罰金が払えないとどうなる?懲役留置の仕組みやよくある質問を解説

罰金が払えないとどうなる?懲役留置の仕組みやよくある質問を解説
罰金が払えないとどうなる?懲役留置の仕組みやよくある質問を解説

罰金は刑罰のひとつであり、強制的に金銭を納付させるものです。罰金刑が確定した場合は、その義務を果たさなければいけず、何らかの理由によって免除されることはありません。

今回は、罰金刑が支払えない場合の対処法や支払えない場合に起こり得ることについて詳しく解説しています。罰金刑が確定してしまった人、これから確定しそうな人は本記事で解説している内容をぜひ参考にしてください。

罰金とは

罰金とは、刑罰の一種であり何らかの行為の罰則として支払命令が下されます。罰金刑は行為者から強制的に金銭を徴収する罰則であり、交通違反の反則金とは異なる性質を持ちます。

まずは、罰金とは何か反則金とは何が異なるのかについて詳しく解説します。

罰金は刑罰の一種

罰金とは、刑罰の一種であり行為者から強制的に金銭を徴収することを言います。たとえば、お店で万引きをした場合窃盗罪が成立します。窃盗罪の罰則規定は「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。

つまり、窃盗を行った場合は懲役刑もしくは罰金刑のうち、いずれかの刑罰が下されることになります。窃盗の中でも比較的軽微な行為である万引きの場合は、罰金刑が下されるケースが多いです。

このように、何らかの犯罪行為を行った場合に罰則として定められているのが「罰金」です。刑罰の一種であり、裁判所からの判決を持って確定する仕組みです。

反則金と罰金は異なるため要注意

交通違反を犯した際などに支払命令が下される金銭は、「反則金」と呼ばれており、罰金とは異なります。反則金とは、比較的軽微な交通違反に対して課せられる制裁金を指します。

ただし、交通違反の中でも重大な違反を犯した場合は、反則金ではなく罰金が科されることもあるため注意しなければいけません。

罰金と反則金の大きな違いは、前者は刑事責任であるのに対し後者は行政責任である点です。つまり、罰金は確定した時点で前科がついてしまうものの、反則金は前科が付かないといった違いがあります。

なお、反則金を支払わなかった場合は逮捕されて刑事事件へ進み、最終的には刑事罰が下されて前科がついてしまうこともあるため注意してください。

罰金が払えないとどうなる?

罰金刑の判決が確定しているにも関わらず、罰金を支払えない場合は以下のことが起こり得ます。

  • 検察庁から支払督促が行われる
  • 強制執行で財産が差し押さえられる
  • 労役場留置となる

次に、罰金が支払えない場合に起こり得ることについて解説していきます。

検察庁から支払督促が行われる

罰金は一括納付が原則です。しかし、何らかの理由で期限までに支払いができない人もいるでしょう。この場合、初めに検察庁から督促状が届きます。督促状には納付すべき罰金の額や納付すべき期日等が記載されています。その期日までに罰金を全額支払えば、労役場留置は避けられるでしょう。

つまり、検察もある日突然あなたの身柄を拘束して労役場留置とするわけではありません。督促状は初めの警告であると思っておけば良いでしょう。

強制執行で財産が差し押さえられる

督促状が送付されてもなお、罰金が納付されない場合は強制執行にてあなたの財産を差し押さえます。

強制執行が行われるとあなたが所有している財産を強制的に差し押さえ、換価処分(現金に変えて処分すること)した上で罰金に充てます。

基本的には、罰金を全額納付できる金額程度の差し押さえを行いますが、不足する場合はその他の方法によって罰金を支払わなければいけません。

最終的には労役場留置となる

罰金を支払う能力がない場合は、労役場留置となります。基本的には、督促状の送付⇨強制執行の順番で行われ、差し押さえる財産がない場合に労役場留置となります。

また、労役場留置となる前に必ず検察庁から「収容状」が届きます。収容状が届いてもなお、無視をし続けていると強制的に労役場留置となるため注意してください。

労役場留置とは、労役場(刑務所)へ収容して強制的に労働をさせて罰金を支払ってもらうことを言います。通常、罰金刑は金銭の納付を行わせる罰であるため、刑務所へ収容されることはありません。

