取り調べや事情聴取で嘘をつくとどうなる?嘘をついた場合に問われる罪を解説

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取り調べ・事情聴取において嘘をつくのは良いことではありません。しかし中には、自分や自分の大切な人を守る目的から、つい嘘をついてしまうこともあるでしょう。

この記事では、取り調べ・事情聴取で嘘をついた場合はどのような犯罪が成立するのか?について詳しく解説します。事情聴取や取り調べの嘘について不安や疑問を持っている人は、ぜひ本記事を参考にしてください。

取り調べ・事情聴取で嘘をついた場合に問われる罪

警察官等が行う取り調べや事情聴取で嘘をついたとしても、原則罪に問われることはありません。たとえば、実際に罪を犯した人が刑罰を免れるために「私はやっていません」と嘘をつくのはよくあることです。

実際に罪を犯したにも関わらず「やっていない」と嘘をついても罪に問われることはありません。また、刑法では「偽証罪」という犯罪がありますが、偽証罪も成立しません。ただし、嘘をつく内容次第では罪に問われる可能性があるため要注意です。

まずは、取り調べや事情聴取で嘘をついた場合に問われる可能性のある犯罪について詳しく解説します。

基本的に嘘をついても罪に問われることはない

取り調べや事情聴取で嘘をついても基本的には罪には問われません。犯罪の疑いをかけられている人は、自分を守るために必死です。そのため、実際は罪を犯しているけど「やっていません」と言うのは決しておかしいことではありません。

また、犯罪の内容等について知っていることを「知りません」と嘘をつくのも決して罪に問われることはないため安心してください。やはり、罪を犯した者は自分を守るために証拠となり得る物を見つけられたくないという心情が働くのは当然です。

そのため、基本的に取り調べで嘘をついても罪に問われることはないため安心してください。

そして、罪の疑いをかけられている人に対しては「黙秘権」という権利が与えられています。この権利は「言いたくないことは言わなくて良い」という権利です。

犯罪に関することなど自分にとって不利になり得ることは言わなくても罪に問われないというものです。ただし、決して「嘘をついて良い権利」ではない点に注意が必要です。

偽証罪も成立しない

刑法第169条では「偽証罪」という犯罪が明記されています。この犯罪は「法律によって宣誓した証人が虚偽の申述をしたとき」に成立します。そのため、警察や検察の取り調べの際に嘘をついても成立はしません。

法律によって宣誓する場面とは、主に刑事裁判を指します。刑事裁判にて承認として呼ばれた者は、証人尋問を行う前に宣誓として以下の言葉を述べます。

「良心に従って真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べないことを誓います」

上記宣誓をしたうえで嘘の証言をしてしまうと、偽証罪という罪に問われてしまいます。そのため、裁判で宣誓をした場合は絶対に嘘の供述をしてはいけません。知らないことは素直に「知りません」と伝えましょう。

嘘の内容次第で「犯人隠避罪」「虚偽告訴罪」に問われる可能性がある

嘘をつく内容次第では「犯人隠避罪」や「虚偽告訴罪」に問われる可能性があります。

たとえば、他に罪を犯した人がいるにも関わらず、その人を守るために「私がやりました」と嘘をついた場合は犯人隠避罪に問われます。他にも、実際は犯行現場を見て犯人を知っているにも関わらず、まったく関係のない人が罪を犯したと嘘をついた場合にも成立します。

虚偽告訴罪とは、虚偽の告訴・告発をした場合に成立する犯罪です。たとえば、実際には何ら被害がないにも関わらず「知り合いの〇〇に性暴行されました」と、取り調べ等で嘘をつくと虚偽親告罪が成立します。

上記のように取り調べにおいても嘘をつく内容次第では何らかの犯罪が成立する可能性があるため注意してください。

取り調べで嘘をつくデメリット

取り調べで嘘をつくことによって、罪を免れる可能性が少なからずあります。しかし、嘘をつくことによって以下のようなデメリットが発生する恐れもあるため注意してください。

  • 長期交流の可能性が高まる
  • 反省していないと思われる
  • 被害者との示談交渉が難しくなる

次に、取り調べで嘘をつくデメリットについて詳しく解説します。

長期勾留の可能性が高まる

取り調べで嘘をついていると長期勾留の可能性が高まるため注意してください。

まず、逮捕された場合は最長48時間の取調べの後に事件を検察官へ送致し、検察官は24時間以内に勾留の有無を判断します。「勾留が必要である」と判断された場合は、最長20日間の身柄拘束が行われる流れです。

