逃走罪とは?5つの逃走罪の成立要件や概要を詳しく解説

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逃走罪は「裁判の執行により拘禁された既決または未決の者が逃走すること」に成立する犯罪です。また、逃走をした本人のみならず逃走の手助けをした人なども何らかの逃走罪に問われる可能性があります。

この記事では、単純逃走罪やその他逃走罪に関連する犯罪について詳しく解説しています。逃走罪について詳しく知りたい人は、本記事を参考にしてください。

逃走罪とは

逃走罪とは、勾留されている場所や刑務所から逃走をした場合に成立する犯罪です。自ら逃走した場合に成立する犯罪と逃走を手助けした者に対して成立する犯罪があり、「逃走罪」と付く罪状だけで5種類あります。

まずは、逃走罪の概要と逃走罪の種類について詳しく解説します。

勾留されている場所や刑務所から逃亡した場合に成立する

逃走罪は「裁判の執行により拘禁された既決または未決の者が逃走すること」で成立する犯罪です。つまり、以下の人が逃走をした場合に逃走罪に問われる可能性があります。

  • 拘置所・留置所で勾留されている者
  • 刑務所に収監されている者

たとえば、刑事事件においては逮捕後に勾留を行う場合があります。逮捕後の勾留は留置場にはいることになるため、勾留を受けている者が留置場から逃走した場合は逃走罪が成立します。

また、起訴された人が引き続き勾留される場合は、拘置所に移送されます。拘置所から逃走した場合も逃走罪が成立するため注意しなければいけません。そして当然ながら刑務所から逃走した人も逃走罪が成立します。

一方で「裁判の執行により拘禁された既決または未決の者」以外の人が逃走をしたとしても逃走罪は成立しません。たとえば、逮捕されている人や少年院に収容されている少年が逃走をしても逃走罪に問われることはありません。

自ら逃走した場合と逃走を援助した場合に成立する

逃走罪は自ら逃走した場合と逃走を援助した場合に成立する犯罪です。たとえば、刑務所に収監されている人が脱獄を企てて実際に脱獄をした場合は、「自ら逃走を行った」として逃走罪が成立します。

一方で、誰かに手助けをしてもらった場合、手助けした人も逃走罪に問われます。たとえば、外にいる人と脱獄の計画を立てて実際に脱獄をした場合、脱獄をした本人のみならず手助けをした人も何らかの逃走罪が成立して処罰されるため注意しなければいけません。

逃亡罪は5種類ある

「逃走罪」という犯罪が刑法に定められていますが、「〇〇逃走罪」のようにさまざまな逃走罪の種類があります。具体的には以下のような逃走罪の種類があるため覚えておくと良いでしょう。

  • 逃走罪
  • 加重逃走罪
  • 被拘禁者奪取罪
  • 逃走援助罪
  • 看守者逃走援助罪

一般的に「逃走罪」とは「単純逃走罪」のことを指します。正式には「逃走罪」という罪状ですが、他の逃走罪と区別するために「単純逃走罪」と言い表すのが一般的です。

逃走罪よりもさらに悪質な逃走行為が認められた場合は、「加重逃走罪」という犯罪が成立することになります。他にも、さまざまな逃走罪の種類がありますが、詳しくは次で解説しているのでぜひ参考にしてください。

逃走罪の概要と成立要件

逃走することによって成立する犯罪には以下の種類があります。

  • (単純)逃走罪
  • 加重逃走罪
  • 被拘禁者奪取罪
  • 逃走援助罪
  • 看守者逃走援助罪

次に、それぞれの逃走罪の概要と成立要件について詳しく解説します。

「逃走罪」の概要と成立要件

逃走罪は他の逃走罪と区別するため「単純逃走罪」とも言います。逃走罪は、もっとも一般的な逃走罪であり、「裁判の執行により拘禁された既決または未決の者が逃走すること」で成立する犯罪です。

裁判の執行により拘禁された既決または未決の者とは、勾留されている人や受刑者などが該当します。つまり、釈放されている人や逮捕されているだけの人が逃走をしたとしても逃走罪は成立しません。

あくまでも「裁判の執行により拘禁された既決または未決の者が逃走すること」という前提が必要であるためです。

逃走罪が成立した場合の法定刑は「1年以下の懲役」です。他の刑法犯と比較して軽微ですが、実際は逃走をする際や逃走をしたあとにさまざまな罪を犯しているケースが多く、罪は重くなる傾向です。