しかし、罰金を支払わなかった場合は、罪を償っていないことになるため強制的に罰金を支払わせる仕組みが必要です。その仕組みこそが労役場留置です。

労役場留置が確定すると1日5,000円換算で強制労働をさせられることになります。土日祝日は休みですが、その間も1日5,000円として換算されるため、罰金から5,000円を割った日数刑務所へ収容されることになります。たとえば、罰金20万円であれば40日の労役場留置です。

留置期間中は当然ながら自宅等へ帰ることはできません。そのため、基本的には普通に働いていたほうがお金は稼げます。そのため、何とかして罰金を自分で支払う努力をしたほうが良いでしょう。

罰金が払えないときの対処法

罰金を期日までに支払えない場合は、以下の対処法を検討してください。

  • 徴収事務担当に相談をする
  • 一部の罰金を支払い、労役期間を短縮する

徴収事務担当に相談をする

徴収事務担当とは、主に罰金に関する業務を担う検察庁の部署です。罰金を納付しない人に対して督促を行ったり、強制執行を行ったりします。

徴収事務担当では、罰金の支払いが難しい場合の相談も受け付けています。必ずしも要望が通るとは限らないものの、罰金を支払えない事情がある場合は分割払いの相談や納付期限の延長などの交渉が可能です。

何もせずに黙って罰金支払いを無視し続けていると、いずれ労役場留置となってしまいます。そのため、まずは徴収事務担当に相談をした上で分割払いや支払い期限の猶予などを相談しましょう。

一部の罰金を支払い労役期間を短縮する

罰金が支払えない場合、最終的には労役場留置となります。労役場留置は、基本的に1日5,000円で換算されるため、一部の罰金を支払うことによって身柄拘束期間を短縮できる可能性があります。

たとえば、20万円の罰金を支払えない人であれば、通常40日の労役場留置が必要です。しかし、一部の10万円を支払えれば、労役場留置を20日間に短縮できます。そのため、少しでも罰金を支払っておけば留置期間を短縮できるため、多少無理をしてでもお金を用意したほうが良いでしょう。

罰金が払えないときに関するよくある質問

罰金が払えないときによくある質問を紹介します。

Q.生活保護受給者ですが罰金の支払い義務はありますか?

A.生活保護受給者であっても、罰金の支払い義務は免れません。

罰金は刑罰の一種であるため、どのような状況の人であっても免れることはありません。たとえ、生活保護受給者であっても罰金の支払い義務が発生します。

また、当然ながら罰金を支払えなければ生活保護受給者であっても、労役場留置となるため注意が必要です。何らかの事情から「就労不能」と診断されて生活保護を受給している人であっても、その人ができる範囲内での労役が与えられます。

つまり、いかなる理由があった場合であっても、罰金刑を免れることはありません。万が一支払いができなければ、何人であっても労役場留置となる可能性があります。

ちなみに、罰金は借金ではないため債務整理(自己破産等)を行っても支払い義務が免れることはありません。

Q.年金受給者でお金がありません。どうすれば良いですか?

A.お金を工面して罰金を支払っていただくしかありません。

お金がないなど、個別事情で罰金刑を免れることはありません。たとえ、年金受給者であっても罰金刑が確定した場合は、罰金を支払う義務があります。万が一、支払えない場合は労役場留置となる可能性があるため注意が必要です。

なお、罰金は一括納付が原則ですが、徴収事務担当に相談をした上で分割払いの対応の許可を得られる可能性もあります。そのため、生活を見直した上で罰金刑の支払額を捻出し分割で納める方法を検討しても良いでしょう。

また、ひとつの方法として略式命令が下された場合は正式裁判を請求した上で判決を先延ばしにし、その間に罰金を積み立てるという方法もあります。ただし、リスクも伴うため専門家に相談をした上で検討してください。

Q.病気で働くことができず、労役へ出ることもできません。どうすれば良いですか?

A.まずは、徴収事務担当に相談をしてください。

何らかの事情で働くことができず、労役も難しい場合は徴収事務担当へ相談をしてください。現時点で何らかの収入があるはずであるため、その中から分割払い等で罰金を納めていただくことになるはずです。

また、家族や知人等からの借り入れが可能である場合は、借入をした上で罰金の支払いを求められます。

ひとつ、覚えておいていただきたいのは、どういった事情があっても罰金刑を免れることはありません。労役場留置もしくは何らかの方法で罰金を納めてもらうのいずれかとなります。原則、一括納付ですが分割払い等で納付を求められることもあるためそのつもりで考えておいたほうが良いでしょう。

Q.自己破産をすれば罰金もなくなりますか?

