「いじめ」とは、一定の人間関係がある者から身体的もしくは心理的に攻撃を受けている場合を指します。しかし、いじめの実態の多くは犯罪行為であり、刑法に抵触する行為が大半です。そのため、いじめによって逮捕されてしまう可能性もあるため要注意です。
今回は、いじめ行為で適用される犯罪や被害を受けている場合の相談先など、加害者目線・被害者目線の双方から見た「いじめ」について詳しく解説しています。
いじめを行っている人もしくは「これっていじめなのかな…?」と悩まれている人や、いじめ被害を受けている人はぜひ本記事を参考にしてください。
いじめ行為で適用される犯罪
人のことをからかったりいじわるをしたりすることを「いじめ」と呼ぶ人がいます。相手が嫌がっているにも関わらず、面白半分でいじめを継続している人もいるでしょう。
「いじめ」という言葉で濁されている行為もその大半は、刑法という法律によって罰則規定が記されています。
罰則規定とは、「その行為を行った場合に罰を与える」という規定です。一方で「〇〇を行ってはいけない」という規定を禁止規定と言います。刑法で定められている犯罪の大半は、禁止規定は定められておらず、罰則規定のみとなっています。
まずは、いわゆる「いじめ」として行われている行為が刑法ではどういった罰則規定があるのかについて、詳しく解説します。もし、これから紹介する行為を行っている場合は、「いじめ」ではなく「犯罪」であることを十分に理解しましょう。
また、いじめを受けている人は自分が受けている行為が「犯罪」であることを認識し、今後の対処の参考にしてください。
殴る蹴る|暴行罪・傷害罪
人のことを殴ったり蹴ったりする行為は、暴行罪や傷害罪といった法律によって処罰されます。それぞれ刑法にて以下の通り明記されています。
(暴行)
第二百八条 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。引用:刑法|第208条
(傷害)
第二百四条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(傷害致死)
第二百五条 身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、三年以上の有期懲役に処する。引用:刑法|第204条・第205条
人のことを殴ったり蹴ったりする行為は暴行罪もしくは傷害罪が成立します。暴行罪と傷害罪の違いは被害者側に傷害が発生したかどうかです。
たとえば、「ふざけて相手のお尻を蹴る」といったいじめを行い、軽く蹴っただけでとくに痛みを感じていない場合は、暴行罪が成立します。一方で、お尻を蹴ったことによって被害者が転んでしまい、何らかの傷害が発生した場合は傷害罪が成立します。
また、お尻を蹴られたことによって被害者が転んでしまい、頭を強く打ってそのまま死亡してしまった場合は、傷害致死罪が成立するのです。
つまり、大前提として「相手に対して何らかの暴力行為を行った」という事実だけで犯罪は成立してしまうのです。加害者側が「ふざけて蹴ったつもり」であっても、被害者が暴行であると判断した場合は暴行罪が成立します。
暴行罪は「2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金」です。懲役刑が確定した場合は、刑務所へ収容されてその期間を全うしなければいけません。
もし、「ふざけて蹴った」という事実であっても、その結果が重大であれば傷害罪や傷害致死罪に問われる可能性もあるのです。いじめはどんどんエスカレートしていくケースが多く、加害者側は「ふざけていただけ」と思っても重大な犯罪を犯している可能性が高いのです。
万が一、傷害罪が成立した場合は15年以下の懲役または50万円以下の罰金であり、非常に重たい罰則規定があります。そのため、ふざけているつもり、軽くやったつもりであっても絶対に行うべきではありません。
物を隠す・落書きをする|器物損壊罪
人の物を隠したり人の物に落書きをしたりするいじめもあります。これらは、刑法に定められている器物損壊罪に抵触する可能性がある犯罪です。器物損壊罪は刑法にて以下の通り明記されています。
(器物損壊等)
第二百六十一条 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。引用:刑法|第261条
