私選弁護人は自分で費用を支払って選任する弁護人です。一方、国選弁護人は国費で弁護人を選任してくれる弁護人制度です。一見すると、国選弁護人のほうが無料で弁護人をつけられるため、メリットは多いように思うでしょう。しかし、実際はお金がかかるものの、私選弁護人のほうがメリットは多いです。
今回は、私選弁護人・国選弁護人それぞれの概要やそれぞれのメリット・デメリットについて詳しく解説をします。どちらを選択すべきか悩まれている人は、ぜひ参考にしてください。
目次
私選弁護人・国選弁護人それぞれの概要
私選弁護人及び国選弁護人は、いずれも刑事弁護人として選任できる弁護士の呼び方です。いずれも刑事弁護の弁護を行う弁護士であることに変わりはありません。
しかし、私選弁護人はその名の通り「自分で弁護人を選任すること」を指し、国選弁護人は「国が弁護人を選任すること」といった違いがあります。まずは、私選弁護人と国選弁護人それぞれの概要について詳しく解説します。
私選弁護人の概要
私選弁護人とは「自分で選べる弁護人」です。そもそも弁護人とは、捜査機関の捜査対象者になっている場合に自分の弁護を行ってくれる人のことを指します。
刑事事件においては、必ず弁護人が付く仕組みとなっています。弁護人を依頼する場合、当然弁護人となる人に対して報酬を支払わなければいけません。私選弁護人は、自分で選んだ弁護人に対して、自分でお金を支払って刑事弁護をしてもらうことです。
国選弁護人の概要
国選弁護人とは「国が弁護人を選任する」制度です。国選弁護人は、国で選ばれた弁護人が被疑者もしくは被告人の弁護人となり、費用も支払わなくて良いです。
犯罪の疑いをかけられている人のことを「被疑者」と呼びます。被疑者が起訴された場合は、呼び名が「被告人」に変わります。
刑事事件においては、私選弁護人が原則です。しかし、先ほども解説した通り、私選弁護人を依頼する場合は弁護士報酬を支払う必要があります。そのため、すべての人が必ずしも私選弁護人を選任できるとは限りません。
一方で、刑事裁判を開くためには原則弁護人が付いていなければいけません。そのため、経済的な事情等で私選弁護人を付けることができない人に対して、国で弁護人を付けるという制度が「国選弁護人」です。
ちなみに、国選弁護人が選任されるための条件は以下のとおりです。
- 資力が50万円以下であること
- 被疑者が勾留されていること
- 起訴された場合(在宅捜査の場合)
上記条件を満たしている人は国選弁護人制度を利用できます。一方で上記条件を満たしていない人は、自分自身で私選弁護人を選任するか弁護人なしで取り調べ等に応じるかを選択する必要があります。
私選弁護人と国選弁護人の主な違い
私選弁護人と国選弁護人の主な違いは以下のとおりです。
- 弁護士を選べるかどうか
- 弁護士を付けられるタイミング
- 弁護士費用の発生有無
- 依頼できる事件の制限
次に、私選弁護人と国選弁護人の主な違いをそれぞれ詳しく解説します。実際は、細かい部分でさまざまな違いがあります。今回は、主な部分の違いについて解説をしますので、ぜひ参考にしてください。
弁護士を選べるかどうか
私選弁護人と国選弁護人の主な違いは、弁護人を選べるかどうかです。私選弁護人は自分や家族等で選んで弁護人を依頼できる一方で、国選弁護人は選ぶことができません。
そのため、国選弁護人の場合は必ずしも刑事弁護に強い弁護人が選任されるとは限りません。私選弁護人であれば、自分で弁護人を探して直接依頼することができるため、刑事事件に強い弁護人に依頼をできます。
また、刑事事件においては「実績のある弁護人に依頼をしたい」と考えることでしょう。自分が犯した事件の分野に慣れている、または実績のある弁護人に依頼をできるのが私選弁護人です。
そして、私選弁護人であれば自由に解任したり交代をしたりすることができます。一方で、国選弁護人は原則解任や交代は認められていません。
中には、弁護士との間で弁護の方向性が合わないなどの理由から、変更を依頼したい場合もあるでしょう。この場合、私選弁護人であれば可能ですが、国選弁護人であれば変更はできません。