つまり、逮捕された場合は最長で23日間の身柄拘束の可能性があります。しかし、全ての被疑者が23日間身柄を拘束されるわけではありません。とくに軽微な犯罪の場合は、あえて身柄拘束を行わずに在宅事件に切り替えるケースが多いです。

しかし、取り調べで嘘をついている場合は、証拠隠滅や逃亡の可能性が高いと判断されるため、長期勾留のリスクが高まります。警察官等もある程度の証拠を集めて逮捕状を請求し、裁判所は証拠に基づいて逮捕状を発布しています。

そのため、あなたが犯人であるという仮定のもとで捜査を行っており、この状況下で「やっていない」と嘘をつく行為は「あなたが嘘をついている」と判断されます。結果的に、嘘をついているため証拠隠滅をするのではないか?逃亡するのではないか?と考えられ、長期間の身柄拘束が行われることになるのです。

なお、勾留後に起訴された場合はそのまま身柄拘束が継続するため、さらに長期間の間勾留される可能性があるため注意しましょう。

反省していないと思われる

取り調べで嘘をついていると反省をしていないとみなされてしまいます。たとえば、実際は自分が罪を犯しているにも関わらず、「やっていない」と嘘をついていると「反省していない」と判断されます。

反省していないと思われてしまうと、厳しい処分が下されたり判決に影響を与えたりします。そのため、罪を犯した事実がある場合は素直に認めてしまったほうが良いでしょう。

被害者との示談交渉が難しくなる

嘘をついていると被害者との示談交渉はとても難しくなります。なぜなら、たとえば、実際に罪を犯しているにも関わらず「やっていない」と言っているということは、「やっていない」という事実を貫かなければいけません。

被害者と示談交渉を進めるということは、あなたは罪を認めていることになります。つまり、「やっていない」と言いながら示談交渉を行うということに矛盾が発生するのです。このことから「やっていない」と嘘をつくのであれば、被害者との示談交渉を行うこともできません。

刑事事件において、被害者との示談交渉や被害弁済はとても重要です。示談が成立している場合は、刑事罰も比較的軽く済むケースも多いです。たとえば、重大な犯罪であっても執行猶予付きの判決がつくケースもあります。

しかし、示談も成立していない、「やっていない」と嘘をついているという状況であれば圧倒的に不利です。非常に厳しい刑罰が下される可能性が高いため注意しましょう。

取り調べの上手な乗り切り方

取り調べにおいて嘘をついてしまうと心象が悪くなり、判決や処分に影響を与える恐れがあります。そのため、嘘をつく以外で取り調べを上手に乗り切る方法を検討してみましょう。

取り調べをうまく乗り切る方法は以下のとおりです。

  • 黙秘権を行使する
  • 必ず供述調書の内容を確認する
  • 参考人として出頭する場合は嘘を付かない
  • 弁護士に相談をしておく

次に取り調べをうまく乗り切る方法について詳しく解説します。

言いたくないことは言わない「黙秘権」を行使する

取り調べにおいては「黙秘権」が与えられています。黙秘権とは「言わなくても良いことは言わないで良い」という黙秘をする権利です。黙秘権をうまく行使することによって、嘘を付かなくても罪を認めずに済みます。

たとえば、実際に自分が罪を犯している場合であっても「何も言いません」という姿勢を貫くことで、警察官等はあなたの自白証拠を得ることはできません。そのため、その他の証拠をもとに立件していく必要があります。

ただし、自白による証拠以外に客観的証拠が揃っている場合、黙秘権を行使することによって「反省していない」とみなされてしまう可能性があります。そのため、黙秘権を行使することによるデメリットにも注意しなければいけません。

まずは弁護士とよく話し合いをしたうえでどのように取り調べに応じていくかを決定すると良いでしょう。

必ず供述調書の内容を確認する

取り調べにおける証拠はすべて供述調書としてまとめられます。そして、供述調書を証拠として扱うためには取り調べを受けた者の指印が必要です。

そのため、最後に必ずすべての供述調書の内容を確認したうえで間違いがないかどうかを確認します。このとき、適当に指印していると、言ってもいないことが書かれてしまったり、誤った伝わり方で書かれてしまったりする可能性があります。