たとえば、学生であれば人の教科書に落書きをしたり破いたりする行為は、器物損壊罪が適用されます。器物損壊罪の法定刑は、3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料であるため、懲役刑の可能性にも注意しなければいけません。
他にも、人の物を隠したり汚したりするような行為も同罪になり得ます。いじめている側は「ふざけているだけ」のつもりであっても、その行為が犯罪に抵触する可能性も十分に考えられます。
「物を隠すだけなら人を傷つけていないから大丈夫」と思われている人がいるかもしれませんが、その行為はいじめではなく犯罪です。絶対にやめましょう。
脅かしてお金を取る|恐喝罪
人を脅かしてお金や財産等を搾取する行為は、刑法で定められている恐喝罪が成立します。恐喝罪は、以下の通り明記されています。
(恐喝)
第二百四十九条 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。引用:刑法|第249条
たとえば、「明日までにお金を持ってこい。持ってこなければ、どうなるかわかるよね?」といったニュアンスのことを相手に伝え、財物を交付させると成立します。いじめの中で「いじめられたくなければ、お金を払え」と言う人がいるかもしれません。
この行為は、立派な恐喝罪であり10年以下の懲役に処されるため注意が必要です。また、実際に上記の言葉等で脅迫を行って金銭を要求した場合であって、相手が金銭を用意していなかった場合は、恐喝は未遂で終了します。
未遂の場合であっても「恐喝未遂罪」が成立し、罰せられます。恐喝未遂罪も恐喝罪同様に10年以下の懲役となるため、「冗談のつもりで言った」という場合であっても注意が必要です。
ただ、仲間内の会話の中で「ゲームに負けたらジュースを奢って」などと言うのは、恐喝罪は成立しません。あくまでも、相手側が脅されていると感じ、財産等を用意しなければいけないと感じた場合に成立する犯罪です。
誹謗中傷|名誉毀損罪・侮辱罪
人に対して誹謗中傷を行った場合、名誉毀損や侮辱罪が適用される可能性があります。誹謗中傷とは「悪口や事実ではない嘘」などを指します。
たとえば、教室内で「〇〇さんは万引きをして捕まった!」などとクラス全員がいる前で発言をする行為が該当します。この場合、上記が嘘であった場合は名誉毀損罪が成立する可能性があるため注意が必要です。
仮に、上記の内容が事実であったとしても不特定多数の人の前で発表し、その人の名誉を著しく毀損した場合は犯罪が成立する可能性があります。
また、人に対して悪口を言った場合は侮辱罪が成立します。たとえば「ブス」「バカ」などの言葉は、侮辱罪に抵触する可能性があるため要注意です。侮辱罪および名誉毀損罪については、刑法にて以下の通り明記されています。
(侮辱)
第二百三十一条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。引用:刑法|第231条
(名誉毀損)
第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。引用:刑法|第230条
いじめている側にそのつもりがなくても、結果として名誉を毀損されてしまった場合や侮辱されたと感じた場合は、犯罪が成立します。
また、相手に対して実際にそのつもりがなく(実際にはそのように思っていない)にも関わらず「死ね」や「死んでしまえ」と伝え、実際に死んでしまうケースがあります。この場合、上記のような発言をした人が自殺教唆や自殺ほう助に問われます。
第二百二条 人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、六月以上七年以下の懲役又は禁錮に処する。
引用:刑法|第202条
何気ない言葉であっても、相手にとってはとても刺さってしまうことがあります。実際に間に受けてその行為を行ってしまえば、発言をした人が罰せられるため十分に注意しましょう。
嫌がることをさせる|強要罪
相手が嫌がっている行為を強要すると、強要罪が成立します。強要罪は刑法にて以下の通り定められている犯罪です。
(強要)
第二百二十三条 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。
3 前二項の罪の未遂は、罰する。引用:刑法|第223条
たとえば、「いじめられたくなければ土下座しなさい」と言うと強要罪が成立します。また、本来行う必要のないことを行わせることも強要罪になるため注意が必要です。
