誤認逮捕された場合にやることは?逮捕後の流れや賠償金についても解説

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誤認逮捕とは「誤って逮捕されてしまうこと」を指します。誤認逮捕は、無実の人の身柄を拘束する行為であり、絶対にあってはいけません。

また、誤認逮捕されてしまった人は「絶対に許せない」といった気持ちを持つのも当然です。この記事では、誤認逮捕されてしまった場合にすべきことについて詳しく解説しています。

誤認逮捕とは

誤認逮捕とは、誤って逮捕されてしまうことを指します。いわゆる「冤罪」とは違った意味で利用される言葉です。まずは、誤認逮捕とはどのような状況を指すのか、冤罪との違いは何か?について詳しく解説します。

誤って「逮捕」されること

「誤認逮捕」とは、名前のとおり「誤認で逮捕された状態」であることを指します。そもそも「逮捕」とは、罪を犯した疑いのある人の身柄を一時的に拘束するための行為です。

罪を犯したからといってすべての人が逮捕されるわけではありません。逮捕をするためには、証拠隠滅や逃亡の恐れがあることもしくは重大な罪を犯していることなど、一定以上の条件を満たしている必要があります。

つまり、誤認逮捕とは罪を犯したと疑われ、逮捕されて身柄を拘束された状態であることを指します。犯罪の疑いをかけられてはいるものの、逮捕されていないような場合は、誤認逮捕とは言いません。

なお、罪を犯したとしてもすべての人が逮捕されるわけではなく、事件の内容次第では在宅事件として扱われることがあります。在宅事件の場合は、逮捕されているわけではないため、「誤認逮捕」とは言いません。

ただし、刑事事件において否認事件(被疑者が否認している事件)の場合は、多くのケースで逮捕・勾留をして事件を進めていきます。なぜなら、「否認している=証拠隠滅・逃亡の可能性が高い」と判断されてしまうためです。

誤認逮捕と冤罪の違い

誤認逮捕は「誤認で逮捕された状態」であることに対し、冤罪は「無実の罪で犯罪の疑いをかけられ、有罪判決が確定したこと」を指します。つまり、誤認逮捕は冤罪の可能性もある重大な間違いであり、絶対にあってはいけません。

たとえば、痴漢をしていないにも関わらず痴漢を疑われて裁判を受け、有罪判決が確定した場合に「冤罪」と言います。

なお、冤罪もしくは誤認逮捕に該当しない場合もあります。たとえば、無実の罪で容疑をかけられ、在宅事件として扱われた場合です。この場合は、誤認逮捕もしくは冤罪のいずれにも該当しないため、何らかの補償を受けることはできません。

身の潔白を証明するためにできること

誤認逮捕された場合は、初めに身の潔白を証明する努力をしなければいけません。どれだけ「私は何もやっていない」と伝えても、警察等の捜査機関はさまざまな証拠を持ってあなたに犯罪の疑いをかけています。

自分たちの捜査内容や集めた証拠に自信を持っているため、それらを覆すための何らかの証拠等を自分で用意する必要があります。たとえば、身の潔白を証明するためにできることとして挙げられる例は以下のとおりです。

  • 速やかに弁護士へ相談する
  • 黙秘権を行使する・安易に供述しない
  • 供述調書への署名・押印をしない
  • 安易に捜査協力をしない
  • 自分が犯人ではない証拠を示す

次に、身の潔白を証明するためにできることについて詳しく解説します。

すみやかに弁護人に相談をする

初めに、すみやかに弁護士へ相談をしてください。誤認逮捕されている場合、一度だけ「当番弁護人」を呼ぶことができます。当番弁護人制度は、逮捕後に一度だけ呼ぶことのできる制度であり、この制度を利用することによって、誰でも無料で弁護人に相談をすることができます。

また、逮捕される前や逮捕された後でも私選弁護人であれば、自分の好きなタイミングで自由に弁護人を選任することができます。私選弁護人は、自分で弁護人を選任して自分でお金を支払う制度です。そのため、当番弁護人とは違い、費用が発生する点には注意が必要です。

早期に弁護人に相談をすることによって、早期に弁護活動を行ってもらえます。弁護人に対して誤認逮捕であることをしっかり伝えることで、長期間の勾留を回避できたり早期に誤認逮捕であることを認めさせたりすることができます。

