家宅捜索された場合の対処法とは?捜索後の流れも解説

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家宅捜索とは、正式には「捜索差押」のことを言います。捜索差押は、犯罪を犯した疑いのある人の家や関係各所を捜索し、証拠品を押収するために行われる捜査の一つです。

家宅捜索(捜索差押)は拒否することのできない強制捜査であり、捜査後に逮捕されたり任意聴取を受けたりする可能性があります。最終的には刑事裁判にかけられ、有罪判決が下されてしまうかもしれません。

もし、ある日突然家宅捜索に入られた場合、どのように対応をすれば良いかわからない人も多いでしょう。この記事では、家宅捜索の概要や対処法について詳しく解説をしています。家宅捜索に対して不安を感じている人は、ぜひ本記事を参考にしてください。

家宅捜索とは

家宅捜索とは「捜索差押」のことを言います。家宅捜索は罪を犯した疑いのある人や関係各所を捜索し、犯罪の証拠となり得るものを差し押さえるために行われます。家宅捜索を行うためには、裁判所が発付する「捜索差押許可状」がなければいけません。

捜索差押許可状が発付された場合は、強制力を持って対象家宅等の捜索を行えるようになります。まずは、家宅捜索とは何か?について詳しく解説します。

捜索差押(そうさくさしおさえ)のこと

家宅捜索とは、正式には「捜索差押」と言います。捜索差押は自宅等のみならず事務所や会社、車内や身体等々さまざまです。中でも、自宅等の捜索を主に行う場合は「家宅捜索」と言い表すことがあります。

つまり、法律的には「捜索差押」と呼ぶものの、自宅等を対象とした捜索差押を「家宅捜索」と呼ぶものであると考えておけば良いでしょう。

上記のことから、車内や身体に対して捜索・差押をする場合は「家宅捜索」とはあまり言いません。法律的にも「捜索差押」が正式名称であるため、そのように覚えておくと良いでしょう。

自宅等の捜索を行う強制捜査

家宅捜索(捜索差押)は、主に罪を犯した疑いがある人や犯罪の証拠となるものが置いてあるであろう場所に対して行われる捜査です。捜査機関が裁判所に対して捜索差押許可状の発付を請求し、裁判所が発付することによって発生する強制捜査です。

捜索差押許可状に基づく家宅捜索の場合は、拒否できません。ただし、令状に記載されている場所以外の捜索をしたり、記載されている物以外を差し押さえることはできません。

たとえば、捜索差押の対象となった被疑者の自宅に家宅捜査が入ったとしましょう。令状に自宅の場所しか書かれていなかった場合、被疑者の車内を捜索することはできません。車内も同時に捜索する場合は、捜索差押令状に「車内」と記載していなければいけません。

また、捜索差押許可状に記載されていないものは差し押さえできないため、たとえば、「スマートフォン」としか書かれていないにも関わらずパソコンを差し押さえることは許されません。

上記のことから、家宅捜査に来られた場合は必ず初めに記載されている場所、差し押さえの対象となっている物を確認しておきましょう。

家宅捜査に入られたときの対処法

家宅捜索に入られたときの対処法は以下のとおりです。

  • 令状の内容を確認する
  • 押収品リストを請求する
  • 家宅捜索に素直に応じる

次に、家宅捜索に入られた場合の対処法について詳しく解説します。

令状の内容を確認する

家宅捜索を行うためには、必ず「捜索差押許可状(いわゆる令状・ガサ状)」という書類が発付されます。また、実際に家宅捜索を行う際は、対象者に対して捜索差押許可状を見せなければいけません。

令状には以下のことが記載されているため、必ず内容を確認しておきましょう。

  • 被疑者もしくは被告人の氏名
  • 罪名
  • 差し押さえるべき物
  • 捜索すべき場所・物・身体
  • 有効期間
  • 発付年月日

初めに、氏名欄を見て自分の名前で間違いがないかどうかを確認してください。可能性としては低いものの、万が一、氏名が間違えていれば捜索差押許可状の効力は発生しません。

次に罪名を確認しましょう。自分が今、どういった罪の疑いをかけられているのか?について確認をします。確認をしなくても、心当たりがある人が大半でしょう。しかし、もしかするとまったく関係のない罪の疑いをかけられているかもしれません。

次に、差し押さえるべき物も必ず確認しておきます。先ほども解説したとおり、捜索差押許可状に記載されている物以外は差押できません。そのため、何が差し押さえの対象になっているのか?を把握しておく必要があります。

捜索すべき場所・物・身体についても確認します。たとえば「家の中」と書かれているのか、「家の中・車内」と書かれているのかによって、捜索できる場所が異なります。家の中しか対象になっていない場合は、あなたの車内を捜索することはできません。