弁護士を付けられるタイミング
私選弁護人と国選弁護人は、弁護人を付けられるタイミングも異なります。私選弁護人の場合、いつでも自分の好きなタイミングで弁護人をつけられます。一方で、国選弁護人の場合は勾留決定後もしくは起訴後です。
逮捕された身柄事件の場合であれば、勾留決定後に国選弁護人が選任されます。在宅事件の場合は起訴後に国選弁護人が選任されます。タイミングとしては非常に遅いです。とくに、刑事事件においては早期の弁護活動が処分や判決に影響を与える可能性が高いです。
私選弁護人の場合は、自分の好きなタイミングで弁護人を付けられます。逮捕される前、取り調べを受ける前でも可能です。そのため、適切なアドバイスを受けられたうえで取り調べに応じることができます。
弁護士費用の発生有無
私選弁護人の場合、弁護士費用は実費です。一方で、国選弁護人の場合は弁護士費用を支払う必要はありません。そのため、経済的な事情で私選弁護人を依頼することのできない人は、国選弁護人の選任を待ちましょう。
依頼できる条件
私選弁護人の場合、どのような刑事事件であっても自由に選任できます。一方で、国選弁護人の場合は、以下の条件を満たしている必要があります。
被疑者国選制度の場合は「勾留されていること」です。被告人国選制度の場合は「起訴後に本人等の請求により裁判所が認めていること」です。
もともと、被疑者国選制度では勾留されていることに加えて犯した罪の法定刑が「死刑または無期懲役、1年以上の懲役もしくは禁錮」が条件でした。その後、2009年5月からは「死刑または無期懲役、3年を超える懲役もしくは禁錮」に変更されました。さらにその後、2018年6月〜現在は「被疑者が勾留されている全事件」となっています。
勾留とは、身柄付事件のうち検察官や裁判官が「引き続き被疑者の身柄を拘束する必要がある」と判断した場合に行う手続きです。勾留が認められると、最長20日間にわたって身柄拘束が継続します。
私選弁護人のメリット・デメリット
私選弁護人は、国選弁護人にはないメリットがたくさんあります。一方で、注意しなければいけない点やデメリットもあるため、合わせて確認をしておきたいところです。まずは、私選弁護人のメリット・デメリットについて詳しく解説します。
メリット1:弁護人を自由に選べる・自由に変更できる
私選弁護人は被疑者もしくは被告人自ら自由に選んだり変更をしたりできます。たとえば、自分の知り合いの弁護士に刑事弁護を依頼したり、ネット上で検索をして特定の犯罪に強い弁護人を選んで依頼をしたりできる点がメリットです。
そもそも、弁護士は法律の専門家ではあるものの、日本国内にある法律は1,000以上です。その中で刑事事件分野に強い弁護人は少なく、国選弁護人の場合は必ずしも刑事弁護に精通している弁護人が来るとは限りません。
しかし、国選弁護人であれば自分で調べたり自分の知っているもしくは信頼できる弁護人に依頼ができます。刑事弁護に精通している弁護人に依頼をすることもできるため、適切な弁護活動や今後受けるであろう処分等にも良い影響を与える可能性に期待が持てます。
メリット2:早期に弁護人へ依頼できる
私選弁護人を選任できるタイミングは「自由」です。自分の好きなタイミングでいつでも自由に選任することができる点がメリットです。
とくに刑事事件においては、できるだけ早期に弁護活動を開始することによって、不起訴処分となったり刑罰が軽くなったりする可能性が高まります。たとえば、起訴前に示談交渉が成立している場合、不起訴処分となる可能性が高くなります。
そのため、可能な限り早期に弁護人へ相談をしておくのがとても重要です。国選弁護人の場合は、身柄付事件であれば勾留確定後、在宅事件であれば起訴後にならなければ弁護人は選任されません。タイミングとしてはとても遅いです。
万が一起訴されてしまった場合は、99%の確率で有罪判決が下されて前科が残ります。前科による影響を回避したい人は、早めに私選弁護人に来をしておく必要があるのです。