当番弁護人の場合は「一度だけ」という制限があるため、継続的な弁護活動には向かない制度である点に注意が必要です。身柄事件の場合、私選弁護人が付いていない被疑者に対しては勾留確定後に国選弁護人(費用は無料)が選任されるものの、タイミングとしてはとても遅いです。

上記のことから、可能であれば私選弁護人を選任したうえで早期の弁護活動開始を検討してもらうことがとても大切です。

黙秘権を行使する・安易に供述しない

取り調べ(事情聴取)を受けている被疑者に対しては、「言いたくないことは言わなくても良い」という権利(黙秘権)があります。黙秘権を上手に行使することによって、誤認逮捕であることを認めさせることができるようになります。

たとえば、まったく身に覚えのない事件で誤認逮捕された場合、とくに何も供述することはないため「何も知らない」「自分はやっていない」で良いでしょう。しかし、中には事件について知っているもしくは、間接的に関与しているが、自分はやっていない。という人もいるでしょう。

上記のような状況にある人が、安易に事件について供述をしてしまうことによって、犯罪の疑いが強まる可能性があるため注意しなければいけません。

まずは、担当弁護人にすべてを話したうえで取り調べに対する応じ方について、アドバイスをもらいましょう。弁護人はあなたの味方であるため、事件について知っていることがあってもそのまま伝えても良いです。

誤認逮捕されて取り調べが開始された際、初めに「弁護人が来てから話す」と伝えて、弁護人からアドバイスを受けてから取り調べに応じる姿勢を見せても良いです。安易に供述をしてしまうことによって、余計に犯罪の疑いが強まる可能性もあるため十分に注意してください。

供述調書への署名・押印をしない

取り調べに応じた場合、最後に供述調書を読み上げたうえで「内容に問題がないか?」「すべて自分が話したことか?」と、確認を受けます。間違いがない場合は署名・押印をすることによって、供述した内容が証拠として扱えるようになります。

もし、供述調書にあたかも自白したかのような内容で供述調書が書かれている場合、絶対に署名・押印をしないでください。刑事訴訟法という法律で供述調書への署名・押印を拒否できる権利(署名押印拒否権)があると定められています。

また、内容に誤りがある場合は、取り調べをしている司法警察官に対して内容を変更するよう求めることができます。これを「増減変更申立権」と言います。安易に署名・押印をしてしまうと、自白供述証拠として扱われてしまう恐れもあるため注意してください。

安易に捜査協力しない

安易に捜査協力をするのは避けましょう。あなたは何らかの犯罪の犯人として疑われており、逮捕されている状況です。そのため、安易に捜査協力をしてしまうことによって「事件について詳しく知っている」と判断されてしまう恐れがあります。

場合によっては、さらに嫌疑が強まってしまう可能性もあるため注意しなければいけません。基本的には、事件について知っていることがあっても、自分が犯人ではない証拠にならない限り、何も話さないほうが良いでしょう。

また、逮捕された場合は証拠品を押収されます。たとえば、スマートフォンなどの所持品を押収されることもあります。このとき、スマートフォンのパスワードなどを教える必要はありません。

暗証番号を教えることによって、スマートフォンの中の情報を確認できる状態になります。捜査協力をする目的であえてパスワードを教える必要はありません。また、事件に関して知っていることも自分に不利になる可能性がある場合は、伝える必要はありません。

自分が犯人ではない証拠を示す

可能な限り、自分が犯人ではない証拠を示しましょう。たとえば、事件があった日時に犯行現場にいることが難しかった、もしくはいなかったことを証明(いわゆるアリバイ)が証明できれば、物理的に犯行は不可能であるため誤認逮捕であることが認められるでしょう。

本来であれば、自分が犯人ではない証明をする責任はありません。しかし、長期拘束を回避するためには、自分が犯人ではないことを証明する必要があります。誤認逮捕されている事件でとくに否認事件の場合は、長期勾留の可能性が高いため注意してください。

ただ、「自分が罪を犯していない証明」をするのはとても難しいです。たとえば、事件があった日時に自宅にいて眠っていた場合、そのことを証明する人はいません。そのため、どのような内容であっても、自分にとって有利になり得る証拠は大小関わらず集めておきましょう。

逮捕・勾留されている状況で自分が罪を犯していない証明をするのは、非常に困難です。そのため、できるだけ早めに弁護人に相談をしたうえで弁護人に証拠を集めてもらうなどの対応を検討しましょう。

