逮捕されたらする事は何?弁護士に連絡する3つのメリットと刑事手続きの流れを解説

逮捕されたらする事は何?弁護士に連絡する3つのメリットと刑事手続きの流れを解説
逮捕されたらする事は何?弁護士に連絡する3つのメリットと刑事手続きの流れを解説

逮捕されたら最優先にすることは「弁護士への連絡です。

当番弁護士・私選弁護人のどちらに連絡しても構わないので、被疑者自身が置かれた状況、逮捕された後に待っている刑事手続きの流れ、今後の供述方針などについて丁寧に解説してもらいましょう

もし弁護士に連絡をせずに捜査機関主導の取調べが実施されると、気付かないうちに不利な供述をして厳しい刑事処分が科される危険性に晒されます。場合によっては、数カ月に及ぶ長期の身柄拘束を強いられて、これまで築いてきたキャリアや家庭環境に悪影響が生じかねません。

そこで今回は、過去に起こした犯罪が原因で後日逮捕されるのではないかと恐怖心を抱いている方や、ご家族が現行犯逮捕・通常逮捕されて今後どうなるか不安を覚えている方のために、以下4点について分かりやすく解説します。

  1. 逮捕されたら真っ先にすること
  2. 逮捕された後はどのような刑事手続きが待っているのか
  3. 逮捕されたのに弁護士に連絡しないとどのようなデメリットが生じるか
  4. 逮捕されてすぐ弁護士に連絡するとどのようなメリットが得られるか

「逮捕されたら人生終わりだ」と思われるかもしれませんが、「逮捕されたらすること」を確実に履践すれば、今後の人生への悪影響を最大限軽減できます

刑事手続きに巻き込まれたことに悲観して諦めるのではなく、かならず刑事事件に力を入れている弁護士までご相談ください

目次

逮捕されたらすること3つ

逮捕されたらすることの代表例は以下3点です。

  • 逮捕されてすぐに弁護士へ連絡する
  • 逮捕後の弁護士接見の機会に今後の防御方針等についてアドバイスをもらう
  • 逮捕後すみやかに被害者との間で示談交渉をスタートする

逮捕されたらすぐに弁護士へ連絡する

逮捕されたら弁護士に連絡することが何より重要です

逮捕された被疑者は弁護人選任権を有する

逮捕された被疑者には「弁護人選任権」が与えられています日本国憲法第37条第3項刑事訴訟法第203条第1項、刑事訴訟法第204条第1項)。

そもそも、被疑者は刑事手続きの当事者ですが、相手方である捜査機関(警察・検察官)が国家機関として強力な権限を有する法律の専門家であるのに比べると、どうしても力が弱すぎて、被疑者個人だけでは対等の防御活動をすることができません。特に、逮捕・勾留という身柄拘束処分によって活動の自由を奪われている被疑者の場合は尚更です。

そこで、刑事手続き及び刑事訴訟における当事者主義を実質的なものにして被疑者が適切な防御活動を展開できるようにするために、被疑者段階から弁護人選任権を保障して、捜査段階における不当な人権侵害が防止されています。

逮捕されたら私選弁護人に連絡するのがおすすめ

逮捕されたらすぐに「私選弁護人」に連絡するのがおすすめです。

私選弁護人とは、「被疑者本人自身の責任で委任契約を締結して刑事弁護を依頼する弁護士」のことです。

たとえば、被疑者が逮捕されたことを知った家族が私選弁護人と委任契約を締結し、私選弁護人が逮捕後身柄拘束されている被疑者と接見するケースが典型例として挙げられます。また、知人に弁護士がいる場合や、仕事の関係で顧問弁護士を抱えているような場合には、彼らに連絡をして刑事弁護を依頼することも可能です。

私選弁護人を選任すると着手金・成功報酬などの費用が発生する点がデメリットですが、被疑者自身の判断でどの弁護士に刑事弁護を依頼するかを決定できるというメリットを得られます。逮捕の根拠になった犯罪類型についての弁護実績が豊富な弁護士や、親身に話を聞いてくれる心強い弁護士など、「被疑者の人生を左右する刑事弁護を任せたい弁護士」までご連絡ください。

なお、被疑者が逮捕された場合は司法警察員から弁護人選任権についての告知があるのが原則ですが(刑事訴訟法第203条第1項)、弁護人の有無を尋ねられた際に私選弁護人がいる旨を回答すると、別途弁護人選任権についての説明は省略されることがあります(同法第203条第2項)。