たとえば、「授業中に変な言葉を発しなさい」などと言い、そのように言われた本人が「本当に言わなかったらまた酷いことされる」と考えたとしましょう。そうして実際に変な発言をした場合は、強要罪が成立します。
強要する側はいたずら心、ふざけてなど深く考えずに発言をしていることでしょう。しかし、その行為は犯罪であるため注意しなければいけません。
また、服を脱がせる、自慰を行わせるなどわいせつなことを強要した場合は、不同意わいせつ罪が成立する可能性があります。強制わいせつ罪は、刑法にて以下の通り明記されています。
(不同意わいせつ)
第百七十六条 次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する引用:刑法|第176条
不同意わいせつ罪もとても重い犯罪です。ふざけて、いたずら心でなどいじめる側は簡単に考えているかもしれませんが、その行為は立派な犯罪であるため絶対に行わないでください。
いじめで逮捕される可能性
いじめはすべて犯罪行為であるため、罰則規定があり当然逮捕されてしまう可能性があります。しかし、現在の日本の法律では、14歳未満の未成年者は触法少年に該当するため逮捕ができません。14歳以上になって初めて逮捕されたり刑事罰を受けたりする可能性があります。
次に、いじめ行為を行って逮捕される可能性があるのかどうかについて、詳しく解説します。
いじめは犯罪であるため逮捕の可能性がある
いじめはすべて刑法に定められている犯罪に抵触し、いずれも罰則規定があります。そのため、いじめ(犯罪)を行った事実がある場合は逮捕されてしまう可能性があるため注意しなければいけません。
逮捕は、犯罪を犯した人の身柄を拘束して取り調べを行うことです。大人の場合は逮捕後48時間以内に検察官へ事件を送致し、検察は24時間以内に勾留請求の有無を判断する必要があります。この時点で最大72時間(3日間)は身柄の拘束が続きます。
さらに勾留請求が認められるとプラス20日(最長)の勾留に加え、刑事裁判で実刑判決を受けた場合は長期間、刑務所内での生活を余儀なくされてしまうのです。
あくまでも、上記の流れは成人している大人の場合であり、未成年者の場合は更生の余地があると認められるため、逮捕されるケースは稀です。とはいえ、いじめの内容が相当悪質であり、刑事裁判にかける必要があると判断された場合は、大人と同じ手続きで進むことがあります。
14歳以上は逮捕の可能性がある
刑法では「14歳に満たない者の罪は罰しない」と定められています。つまり、いじめ(犯罪)を行った年齢が14歳以上の場合は、逮捕される可能性があるのです。
逮捕されると、先ほど解説した通り身柄の拘束が続きます。当然ながら、自宅へ帰ることはできず、学校へ行くこともできません。警察署内にある留置所という場所に入れられて警察官から取り調べを受けます。
「いじめ」という言葉が使われてはいるものの、すべて刑法にて定められている「犯罪」です。そのため、逮捕される可能性があるのは当然であるという認識をしっかり持っておきましょう。
14歳未満は逮捕・勾留されることはない
先ほども解説した通り、刑法では「14歳に満たない者の行為は罰しない」と定められています。そのため、14歳未満の者がいじめ(犯罪)を行ったとしても、懲役刑や罰金刑等各法律によって定められている罰則を受けることはありません。罰則規定はないということは、逮捕されたり勾留されたりすることもありません。
たとえば、極端なことを言うと14歳未満の者がいじめとして相手を殴ったり蹴ったりして、傷害を与えてしまった場合であっても刑法上の罰を受けることはないのです。
ただ、刑法上の罰則がないと言うだけであって野放しにされるわけではありません。14歳未満の場合、事件を把握した警察は必ず児童相談所へ通告をしなければいけないと定められています。通告とは、児童相談所に報告をして児童相談所の職権発動を促すことを言います。
児童相談所は、当該児童(いじめを行った児童)を一時的に保護した上でさまざまな処遇を決定します。たとえば、児童自立支援施設への入所措置、里親への委託等があります。
また、児童相談所が審判妥当と判断した場合は、家庭裁判所送致されます。家庭裁判所は初めに少年鑑別所へ入所させるかどうかを決定し、入所が確定すると2週間〜4週間の間少年鑑別所で過ごさなければいけません。
その後、審判を受けて「少年院送致」「児童自立支援施設送致」「保護観察処分」「試験観察」のいずれかの処分が下されます。