たとえば、刑務所等から逃走をしても脱獄犯として過ごさなければいけません。そのため、人の家に勝手に入ったり人の物を盗んだりして生活をしなければいけず、住居侵入罪や窃盗罪等の罪に問われ、結果的に罪が重くなる傾向です。

「加重逃走罪」の概要と成立要件

加重逃走罪は、単純逃走罪よりも悪質な場合に成立する犯罪です。具体的には以下のような条件を満たしている場合に成立します。

  • 拘禁されている場所の器具もしくは拘束具の損壊
  • 暴行もしくは脅迫を用いていること
  • 二人以上の通謀がある場合

上記いずれかの行為が認められた場合は単純逃走罪よりも重い罪である「加重逃走罪」という犯罪が成立します。

たとえば「拘禁されている場所の器具もしくは拘束具の損壊」は、手錠を壊して逃走をした場合や収監されている部屋の一部を損壊して逃走した場合などです。また、暴行や脅迫を用いた場合とは、たとえば看守を脅したり暴行したりして逃走した場合です。

2人以上の通謀がある場合とは、内外問わず誰かと通謀して逃走を企て、実際に逃走をしようとした場合に成立します。

上記いずれかの要件を満たした場合は「加重逃走罪」という単純逃走罪よりも重い罪が適用されます。

なお、加重逃走罪が成立した場合は「3カ月以上5年以下の懲役」に処されます。単純逃走罪と比較してもとても重い罪となるため注意してください。

「被拘禁者奪取罪」の概要と成立要件

被拘禁者奪取罪は被拘禁者を奪取した者に対して成立する犯罪です。被拘禁者とは、先ほども解説したとおり受刑者や勾留中の者等です。これらの者を奪取した場合は、奪取した者が被拘禁者奪取罪に問われます。

たとえば、拘禁されている者を逃がして自分の支配下においた場合に成立する犯罪です。ただ被拘禁者を逃がしただけでは被拘禁者奪取罪の犯罪は成立しません。あくまでも「自分の支配下においた場合」に初めて成立するのです。

具体的な例で言うと、テロ組織が拘禁されている仲間を逃がして自分の支配下に置いたような場合に、テロ組織の逃走させた者が被拘禁者奪取罪に問われます。

被拘禁者奪取罪の法定刑は「3カ月以上5年以下の懲役」となり、加重逃走罪と同等の刑罰が科されることになります。なお、逃走した被拘禁者はその他の犯罪に問われる可能性もありますが、被拘禁者奪取罪のみの成立の場合は罪に問われません。

「逃走援助罪」の概要と成立要件

逃走援助罪とは、「裁判の執行により拘禁された既決または未決の者が逃走することを援助した場合」に成立する犯罪です。たとえば、逃走をするための器具を提供したり逃走できるように準備したりした者に対して問われる犯罪です。

この罪によって処罰される対象者は「逃走の援助をした者」です。そのため、逃走をした者は他の罪(単純逃走罪・加重逃走罪等)に問われることになります。

逃走援助罪の法定刑は「1年以上10年以下の懲役」となり、非常に重い罪が科されます。そのため、安易に人の逃走を手助けするような行為は避けるべきでしょう。

「看守者逃走援助罪」の概要と成立要件

看守者逃走援助罪とは、看守等が裁判の執行により拘禁された既決または未決の者が逃走することを援助した場合に成立する犯罪です。たとえば、刑務所の看守が受刑者の逃走を手助けしたような場合に成立します。

看守という立場を利用して逃走の手助けをしている以上、非常に厳しい刑罰が科されることになります。実際、看守者逃走援助罪の法定刑は「1年以上10年以下の懲役」です。逃走援助罪と同じではあるものの、他の逃走罪と比較して非常に重いです。

また、看守という立場を利用して逃走を援助していることから悪質性が高いと判断され、厳しい処分が下される傾向にあります。当然、看守としての職務を継続することもできなくなるため、刑事罰を受けると同時に職も失うことになります。