逮捕されたら当番弁護士制度を利用できる

逮捕されたらすぐに弁護士に連絡をする必要がありますが、私選弁護人ではなく「当番弁護士制度」を利用することも可能です。

当番弁護士とは、「各地の弁護士会が運営主体となって毎日担当の当番を決めて、被疑者からの依頼によって逮捕処分によって留置されている場所に弁護士が出向き、接見のうえ、無料で相談に応じる制度」のことです。無料で相談に応じてくれるのは最初の1回だけですが、被疑者が置かれた状況や今後の方向性について丁寧にアドバイスを提供してくれます(2回目以降の接見等を希望する場合には、当番弁護士としてやってきた弁護士を私選弁護人として選任しなければいけません)。

このように、当番弁護士には逮捕後身柄拘束されている被疑者なら誰でも無料で相談できる」というメリットがありますが、その一方で、どのような弁護士が当日やってくるか分からない」というデメリットに注意をしなければいけません。

つまり、私選弁護人なら刑事事件に強い専門家を自分で選択できますが、当番弁護士はたまたま当日担当が回ってきた専門家がやってくるだけなので、運が良ければ熱心で優秀な弁護士に当たる可能性もありますが、逆に、刑事事件の経験が浅く相性の悪い弁護士と接見しなければいけないリスクもあるということです。

とは言え、無料で専門家との相談機会を確保できるのは逮捕された被疑者にとって非常に価値があるはずです。担当警察官に「当番弁護士を呼んでください」と伝えれば弁護士会に連絡をしてくれるので、遠慮なく弁護人選任権を行使してください(被疑者のご家族等が当番弁護士を依頼する場合には弁護士会への連絡が必要です)。

当番弁護士と似て非なる制度に「国選弁護人」というものがあります。国選弁護人とは、「被疑者が勾留された後、『預貯金等を含む資力が50万円未満であること』という要件を満たす場合に限って、無料で利用できる弁護人制度」のおことです。当番弁護士は逮捕後の被疑者段階からすべての被疑者が利用できる制度ですが、国選弁護人は「勾留後、被疑者本人からの申請によってしか依頼できない」という違いがあります。したがって、逮捕されたらすぐに連絡するべきなのは当番弁護士であり、国選弁護人ではありません。

弁護士と接見するまでは安易な供述は控えるべき

逮捕された後の刑事手続きを少しでも有利に進めるなら、弁護士との接見機会までに実施される取調べでは安易な供述を控えるべきだと考えられます。

なぜなら、弁護士と接見する前に曖昧な供述をしてしまうと、弁護士が立てた防御方針に反する供述をしてしまうリスクがあるからです。

そもそも、被疑者には「自己の意思に反して供述をする必要がない権利(供述拒否権、黙秘権)」が認められています(刑事訴訟法第198条第2項)。たとえば、「弁護士が来るまで事件については何も話せません」などと回答したところで、特別不利益な処分が科されることはありません。

ただし、氏名や職業、住所などの特定情報までも黙秘したり、取調べ担当官の話を一切無視するような反抗的な態度まで取る必要はないでしょう。

逮捕された後の弁護士接見で今後の防御方針を決定する

逮捕されたら最優先で弁護士へ連絡して、できるだけ早いタイミングで接見機会を作ってもらいましょう。なぜなら、逮捕・勾留中に実施される執拗な取調べに対する防御活動・供述内容の方向性を決定する必要があるからです。

たとえば、被疑事実に対する認否、被疑事実に対して反論するならどのような方向性の供述をするのか、自分の主張を根拠付ける証拠収集の方法などについて、弁護士と話し合います。

また、被疑事実を全面的に認める場合には、被害者との示談交渉を円滑に進めるための「謝罪文」や、捜査機関・裁判所に提出するための「上申書」の作成を手助けしてもらえます。

弁護士との接見機会は逮捕された被疑者の権利として保障されている

逮捕されて身柄拘束中の被疑者には弁護士との「接見交通権」が認められています(日本国憲法第34条、刑事訴訟法第39条第1項)。

接見交通権とは、「被疑者・被告人が立会人なしでいつでも自由に弁護人と面会できる権利」のことです。捜査機関に身柄拘束をされている状況でも警察官等の立会いなしで自分の味方である弁護士と防御活動等について打ち合わせができるので、捜査機関と対等な立場で渡り合えるようになります。

