検挙と逮捕の違いとは?それぞれの違いや流れを詳しく解説

検挙と逮捕の違いとは?それぞれの違いや流れを詳しく解説
検挙と逮捕の違いとは?それぞれの違いや流れを詳しく解説

「検挙」や「逮捕」はニュース等でよく見聞きする単語であり、「どういった意味があり、違いがあるのだろうか?」といった疑問を抱えている人も多いのではないでしょうか。

検挙は広義で使われる言葉ではあるものの、法律用語ではなく明確な基準等はありません。一方で、逮捕とは刑事訴訟法に基づいて行われる手続きであり、詳細な基準や逮捕手続きの流れが定められています。

この記事では、検挙と逮捕の違いやそれぞれの流れについて解説しています。検挙と逮捕の違いについて知りたい人はぜひ参考にしてください。

検挙と逮捕の違い

検挙とは「被疑者とすること」を指し、法律的な用語ではなく警察内部で使用される言葉です。一方で逮捕とは、「犯人の身柄を拘束すること」を指します。まずは、検挙と逮捕の違いについて詳しく解説します。

検挙は「被疑者とすること」を指す

検挙とは一般的に「被疑者とすること」を指す用語として利用されます。検挙は法律的な言葉ではなく、警察や捜査関係者の中で使用される専門用語のようなものです。

「被疑者とすること」の意味は、犯罪を犯した者を特定して捜査対象とすることを指します。たとえば、強盗事件が発生して逃亡した犯人がいた場合、捜査によってこの犯人を特定することを指します。

また、検挙はさまざまな意味合いで利用されることが多く、「被疑者を特定して任意聴取を開始した」という意味合いで利用される場合もあります。さらに「事件が検察に送致もしくは書類送検された」という意味で利用されるケースもあります。

検挙は、あくまでも警察等の捜査機関で利用される言葉であり、法律的な用語ではないため明確な定義はありません。

もしニュース等で「〇〇事件の犯人を検挙した」と見聞きした場合は、「〇〇事件の犯人が特定された」もしくは「取り調べが開始された」などと考えれば良いでしょう。

逮捕は「犯人の身柄を拘束すること」を指す

逮捕は「犯人の身柄を拘束すること」を指します。逮捕は刑事訴訟法という法律によって定義されており、明確な基準がある法律的手続きです。逮捕は「犯人の身柄を拘束して取り調べを行うための手続き」です。

たとえば、犯罪を犯した者がいる場合、逮捕する必要があるかどうかを判断し「必要がある」と判断された場合は逮捕状を請求して逮捕を行います。

実は、犯罪を犯したからといってすべての被疑者が逮捕されるわけではありません。逮捕されるためには、「証拠隠滅の恐れ」や「逃亡の恐れ」がある場合等に限られています(逮捕の種類によってその他基準があります)。

つまり、上記の可能性が低いと判断された場合は、たとえ犯罪を犯した場合であっても逮捕されることはありません。逮捕せずに取り調べ等を行うことを「在宅事件」と言い、逮捕して取り調べ等を行うことを「身柄事件」と言います。

検挙された場合の流れ

検挙とは「被疑者とすること」を指し、その後の流れは処分内容によって大きく異なります。まずは、検挙された場合の具体的な流れについて詳しく解説します。

1.検挙

検挙は何度もお伝えしている通り「被疑者とすること」を指します。たとえば、とある町で発生した強盗事件の犯人を特定し、その者を被疑者とした場合に検挙したと言います。

被疑者とは犯罪を犯した可能性があり、警察や検察等の捜査機関から犯罪の疑いをかけられている者です。また、起訴される前の者を指し、起訴された者は被告人に呼び名が変わります。

検挙された時点では被疑者に対して何らかの行為が発生することはありません。ただ、広義で使われる言葉であるため、「検挙」の時点で何らかの行為が発生している場合もあります。

2.処分決定(処分内容によって流れは変わる)

検挙された場合、その後の処分内容によって流れは異なります。検挙されているということは、何らかの犯罪の被疑者にされているはずです。そのため、大まかに以下の処分が決定されます。

  • 微罪処分
  • 在宅事件
  • 逮捕をして身柄事件

初めに、微罪処分とはいわゆる「厳重注意処分」のことです。通常、捜査機関が認知した事件は、すべて検察へ送致しなければいけません。しかし、犯罪の内容が比較的軽微である場合や反省をしている場合など、さまざまな事情を考慮して、微罪処分を決定するケースがあります。