A.自己破産をしても罰金はなくなりません。

自己破産は「債務」の返済義務を免除できる法的手続きです。しかし、自己破産によって免責にできない債務(非免責債権)があり、その中には罰金も含まれています。

罰金刑は刑罰の一種であるため、支払い能力がないからといって免責を認めてしまうと刑罰としての意味がありません。また、罰金は支払わなくても身柄を拘束して強制労働をさせることによって納付させる方法が認められています。そのため、自己破産による免責を認める必要がありません。

労役場留置に関するよくある質問

労役場留置に関するよくある質問を紹介します。

Q.自ら労役留置を希望しても良いですか?

A.罰金を支払えず、支払える資力もない場合は自ら労役場留置を希望することも可能です。

本来、労役場留置は強制的に身柄を拘束して行われるものです。しかし、実態として罰金を支払えないために、自ら労役場留置を希望する人も存在します。この場合、自ら望んで労役場留置をしてもらうことも可能です。まずは、徴収事務担当にご相談ください。

なお、労役場留置によって得られる金額は衣食住はついているものの、1日わずか5,000円です。普通に働いて収入を得た上で罰金に当てたほうが効率は良いです。

労役場留置となった場合は、身柄拘束が行われるためさまざまな社会的リスクも発生する点に十分注意してください。

Q.労役場では何をするのですか?

A.労働を行います。

労役場留置の実態は、受刑者(懲役受刑者)と実態は同じです。つまり、受刑者と同等の刑務作業を行うと考えておけば良いです。

刑務所内では、起床後8時から刑務作業が開始となります。その後、休憩や昼食を挟んで16時40分に刑務作業が終了となるのが1日の流れです。

刑務作業として行う内容は施設や人によって異なります。基本的には、木工や金属加工、裁縫、印刷といった仕事があります。

Q.労役場はどのようなところですか?

A.労役場は全国の刑務所や拘置所に併設されている施設です。

「労役場はどこにありますか?」と問われた場合、上記のような回答となるのが一般的です。しかし、実際には「労役場」という施設は存在しません。実は、刑務所や拘置所といった施設(いわゆる監獄)に収容され、労役留置されている者として扱われます。

Q.労役場に持っていける持ち物は何ですか?

A.労役場へ持っていける持ち物は、原則「タオル、石鹸箱(石鹸)、歯ブラシ等の日用品」です。

労役場へ持ち込めるものは限定的であり、基本的には上記程度の物です。ただし、憲法上の権利の問題から聖書やその他一部書籍等の持ち込みが許可される場合があります。もし、持ち込みたいものがある場合は、事前に確認をした上で持ち込みをしましょう。

Q.手紙や面会、通信の制限はありますか?

A.労役場留置であってもさまざまな制限があります。

労役へ行くと面会をできる人は家族と親族のみに限定されます。そのため、たとえば結婚をしていない彼氏・彼女の面会は不可能です。また、友人や知人の面会もできません。

なお、手紙については原則誰とでも可能です。ただし、受信・発送する手紙の内容はすべて検閲されるため注意してください。内容によっては、相手に届かない可能性があります。

まとめ

今回は、罰金を支払えない場合について解説しました。

罰金はひとつの刑罰であるため、「支払えない」ということが認められません。そのため、万が一支払えなければ、最終的に労役場留置となります。労役場留置となった場合は、身柄を拘束されたうえで1日5,000円程度で強制労働をしなければいけなくなります。

普通に働いていれば1日5,000円以上のお金を稼ぐことは可能でしょう。そのため、労役場留置はとても非効率です。

罰金は、原則一括納付ですが支払いができなければ分割の相談も可能です。もし、罰金刑が確定しているのであれば、分割払いでコツコツと支払っていく方向で相談をされてみてはいかがでしょうか。

刑事事件でお悩みの場合はすぐにご相談ください。

刑事事件で重要なのはスピードです。ご自身、身内の方が逮捕、拘留されそうな場合はすぐにご相談ください。

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