なお、接見交通権は被疑者の立場を守る重要な権利ですが、捜査のために必要があるときは、捜査機関が面会の日時・場所・時間を指定できるとされています。ただし、捜査機関による接見指定は、被疑者が防御の準備をする権利を不当に制限するようなものであってはいけません(刑事訴訟法第39条第3項)。

捜査活動の状況次第では、被疑者の接見交通権と「捜査の必要性」が衝突する場面も少なくありません。刑事実務では、弁護士から被疑者との接見の申し出があったときは、捜査機関はいつでも接見の機会を与えなければいけないのが原則です。ただし、例外として、現に被疑者を取調べているときや、実況見分・検証等に立ち会わせているとき、接見の申し出があった直後に取調べ等を実施する確実な予定があるときで、弁護人からの接見の申し出を認めると取調べ等が予定通り開始できなくなるおそれがあるなど、捜査の中断による支障が顕著な場合でも、弁護人と協議してできる限りすみやかな接見のための日時等を指定し、被疑者が防御のため弁護人と打ち合わせることのできるような措置をとらなければいけないとされています(最判昭和53年7月10日、最判平成3年5月10日)。したがって、被疑者の接見交通権は刑事実務でもかなり尊重されているので、逮捕されても安心して弁護士に相談できるでしょう。

逮捕されると弁護人以外の第三者とは面会できないことが多い

弁護人との接見交通権は重要な権利として保障されている一方で、逮捕後身柄拘束中の被疑者の弁護人以外の第三者との面会については接見禁止処分が下されることが多いです。

もちろん、比較的軽微な犯罪類型で逮捕されたときや、被疑者が犯行を認めているときには、比較的早いタイミングで接見禁止処分が全面解除・一部解除されることもありますが、基本的には「犯罪の証拠を隠す疑いがある」ことを理由に全面的な接見禁止処分が下されるのが実情です。

たとえば、逮捕された後すぐに家族と面会機会をもちたい場合には、弁護士に相談をして「接見禁止処分に対する準抗告」などの対抗策を検討してもらいましょう(刑事訴訟法第207条第1項、同法第429条第1項第2号)。

弁護士接見では取調べ時の注意点についてアドバイスしてもらえる

逮捕されてすぐに弁護士と接見機会を設けることによって、その後実施される取調べにおける注意事項についてアドバイスを提供してもらえます

そもそも、捜査機関が実施する取調べでは、「被疑者の供述内容が録取(文字に記録)→読み聞かせ等による内容確認→内容に同意する場合には署名・押印」という流れで供述調書が作成されます。

そして、被疑者の署名・押印がある書面は刑事裁判における重要証拠になるという点を押さえておかなければいけません。つまり、供述内容、書面に起こされた録取内容を正しく理解して署名・押印しなければ、不利な供述調書を作成されるリスクに晒されるということです。本意でない内容が録取されている場合には修正を求めること、納得できない供述調書に対しては署名・押印をしないことが大切です。

また、捜査機関は被疑者からさまざまな供述を引き出すノウハウを有するので、意図しない形で余計なことを話してしまいかねません。話すべきことはしっかりと供述する必要がありますが、話したくないことや話すべきでないことについては慎重に黙秘権を行使することも重要な防御活動と言えるでしょう。

逮捕されたらすぐに被害者との間で示談交渉をスタートする

被害者が存在する犯罪類型で逮捕されたときには、すぐに被害者との間で示談交渉を開始してください。たとえば、万引きや痴漢、下着泥棒、強盗などで逮捕された場合には被害者ははっきりしているので、示談交渉を開始すること自体は難しくないでしょう。

示談とは、「事件の加害者・被害者の間で一定の示談条件について話し合い、民事的解決について合意を形成すること」です。示談が成立していることを理由に軽い刑事処分を獲得しやすくなるというメリットが得られます。

どのような示談条件で合意に至るかは個別事案によって異なりますが、一般的な示談契約では、以下のような示談条件が提示されるることが多いです。

  • 加害者が被害者に対して示談金(被害弁償、慰謝料等)を支払う
  • 示談金の支払い条件(一括払いが多いが、示談金額や資力状況次第では分割払いになることも)
  • 万引きなら「今後入店しないこと」、痴漢なら「沿線や駅を利用しないこと」などの特有の条件が設定される
  • 被害者は告訴状や被害届を取り下げる
  • 被害者は捜査機関や裁判所に対して「処罰感情がないこと」を伝える