微罪処分となった場合は、検察官へ事件を送致せずに終了します。そのため、微罪処分が確定した時点でその事件については終了し、その後罪に問われることなどはありません。

一方、微罪処分とならなかった事件については刑事訴訟法に基づいて、検察官に事件を送致する必要があります。この場合、在宅事件として捜査を継続するか逮捕をして身柄事件として捜査を継続するか決定します。

先ほどもお伝えしたとおり、犯罪の疑いが強い場合であっても「証拠隠滅の恐れ」や「逃亡の恐れ」がない場合は、逮捕せずに捜査を行います。

ちなみに、在宅事件として扱われた事件については、基本的に身柄拘束を行わずに捜査を行いますが、必要であると判断された場合は逮捕される可能性もあります。また、在宅事件になったからといって、必ずしも刑罰が軽くなるとは限りません。

当然ながら起訴される可能性もありますし、有罪判決が下される可能性もあります。懲役刑や罰金刑が確定するケースもあるため注意しましょう。

逮捕された場合の流れ

逮捕された場合は、身柄を拘束して取り調べ等を行います。逮捕は、被疑者の身柄を拘束する行為であるためその後の流れ等は細かく定められています。次に、逮捕された場合の流れについても見ていきましょう。

1.逮捕(身柄拘束)

逮捕をされると身柄が拘束され、逮捕から48時間以内に検察官へ事件を送致されます。逮捕の種類は以下の3種類あり、それぞれ逮捕するための条件が異なります。

  • 通常逮捕
  • 現行犯逮捕
  • 緊急逮捕

通常逮捕は、もっとも一般的な逮捕です。警察等が捜査をして被疑者を特定して裁判所へ逮捕状を請求します。その後、逮捕状を持って被疑者を逮捕する流れです。「ある日突然、目の前に警察が現れて逮捕された」というのが通常逮捕です。

現行犯逮捕は、現に犯行が行われている場合や犯罪を終えている場合であって、その犯罪を犯したことが明らかである場合に成立する逮捕方法です。たとえば、痴漢をしてしまった人が周囲の人に捕まり、そのまま警察等に逮捕された場合が該当します。

緊急逮捕とは、一定の重大事件の犯人を逮捕状なしに逮捕できる逮捕方法です。通常、犯人の身柄を拘束する逮捕は、裁判所が発布する逮捕状がなければいけません。しかし、緊急性が認められる場合は緊急逮捕が可能です。

たとえば、指名手配犯を発見した場合、わざわざ逮捕状を請求している暇はありません。逮捕状請求の間に逃走されてしまう可能性があるためです。この場合は、緊急逮捕をしたうえで直ちに逮捕状を請求すれば良いです。

いずれの場合も「逮捕」であることに変わりはなく、逮捕されたときから48時間以内に次の手続きに移行している必要があります。

2.事件を検察官へ送致

事件化された場合は原則すべて、検察へ送致しなければいけません。これを「全件送致主義」と言います。事件が引き継がれた検察官は、さらに24時間以内に被疑者の勾留を継続するかどうかを決定します。また、勾留しない場合は直ちに被疑者を釈放する必要があります。

釈放された被疑者は自宅等へ戻り、日常生活を送ることができるようになります。しかし、事件についての判決が確定するまでは、検察や裁判所等の呼び出しに応じる必要があり、最悪の場合は勾留されてしまう可能性もあるため注意が必要です。

3.勾留の有無を判断

検察へ事件を送致したあと、検察官は被疑者を勾留するかどうかを決定します。勾留は逮捕同様、「逃亡の恐れ」や「証拠隠滅の恐れ」がある場合に認められます。

検察が勾留の必要があると判断した場合は、裁判所へ被疑者を連れていき、勾留質問を経て最終的に裁判官が決定します。

勾留が認められると初めに10日間の身柄拘束が行われますが、実際は勾留延長が認められ、20日程度の勾留が続くでしょう。勾留中は警察署内にある留置施設に収容されて取り調べを受ける流れになります。

4.起訴・不起訴を判断

勾留されている被疑者は、勾留期間中に起訴するか不起訴とするかを決定します。不起訴処分が決定した場合は、ただちに被疑者を釈放しなければいけません。

起訴された場合は、呼び名が被疑者から被告人に変わり、留置所から拘置所へ移送されます。ただし、起訴には「正式起訴」と「略式起訴」の2パターンがあり、後者の場合は罰金刑もしくは科料が確定するため罰金等を納めると釈放されます。

正式起訴された場合は刑事裁判を行い、判決に従って刑に服する流れとなります。

5.正式起訴の場合は刑事裁判を行う

略式起訴の場合は略式命令が下されて終了します。しかし、正式起訴された場合は、刑事裁判を受けることになります。刑事裁判では、有罪か無罪かを決めたうえで有罪の場合はどの程度の刑罰を科すか決定します。