誤認逮捕が明らかになった場合は賠償請求が可能

誤認逮捕が明らかになった場合、賠償請求を行うことができます。賠償請求できる種類は主に以下のとおりです。

  • 被害者補償規定に基づく賠償請求
  • 刑事補償法に基づく賠償請求
  • 国家賠償法に基づく賠償請求

刑事事件において、誤認逮捕が発覚したとしても担当刑事を解雇したり処罰を与えたりすることはできません。警察官だけではなく、逮捕状を発付した裁判官であっても同様です。残念ではありますが、誤認逮捕された人ができるべきことは「賠償請求を行うこと」しかありません。

次に、誤認逮捕が明らかとなった場合に請求できる賠償金について詳しく解説します。

被疑者補償規程に基づく賠償請求

被疑者補償規程に基づく賠償請求とは、「逮捕・勾留されたが最終的に不起訴処分となった場合」に請求可能な賠償金です。条件は逮捕・勾留されていることに加え「不起訴処分となった場合」です。

不起訴処分の種類はさまざまですが、被疑者補償規程に基づく賠償請求を行う場合は、「罪を犯していないと認めるに足りる十分な事由がある場合(罪とならずもしくは嫌疑なし)」のみであるため注意してください。

つまり、嫌疑不十分や起訴猶予など「罪を犯したと認められるものの、最終的に不起訴となった場合」は被疑者補償規程に基づく賠償請求はできません。なぜなら、罪を犯していないという確証がないためです。

ちなみに被疑者補償規程に基づく賠償請求は、1日あたり1,000円〜12,500円の間で計算されて支払われます。補償金の決まり方は拘束の種類や期間、本人が受けた財産上の不利益、精神的苦痛等を基に算出されます。

身柄を拘束されている以上、仕事に行けず多大な経済的損失を被っている可能性もあるでしょう。それでも上限はわずか12,500円であり、補償金としてはとても少ないです。

被疑者補償規定に基づく損害賠償を行う場合は、「補償裁定書」を受け取ってから半年以内に請求をしなければいけません。

刑事訴補償法に基づく賠償請求

刑事裁判に発展し、最終的に無罪判決が言い渡された場合は、刑事補償法に基づく賠償請求が可能です。

誤認逮捕された場合、起訴されて最終的には刑事裁判に発展してしまう可能性があります。起訴された場合の有罪判決率は99%であり、無罪を勝ち取るのは非常に困難です。しかし、実際に罪を犯していない事実がある以上、刑事裁判でも無実であることを訴え続け、最終的には無罪判決となる可能性もあるでしょう。

もし、最終的に無罪判決となった場合は、1日あたり1,000円以上12,500円以下の範囲で賠償を受けられます。とても少ない金額ではあるものの、賠償請求が可能であることは覚えておくと良いでしょう。

また、金額に開きがある理由は被疑者補償規程と同様の理由からです。本人自身が受けた財産上の損失や精神的苦痛等を総合的に判断したうえで金額が決定します。たとえば、100日間の身柄拘束があった場合は、10万円〜125万円の範囲内で補償金が支払われます。

通常、逮捕〜勾留開始までで最長72時間以内、勾留確定すると最長20日間の合計23日間の身柄拘束が行われます。その後、起訴された場合は裁判を受けるために引き続き身柄拘束を受けます。このとき、保釈請求を行うことはできますが、否認事件の場合は保釈が認められる可能性はとても低いです。そのため、起訴された場合は長期間の身柄拘束となる可能性が高いです。

国家賠償法に基づく賠償請求

被疑者補償規程による補償金もしくは刑事補償法に基づく補償金を受け取れない場合、もしくは受け取ったものの不十分な場合は、国家賠償法に基づく賠償請求が可能です。

被疑者補償規程・刑事補償法に基づく賠償請求のいずれも、1日あたり1,000〜12,500円程度の補償しか受けられません。とくに長期間の身柄拘束を受けた人からすると、「全然足りない」と感じる人が大半でしょう。

実際、身柄拘束中に稼げるはずだった給与を得ることもできません。仕事にもいけないため、会社内での信用や評価にも大きな影響を与えます。さらに、無実の罪で連日取り調べを受けることは、相当な精神的苦痛を受けることでしょう。

上記のことを考えると満額(1日12,500円)が補償されたとしても、まったく足りません。そのため、自分が受けた精神的苦痛や実際に受けた財産上の損失を国に対して請求することができます。これが「国家賠償法に基づく賠償請求」です。