なお、後述のように刑事手続きの各ステージには厳格な時間制限が設けられている点に注意が必要です。

たとえば、逮捕された後に「微罪処分」獲得を目指すなら「48時間以内」に、逮捕された後に「勾留回避・不起訴処分」獲得を目指すなら「原則72時間以内」に示談成立を達成しなければいけません

したがって、早期の示談成立を目指すなら、後述するように、刑事事件や示談実績豊富な弁護士に相談するべきでしょう

逮捕されたらどうなる?刑事手続きの流れ

逮捕されたらすぐに弁護士に連絡するのが最優先事項です。

私選弁護人・当番弁護士のどちらに連絡をしても、接見機会を利用して、今後どのような刑事手続きが待っているかを丁寧に解説してくれます

逮捕された後の刑事手続きの流れは以下の通りです。

  1. 逮捕されたら強制的に身柄拘束される
  2. 逮捕された後は警察段階の取調べが実施される
  3. 警察段階の取調べが終わると事件が検察官に送致される
  4. 逮捕された事件について検察段階の取調べが実施される
  5. 逮捕された事件は検察官が勾留請求する可能性がある
  6. 逮捕・勾留された事件を刑事裁判にかけるか検察官が判断する
  7. 逮捕された事件が公開の刑事裁判にかけられる

なお、被疑事実によって刑事手続きの経過は変動するので、適宜弁護人のアドバイスを参考にしてください

逮捕処分が実行されて身柄が取り押さえられる

逮捕は、「被疑者の身体・行動の自由を奪って強制的に身柄拘束する強制処分」です。

逮捕処分が実行されると、取調べ以外の時間、被疑者の身柄は拘置所・留置場に留められます。上述のように、原則として弁護士以外の第三者とは一切面会できませんし、スマートフォンが取り上げられるので家族や会社等に電話連絡を入れることもできません

逮捕処分は、以下3種類に分類されます。逮捕の要件や逮捕後の手続きの流れに多少の違いはありますが、どの逮捕処分でも被疑者の身柄が強制的に押さえられる点は同じです。

  • 通常逮捕
  • 現行犯逮捕
  • 緊急逮捕

通常逮捕とは、「裁判官が事前に発付した逮捕状に基づいて、罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある者に対して執行される逮捕処分」のことです(刑事訴訟法第199条第1項)。令状主義が適用される原則的な逮捕行為と言えるでしょう。

現行犯逮捕とは、「現行犯人(現に罪を行い、または、罪を行い終わった者)に対する逮捕処分」のことです(同法第212条第1項)。現行犯逮捕をする際には逮捕状は必要とされず、令状主義の例外に位置付けられます。また、一定の要件を満たす「準現行犯人」に対しても現行犯逮捕は実施されます(同法第212条第2項)。

緊急逮捕とは、「一定の重い罪を犯したことを疑うに足りる十分な理由がある場合で、逮捕状の発付手続きを履践しているゆとりのない状況において実施される逮捕処分」のことです(同法第210条第1項)。緊急逮捕後すみやかに逮捕状の発付手続きが求められるので、日本国憲法第33条に違反せず合憲であると解されています(最判昭和30年12月14日)。

逮捕後は警察で48時間以内の取調べが実施される

逮捕されたら警察で身柄拘束付きの取調べが実施されます。

警察段階で実施される取調べには「48時間以内」という制限時間が設けられています(刑事訴訟法第203条第1項)。これは、逮捕処分には「身体・行動の自由を過大に制約する」という側面があるため、捜査機関による時間無制限の身柄拘束を禁止する趣旨です。