つまり、14歳未満の者は逮捕・勾留される可能性はないものの、児童相談所での一時保護や少年院、児童自立支援施設などへの入所の可能性があるのです。これらの処分が確定すると、長期間(数カ月〜数年)はその施設で過ごさなければいけません。
当然ながら自宅に帰ることはできず、友達と遊ぶこともできません。学校へ行くこともできないため、今後の進路にも多大な影響を与えることになるでしょう。
【年齢別】いじめを行った加害者の処遇
いじめを行った加害者側の処遇は年齢によって大きく異なります。まず、先ほども解説した通り14歳未満が行った行為は刑法上罰せられません。また、14歳〜18歳未満の未成年者も少年であることから少年事件として扱われます。
次に、年齢別で見るいじめを行った者の処遇について詳しく解説します。
14歳未満の場合
14歳未満の者がいじめ(犯罪)を行った場合は、刑事罰に問われません。つまり、逮捕されたり刑務所へ収容、あるいは罰金刑(科料)となることはありません。
ただし、児童福祉法という法律に従って児童相談所へ通告、送致されてしまう可能性があります。結果的に児童自立支援施設への送致や里親への委託などが行われます。
つまり、逮捕等をされる可能性はないものの、これまでの社会から隔離される可能性があるということです。
14歳未満の者は触法少年と呼ばれ、刑事罰には罰せられないものの、更生をさせる必要があります。更生を目指すために必要な指導や治療を行うため、これまでの社会から隔離をした上で適切な処置を行う必要があるのです。
14歳以上20歳未満の場合
少年法では14歳以上20歳未満の者のことを少年と呼びます。また、法改正により成人年齢が18歳に引き下げられた現在は、18歳・19歳は特定少年と呼ばれています。このことを踏まえた上で、14歳以上20歳未満の者がいじめ(犯罪)を行った場合の処遇についてみていきましょう。
14歳以上になると刑事責任能力が認められるため、逮捕されたり刑事罰を受けたりする可能性があります。とはいえ、未成年者であるため更生の可能性に期待ができるため、家庭裁判所装置を経て原則少年審判を受けた上で処遇が決定する流れとなります。
少年審判とは、少年が非行行為(犯罪)を行った場合に処分を決定するための審判です。基本的には大人が受ける「刑事裁判」と同じであると考えて良いです。
ただ、少年の場合は更生の可能性があるため、懲役や罰金刑といった刑事罰が下されることは原則ありません。少年審判では、以下の中から処分を決定します。
- 保護観察
日常の社会生活に戻り、保護観察官や保護司の協力を得ながら更生を目指す処分 - 少年院送致
一定期間、少年院へ入院させる処置 - 児童自立支援施設送致
開放的な福祉施設で更生を目指すための送致 - 知事又は児童相談所長送致決定
児童福祉機関の指導に委ねる決定 - 検察官送致
刑事処分が妥当と判断された場合に行われる処置であり、大人同様刑事裁判を受ける - 不処分・審判不開始決定
いわゆる「無罪」や「不起訴処分」と同じ意味合い
少年の場合は上記いずれかの処分が下される可能性が高いです。たとえ「ふざけていたつもり」であっても、その行為が犯罪である場合は処分される可能性があります。
20歳以上の場合
20歳以上の者がいじめ(犯罪)を行った場合は、たとえ加害者が学生であったとしても刑事罰の対象となります。つまり、家庭裁判所へ送致されることはありません。
いじめを行えば、それは当然ながら犯罪であるため大人と同じように逮捕されて勾留請求が行われ、刑事裁判にかけられて懲役刑等の罰を受けます。
少年以下の場合は「罰を与える」という概念ではなく、あくまでも「更生を促す」ことを目的とした処置が取られます。一方で、20歳以上になるとある程度の責任は認められるため、自分で善悪を判断できる年齢とみなされて、犯罪を行えば罰を受けることになるのです。
いじめの定義とは
「いじめ」という言葉が使われているものの、その実態の大半は犯罪です。すべて、刑法に定められている犯罪行為に抵触し、刑事罰の対象となるため注意が必要です。。
また、文部科学省や厚生労働省では、いじめは「一定の人間関係のあるものから心理的・身体的な攻撃を受けている場合」と定義しています。次に、官庁が定めるいじめの定義について詳しく解説します。
一定の人間関係のある者から「心理的」な攻撃を受けている場合