ただし、国家賠償法に基づく賠償請求は難しいのが現実です。なぜなら、前提として「公務員の過失によって違法に他人へ損害を加えたとき」という条件があるためです。

誤認逮捕は上記の条件を満たしていると考えられます。しかし、誤認逮捕された本人が公務員の過失を証明する必要があり、証拠の認定方法や容疑者の特定方法などを証拠として集める必要があります。この過失を証明するのが非常に困難であるため、実際に国家賠償請求が認められるのは困難となります。

誤認逮捕された後の流れ

誤認逮捕された場合、今後、自分がどのようになってしまうのだろうか?と、さまざまな不安を抱えていることでしょう。逮捕されてしまうと一時的に身柄拘束されます。その後、勾留請求の有無等を判断し、最終的には刑事裁判を受け、有罪判決が出るとその後も戦い続けなければいけません。最終的に、刑が確定すると再審請求を行うことになります。

次に、誤認逮捕されてしまった場合の流れについて詳しく解説します。誤認逮捕である以上、早期に釈放されるべきですが、万が一、最終段階まで進んでしまった場合の流れについて詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

誤認逮捕

誤認逮捕された場合は、逮捕から最長48時間の身柄拘束が行われます。この間に誤認逮捕であることが発覚した場合、即時釈放されます。しかし、本人が「誤認逮捕である」「私は何もやっていない」と言っても、即時に釈放されるとは限りません。

先ほども解説したとおり、「自分が犯人ではないことを証明」する必要があります。取り調べ時に事件の概要を聞き、その時間の犯行は物理的に無理であることなどを主張していくことになるでしょう。

万が一、逮捕後の勾留で誤認逮捕であることを証明できなかった場合、逮捕から48時間以内に検察官へ事件を送致します。事件を受け取った検察官は、さらに24時間以内に勾留請求の必要性を判断します。

誤認逮捕である以上、逮捕された本人は「自分は何もやっていない」と主張するでしょう。いわゆる「否認事件」となるため、ほぼ確実に勾留請求が行われると思っておきましょう。

検察官が勾留請求を行った場合、被疑者(逮捕されている人)を連れて裁判所へ行き、勾留質問を経て勾留を開始します。ここまでで最長72時間(3日間)の身柄拘束が発生しています。

最長20日間の勾留

勾留請求が認められた場合、初めに10日間の勾留(身柄拘束)が可能となります。その後、多くの事件で勾留延長請求が行われ、さらに10日合計20日間の勾留が行われます。

この時点で最長23日間の身柄拘束が行われることとなり、社会的な影響もとても大きくなる点に注意が必要です。誤認逮捕であることが発覚した後に、賠償請求を行うこともできますが、先ほども解説したとおり金額はとても少ないです。

そのため、早期に弁護人へ相談をしたうえで誤認逮捕である証明をしていく必要があります。当然、勾留期間中であっても誤認逮捕であることが発覚した時点で即時釈放されるため安心してください。

起訴・不起訴の判断

勾留されている被疑者の場合、勾留期間中(20日間の間)で被疑者を起訴するか不起訴とするかを判断します。誤認逮捕の場合は、当然「私は何もやっていない」と否定をすることになるため、誤認逮捕の証明をできなければ起訴される可能性がとても高いです。

否認事件の場合、警察や検察からすると「罪を犯したにも関わらず否認している。つまり、罪を免れようとしているため、反省していない」と捉えられてしまうためです。当然、厳しく処罰しなければいけないと判断され、起訴される可能性が高まります。

起訴された被疑者は、その後に保釈請求が可能です。保釈請求とは、「お金を支払って一時的に社会に戻れる制度」と考えておけば良いです。

保釈請求を行うことによって、裁判で判決が確定するまでは社会に戻って日常生活を送れます(保釈条件はあります)。しかし、否認事件の場合は保釈請求を行っても認められることはありません。

そのため、起訴後も拘置所もしくは留置所の中で引き続き身柄拘束が行われます。この間も誤認逮捕であることが発覚すれば直ちに釈放されます。しかし、誤認逮捕であることが発覚しなければ、刑事裁判で刑が確定するまでの間、身柄を拘束され続けてしまうのです。

通常、起訴から初公判までも期間は1カ月〜2カ月程度です。その後、複数回の公判を行うことになりますが、否認事件の場合は裁判期間も長くなります。長い場合は初公判から半年〜2年程度の期間を要する可能性もあります。

そのため、逮捕〜判決までの期間で8カ月〜2年超の間も身柄拘束され続けることになり、この間は社会に戻ることも許されません。最終的に誤認逮捕であることが発覚すると、補償は受けられるものの、不十分です。