被疑者本人に対してさまざまな質問が行われて、被疑事実に対する認否が確認されたり、捜索・差押えによって得られた物証や目撃者の証言との整合性が問われたりします。

警察段階の取調べが終了すると送検される

原則として、警察が捜査活動を実施した事件はすべて検察官に送致しなければいけないとされています(刑事訴訟法第246条本文)。

なお、後述するように、一定の要件を満たす事件については、送検されずに「微罪処分」に付されます(同法第246条但書、犯罪捜査規範第198条)。

検察段階で原則24時間以内の取調べが実施される

逮捕された後、検察官に送致されると、検察段階の取調べが実施されます。逮捕段階と同様、被疑者の身柄は拘束された状態が続きます。

検察段階で実施される取調べの制限時間は「24時間以内」です(刑事訴訟法第205条)。24時間の制限時間が到来するまでに、検察官が公訴提起の判断を下します。

したがって、逮捕されたら「警察段階48時間+検察段階24時間の合計72時間以内」に刑事裁判にかけられるかどうかが決定されます。

勾留請求によって検察段階の取調べが延長される場合がある

検察段階の取調べは「24時間以内」が原則です。

ただし、捜査機関がやむを得ない事情によって原則的な制限時間に従うことができない場合には、例外的措置として「勾留請求」が認められています

「やむを得ない事情」とは、「被疑者の身柄拘束期間を延長してまで捜査活動を継続する必要性がある事情」を意味します。たとえば、逮捕された事件が以下のような性質・事情を有する場合、勾留請求によって身柄拘束期間が延長される可能性が高いです。

  • 余罪への関与が疑われる
  • 共犯者や参考人などが多数で事情聴取等に時間を要する
  • 事件の証拠物が膨大で原則的な制限時間内には処理しきれない
  • 被疑者本人の供述内容と目撃者の証言や証拠物との食い違いがみられる
  • 実況見分や鑑定の結果が間に合わない
  • 被疑者が黙秘・否認をしている

検察官の勾留請求を裁判官が認めた場合、勾留状が発付されて「10日間~20日間」の範囲内で取調べ期間が延長されます(刑事訴訟法第206条第1項、第208条各項)。

したがって、逮捕後に勾留処分が下された場合、刑事裁判にかけるか否かが決定されるまで最長23日間の身柄拘束付き取調べを要します

検察官が公訴提起するか否かを判断する

逮捕・勾留期間が満了する前に、検察官が当該刑事事件について起訴・不起訴を判断します。

起訴処分とは、「立件された犯罪行為を公開の刑事裁判にかける旨の訴訟行為」のことです。立件される犯罪行為の種別にもよりますが、日本の刑事裁判の有罪率は約99%とも言われているので、余程特殊な事情がない限り、検察官が起訴処分を下した時点で有罪になることが確定し、前科がつきます。

これに対して、不起訴処分とは、「立件された犯罪行為を公開の刑事裁判にかけず、検察官限りの判断で刑事手続きを終結させる旨の意思表示」のことです。不起訴処分が下された場合、前歴は残りますが、前科はつきません。また、不起訴処分は、その根拠となる理由によって以下3種類に大別されます。

  • 嫌疑なし:被疑者が罪を犯した証拠がないケース
  • 嫌疑不十分:被疑者が罪を犯した証拠が不十分なケース
  • 起訴猶予:被疑者が罪を犯したこと自体は間違いないが、反省の態度・示談の有無・更生可能性などの諸般の事情を考慮すると、公開の刑事裁判にかける必要がないケース

公開の刑事裁判にかけられる

検察官が起訴処分を下した場合、犯罪行為が公開の刑事裁判にかけられます。

刑事裁判では、弁論手続き・証拠調べ手続きを経て判決が言い渡されます。容疑をかけられた犯罪類型ごとに法定刑が定められており、その範囲内(原則として検察官が求刑した範囲内)で量刑が決められます。

有罪になる場合に下される判決内容は以下の通りです(刑法第9条)。

  • 死刑
  • 懲役刑(無期または有期)
  • 禁錮刑(無期または有期)
  • 罰金刑(原則10,000円以上)
  • 拘留(1日以上30日未満)
  • 科料(1,000円以上10,000円未満)
  • 没収

判決が確定して刑が執行される

判決が確定すると刑が執行されて刑事責任を果たすことになります。

なお、一定の要件を満たす場合には、執行猶予が付く可能性もあります。

ただし、執行猶予付き判決を獲得したとしても前科がつくことには変わりません。

逮捕されたらすぐに弁護士へ相談するメリット3つ

逮捕されたらすぐに私選弁護人を選任することをおすすめします。

なぜなら、刑事事件の実績豊富な弁護士に相談すれば、以下3点のメリットを得られるからです。

  1. 弁護士なら早期に被害者との間で示談成立を実現できる
  2. 弁護士は少しでも有利な刑事処分・判決内容獲得を目指してくれる
  3. 弁護士は刑事責任以外に生じるトラブルにも配慮してくれる