一定の人間関係がある者から、心理的な攻撃を受けている場合は、いじめとして認定されます。一定の関係とは、学生であれば同じクラスの人やある程度関わりのある人などが該当するでしょう。
そういった人たちから、心理的な攻撃を受けている場合はいじめです。たとえば、暴言を吐かれたり、悪口を言われたりした場合が該当します。これらは、身体に影響を与えるわけではないものの、心には深い傷を負うことでしょう。
もちろん、刑法では侮辱罪や名誉毀損罪といった犯罪行為に該当はするものの、ギリギリ抵触しない言葉等もあるでしょう。
また、「周りから省かれる」「無視をされる」といったことも心理的な攻撃に該当します。しかし、これらの行為は刑法に定められている犯罪行為には該当しません。このように、刑法に抵触しない行為もいじめに該当するため、いじめの行為として定義する必要があるのです。
一定の人間関係のある者から「身体的」な攻撃を受けている場合
一定の人間関係のある者から「身体的」な攻撃を受けている場合も、いじめとして認定されます。身体的な攻撃は、すべて暴行罪や傷害罪といった犯罪行為として認められます。そのため、いじめの定義として認められているものの、その行為が犯罪であることをしっかり認識しておいたほうが良いでしょう。
いじめを受けている場合の対処法
現在、いじめを受けている人の中には「どこに(だれに)相談をすれば良いのかわからない」と悩まれている人も多いのではないでしょうか。いじめを受けている人の相談先は、主に以下の通りです。
- 学校
- 警察
- 弁護士
- SOSダイヤル
次に、いじめを受けている場合の相談先について詳しく解説します。
学校へ相談をする
学生の場合は、自分が通っている学校に相談をしましょう。学校はいじめ防止対策推進法によって、以下のことが義務付けられています。
- いじめの早期発見のために定期的に調査を行うこと
- いじめの相談を受けることができる体制を整備すること
- 通報を受けた場合は、直ちに調査を行うこと
など
つまり、前提として学校ではいじめに関する相談をできる環境が整備されているはずです。また、いじめが発生している場合は学校へ相談をした上で直ちに調査を行い、必要に応じて対応する必要があります。これらはすべて法律で定められている義務です。
しかし、中には学校に対する不信感であったり、見て見ぬふりをされていて悩んでいる人もいるでしょう。そういった人は、他の相談先を検討されてみてはいかがでしょうか。
犯罪である場合は警察へ相談をする
先ほども解説した通り、いじめは犯罪行為に該当する可能性があります。そのため、犯罪の場合は警察へ相談をしても良いです。たとえば、「暴行を加えられた」「お金を取られた」などの事実がある場合は、警察へ相談をしましょう。
ただ、中には「警察へ相談をするのが怖い」と感じている人もいるでしょう。そういった人は、まずは相談しやすい人に相談をした上で、一緒に警察へ相談をする流れでも良いです。
弁護士へ相談をしても良い
いじめ問題は法律の専門家である弁護士への相談も可能です。弁護士であれば、すぐに対応してもらえるケースが多く、最短で即日中に相手方や学校側へ書面等を送ってもらえる可能性があります。
さらに、弁護士が代理人となって加害者や学校側と面談を行ってくれるため、自分で加害者や学校と直接やり取りをする必要がありません。弁護士であれば、どのような状況であっても依頼者の味方をしてくれるため安心できます。
また、誰でも弁護士から書面が届けばびっくりしたりことの重大さに気付いたりします。加害者や学校に自分たちが行ったことに向き合ってもらうためには、弁護士へ相談をして対応してもらうのが一番良いでしょう。
24時間子供SOSダイヤルへ電話をかける
自分一人で抱え込み、誰にも相談することができない人は「24時間子供SOSダイヤル」のサービスを利用されてみてはいかがでしょうか。
本サービスは、土日祝日などであっても24時間いつでも電話が繋がる場所です。いじめの内容や本人の要望を聞いた上で、関係各所へ連携してくれるため、「どこに相談をすれば良いかわからない」と悩んでいる人は初めにこちらへ電話をしてください。
もちろん、守秘義務があるため「〇〇だけは誰にも言ってほしくない」という内容であれば、その情報を共有することはないため安心してください。
24時間子供SOSダイヤルの相談先はこちら
いじめに関するよくある質問
いじめに関するよくある質問を紹介します。
Q.子どもがいじめられているかもしれません。こっそり知る方法はあるでしょうか?
