裸の写真を送らせてしまった後で「もしかしてこれって犯罪…?」と不安を抱えてしまっている人もいるでしょう。裸の写真を送らせる行為自体が犯罪になるのは、相手が未成年(18歳未満)だった場合です。
また、強要して写真を送らせた場合や送られてきた写真の使い方次第では、犯罪となり得る可能性があるため注意しなければいけません。
この記事では、裸の写真を送らせてしまう行為は犯罪なのか?どういった罪が適用されるのか?について詳しく解説しています。
目次
裸の写真を送らせた場合に適用される罪状
裸の写真を送らせた場合、以下の罪に問われる可能性があります。
- わいせつ物頒布等罪
- 児童ポルノ禁止法違反
- リベンジポルノ法違反
- 強要罪
まずは、裸の写真を送らせた場合に適用され得る罪や刑罰について詳しく解説します。
わいせつ物頒布等罪
裸の写真を送らせた場合、わいせつ物頒布等罪に問われる可能性があります。この法律は刑法で以下のとおり明記されています。
(わいせつ物頒布等)
第百七十五条 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
2 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。引用元:刑法|第175条
わいせつ物頒布等罪は、わいせつな写真を頒布させた場合に適用される法律です。頒布とは、広く行き渡らせる行為を指します。
つまり、裸の写真を送った者が罰せられる法律です。また、特定の人にのみ送付した場合は適用されません。あくまでも頒布した場合に罰せられる法律です。たとえば、自分で撮影したわいせつな写真をインターネット上に公開して広く見せるような行為を指します。
ただし、同法二項に記載があるとおり「有償で頒布する目的で所持した場合」もわいせつ物頒布等罪に該当します。つまり、裸の写真を送らせて、有償で頒布しようと考えていた場合はわいせつ物頒布等罪に問われる可能性があるということです。
わいせつ物頒布等罪に問われた場合、2年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金もしくは科料、または懲役と罰金の併科というとても厳しい犯罪です。くれぐれも注意してください。
児童ポルノ禁止法違反
18歳未満の者に裸の写真を送らせた者は児童ポルノ法(正式名称:児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律)違反となります。同法では、裸の写真の送付や保管に対して以下のとおり明記しています。
(児童ポルノ所持、提供等)
第七条 自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。自己の性的好奇心を満たす目的で、第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管した者(自己の意思に基づいて保管するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)も、同様とする。前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
児童ポルノ法違反の対象となるのは18歳未満の者です。つまり、18歳未満の者に対し裸の写真を送るように要求して、実際に送らせた者は「児童ポルノの製造」に該当するため違法と判断されます。また、製造された写真を所持している場合も違法です。
児童ポルノ法違反に該当した場合は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処されます。
仮に、未成年同士のやりとりであっても罰せられる可能性があります。また、お互いに同意を得られていたとしても、同法に抵触して罰せられる可能性があるため十分に注意してください。
リベンジポルノ法違反
裸の写真を送らせ、当該写真をリベンジポルノとして利用した場合は罰せられるでしょう。本法律の正式名称は「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」であり、通称、リベンジポルノ法と呼びます。
リベンジポルノ法では、リベンジポルノに関して以下のとおり明記されています。
(私事性的画像記録提供等)
第三条 第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を不特定又は多数の者に提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2 前項の方法で、私事性的画像記録物を不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者も、同項と同様とする。
そもそも、リベンジポルノとは元交際相手や元配偶者のわいせつな画像や写真をリベンジ(復讐)目的で頒布する行為を指します。復讐ポルノとも呼びます。日本でもリベンジポルノによる被害が著しく発生したため、2014年に同法が成立されました。