ちなみに、私選弁護人であれば逮捕前や取り調べに応じる前であっても相談可能です。いつでも相談できるため、これから取り調べに応じるにあたっての注意事項等も教えてもらえる点が最大のメリットです。
メリット3:逮捕・勾留を回避できる可能性が高まる
早めに私選弁護人へ依頼をしておくことで、逮捕や勾留を回避できる可能性が高まります。通常、刑事事件の流れは以下のとおりで進みます。
- 逮捕
- 勾留
- 起訴・不起訴
- 刑事裁判
- 判決
また、在宅事件として扱われる場合は以下のとおりです。
- 捜査・取り調べ
- 起訴・不起訴
- 刑事裁判
- 判決
逮捕して取り調べ等を行う事件のことを「身柄事件」と呼び、逮捕せずに捜査を行うことを「在宅事件」と呼びます。後者の場合は身柄の拘束を行わずに捜査や取り調べを行います。
しかし、在宅事件であっても任意聴取を拒否したり呼び出しに応じなかったりすると、逮捕されてしまう可能性があるため注意しなければいけません。
逮捕をされると初めに48時間の身柄拘束が可能となり、その後24時間以内に検察官が勾留の有無を判断します。この時点で最長72時間(3日間)の身柄拘束が発生していることになります。
さらに勾留延長が認められた場合は、最長20日間の身柄拘束が行われるため、最長で合計23日間の身柄拘束が行われることになり、社会的影響が大きくなるでしょう。さらに起訴された場合はそのまま身柄を拘束され続けます。
そのため、社会的影響を最小限に抑えるためにも私選弁護人へ依頼をして、「逮捕をする必要がない」や「勾留する必要がない」といった主張をしてもらう必要があります。
前もって私選弁護人に依頼をしておけば「逮捕をする必要がない」「勾留する必要がない」といった主張をしてくれます。結果的に、逮捕や勾留を回避できる可能性が高まります。
なお、国選弁護人の場合、身柄事件であれば「勾留決定後」に付きます。そのため、弁護の影響による逮捕や勾留の回避は不可能です。
メリット4:不起訴処分を目指せる
私選弁護人に依頼をしておくことで不起訴処分を目指せる可能性が高まります。とくに軽微な犯罪の場合は、検察官等に対して不起訴処分になるよう求めることができます。
また、弁護人が間に入って被害者と示談交渉を行い、示談が成立することによって「嘆願書」というものを書いてもらえます。嘆願書に法的効力はないものの、被害者の処罰感情が亡くなっていることが明らかとなっているため、寛大な処分を得やすくなります。
示談交渉は、通常弁護人を通じて行われるものです。そのため、私選弁護人を介して示談交渉を行います。
なお、国選弁護人であっても示談交渉を行います。ただ、国選弁護人は勾留後もしくは起訴後に付きます。その後に示談交渉を行っても、刑罰の軽減を目指すのであれば「遅い」ということはないものの、不起訴を目指す場合はタイミングとして遅いです。
また、国選弁護人の報酬は私選弁護人と比較して著しく低いです。そのため、示談交渉についても積極的に行ってくれる弁護人は少ないと考えておいたほうが良いでしょう。
メリット5:刑事弁護以外の対応も可能
私選弁護人であれば、ある程度の融通が効きます。たとえば、家族に伝えておきたいこと、会社に連絡をして欲しいことなどを弁護人を通じて伝えてもらうことも可能です。
とくに接見禁止となっている場合、弁護人しか会うことは許されません。世間話、中の状況や外の状況を弁護人を通じて知ったり伝えたりできる点はメリットであると言えるでしょう。
デメリット1:弁護人を自分もしくは家族で選ぶ必要がある
私選弁護人を選任するデメリットは、「弁護人を自分もしくは家族等が選任する必要がある」という点です。日常的な生活を送っている人であれば、弁護士と関わりを持つケースは少ないでしょう。
そのため「どのように弁護人を選べば良いのかわからない」「どのように弁護人を探せば良いのかわからない」といった悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか。