各種逃走罪で逮捕された場合の流れ

各種逃走罪で逮捕された場合は、逮捕されてそのまま身柄拘束をされる可能性が高いです。とくに悪質性が高い逃亡罪の場合は、非常に厳しい処分が下される傾向にあり、今後起こり得る流れについてもしっかり把握しておくべきでしょう。

次に、各種逃走罪で逮捕された場合の流れについて詳しく解説します。

逮捕

各種逃走罪で逮捕された場合、発見され次第逮捕される可能性が高いです。とくに逃走をした本人の場合、身柄を拘束されている状態から逃走をしているため、ほぼ確実に逮捕されることになるでしょう。

逮捕されると初めに48時間の身柄拘束が可能となります。その後、逃走罪について取り調べ等を行い、検察官へ事件を送致します。この流れは、逃走した者・逃走を援助した者のいずれも同様です。

ただし、逃走を援助しただけの者の場合は逮捕せずに捜査を行う可能性もあります。これを「在宅捜査」と呼びます。在宅捜査となった場合は、逮捕による身柄拘束が行われません。逃走のリスク等を考慮したうえで逮捕の必要性について判断します。

【逮捕の種類】

  • 逮捕状を請求して行う「通常逮捕」
  • 緊急性が高い場合に行う「緊急逮捕」
  • 現行犯の場合に逮捕できる「現行犯逮捕」

逃走罪等の場合は緊急逮捕もしくは通常逮捕によって逮捕される可能性が高いです。たとえば、逃走していることにより報道番組等でも逃走者の顔写真等が公開されます。また、全国の警察官が逃走者の顔を認識しています。

そのため、たとえば街中等で歩いているところを発見した場合、そのまま(緊急)逮捕となることが多いです。緊急逮捕は逮捕状がなくても逮捕できます。しかし、直ちに逮捕状を発布しなければいけないという条件があります。

通常逮捕は逮捕状を請求・発布してから逮捕する流れです。たとえば逃走しているあなたが友人の家に隠れていることが発覚した場合、逮捕状を発布したうえで警察官等があなたを逮捕しに来る場合に通常逮捕となります。

勾留請求

事件が検察官へ送致されると、検察官は引き続き被疑者の身柄を拘束する必要があるかどうかについて判断をします。逃走罪の場合は、元々身柄を拘束されていた被疑者であるうえに逃走している事実があるため、ほぼ確実に勾留請求が認められるでしょう。

勾留請求が認められると初めに10日間の勾留が可能です。その後、さらに10日間の延長が認められるため、合計20日間の身柄拘束となるでしょう。

勾留期間中は留置場の中で生活を送りながら逃走罪等やその他逃走中に犯した罪について取り調べを受ける流れです。

起訴・不起訴の判断

被疑者が勾留されている事件の場合は、勾留期間中(20日間)の間に逃走罪や逃走中に犯した他の罪について起訴するか不起訴とするかを判断します。逃走罪はすべて懲役刑の規定しかないため、起訴された場合は正式起訴となります。

仮に在宅事件となった場合は、起訴までに期限はありません。通常は書類送検されてから2カ月〜3カ月程度で起訴・不起訴の判断が行われます。

刑事裁判を受ける

正式起訴された場合は、刑事裁判を受けます。刑事裁判では、逃走罪や逃走前に犯した罪、逃走中に犯した罪等について審理し、有罪か無罪かを判断します。そのうえで有罪の場合はどの程度の刑罰を与えるのが妥当か審理し、判決として言い渡します。

判決に従って刑に服する

判決が確定した場合は、その判決に従って刑に服します。懲役刑が確定した場合は、その期間刑務所に収容されて刑務作業を行わなければいけません。

執行猶予付きの判決が付くようなことがあった場合は、一時的に社会へ戻ることができます。しかし、執行猶予期間中に罰金刑以上の刑罰が確定した場合は執行猶予が取り消される可能性があるため、今後の生活は十分に気をつける必要があります。

逃走罪に関するよくある質問

逃走罪に関するよくある質問を紹介します。

Q.罪を犯した人を匿っていると逃走援助罪等に該当しますか?