最後に有効期限や発付年月日が記載されていますが、とくに確認すべき項目ではありません。家宅捜索は、必ず期限内で行われるうえに、万が一期限が切れた場合は、再度令状の発付を請求します。

家宅捜索は、何の前触れもなく突然開始されます。そのため、冷静に上記のことをすべて確認したうえで対応しましょう。

押収品リストを請求する

押収品リストは、家宅捜索によって押収された物が記載されているリストです。正式には「押収品目録」と言います。押収品目録は、本人から請求しなくても必ず交付されます。

捜査機関から押収品リストを交付されない場合は、本人から「押収品リストをください」といって請求しましょう。

押収品リストを確認することによって、後に押収品の還付を求める際に利用できたり、捜査機関がどのようなものを証拠として扱おうとしているのかを把握できます。後々刑事裁判に発展した場合に少しでも情報を得るために必要となります。

家宅捜索に素直に応じる

家宅捜索は強制捜査であるため、開始された時点で特別な対処は必要ありません。強いて言えば、素直に応じることでしょう。

家宅捜索は、規模にもよりますが一般的なアパート等に住んでいる人であれば5人〜6人程度の捜査員が同時に室内に入ってきます。そのうち1人は被疑者もしくは被告人の目の前で事件について聞いたり、証拠品となるものの場所を聞いたりします。

家宅捜索に素直に応じ、証拠品となる物がどこに隠してあるのかなどを正直に伝えることによって、家宅捜索もスムーズに終了するでしょう。

家宅捜索が行われる理由

家宅捜索が行われる主な理由は以下のとおりです。

  • 犯罪の嫌疑をかけられている
  • 犯罪の証拠を集めるため

次に、家宅捜索が行われる主な理由について詳しく解説します。

犯罪の嫌疑をかけられている

犯罪の嫌疑をかけられている場合、家宅捜索が行われます。犯罪の嫌疑とは、「罪を犯したと疑われている状態」を指します。

犯罪の嫌疑をかけられている場合、通常は「逮捕されるのではないか?」そう思う人も多いのではないでしょうか。確かに、犯罪の嫌疑をかけられている場合、逮捕をして取り調べを行うこともあります。

しかし、そもそも家宅捜索と逮捕は目的が異なります。家宅捜索は、罪を犯したと疑われる人の家等を捜索するために行われるものです。つまり、家宅捜索を受けたからといって必ずしも逮捕されるわけではありません。

むしろ、逮捕するまでの証拠が十分に揃っていないため、証拠を揃えるために家宅捜索を行うケースもあります。

一方で、逮捕とは罪を犯したと疑うに足りる人の身柄を拘束して取り調べを行うための手続きです。逮捕をしたからといって、必ずしも家宅捜索が行われるとは限りません。

ただし、家宅捜索の結果、罪を犯したと疑うに足りる十分な証拠が揃った場合は、そのまま逮捕されてしまうことがあります。逆も然りで、逮捕をしたあとに関係各所に家宅捜索へ入ることもあります。

仮に逮捕されていたとしても起訴をして有罪判決を下すために、さまざまな証拠を集める必要があるためです。家宅捜索は、捜査のひとつであり、必ずしも逮捕と紐付けられているわけではないことを覚えておきましょう。

犯罪の証拠を集めるため

家宅捜索を行う主な理由として「犯罪の証拠を集めるため」があります。罪を犯したと疑うに足りる相当な証拠はあるものの、その後に起訴したり有罪判決が下されたりするために十分な証拠が揃っていない場合、家宅捜索を行う場合があります。

先ほども解説したとおり、家宅捜索と逮捕は必ずしもイコールではありません。逮捕をするために家宅捜索が行われることもあります。

家宅捜索が行われるまでの流れ

家宅捜索は、ある日突然開始されます。事前に告知されることはないため、驚く人も多いでしょう。しかし、捜査機関は家宅捜索の対象者となっている人が必ずいる時間、日にちを確認したうえで家宅捜索に訪れます。

捜査機関が犯罪を認知してから家宅捜索が開始されるまでの大まかな流れは、以下のとおりです。

  • 内偵捜査
  • 捜索差押許可状の発付
  • 令状を持って家宅捜索

次に、家宅捜索が行われるまでの流れについて解説をします。「いつ家宅捜索に入られるのだろうか?」と不安に思っている人は、これから解説する内容をぜひ参考にしてください。

内偵捜査

捜査機関が事件を認知した場合、初めに内偵捜査を行います。内偵捜査とは、犯人や共犯者等に知られないよう、秘密裡に捜査を進めていくことです。

内偵捜査では、初めに現場に残されている証拠等から容疑者を絞り出します。容疑者がある程度絞られ次第、裏付け捜査を行って証拠を固めていきます。

ある程度の証拠が出揃い、捜索差押許可状の発付に十分な証拠を確保できた時点で容疑者の行動を確認する流れです。行動確認では、日々の動きを確認しています。たとえば、毎週の休みや家を出る時間、帰宅する時間などを確認して家宅捜索にはいるタイミングを伺います。