刑事事件に強い弁護士をお探しの場合には、各法律事務所のHPに掲載されている業務内容や相談実績をご確認ください

被害者との示談交渉を円滑に進めやすくなる

加害者本人や加害者家族が直接示談交渉を行うよりも、刑事事件に強い弁護士に依頼した方が被害者との示談交渉を円滑に進めることができます

弁護士に委任した方が示談先の連絡先を入手しやすい

そもそも、元々の知り合い同士のトラブル等で刑事事件に発展したようなケースを除いて、加害者は被害者の連絡先が分からない状態です。つまり、示談交渉を進めるには、「被害者の氏名や連絡先を入手すること」からスタートしなければいけないということです。

しかし、たとえば痴漢や盗撮、強制わいせつ罪のような事案では顕著ですが、加害者本人が警察に「被害者の連絡先を教えて欲しい」と伝えたところで、不安や怒り、恐怖心を抱いている被害者側が連絡先の提供について了承してくれないケースが少なくありません。これでは、早期の身柄釈放や軽い刑事処分獲得のための示談交渉を一切進めることができないでしょう。

これに対して、法律の専門家である弁護士が着任し、示談交渉を代理人である法律の専門家が執り仕切るとなれば、被害者側の納得も得られやすいですし、捜査機関側も被害者に言伝をしやすくなるのは明らかです。

したがって、被害者との示談交渉をスムーズに開始したいのなら、かならず弁護士に依頼するべきだと考えられます。

弁護士なら相場通りの示談条件で合意を形成しやすい

示談という民事的解決を目指すには、示談交渉をスムーズに開始することだけではなく、示談条件に関する合意を被害者側から穏便に引き出すことも重要です。

しかし、加害者本人や加害者家族が直接謝罪の意向を示して示談条件を提示したところで、円満な合意形成に至るのは簡単ではありません。

なぜなら、犯罪当事者同士が直接話し合いを行ったとしても、感情的になって建設的な交渉が出来ない可能性が高いですし、終局的な解決に資する示談条件を双方が提示できないリスクも伴うからです。また、怒り等の感情が強い加害者側が嫌がらせ目的で不当な示談条件を吹っ掛けてくると、足元を見られた状態で相場と乖離した示談条件を呑まざるを得なくなりかねません。

弁護士が代理人として示談交渉に臨めば、感情的になっている加害者と冷静に話し合いの場を設けることができます。丁寧に謝罪の意を示しつつ、同時に、一般的な示談相場や加害者側の経済事情、仮に示談が成立しない場合に民事訴訟を提起したとして認容される慰謝料想定額等を上手く交渉材料に使いながら、早期に合理的な示談条件での和解契約を締結できるでしょう。

逮捕された被疑者が少しでも有利な状況を獲得できるように尽力してくれる

優秀な私選弁護人に依頼すれば、逮捕されて身柄拘束処分を受けた被疑者が少しでも有利に刑事手続きを進めることができるように手を尽くしてくれます

ここからは、刑事手続きの段階に応じて逮捕された被疑者が目指すべき防御方針・刑事処分等について解説します。

微罪処分

容疑をかけられた犯罪事実や被疑者の環境にもよりますが、逮捕されたら最初に防御活動の目標にするべきなのが「微罪処分の獲得」です

微罪処分とは、「検察官送致を要さず、警察限りの判断で刑事手続きを終結させる旨の刑事処分」のことです(刑事訴訟法第246条但書、犯罪捜査規範第198条)。

微罪処分のメリット

微罪処分のメリットは以下4点です。

  • 送検なしで刑事手続きが終結するので身柄拘束期間が48時間以内で済む
  • 会社や学校にバレる不安を大幅に軽減できる
  • 無罪になるので前科がつかない(前歴は残る)
  • 「起訴されるかもしれない、裁判にかけられるかもしれない」などの不安から早期に解放される
微罪処分の条件

すべての事件が微罪処分の対象になるわけではありません。

微罪処分の対象になるには、一般的に、以下のような条件が揃っている必要があると言われています。また、微罪処分に付するか否かを決するのは警察なので、以下の条件が揃っていても微罪処分に付されない場合があり得る点にご注意ください。