万が一、自分に都合の悪い形で供述調書にまとめられてしまうと、その内容が自分にとって不利な証拠になり得ます。また、嘘をついた内容によっては、何らかの犯罪が成立してしまう可能性があります。

上記のことから、供述調書を確認する際は「誤った伝わり方をしていないか(誤解はないか)」「罪となる嘘をついていないか」といった点に注意しましょう。

参考人として出頭する場合は嘘を付かない

参考人として取り調べに応じる場合は、嘘を付かないようにしましょう。もちろん、言いたくないことは言わなくても良いですが、黙秘権は「嘘をついても良い権利」ではないことに注意が必要です。

参考人として取り調べに呼ばれた場合、被疑者が別にいる可能性が高いです。そのため、可能であれば知っていることを素直に話したほうが良いです。

たとえば、あなたがもしも犯人を知っている場合、「私は何も知りません」と言ってしまうと犯人隠避罪に問われる可能性があります。そのため、犯人を匿うつもりで嘘をつくのは避けなければいけません。

また、どうしても言いたくないのであれば黙秘権を行使しましょう。黙秘権は「言いたくないことは言わない」という権利であるため、決して嘘をついているわけではありません。そのため罪に問われることもないでしょう。

なお、参考人として呼ばれているときに「犯人は〇〇です」と嘘をつくと虚偽告訴罪が成立する可能性もあるため注意しなければいけません。

弁護士に相談をしておく

警察の取り調べを受ける際は、あらかじめ弁護士へ相談をしておきましょう。弁護士へ相談をしておくことで取り調べに挑む際の注意事項やアドバイスを受けられます。

刑事事件において弁護士をつけられるタイミングはさまざまです。まず、私選弁護人であれば自分のタイミングで自由に弁護人に依頼ができます。しかし、費用は自分で支払わなければいけず、とても高額です。

ただし、「当番弁護人」と「国選弁護人」であれば自分でお金を払わずに弁護士に相談することができます。当番弁護人は逮捕後に1度だけという条件があるため、逮捕されていなければそもそも利用できない点に注意が必要です。

とはいえ、逮捕後にさまざまな不安を抱えている状況下であれば、すぐにでも当番弁護人を依頼したいところです。そのため、すぐに警察官等に「当番弁護人を呼んでください」と伝えて今後の取り調べに対する注意事項やアドバイスを受けましょう。

もう一つ、国選弁護人は勾留確定後もしくは起訴後に付けられる弁護人制度です。タイミングとしてはとても遅いため、取り調べに対するアドバイスを目的としている人には向きません。

そのため、取り調べに関するアドバイスを受けたい場合は、私選弁護人もしくは当番弁護人が来た際に聞くしかありません。ただし、当番弁護人は1度しか呼ぶことができないため、聞きたいことをしっかりまとめておく必要があります。

警察が行う取り調べの主な対象者と目的とは

警察が行う取り調べは主に以下の種類があります。

  • 被疑者に対して行う取り調べ
  • 参考人に対して行う取り調べ
  • 重要参考人に対して行う取り調べ

被疑者・参考人・重要参考人など、取り調べを行う対象者はさまざまです。また、目的も異なるため、それぞれどう言った目的を持って、どのような取り調べが行われるのか?について把握しておくと良いでしょう。

次に、警察が行う取り調べの対象者および目的について詳しく解説します。

被疑者に対して行う取り調べ

被疑者とは、「犯罪の疑いをかけられている人」です。そのため、被疑者としてあなたに対して取り調べを行う場合は、あなたが犯人であると疑われています。もし、逮捕されていない状態で被疑者として取り調べを受けている場合は、自白を目指して取り調べを行っています。

もし、逮捕されている場合はあなたの供述以外にさまざまな証拠が揃っているため、犯罪に関する情報を聞き出すために取り調べを行なっているケースが多いです。

逮捕状が発布されるためには、ある程度犯罪の証拠が揃っていなければいけません。そのため、逮捕されている時点で被疑者と取り調べを受けている場合は、素直に応じて罪を認めてしまったほうが良いでしょう。