捜索差押許可状の発付

内偵捜査が完了し、容疑者の行動パターンがある程度把握できた時点で、裁判官に対して捜索差押許可状の発付を請求します。裁判官は内偵捜査によって得られた証拠を確認し、「疑うに足りる相当な証拠がある」と判断した場合に令状を発付します。

捜索差押許可状の有効期限は7日間であるため、基本的には令状が発布されてから7日以内に家宅捜索が行われることになるでしょう。もちろん、容疑者に対して捜索差押令状が発布されたことは通知されません。

万が一通知されてしまうことがあれば、7日以内に家宅捜索に入られることが明らかとなります。この間に逃亡されたり証拠を隠滅されたりする可能性もあるため、秘密裡に進められています。

令状を持って家宅捜索

容疑者の行動パターンをある程度把握し、捜索差押令状の発付も完了した時点で容疑者宅等に家宅捜索が入ります。家宅捜索は容疑者の必ずいる時間帯に行われます。また、捜査員は複数人で訪れるため、近所の人に知られてしまう可能性もあるため注意が必要です。

家宅捜索が始まる際は、捜査令状を持った捜査員が外で待機しており、容疑者が出てきた時点で令状を見せて家宅捜索を行います。もしくは、必ずいる時間帯を見計らって逃走経路すべてに捜査員を配置し、インターフォンを鳴らして令状を見せ、家宅捜索を開始するパターンがあります。

いずれにせよ、逃げることも拒否することもできないため、家宅捜索に来られた場合は素直に応じるようにしましょう。

家宅捜索後の流れ

家宅捜索が行われた場合、何らかの犯罪の嫌疑をかけられている可能性が高いです。そのため、家宅捜索が行われた後は、そのまま逮捕されたり任意聴取を受けたりするでしょう。その後、身柄事件となった場合は勾留されて刑事裁判を受ける流れとなります。

次に、家宅捜索が行われた後の流れについても詳しく解説します。家宅捜索と逮捕はイコールではないものの、犯罪の嫌疑をかけられている以上、何らかの処分が下される可能性は高いです。そのため、その後の流れについても把握しておきましょう。

任意聴取もしくは逮捕

家宅捜索が行われた後は、そのまま逮捕もしくは任意聴取を受けることになります。家宅捜索が行われた時点で逮捕状も発付されている場合は、同時に逮捕されて警察署へ連れて行かれます。

逮捕状の発付がなされていない場合は、任意聴取という形で警察署へ連れて行かれることになります。いずれにせよ、家宅捜査後は警察署にて取り調べを受ける流れになるでしょう。

なお、任意聴取の場合はあくまでも「任意」ですが、基本的に拒否するのは難しいと考えておきましょう。仮にその場は拒否できたとしても、後から逮捕状を持って身柄を拘束したうえで取り調べを行われてしまう可能性もあります。

家宅捜索時点で逮捕状が発付されていないのであれば、在宅事件として扱われる可能性もあるでしょう。その可能性を自ら潰してしまうことになるため、任意であっても素直に応じたほうが良いです。

なお、逮捕された被疑者の場合、逮捕から48時間以内に検察へ送致しなければいけません。在宅事件となった場合は、期限に定めはなく、おおむね1カ月〜2カ月程度で書類送検されることが多いです。

勾留請求

身柄事件の場合、送致されてからさらに24時間以内に被疑者の身柄を引き続き拘束するかどうかを判断します。身柄を拘束する必要があると判断された場合は、裁判所に対して検察官が勾留請求を行います。

勾留請求が認められると、初めに10日間の身柄拘束が可能です。ただ一般的には勾留延長されるケースが大半であり、認められるとさらに10日間、合計20日間の勾留となります。

起訴・不起訴の判断

身柄事件の場合、勾留期間中に被疑者を起訴するか不起訴とするかを判断します。起訴された場合は、後に刑事裁判を受けることとなるため、引き続き身柄を拘束されます。ただし、起訴されたあとは保釈請求が可能です。

保釈請求は、保釈金を預けて一時的に社会へ戻ってこられる制度です。必ずしも保釈請求が認められるとは限らないものの、罪状や被告人の状況等によっては一度社会生活へ戻ってこられる可能性のある制度です。一応覚えておくと良いでしょう。

在宅事件の場合、起訴・不起訴の判断をするまでに期限はありません。おおむね書類送検から1カ月〜2カ月程度経過した時点で判断されるものである、と考えておけば良いでしょう。