  • 軽微な犯罪類型に該当するとしてあらかじめ検察官の指定を受けた犯罪類型であること(窃盗罪・傷害罪・暴行罪・遺失物等横領罪・単純賭博罪など)
  • 犯情が軽微であること(計画性がない、酔っ払った末の犯行、事前準備をしていないなど)
  • 被害が軽微であること(被害額2万円以内、全治1週間程度の傷害など)
  • 被害弁償や謝罪が済んでおり、被害者が処罰感情をもっていないこと(示談成立など)
  • 素行不良者ではないこと(前科・前歴がないなど)
  • 身元引受人・監督者が存在して更生を目指す環境が整っていること

在宅事件

逮捕・勾留による身柄拘束処分が長期化するほど社会生活に生じる悪影響が大きくなります。

したがって、逮捕されたら「在宅事件」処理を目指して防御活動を尽くすのも効果的でしょう。

在宅事件とは、「逮捕・勾留という身柄拘束処分を受けることなく、捜査手続きや裁判手続きを進めてもらえる事件処理類型」のことです。

在宅事件のメリット

在宅事件のメリットは以下の通りです。

  • 刑事手続きに参加するとき以外は日常生活を送ることができる
  • 刑事事件を起こしたことが会社や学校にバレるリスクを軽減できる
  • 長期の身柄拘束による心身の負担を回避できる

ただし、逮捕された後に在宅事件処理に切り替えてもらえたとしても、ふたたび「逃亡・証拠隠滅のおそれがある」と判断されされた場合や、新たな証拠が明らかになって身柄拘束付き取調べを実施する必要性が高まった場合、捜査機関等による出頭要請や事情聴取に誠実に対応しない場合には、ふたたび身柄拘束処分が下される危険性も否定できません。

また、在宅事件扱いを獲得できたとしても、微罪処分・不起訴処分のようにかならず無罪が確約されるわけではありません。なぜなら、在宅事件として取調べが進むなかで容疑が固まった場合には「在宅起訴」によって裁判手続きに移行して有罪判決が下されるケースもあり得るからです。

したがって、在宅事件は「身柄拘束をするか否か」という観点でしかメリットが生じないので、有利な刑事処分獲得を目指すなら、別途「微罪処分・不起訴処分・執行猶予付き判決」獲得のための防御活動が不可欠だと考えられます。

在宅事件の条件

在宅事件の条件は以下の通りです。

  • 氏名・住所・職業がはっきりしていて逃亡のおそれがないこと
  • 素直に犯行を自供して証拠隠滅のおそれがないこと
  • 単独犯の事件など、共犯者と口裏を合わせるおそれがないこと
  • 身柄拘束処分解消後に別の犯罪行為に及ぶ危険性がないこと

逮捕という強制処分が適法なものとして機能するには、「逮捕の必要性=留置の必要性」がなければいけません。裏を返せば、「逮捕の必要性=留置の必要性」がないことを明らかにできれば、逮捕処分の根拠がなくなるので、在宅事件に切り替わるということです。

弁護士に相談すれば、捜査機関や裁判所に対して書面・電話等の方法で留置の必要性がないことを丁寧に説明してくれるので、在宅事件扱いの可能性が高まるでしょう。

勾留回避

逮捕されたときには、身柄拘束期間の長期化を招く「勾留」を回避するための防御活動に専念するのも大切です。

勾留という身柄拘束処分を回避するには、以下の防御方針が役立ちます。

  • 留置の必要性」がないことを丁寧に説明する
  • 逮捕段階の取調べや証拠の隠し場所などを素直に供述して早期に公訴提起判断できる状況を作り出す
  • 根拠のない勾留に対しては準抗告・特別抗告によって対抗する

不起訴処分

逮捕された後、送検されてしまった場合には、不起訴処分の獲得」を目指して防御活動を展開するのが重要です。

なぜなら、起訴処分が下された時点で有罪・前科がほぼ確定するという刑事実務の実情を踏まえると、検察官による不起訴処分を獲得できれば、無罪放免になって前科によるデメリットを回避できるからです。