A.子どもからのサインを見逃さないことがとても大切です。
いじめを受けている子どもは、何らかのサインを発している可能性があります。たとえば、持ち物をよく無くす、金遣いが荒くなるなど、何らかの変化が発生している場合はいじめられている可能性があります。
もし、何らかのいじめの疑いがあるものの、本人が話したがらない場合はボイスレコーダーを忍ばせておくのも有効です。もしかすると、いじめの証拠となる情報を得られるかもしれません。
Q.無視や仲間外れはいじめですか?
A.無視や仲間はずれも文部科学省で定める定義である「一定の人間関係のある者から「心理的」な攻撃を受けている場合」に該当するためいじめです。
無視や仲間はずれは法律によって定められている犯罪ではありません。しかし、いじめの定義とされている「一定の人間関係のある者から心理的な攻撃を受けている場合」に該当する可能性があります。
無視されたり仲間はずれにされたりすると、その人は心理的に苦しい思いをすることは当然です。
また、いじめはだんだんエスカレートしていく可能性が高いため、早い段階で対応しておく必要があります。
Q.仲の良い友達をからかったり軽く叩いたりするのもいじめですか?
A.その状況や被害者の捉え方によります。
仲が良い者同士でふざけ合っている状況下であれば、いじめであるとは認定されにくいでしょう。しかし、被害者側が「やめてほしい」と思っているにも関わらず、自分の思いを言えずに「これはいじめである」と認識した場合はいじめになってしまいます。
また、いじめている側が「ふざけているだけ」と考えていても、実際に被害を受けている者が「暴行を受けている」と感じれば立派な犯罪となり得るため注意が必要です。
Q.人をいじめるとどうなりますか?
A.年齢によって処遇は異なりますが、何らかの処分が下される可能性が高いです。
たとえば、14歳未満の者が加害者となった場合は刑事罰を受けることはありません。原則、児童相談所へ通告されてその後の処遇が決定します。基本的には、一時保護をした上で里親への委託や児童自立支援施設送致などで更生を目指すことになるでしょう。
14歳以上20歳未満の少年(少年法における少年)については、原則、家庭裁判所へ送致されて少年院や児童自立支援施設送致といった保護処分が下されます。また、行った犯罪の状況次第では、逆送されてしまう可能性もあるでしょう。逆送された場合は、大人と同じように刑事処分が下されることになります。つまり、懲役刑や罰金刑が下されることになります。
20歳以上の人がいじめ(犯罪)を行った場合は、刑事処分を受けることになるため、懲役刑や罰金刑といった処分が下されることになるでしょう。
いずれにせよ、いじめを行った時点で何らかの処分が下されます。自分は「ふざけていたつもり」であっても、その行為が犯罪とみなされる可能性もあるため、十分に注意してください。
まとめ
今回は、いじめで逮捕されてしまう可能性について解説しました。
「いじめ」と言われている行為の大半は「犯罪」です。いじめという言葉で濁してはいるものの、大半は暴行罪や傷害罪、器物損壊罪や侮辱罪などさまざまな犯罪の成立要件を満たしているものばかりです。
つまり、「いじめ=犯罪」であるため当然ながら逮捕されてしまう可能性があります。加害者側は皆、「ふざけているつもりだった」「冗談のつもりで」と言いますが、被害を受けている者はそのように思いません。
もしも今、自分がいじめを行っているのであれば、それは立派な「犯罪である」という認識を持って改めるべきでしょう。いじめを受けているのであれば、今回紹介した内容をもとに適切に対応するべきです。今回解説した内容を踏まえ、加害者も被害者も今後の対応方法を検討されてみてはいかがでしょうか。