在宅事件であっても、罪を犯した事実がある以上、最終的には懲役刑の実刑判決が下される可能性もあります。「在宅事件=処分が軽い」というわけではないため、その点は注意してください。

刑事裁判を受ける

正式起訴された場合は、刑事裁判を受けます。刑事裁判では、あなたが犯した罪について、有罪か無罪かを判断します。有罪であると判断された場合は、どの程度の刑罰に処するのが妥当かを判断し、判決として言い渡します。

判決に従って刑に服する

言い渡された判決が確定次第、刑に服します。罰金刑等の財産刑であれば、罰金を納めて終了します。懲役刑等の自由刑であれば、一定期間刑務所に収監されます。

なお、刑罰には「執行猶予」という制度があります。執行猶予は、刑の執行を直ちに行わずに、一定期間猶予することです。執行猶予期間中に罰金刑以上の刑罰が確定しなければ、刑が執行されることはありません。

しかし、罰金刑以上の刑罰が確定した場合は、猶予されていた刑罰も加算されて刑が執行されることになるため注意しなければいけません。

家宅捜索に関するよくある質問

家宅捜索に関するよくある質問を紹介します。

Q.押収された物は戻ってきますか?

A.押収品は原則捜査が終了した時点で返還されます。

押収されたものの返還タイミングは、処分によって異なります。通常の場合は、捜査が終了した時点で返還されますが、不起訴もしくは略式起訴によって罰金刑等が確定した場合は、その時点で返還されます。起訴された場合は、裁判が終了した時点で返還されます。

ただし、所有者が所有権を放棄したものや覚せい剤等、没収の対象となるものは返還されません。返還される際は、先に解説した「押収品リスト」を元に確認しながら返還を受けましょう。

Q.家宅捜索は近所の人にバレますか?

A.バレてしまう可能性があります。

家宅捜索は、ある日突然大勢の捜査員が自宅等に来て開始されます。見ず知らずの大人が大勢集まっていれば、当然周囲の人も気になることでしょう。

捜査員等がわざわざ周囲の人に報告をすることはないものの、「気付かれてしまう可能性」はあるため注意してください。

Q.証拠品となるものが見つからなかった場合、どうなりますか?

A.何も押収されません。

証拠品となるものが見つからなかった場合は、「押収品はありませんでした」ということで家宅捜索は終了します。しかし、押収品が見つからなかったからと言って、事件が終了するわけではありません。

証拠品がなくてもあなたが罪を犯している以上、取り調べを受けたり逮捕されたりする可能性もあるため注意してください。家宅捜索はあくまでも「証拠を集めるためのもの」であるため、証拠品がなかったからといって逮捕を回避できるというものでもありません。その他に証拠が十分に揃っていれば、当然逮捕の可能性もあります。

Q.家宅捜索は強制ですか?

A.家宅捜索は強制です。

家宅捜査は強制捜査であるため、拒否することはできません。また、捜索差押許可状に記載されている物であれば、強制的に差押が可能です。警察官が行う職務質問や持ち物検査とは異なるため注意してください。

Q.家宅捜索時に不在の場合はどうなりますか?

A.基本的に内偵捜査を行って確実にいる日に家宅捜索を行います。

家宅捜索時に不在であった場合、容疑者や被疑者が逃亡したり証拠隠滅を図ったりする可能性があります。そのため、基本的には絶対にいるタイミングを見計らって家宅捜索に入ります。

警察等は、家宅捜索を行う前に張り込みを行って毎日の動きを把握します。家宅捜索へ入る日程が決まった場合であっても、あらかじめ24時間体制で張り込みを継続し、帰宅したことを確認したり外出していないことを確認したりして実行します。そのため、基本的には不在であることはありません。

ただし、万が一にも不在だった場合は、同居している家族に立会いをしてもらうことになります。家族も不在だった場合は、隣人や市役所の職員に令状を示して家宅捜索を行うこともできます。

まとめ

今回は、家宅捜索の対処法について解説しました。

家宅捜索は、何らかの犯罪の嫌疑をかけられている場合に行われます。主に証拠品を集める目的で行われ、強制捜査であるため拒否することはできません。

家宅捜索に入られた際の対処法としては、令状をしっかり確認すること、押収品リストを請求すること、素直に家宅捜索に応じること、の3つです。

もし、家宅捜索に不安や不満がある場合は、弁護士に相談をしても良いです。逮捕されていない場合は、当然携帯電話を使用しても良いです。その場で弁護士へ相談し、一緒に立ち会ってもらっても良いでしょう。

刑事事件でお悩みの場合はすぐにご相談ください。

刑事事件で重要なのはスピードです。ご自身、身内の方が逮捕、拘留されそうな場合はすぐにご相談ください。

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