刑事裁判・判決

刑事裁判ではあなたが犯したと言われている犯罪について審理します。そのうえで有罪か無罪かを判断し、有罪である場合はどの程度の刑罰に処するかを決定する流れです。

日本の刑事裁判において起訴された場合の有罪判決率は99%であると言われています。そのため、一度起訴をされてしまうと有罪判決となる可能性が高く、たとえ誤認逮捕であっても無実である証明をできなければ有罪となる可能性が高いです。

なぜなら、そもそも起訴をするためには有罪相当の証拠を揃える必要があるためです。そのため、起訴された時点で検察官は、100%の確率で罪を犯していると判断しています。わずかでも無罪の可能性があるのであれば、「嫌疑不十分」として不起訴にしなければいけません。

上記のことから、起訴された時点で有罪判決となる可能性がとても高いです。仮に、第一審で有罪判決が下された場合は、第二審・第三審と戦うことになります。最終的に第三審で有罪判決が下されてしまうと、刑罰が確定します。

刑罰が確定した場合は、原則、同じ事件で裁判を行うことはできません。ただし、再審請求を行うこともできます。再審請求が認められるためには、証拠の明白性や証拠の新規制を示す必要があり、認められるケースはごく稀です。

誤認逮捕による影響

誤認逮捕されてしまった場合、以下のような影響が発生します。

  • 長期間の身柄拘束の可能性
  • 否認事件で接見禁止となる可能性
  • 逮捕歴・前科が残る可能性

次に、誤認逮捕されてしまった場合の影響について詳しく解説します。

長期間の身柄拘束の可能性

誤認逮捕された場合、否認事件として扱われるため長期間の身柄拘束の可能性が高まります。否認事件の場合、「証拠隠滅・逃亡の可能性がある」と判断されてしまうためです。

身柄拘束は、最低でも逮捕〜判決確定まで続くため、長ければ1年以上の期間身柄拘束されてしまうかもしれません。できるだけ早めに弁護人を付けたうえで証拠を集め、誤認逮捕であることを主張していく必要があります。

否認事件で接見禁止となる可能性

誤認逮捕は否認事件となるため、接見禁止となる可能性が高いです。接見とは、いわゆる面会のことであり、勾留が確定した被疑者であれば家族や友人等と接見を行えます。しかし、否認事件の場合は接見禁止となるケースが多く、家族や友人との面会をできません。

逮捕歴・前科が残る可能性

逮捕されてしまった時点で逮捕歴が残ります。後に、誤認逮捕であることが発覚した場合であっても、逮捕された履歴は消えません。しかし、社会生活において逮捕歴が何らかの影響を与えることはないため、その点は安心してください。

そして、刑事裁判を経て有罪判決が確定した場合は、前科が残ります。前科が残ることによってさまざまな制限が発生します。しかし、後に誤認逮捕・冤罪であることが発覚した場合は、前科は当然取り消されるため安心してください。

誤認逮捕が起こる理由

誤認逮捕は絶対に起きてはいけないことです。しかし、現実として誤認逮捕は起こり得ます。その主な原因として考えられているのは、捜査機関による十分な裏付け捜査が行われていないことです。次に、誤認逮捕が発生する理由についても詳しく解説します。

十分な裏付け捜査を行っていない

誤認逮捕が発生する主な要因として考えられるのは、「十分な裏付け捜査を行っていない」ことです。たとえば、犯行現場近辺に怪しい人物が写っていたとしても、必ずしもその人が犯人であるとは限りません。

初めに防犯カメラに写っていた人が犯人である可能性を仮定して、そのうえで裏付け捜査を行っていきます。しかし、裏付けによる証拠を集めることができなかった場合、仮定に基づいて任意聴取をしたり逮捕をしたりしてしまうことがあります。

本来であれば、十分な裏付け捜査を行ったうえで犯人であると確証がある場合に限って、逮捕状発付の請求を行わなければいけません。本来の手続きを怠った結果、誤認逮捕が発生すると考えられます。

よって、誤認逮捕は捜査機関のずさんな捜査によるものであり、落ち度は100%捜査機関にあると考えて良いでしょう。

裁判官が誤認逮捕を防ぐことは難しい

逮捕状を発付するのは裁判官です。そのため、そもそも裁判官が逮捕状を発付しなければ、誤認逮捕は発生しません。このことから、中には「裁判官も悪いのではないか?」と考える人もいるでしょう。