現在はインターネットの普及により、検索をするだけで刑事弁護に強い弁護人を探すことができます。しかし、実際に実績豊富で安心して依頼できる弁護人がわからない。という人も多いでしょう。
また、できるだけ早めに弁護人を選任する必要があるため、焦ってしまって結局わからなくなってしまう人も少なくありません。
デメリット2:費用は実費
私選弁護人へ依頼する場合、費用は自分で支払わなければいけません。弁護人の費用は弁護士が自由に決定できるため、一概には言えません。また、事件の内容や目指すところ等によっても異なるため、金額はさまざまです。
ちなみに、相場としては着手金で30万円〜60万円程度、成果報酬として30万円〜100万円程度の費用が必要となるケースが大半です。弁護士事務所の中には分割払いに対応しているケースもあるため、まずは相談をされてみてはいかがでしょうか。
国選弁護人のメリット・デメリット
国選弁護人は、私選弁護人と比較してメリットは少ないです。唯一のメリットは「弁護士費用がかからない」という点です。一方で、いくつか注意事項やデメリットがあるため把握しておく必要があるでしょう。
次に、国選弁護人のメリットおよびデメリットについても詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
メリット1:弁護士費用がかからない
国選弁護人に対して支払う費用(弁護士報酬)は、原則国で支払うため被疑者もしくは被告人自身が費用を負担する必要はありません。仮に、裁判で有罪となって弁護士費用を命じられたとしても、免除制度を利用することによって支払いは免れます。
これは国選弁護人唯一のメリットです。経済的な事情で弁護人をつけることが難しい人であっても、国で弁護士費用を負担をしてくれるため、安心して刑事裁判を行えます。
デメリット1:弁護人が付くタイミングが遅い
国選弁護人が付けられるタイミングは、身柄事件の場合は勾留確定後です。在宅事件の場合は、起訴後です。タイミングとしてはとても遅いです。
勾留されてしまった場合、最長で20日間の身柄拘束が行われます。そのため、勾留が決定すると大きな社会的影響が発生するでしょう。在宅事件の場合は、身柄の拘束こそ行われないものの、起訴されてしまえば99%の確率で有罪判決が下されます。
そのため、可能であれば勾留前もしくは起訴・不起訴の判断が行われる前までに弁護人をつけておいて弁護活動を行ってもらうことが理想です。
とはいえ、国選弁護人制度は国で定められている制度であるため、タイミングはとても遅いことに注意しなければいけません。たとえば「勾留を回避したい」「不起訴を目指したい」という人であれば、私選弁護人を選任するしかありません。
デメリット2:国選弁護人を選任できる条件がある
国選弁護人を選任するためには、資力条件を満たしている必要があります。国選弁護人を選任する場合は、選任請求書および資力申告書を提出しなければいけません。
仮に、「自分のお金を使いたくないから……」という理由で国選弁護人を選任して欲しいと考え、資力を偽った場合は罪に問われる可能性があります。虚偽の申告を行うと、「10万円以下の過料」に処される可能性があるだけでなく、国選弁護人の費用も負担させられる可能性があります。
過料とは行政上の秩序を維持するために、違反者に対して科される可能性のある罰金刑のような罰です。過料と同じ読み方で「科料」があります。科料は、1,000円以上1万円未満の金銭納付を命じる財産刑の一つです。
デメリット3:原則解任・交代はできない
国選弁護人は、原則解任や交代はできません。そもそも、国で費用を負担して付いている弁護人を自分の意思で解任したり交代を申し入れたりすること自体許されません。
弁護人も人間である以上、合う合わないがあったり、事件の進め方や弁護の進め方で方向性が合わない場合もあります。しかし、だからといって自由に解任したり交代を許していればキリがありません。
ただし、以下に該当する場合は解任や交代が可能です。
- 私選弁護人を選任した場合