A .逃走援助罪は成立しませんが、他の犯罪が成立する可能性があります。

罪を犯したとわかっていながらその人を匿っていた場合、犯人蔵匿罪が成立する可能性があります。犯人蔵匿罪は「罰金以上の刑罰」「蔵匿」「故意があること」の3要件を満たした場合に成立する犯罪です。

つまり、科料等比較的軽微な犯罪である場合は、犯人蔵匿罪は成立しません。また、蔵匿(人に知られないように隠しておくこと)が認められている必要があります。そして、3つ目の要件として「故意があること」が条件です。

そのため、たとえば「罪を犯した事実を知らなかった」場合は、そもそも蔵匿の意思がないため犯人蔵匿罪は成立しません。

逆に「人を殺してしまった。捕まるのも時間の問題だから匿って欲しい」と言われて応じた場合は、犯人蔵匿罪が成立するため注意しましょう。

なお、犯人蔵匿罪の法定刑は「3年以下の懲役または30万円以下の罰金」です。とても厳しい刑罰が下されるため注意しましょう。

Q.職務質問を受けて逃亡したら逃走罪に問われますか?

A .職務質問から逃走をしても逃走罪は成立しません。

単純逃走罪の成立要件は「裁判の執行により拘禁された既決または未決の者が逃走すること」です。職務質問は任意であり、必ず応じる必要のあるものではありません。また、裁判の執行により拘禁等されているわけではないため、逃走罪は成立しません。

ただし、職務質問は警察官等の権限で行われるものです。そのため、逃走をしてしまうと追いかけられたり、最悪の場合は公務執行妨害罪で逮捕されたりするため注意してください。

Q.私人逮捕で逮捕された者が逃走した場合、逃走罪に成立しますか?

A .私人逮捕で逮捕された者が逃走をしても逃走罪は成立しません。

まず、私人逮捕とは私人が逮捕をできる権利であり、現行犯に限られています。私人逮捕後は、直ちに警察官等に引き渡す必要があります。

また、私人逮捕をしようとした際に被疑者が逃亡した場合であっても、逃走罪は成立しません。逃走罪の成立要件は「裁判の執行により拘禁された既決または未決の者が逃走すること」であるため、そもそも逮捕された被疑者が逃亡しても成立しないことになっています。

これは、私人かどうかに関係はありません。たとえ警察官等が被疑者を逮捕した場合であっても、「逮捕したときに逃げた」というだけでは逃走罪は成立しません。あくまでも、裁判による拘禁等が成立した場合のみです。

Q.保釈中の被疑者が逃走した場合は何罪が成立しますか?

A .保釈中の被疑者が逃走をしても何らかの犯罪は成立しません。

保釈中の被疑者が逃走をしたとしても、逃走罪は成立しません。ただし、保釈が取り消されたり保釈金が没収されたりなどさまざまな影響はあります。

保釈を行うためには保釈保証金を納める必要があり、このお金が没収されることになります。また、保釈は取り下げられるため、直ちに身柄の拘束が行われます。さらに、その後の保釈請求は認められません。

Q.検問を避けて逃走した場合は逃走罪が成立しますか?

A .逃走罪は成立しませんが、その他の交通違反となる可能性があります。

検問を避けて逃走した場合であっても逃走罪は成立しません。何度もお伝えしているとおり、逃走罪の成立要件は「裁判の執行により拘禁された既決または未決の者が逃走すること」であるためです。

ただし、たとえば飲酒検問を拒否して逃走した場合は、道路交通法「危険防止の措置」に違反することになるため注意してください。この違反を犯した場合は、3カ月以下の懲役または50万円以下の罰金に処されるため注意しましょう。

まとめ

今回は、逃走罪について解説しました。

逃走罪は、単純逃走罪のほかさまざまな犯罪によって処罰される可能性のある犯罪です。単純逃走罪が成立するためには「裁判の執行により拘禁された既決または未決の者が逃走すること」の要件を満たしている必要があります。

そのため、罪を犯した人が逃走をしたからといって、全ての人が単純逃走罪に問われるわけではありません。とくに逮捕直後の人や少年院へ入院している人、保釈中の被疑者等が逃走をしても犯罪にはなりません。

逃走罪は少し複雑な犯罪ですが、今回解説した内容を踏まえ、逃走罪に関する知識を深めてみてはいかがでしょうか。

刑事事件でお悩みの場合はすぐにご相談ください。

刑事事件で重要なのはスピードです。ご自身、身内の方が逮捕、拘留されそうな場合はすぐにご相談ください。

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