しかし、裁判官が警察から請求された証拠のみで判断をして、誤認逮捕を防ぐのは難しいでしょう。本来、逮捕状を発付するためには「罪を犯したことが十分に疑われる証拠」がなければいけません。

裁判官は捜査機関から得た証拠を確認したうえで逮捕状を発付するため、書類のみで誤認逮捕を防ぐのは難しいでしょう。また、警察等もあなたが犯人であると疑って書類等を作成しているため、審査を行ったとしても誤認逮捕を防ぐことは難しいです。

裁判官が審査を行って逮捕状が発付されます。当然、裁判官も厳正に審査を行ったうえで審査を行うものの、提出された証拠等を確認するのみであるため、罪を犯したと疑うに足りる証拠があれば逮捕状は発付されてしまいます。

なお、捜査機関が行う逮捕の中に「現行犯逮捕」というものがあります。現行犯逮捕の場合は、逮捕状の発付が必要ないため、裁判官は関係ありません。とはいえ、現行犯逮捕は「現行犯人を逮捕すること」であるため、誤認逮捕の可能性はないでしょう。

誤認逮捕に関するよくある質問

誤認逮捕に関するよくある質問を紹介します。

Q.誤認逮捕した警察官は何らかの処分が下されますか?

A.基本的には処分されることはありません。

誤認逮捕をした警察官が何らかの処分が下されることはありません。しかし、証拠を捏造した場合などは、その警察官が処分(解雇処分等)を受けたり刑事処分されたりする可能性があります。

Q.痴漢冤罪による誤認逮捕は相手を訴えられますか?

A.虚偽告訴である場合は、相手に対して賠償請求等が可能です。

痴漢冤罪被害による賠償先も基本的には「国」です。ただし、被害者である相手方が虚偽の告訴をしていた場合は、相手方に対して賠償請求を行うこともできます。

とはいえ、痴漢冤罪事件の大半は、被害者が実際に被害を受けていて別に犯人がいるケースです。この場合、相手方に対して虚偽告訴罪を問うことはできません。また、被害を受けている以上、たとえ加害者の人違いであっても相手方に賠償請求を行うことはできません。

Q.誤認逮捕であることが発覚した場合、名誉回復のために何かをしてくれますか?

A.警察等が会見を行うことがあります。

逮捕された場合、全国ニュース等で広く報道されるケースがあります。この場合、誤認逮捕されてしまった本人や家族が誹謗中傷を受けるケースも少なくありません。

その後、誤認逮捕であることが発覚した場合は、すぐにでも名誉回復のために動いてほしいと考えるのは当然です。しかし、警察等は謝罪文を出したり大きな事件であれば会見を開いたりするのみです。

その内容を報道するかどうかは報道機関の判断によるものであるため、一度貼られたレッテルを剥がすのは難しいかもしれません。

Q.誤認逮捕をなくすことは不可能ですか?

A.現実的に難しいでしょう。

徹底的な裏付け捜査を行うことによって、誤認逮捕を防げるかもしれません。また、確証を得られる証拠なかったとしても、任意聴取などを通して容疑が固まり次第、逮捕状を請求する流れもあります。

本来であれば、上記の手続きを経て「罪を犯したと疑うに足りる十分な証拠」が揃って初めて逮捕が可能です。しかし、捜査を行ってる人や逮捕状を発付する人が人間である以上、絶対になくすことは難しいかもしれません。

Q.誤認逮捕された場合の弁護士費用は自分で負担するのですか?

A.国に対して賠償請求が可能です。

誤認逮捕である場合、本来支払う必要のなかったお金(弁護士報酬等)が発生します。これらのお金は、当然、賠償請求が可能です。しかし、賠償請求をした場合であっても、必ずしも補償を受けられるとは限りません。

まとめ

今回は、誤認逮捕について解説しました。誤認逮捕は絶対にあってはいけないことです。しかし、現実問題起こってしまっています。人間が捜査をして人間が逮捕状を発付する以上、何らかの間違いが発生してしまうこともあります。

誤認逮捕された人ができることは「やっていない証明をすること」です。どれだけ言葉で「私はやっていない」と伝えてもその証明をする必要があるのです。まずは、弁護人に相談をしたうえで、今後の対応方法を検討していくと良いでしょう。

刑事事件でお悩みの場合はすぐにご相談ください。

刑事事件で重要なのはスピードです。ご自身、身内の方が逮捕、拘留されそうな場合はすぐにご相談ください。

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