リベンジポルノ法では、第三者が撮影者を特定できる方法で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を不特定又は多数の者に提供した者を罰すると記載しています。つまり、誰が撮影したのかわかるわいせつな行為を頒布する行為が違法です。
たとえば、交際相手Aの裸の写真を当時付き合っていたBが撮影した写真をSNSなどで拡散する行為を違法としています。
そのため、相手に裸の写真を送らせただけでは成立しません。リベンジ目的あるいはその他の目的を持って、不特定多数の人に広める行為が違法と判断されます。
同法が認められた場合は、3年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金というとても厳しい罰則を受けます。十分に注意してください。
強要罪
相手の意思に反して強制的に裸の写真を送らせた場合は、強要罪が成立します。強要罪は、刑法に定められている犯罪であり、以下のとおり明記されています。
(強要)
第二百二十三条 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。引用元:刑法|第223条
強要罪は脅迫や暴行を用いて相手に義務のないことを行わせる行為を指します。つまり、相手に対して裸の写真を送るよう強要した場合、同罪が適用される可能性があり、注意しなければいけません。
たとえば、交際しているA・Bがいたとしましょう。AがBに対して裸の写真を送るように要求し、Bが嫌がっているにも関わらず、「送らなければ別れる」と伝えた場合は強要罪になり得ます。
他にも語気を強めて「いいから送れ!」など、脅しとも取れるような場合は強要罪になり得るため注意しなければいけません。
同罪が適用された場合は、3年以下の懲役です。よって、罰金刑が定められていないため、執行猶予がつかなければ実刑判決となるとても厳しい罰則です。
たとえ交際相手や親しい間柄であっても、強要罪は成立する可能性があります。十分に注意してください。
裸の写真を送らせて罪に問われた場合の対処法
裸の写真を送らせてしまった場合、さまざまな法律に抵触する可能性があります。もし、裸の写真を送らせたことが原因で、何らかの罪に問われてしまいそうになっているのであれば、以下の対処法を行っておくようにしてください。
弁護士へ相談をしておく
罪に問われてしまいそうな場合は、すぐにでも弁護士へ相談をしておきましょう。おそらく、現時点で自分がどういった罪に問われてしまいそうなのか?について、把握しているはずです。
たとえば、交際相手に裸の写真を送らせたが、あとから「無理やり送らされた」と言っている、未成年とは知らずに裸の写真を送らせてしまった。など、自分自身でその事情からどう言った罪に問われるのかを把握しているはずです。
いずれの場合も「罪に問われる可能性がある」と認識しているのであれば、早急に弁護士へ相談をするべきです。弁護士へ相談をしておくことで、今後の正しい対応方法について詳しく教えてもらえます。
強要罪や児童ポルノ法違反を理由に相手から脅されているケースもあるでしょう。そう言った場合であっても、すぐに弁護士へ相談しておきましょう。今後の対応方法を教えてくれます。
被害者との示談交渉を進めておく
実際に被害者が捜査機関へ話をしに行っている場合、遅かれ早かれ逮捕されてしまう可能性があります。そのため、早急に示談交渉を進めておくのが得策です。
前提として、あなたが持っている写真を全て削除していることに加えて精神的苦痛に対する賠償金を支払って交渉を進めます。示談交渉を進める際も、基本的には弁護士を交えて進めます。
個人対個人で話を進めようとすると、足元を見られて相場以上の費用を要求される可能性があります。また、違反をネタにして何度も金銭を要求されてしまうケースも珍しくはありません。
さまざまな可能性が考えられるため、かならず弁護士へ相談をした上で交渉を進めていくようにしましょう。示談交渉さえ完了してしまえば、厳しく罰せられる可能性はとても低いでしょう。
よくある質問
裸の写真を送らせてしまった場合によくある質問を紹介します。
Q.自分たちの性行為を撮影して保管しても罪に問われますか?
A.直ちに罪に問われるとは考えにくいです。
たとえば交際相手等との性行為を撮影していたとしても、その行為が原因で罪に問われる可能性は低いです。ただし、行為の相手が未成年である場合や撮影を行うにあたって強要罪が認められる場合などは罪に問われます。
また、撮影した動画を頒布した場合もリベンジポルノ法違反に該当します。よって、相手が未成年の場合を除いて、撮影の行為自体が罪に問われることはありません。
なお、撮影をしたどちらか一方が「動画を消して欲しい」と依頼をしているにも関わらず、削除しない場合はさまざまな法律で対処される可能性があります。
実際に、削除に対する具体的な法律はないものの「相手が動画を削除してくれない」となった場合は、強要未遂やプライバシー侵害による名誉毀損等になり得ます。そのため、相手方から削除を求められた場合は、素直に削除してあげるのが得策です。
また、撮影自体が違法ではないとしても、後にトラブルの原因となる可能性が高いです。そのため、たとえ交際関係にある者同士であっても、性行為等の撮影は避けたほうが良いでしょう。
Q.相手が同意している場合も罪に問われますか?
