して、警察や検察官に身柄を釈放するように働きかけてくれる
- 検察官が勾留請求をしたときに、勾留状を発付しないように裁判官に働きかける
- 勾留決定に対して準抗告で対抗する
- 勾留理由がなくなったことを理由に勾留の取消しを求める
冤罪を証明するための防御活動を展開してくれる
冤罪事件の実績豊富な私選弁護人に相談すれば、的確な防御活動によって無実を証明してくれます。
たとえば、痴漢冤罪で誤認逮捕されたケースでは、犯行当時の位置関係やシチュエーション、体勢から痴漢行為に及ぶことが難しいと証明してくれるでしょう。また、被疑者の犯行を否定するような目撃証言、正当防衛を裏付ける防犯カメラ映像などを見つけてくれます。
接見機会を利用して取調べにおける注意点を教えてくれる
冤罪事件の実績豊富な弁護士へ相談すれば、接見機会をフル活用して取調べに対するアドバイスを提供してくれるでしょう。たとえば、供述調書への署名・押印に関する注意点を教えてくれたり、具体的な取調べ内容を踏まえた供述方針を決定してくれたりします。
その際に役立つのが「被疑者ノート」と呼ばれるものです。被疑者ノートとは、「日本弁護士連合会が刑事事件の被疑者が不当な取調べを受けることがないように作成したもの」です。取調べの内容、取調べ時の捜査官の言動を逐一記入できるので、被疑者ノートが差し入れられるだけで捜査機関に対する牽制になります。場合によっては、被疑者ノートの記載内容を証拠として、刑事裁判で捜査活動の違法性を主張できるでしょう。
そもそも、被疑者と自由に面会できるのは弁護人だけです(刑事訴訟法第39条第1項)。厳しい取調べを受けるなか、唯一の味方になってくれる弁護士と話をするだけで励みになります。
実名報道等の名誉棄損に対抗してくれる
身に覚えのない冤罪事件でも、逮捕されると実名報道の危険性に晒されます。
日本の刑事司法には「推定無罪の原則」があるにもかかわらず、逮捕された時点でニュース報道されるのが実情です。そして、一度でも実名報道されてしまうと、インターネット上に事件の情報が残り続けるだけではなく、個人情報や顔写真、家族構成などが特定されることもあり得ます。
冤罪事件に強い弁護士は、過熱する報道機関に対して抑制するように申し入れをしてくれたり、個人情報の漏洩や名誉棄損・侮辱するようなネット記事・SNS投稿などに対して削除申請などで対抗してくれるでしょう。
学校や会社への対応もケアしてくれる
冤罪で捕まった場合には身柄拘束期間が長期化することが多いので、勤務先や学校に逮捕されたことを隠し通すのが難しいです。逮捕された事実が知られた時点で、学校や会社からの印象が悪くなり、場合によっては早々に何かしらの処分が決定されかねません。
冤罪事件に強い弁護士は、被疑者とされた人物が適切な形で社会復帰を果たせるように、会社や学校に対して事件の詳細や冤罪を主張していることを丁寧に説明してくれます。先走って懲戒処分等を検討している会社・学校に対する牽制にもなるでしょう。
接見禁止処分にも対抗してくれる
身に覚えのない冤罪事件でも、逮捕・勾留されると接見禁止処分が付されることが多いです。これでは、弁護士以外の第三者とは誰にも面会できません。また、孤独な状況で厳しい取調べを強いられ続けると、「家族や子どもの顔を見たいから罪を認めてしまった方が楽だろう」という考えに流されるおそれも生じます。
刑事事件の経験豊富な私選弁護人に相談すれば、準抗告による接見禁止処分の取消しや、接見禁止一部解除の申立てなどの法的措置を駆使して、家族などの第三者と早期に面会できる機会を設けてくれるでしょう。
冤罪を証明できた場合にするべき3つのこと
冤罪で捕まった場合でも、その後の防御方法や捜査活動の進捗次第では、無罪を勝ち取ることも可能です。
そして、誤認逮捕された側からすると、「最初から適切な捜査をしていれば誤認逮捕は防げたはず。冤罪を生み出した責任をとって欲しい」と考えるのも当然でしょう。
冤罪で捕まった後に無罪を証明できたときに検討すべき法的措置として、以下3つの方法が挙げられます。
- 被疑者補償規定に基づく請求
- 刑事補償法に基づく請求
- 国家賠償法に基づく請求
被疑者補償規程に基づく請求
冤罪で捕まった場合には、被疑者補償規定に基づく請求が考えられます。
具体的には、「逮捕・勾留されたが『罪を犯さなかつたと認めるに足りる十分な事由があるため』に不起訴処分を下された場合」には、1日あたり1,000円以上12,500円以下の割合による補償金が支払われる、というものです(被疑者補償規定第3条第1項)。
なお、被疑者補償規定に基づいて補償金を請求するには、補償裁定書の通知を受け取ってから6カ月以内に補償金受領の申立てをする必要があります(同規定第7条)。
刑事補償法に基づく請求
冤罪で捕まって無罪になった場合には、刑事補償法に基づいて補償金を請求することも可能です。
具体的には、「検察官に起訴されたが刑事裁判で無罪を獲得できた場合には、1日あたり1,000円以上12,500円以下の割合による補償金が支払われる」というものです(刑事補償法第1条第1項、同法第4条第1項、日本国憲法第40条)。
状況次第では国家賠償法に基づく請求も検討できる
捜査機関側の明らかな怠慢やでっち上げによって冤罪事件が作出された場合には、国家賠償法に基づいて損害賠償請求をすることも可能です(国家賠償法第1条第1項)。被疑者補償規定や刑事補償法では1日あたり最高でも12,500円までしか受け取ることができませんが、国家賠償法に基づく損害賠償請求が認められると、それ以上の賠償額も期待できるでしょう。
ただし、国家賠償法に基づく損害賠償請求をするには、「公務員(捜査機関)が、その職務を行うについて、故意または過失によつて違法に他人に損害を加えたとき」という要件を満たす必要があります。
誤認逮捕されて後々無罪が明らかになった場合には捜査機関サイドに何かしらの落ち度があるのは事実ですが、国賠法上の「故意または過失」が認められるケースは多くはないでしょう。
冤罪で捕まった場合はすぐに弁護士へ連絡しよう
冤罪で捕まった場合には、何よりもまず弁護士に連絡をするのが最優先です。当番弁護士制度でも差し支えありませんが、冤罪のような特別な防御活動を要する事件類型では、不起訴処分や無罪獲得実績豊富な私選弁護人との契約をおすすめします。
正式な逮捕手続きで身柄を押さえられた以上、捜査機関主導で刑事手続きが進められてしまうと、長期間身柄拘束された結果、有罪判決が下されかねません。誤認逮捕をきっかけにこれまで築いた人生が崩れ去ってしまう前に、熱意をもって冤罪事件に取り組んでくれる弁護士までお問い合わせください。