参考人に対して行う取り調べ

刑事事件における参考人とは「被疑者・被告人以外の人」です。被疑者は犯罪の疑いをかけられている人であり、被告人は犯罪について起訴された人を指します。

つまり、あなたは犯罪の疑いをかけられているわけではなく、「犯罪に関して何かを知っているのではないか?」と言った疑いをかけられている状態です。

もちろん、あなたが犯人であるという可能性がゼロではないものの、犯罪に関する情報を聞き出すことを目的として取り調べを行っています。

そのため、全く関係のない人を犯人として伝えたり、嘘の供述をしたりすると何らかの犯罪が成立するため注意しなければいけません。

重要参考人に対して行う取り調べ

重要参考人とは、被疑者および参考人ではない人を指します。つまり、現時点であなたが犯人かもしれないしただの参考人かもしれないと考えている状況です。

そのため、重要参考人に対して行う取り調べでは、犯罪に関する内容を確認したり自白を目指したりします。

重要参考人として取り調べを受ける際も嘘をついてしまうと何らかの犯罪が成立する可能性があるため要注意です。ただし、犯罪について「私はやっていない」と言っても犯罪にはなりません。

取り調べにおける嘘でよくある質問

取り調べにおける嘘でよくある質問を紹介します。

Q.任意聴取の依頼は拒否できますか?

A .任意であるため拒否は可能です。

任意聴取はあくまでも「任意」であるため拒否をしても問題はありません。しかし、任意聴取を拒否し続けていると、強制力を持って取り調べが行われることになる可能性もあります。

たとえばあなたが犯人であると疑われている場合は、逮捕状を発布したうえで逮捕をして取り調べを行う可能性があるでしょう。また、証拠隠滅等の可能性を疑われて長期間の身柄拘束の可能性もあるため要注意です。任意聴取に素直に応じたほうが自分のためになります。

Q.嘘ではなく、勘違いをして発言してしまった場合は罪に問われますか?

A .勘違いの場合は何らかの罪に問われることはありません。

勘違いをして発言した内容については、罪に問われることはないため安心してください。たとえば、「〇〇が犯人である」と供述したとしても、後にその内容が勘違いであることがわかった場合は、すぐに捜査機関に報告をすれば問題ありません。

また、なぜ勘違いをしてしまったのか?についても合わせて伝えておくと信ぴょう性が増します。嘘をついてしまうと犯罪になるので注意してください。

Q.事情聴取では何を聞かれるのでしょうか?

A.事情聴取では対象となっている事件について詳しく聞かれます。

事情聴取では、あなたに聞きたい犯罪のことを詳しく聞かれると思っておけば良いです。たとえば、犯罪のあった日にどこで何をしていたのか?犯罪に関係する人を知っているか?など、さまざまなことを聞かれるでしょう。

一見、関係のない話を聞かれることがあるかもしれませんが、何らかの形で犯罪に関係しているケースが多いです。もしくは、あなたがなかなか自分のことを話してくれないため、まずはプライベートなことから聞こうとしているケースが多いです。

Q.本当は罪を犯したのに「やっていない」と嘘をつくのは犯罪ですか?

A.罪を犯した人が「やっていない」と言っても罪には問われません。

罪を犯した人が本当はやっているにも関わらず「やっていない」と言うのはよくあることです。また、犯罪者の心理として「罪を免れたい」と考えるのは当然です。このことから、罪を犯した人が「やっていない」と言っても犯罪になることはありません。

Q.取り調べで嘘発見器は使用されますか?

A.嘘発見器が使用されるケースは少ないです。

嘘発見器は「ポリグラフ検査」と言います。ポリグラフ検査はほとんどの事件で使用されません。なぜなら証拠として利用できる程度の信ぴょう性が低いためです。

ポリグラフ検査によって得られた証拠は「証拠能力として適切かどうか?」についてしっかり確認をしたうえで使用されます。証拠能力が低いと判断された場合は、ポリグラフ検査で得た証拠は証拠として使うことはできません。

まとめ

今回は、取り調べで嘘をつくとどうなるのか?について解説しました。犯罪心理として、罪を犯した人は実際に罪を犯していたとしても「やっていない」と言ってしまうケースはよくあることです。

罪を犯した人も人であり、自分を守るための権利はあります。そのため、実際にやっていたとしても自らを守る目的で「やっていません」と言っても罪に問われることはありません。

しかし、嘘を付く内容次第では犯人隠避罪や虚偽告訴罪に問われるため注意しなければいけません。今回解説した内容を踏まえ、取り調べに不安が残る場合は弁護士への相談を検討しましょう。

刑事事件でお悩みの場合はすぐにご相談ください。

刑事事件で重要なのはスピードです。ご自身、身内の方が逮捕、拘留されそうな場合はすぐにご相談ください。

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