6.判決に従って刑に服する

裁判で判決が確定した場合は、その刑罰に従って刑に服します。刑罰は、軽いものから以下の種類があります。

  • 科料

1,000円以上1万円未満の現金納付を行わせる罰

  • 罰金

1万円以上(上限なし)の現金納付を行わせる罰

  • 拘留

1日以上30日未満の期間、刑務所に収容して刑務作業を行わせる罰(勾留と読み方は同じですが、内容は異なるため要注意)

  • 禁錮

一定期間刑務所に収容されるものの、刑務作業が義務付けられていない罰

  • 懲役

一定期間刑務所に収容され、刑務作業が義務付けられている罰(最長は無期懲役であり、期間の定めがない)

  • 死刑

死をもって罪を償わせる罰

懲役刑と禁固刑を統一させた「拘禁刑」が新設され、2025年6月1日に施行されます。懲役刑は刑務作業が義務付けられていますが、拘禁刑により義務化されなくなります。

逮捕と検挙に関するよくある質問

逮捕と検挙に関するよくある質問を紹介します。

Q.検挙と摘発の違いは何ですか?

A.検挙は「被疑者とすること」であり、広義で使われる言葉です。摘発とは犯罪などの悪事を暴いて公表することを指します。

検挙は本記事で何度もお伝えしている通り「被疑者とすること」を指し、その意味は広義で使われています。また、検挙は法律用語ではなく、警察等の中で使用される言葉です。

一方、摘発とは犯罪などの悪事を暴いて公表することを指します。たとえば、「違法風俗店の摘発に入り、店長および従業員を現行犯逮捕した」のような使い方をします。

摘発も法律用語ではありません。また、摘発は犯罪事実や店舗等に対して利用される言葉です。

Q.書類送検とは何ですか?

A.書類送検とは、在宅事件の被疑者が送致されることを指します。

犯罪事実が発覚して警察等が認知した場合、事件として扱われます。事件は、原則全件を検察官へ送致しなければいけません。これを「全件送致主義」と言います。

また、事件の捜査を行う際は被疑者を逮捕(身柄拘束)する場合と、身柄の拘束をせずに捜査等を行う方法があります。前者を「身柄事件」と言い、後者は「在宅事件」です。

在宅事件として扱われている事件で検察官へ送致することを書類送検と言います。一方、身柄事件の場合は「身柄付送致」と呼びます。

Q.検挙された場合の影響はどのようなことがありますか?

A.検挙されてしまうと、被疑者として扱われるためさまざまな影響が発生します。

逮捕された場合は身柄拘束が発生するため、学校へ行けない、会社へ行けないといった影響が発生します。その後、長期間の勾留となる可能性もあり、起訴されれば有罪判決が下される可能性が高いため要注意です。なお、有罪判決が確定した時点で前科がついてしまうため注意しましょう。

仮に、逮捕されなかった場合でも、起訴されて有罪判決が下される可能性があります。後に逮捕されたり身柄拘束が発生したりする可能性もあるため注意してください。

Q.検挙された場合の対処法を教えてください。

A.検挙された場合はただちに弁護士へ相談をしましょう。

検挙されると事件の被疑者として取り調べ等を受けることになります。できるだけ早い段階で弁護士へ相談をしたうえで、アドバイスをもらい、取り調べを受けたほうが良いです。

また、早期に弁護士へ相談をすることで適切な弁護活動を行ってもらうことができるため、早めの釈放等も可能になるでしょう。

Q.交通違反は検挙・逮捕・摘発何ですか?

A.交通違反の場合であっても、検挙・逮捕・摘発といったいずれの言葉も使われます。

交通違反で頻繁に利用される言葉は「検挙」です。しかし、交通違反によって逮捕されてしまう可能性もあり、場合によっては「交通違反で逮捕された」というケースもあるでしょう。

また、検挙よりも広義で使用される摘発も、使用される場面は多々あります。よって、交通違反であっても検挙・逮捕・摘発といったいずれの言葉も使われる可能性があります。

まとめ

今回は、逮捕と検挙の違いについて解説しました。

逮捕は被疑者の身柄を拘束するための手続きであり、刑事訴訟法に条件等が細かく記載されています。一方で、検挙は被疑者とすることを指し、法律用語ではありません。あくまでも警察組織内等で利用される言葉であり、明確な基準もありません。

上記のことから「逮捕された場合の流れ」と「検挙された場合の流れ」は大きく異なり、今回解説したとおりの流れになります。

刑事事件でお悩みの場合はすぐにご相談ください。

刑事事件で重要なのはスピードです。ご自身、身内の方が逮捕、拘留されそうな場合はすぐにご相談ください。

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