A.相手が裸の写真の送付に同意している場合は、罪に問われる可能性は低いです。
裸の写真を送らせる行為そのものが犯罪になるのは、相手が未成年の場合のみです。つまり、未成年であれば相手の同意有無に関わらず、児童ポルノ法違反として処罰されます。
しかし、相手が成人の場合は同意を得られているのであれば、強要罪は成立しないため罪には問われません。ただし、送られてきた裸の写真を頒布したりリベンジポルノに使用したりした場合は、各関係法令で処罰されます。
また、相手が同意している場合であっても、実質的に暴力で支配しているような関係性であり、断ることができない事情が認められる場合は強要罪になり得ます。そのため、十分に注意してください。
Q.どのようにして犯罪行為がバレてしまいますか?
A.一般的には被害者側からの申告によってバレるケースが多いです。
裸の写真を送らせた場合、送るように指示された側が被害者です。たとえば、少女が自分の裸の写真を送付した児童ポルノ法違反の場合、少女側が被害者であると判断されます。
上記の例の場合、たとえば少女の親が少女のスマートフォンを確認した際、裸の写真を発見してしまうかもしれません。そして、少女に確認をすると、送った相手が特定されて事件化という流れが一般的です。
他にも、被害者が「脅されて裸の写真を送らされた」や「ネット上に自分の裸の写真が広められている」などの申告が原因で発覚するケースがあります。
また、稀に被害者側からの復讐によって事件が発覚するケースもあるため注意しなければいけません。たとえば、高校生同士(未成年)が付き合っていて、女性が男性に裸の写真を送っていたとしましょう。
後に、男性側にフラれてしまい別れてしまいました。フラれたことに納得がいかない女性は、自分が未成年であることを理由に「相手は児童ポルノ法違反である。私の裸の写真を所有している」と言い、事件に発展することもあります。
もちろん、背景事情を考慮して事件化しない可能性も考えられますが、こういったトラブルも実際に発生し得ます。
Q.送られた画像を削除していれば罪に問われませんか?
A.削除していても罪に問われる可能性があります。
裸の写真を送らせた場合、さまざまな法律に抵触するのは前述のとおりです。いずれの場合も、「所持」が違法になる場合もあれば「製造」が違法になったり、「頒布」が違法になったりするケースなどさまざまです。
そのため、「裸の写真を削除したため、自分は罪に問われない」とは言い切れません。裸の写真を削除して罪に問われないのは、あくまでも「所持」が犯罪行為である場合です。たとえば、児童ポルノ法違反です。
ただし、その他の行為が原因で罪に問われた場合であっても、写真を削除しているため証拠となり得るものがないということも考えられます。この場合は、証拠不十分で事件化できない可能性もあるでしょう。
Q.自分の裸の写真を送りつける行為も罪に問われますか?
A.わいせつ物頒布罪や児童ポルノ法違反になり得ます。
わいせつ物頒布罪はわいせつな写真を頒布した場合に適用される法律です。他にも、18歳未満の者にわいせつな写真等を送りつけた場合は、児童ポルノ法(児童ポルノ提供罪)に問われる可能性があります。
いずれの場合も犯罪行為であるため、自分の裸の写真等を送りつける行為は禁止であるという認識で問題ありません。絶対にやめてください。
まとめ
今回は、裸の写真を送らせてしまった場合に何らかの罪に問われる可能性はあるのか?について解説しました。
相手が成人している場合は、裸の写真を送らせてしまってもその行為が直ちに犯罪になる可能性は低いです。しかし、遅らせるまでに強要があった場合は、強要罪に該当します。また、広く頒布した場合も犯罪になり得ます。
また、送ったり送らせたりする行為は、後からさまざまなトラブルに発展する可能性があります。そのため、送らせたり送ったりする前に一度冷静になり、判断をしたほうが良いでしょう。