- 被告人と弁護人で利益相反関係にあること
- 弁護人が心身の故障等によって継続的に弁護活動を行うことが難しい場合
- 弁護人が職務に著しく違反した場合
- 被告人が弁護人を暴行・脅迫等によって継続的な弁護が難しい場合
上記の場合にのみ国選弁護人を解任もしくは交代可能です。もし、解任をしたい場合は、自分で私選弁護人を見つけて選任することで国選弁護人を解任できます。
また、被告人と弁護人で利益が相反関係にある場合も解任や交代が可能です。利益相反関係とは、一方の利益にはなるもののもう一方にとっては不利益となることです。
たとえば、被告人が犯した罪の被害者側の弁護人として受任している場合は、被告人と弁護人の利害関係が相反していると見なされます。この場合は、当然弁護人の交代が可能となります。
また、弁護人が弁護人としての活動を継続することが難しい場合も当然に解任・交代が可能です。たとえば、心身の故障で弁護活動を継続できない場合や弁護人が職務に著しく違反した場合、被告人による暴行・脅迫等による場合などが挙げられます。
デメリット4:刑事事件に強い弁護人が来るとは限らない
国選弁護人はあらかじめ名簿に登録されている弁護士の中から法テラスが人選し、最終的に裁判所が選任する流れとなります。名簿に登録している弁護士はさまざまであり、必ずしも刑事事件に強い弁護士が選任されるとは限りません。
そもそも、日本国内には1000以上もの法律があり、すべての法律に精通している弁護人はいません。ほとんどの弁護士が特定分野に強みを持っています。そのため、必ずしも刑事弁護の経験があったり経験が豊富な弁護士がくるとは限らない点はデメリットです。
私選弁護人の呼び方
私選弁護人を呼ぶ方法は、基本的に自分で探して直接依頼する方法です。ただ、逮捕・勾留されている被疑者の場合は、自分で直接呼ぶことはできません。そのため、警察官や検察官あるいは裁判官もしくは家族等を通して呼ぶことになります。
次に、私選弁護人を呼ぶ方法についても解説します。私選弁護人の選任を検討されている人は、ぜひ参考にしてください。
逮捕・勾留されている場合の呼び方
逮捕・勾留されている場合は、自分で弁護人を呼ぶことはできません。そのため、知っている弁護士がいる場合は、警察官や検察官等に対して「〇〇法律事務所の〇〇弁護士を呼んでください」と伝えれば、すぐに連絡をとってくれます。
知っている弁護人がいない場合は、当番弁護人制度を利用してそのまま私選弁護人として依頼する方法や家族・友人を介して依頼する方法があります。
逮捕された場合、一度だけ無料で弁護人を呼べる制度があります。これを「当番弁護人制度」と呼びます。警察官や検察官等に対して、「当番弁護人を呼んでください」と伝えれば良いです。
家族・友人経由で呼ぶ場合は、家族もしくは友人に刑事弁護に強い弁護士を探してもらい、直接依頼をしてもらえば良いです。いずれの場合も原則24時間以内に接見に来てくれると考えておけば良いでしょう。弁護士の場合は、日時等制限なく接見に来れるためです。
逮捕・勾留されていない場合の呼び方
逮捕・勾留されていない場合は、自分で弁護人を探して直接依頼しなければいけません。たとえば、インターネットで検索をして自分に合った弁護人を見つけ、一度面談を行ったうえで正式に委任をするのが一般的な流れです。
刑事事件は緊急性が高い事件が大半であるため、基本的にはその日中に会ってくれる弁護人が大半です。その日のうちに面談を済ませ、正式に私選弁護人として選任することで、弁護活動を開始してくれます。
国選弁護人の呼び方
国選弁護人は「被告人国選」と「被疑者国選」があります。それぞれ呼び方は一緒ですが、呼べるタイミングが異なります。被疑者国選は「勾留確定後」に呼べます。一方で「被告人国選」は、起訴後に呼べます。後者は、在宅事件の場合の国選弁護です。
次に、国選弁護人の呼び方についても詳しく解説していこうと思います。
警察官・検察官・裁判官に「被疑者国選弁護制度を利用したい」と伝える
警察官もしくは検察官、裁判官に対して「被疑者国選弁護制度を利用したい」と伝えるだけで良いです。このように伝えなくても、簡単に「国選弁護人を依頼したい」と伝えるだけでも良いです。
また、私選弁護人が付いていない場合は、「国選弁護人を付けますか?」と聞かれることもあるため、その際に「はい」と答えれば良いです。
国選弁護人を依頼すると、国選弁護人の選任請求書と資力申告書が渡されます。それぞれの用紙に必要事項を記入の上、提出することで国選弁護人が選任される流れです。
なお、資力調査書に虚偽の申告をすると、国選弁護人の費用を支払わされるだけではなく、過料といった罰則規定もあるため注意してください。
【注意】国選弁護人を依頼できるタイミングは決まっている
国選弁護人を依頼できるタイミングは決められています。逮捕・勾留されている事件(身柄事件)の場合は、勾留確定後です。在宅事件の場合は、起訴されて初めて国選弁護人の請求が可能です。
タイミングとしてはとても遅いため、資力に余裕がある場合はできるだけ私選弁護人を選任するようにしましょう。また、実際に原則刑事事件は、私選弁護人であることも覚えておきましょう。
私選弁護人・国選弁護人に関するよくある質問
私選弁護人・国選弁護人に関するよくある質問を紹介します。
Q.私選弁護人を依頼した場合の費用はいくらくらいですか?
A.事件の内容や弁護活動等によって費用は異なるため、一概には言えません。
私選弁護人に支払う費用は実費です。また、私選弁護人に支払う費用は弁護人が自由に決定できます。そのため、一概に「〇〇万円程度」とは言えません。とくに難しい事件や無罪を主張するような場合は、費用が高くなりがちです。
ただし、一般的な事件の場合は着手金で30万円〜60万円程度、成果報酬として30万円〜100万円程度の費用が必要となるケースが大半です。この金額はあくまでも相場であり、弁護士や事件の内容によって大きく変動する可能性があるため注意してください。
弁護士費用は事前に弁護士から教えてもらえます。金額に納得をしたうえで正式に委任をしてください。
Q.国選弁護人を依頼するための条件とは何ですか?
A.国選弁護人に依頼をするための条件は、資力条件を満たしていることです。
- 国選弁護人を依頼するための条件は以下のとおりです。
- 資力が50万円以下であること
- 勾留もしくは起訴されていること
上記条件を満たしている場合に国選弁護人への依頼が可能です。国選弁護人を依頼する場合は、資力申告書を提出する必要があります。資力申告書は、国選弁護人を依頼した場合に渡される書類です。
現在の資力を可能な限り正確に書き、審査を行ったうえで法テラスが弁護人を選任し、裁判官が決定する流れとなります。
なお、国選弁護人を依頼したいと考え、資力を偽って提出をすると、国選弁護人に対する報酬金を支払わされる可能性があります。また、10万円以下の過料に処される可能性があるため正直に書くようにしてください。
Q.私選弁護人・国選弁護人が判決に影響を与える可能性はありますか?
A.私選弁護人・国選弁護人が判決や処分に影響を与える可能性は考えられます。
まず、私選弁護人もしくは国選弁護人どちらを選ぶかによって、処分に影響を与える可能性があります。私選弁護人の場合は早期に弁護活動を開始できます。その分、不起訴処分へ向けた弁護活動が可能となります。
国選弁護人の場合は「勾留後」もしくは「起訴後」となるため、タイミングとしてはとても遅いです。
また、私選弁護人は被疑者もしくは被告人の利益を最優先に考え、被害者との示談交渉等も積極的に行ってくれます。一方で国選弁護人も示談交渉を行ってくれるものの、そもそも民事賠償に関する代理権を有していないと理解するのが一般的です。
上記のことからも、報酬内に示談交渉の金額は含まれておらず、積極的に行おうとする弁護人は少ないでしょう。
刑事事件において示談交渉の成立有無は処分や判決に大きな影響を与えます。そのため、私選弁護人と国選弁護人は前者のほうが有利になる可能性が高いです。
Q.国選弁護人とはどのような制度ですか?
A.国選弁護人とは、経済的な事情で弁護人を付けることが難しい被疑者もしくは被告人に対して国費で弁護人を選任するための制度です。
刑事事件において、正式裁判を行う場合は原則として弁護人が付いていなければいけません。また、刑事事件を進めていくうえで法律的な問題や一般の人では難しい言葉がたくさん出てきます。そのため、法律の専門家である弁護人を入れ、スムーズに刑事事件を進めていく必要があります。
また、有罪判決が確定するまでは推定無罪として扱われる必要があります。そのため、被疑者や被告人を守るための人がいる必要があるのです。
上記のことから、刑事事件を行う際は弁護人を付ける必要があります。しかし、当然ながら弁護人を依頼するためには費用(報酬)を支払わなければいけません。すべての人が経済的な余裕があるとは限りません。
そういった人でも適切に弁護活動を行うために国選弁護人制度というものがあります。すべての人が平等に守られるべきという考えの元で国選弁護人制度があると考えておけば良いでしょう。
Q.私選弁護人・国選弁護人はいつまでついてくれるのですか?
A.私選弁護人は自由に決定できます。国選弁護人は、さまざまなタイミングで活動が終了します。
私選弁護人は自分で弁護人を依頼しているため、自由なタイミングで活動を終了できます。たとえば、判決確定後も民事裁判が行われる場合は、民事裁判の弁護人としてそのまま依頼し続けることが可能です。
逆に、途中で解任をして別の私選弁護人に依頼をしたり、判決等のタイミングで解任しても良いでしょう。自由に決定できるため、あらかじめもしくは都度、弁護人と相談をされてみてはいかがでしょうか。
国選弁護人は以下のタイミングで活動が終了となります。
- 被告人が判決を宣言された日
- 公訴が棄却された日
- 被疑者が起訴・家裁送致・保釈された日
- 弁護人が解任された日
なお、被疑者が起訴された場合は引き続き、被告人国選として国選弁護人が選任されます。同じ人が国選弁護人として選任される場合であっても、一度活動を終了して一つの区切りとなります。
Q.国選弁護人と合わない場合、解任や交代をお願いすることはできますか?
A.できません。
そもそも、国選弁護人は国費で弁護人を付ける制度です。自分の意思で自由に解任をしたり交代を依頼したりすることは原則できません。ただし、以下に該当する場合は解任もしくは交代が可能です。
- 私選弁護人を選任した場合
- 被告人と弁護人で利益相反関係にあること
- 弁護人が心身の故障等によって継続的に弁護活動を行うことが難しい場合
- 弁護人が職務に著しく違反した場合
- 被告人が弁護人を暴行・脅迫等によって継続的な弁護が難しい場合
弁護人も人間である以上、合う合わないがあるかもしれません。しかし、「自分とは合わないから」という理由で自由に解任をしたり交代を依頼したりすることはできないため注意してください。
まとめ
今回は、私選弁護人と国選弁護人の違いについて解説しました。
私選弁護人は自分でお金を支払って依頼する弁護人であり、刑事弁護においては私選が原則です。私選弁護人にはさまざまなメリットがあります。一方で、国選弁護人は費用がかからない一方で選任されるタイミングが遅く、デメリットが多いです。
そのため、経済的な事情等がない限りは、私選弁護人に依頼をしたほうが多くのメリットを得られるでしょう。今回解説した内容を踏まえ、私選弁護人・国選弁護人どちらに依頼するべきかを検討されてみてはいかがでしょうか。