たとえば、正当防衛や緊急避難などの違法性阻却事由を主張立証できる状況なら「嫌疑なし・嫌疑不十分」を理由とする不起訴処分を獲得できます。また、被害者との示談交渉や反省の態度などが総合的に考慮された場合には、罪を犯したこと自体に間違いはなくても「起訴猶予」を理由とする不起訴処分を付されるでしょう。

有罪判決が確定すると、判決で言い渡された刑罰が執行されるだけではなく、前科がつくデメリットにも晒されます。前科によるデメリットとして挙げられるものは以下の通りです。

  • 前科情報は就職活動・転職活動で提出する履歴書の賞罰欄に記載しなければいけない
  • 前科の内容次第では就業制限される職種・資格がある
  • 前科は法定離婚事由に該当するので、配偶者が離婚を申し出ると最終的に拒絶できない(慰謝料や親権判断も不利になる)
  • 前科を理由にパスポートやビザ発給が制限されることがあるので海外旅行できなくなる
  • 前科者が再犯に及ぶと、刑事処分や判決内容が加重されるリスクが高まる

なお、前科のデメリットとして「戸籍や住民票に記載される」「住宅ローンやクレジットカード審査に影響がある」と言われることがありますが、これは間違いです。

保釈手続き

弁護士は、起訴処分が下された後すぐに保釈手続きを履践してくれます。起訴後も勾留が継続すると、公開の刑事裁判までの数カ月間ずっと身柄拘束された状態が続くので、保釈請求によって身柄拘束期間の短縮化を実現できるでしょう。

まず、以下の保釈除外事由に該当しない限り、保釈請求はかならず認められます(刑事訴訟法第89条)。これを「権利保釈」と呼びます。

  • 死刑・無期懲役・短期1年以上の懲役刑・禁錮刑にあたる罪を犯して逮捕されたとき
  • 死刑・無期懲役・長期10年を超える懲役刑・禁錮刑に当たる罪を犯して有罪の宣告を受けたことがあるとき
  • 常習として長期3年以上の懲役刑・禁錮刑に当たる罪を犯して逮捕されたとき
  • 罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき
  • 被害者や証人本人、その親族や財産に害を加えたり畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき
  • 被告人の氏名・住居が分からずに逃亡のおそれがあるとき

次に、保釈の相当性・必要性が認められる場合には裁判所が職権で「裁量保釈」を認める場合もありますし、不当に身柄拘束期間が長期化している場合には「義務的保釈」が許可されます(同法第90条、第91条)。

保釈請求によって身柄拘束から解放されるには、裁判所が決定した保釈金を納付しなければいけません(同法第94条第1項)。保釈金額は、犯罪の性質・情状・証拠の証明力・被告人の性格や経済力等が総合的に考慮されて、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額が定められます(同法第93条第2項)。

また、保釈が認められるには、住居の制限・被害者や共犯者との接触禁止・スマートフォンの使用禁止などの指定条件が付されることもあります(同法第93条第3項)。これらの指定条件に違反した場合や出頭要請に応じない場合には、保釈金の全部または一部が没収されて、保釈が取り消されてしまいます(同法第96条各項)。

なお、保釈金の準備などについては日本保釈支援協会の保釈保証金立替制度等を利用することが可能です。適宜弁護士までご相談のうえ、起訴後すみやかな身柄釈放を目指しましょう

略式手続き

逮捕された事件の内容や刑事手続きの経過次第では「略式手続き」を利用できる場合があります。

略式手続き(略式裁判・略式起訴)とは、「以下の要件を満たす事件類型について、公開の刑事裁判を省略して簡易・簡便な形で罰金刑を確定させる裁判手続き」のことです(刑事訴訟法第461条)。

  • 簡易裁判所の管轄に属する事件に該当すること
  • 100万円以下の罰金刑・科料を科す事件に該当すること
  • 被疑者自身が略式手続きによる審判について書面で同意をしていること

たとえば、電車内の痴漢行為について迷惑防止条例違反の容疑で逮捕された事件において、検察官が公判において50万円の罰金刑を求刑する予定の場合、略式手続きを選択すれば公訴提起(略式起訴)段階で刑事手続きが終結するので、公開の刑事裁判を経由したときよりも数カ月程度時間を節約できます。

ただし、略式手続きを利用した場合、公開の刑事裁判で反論等を主張・立証する機会が失われる点に注意が必要です。「痴漢行為はしていない」「電車の揺れが原因でたまたま手が触れてしまっただけ」などを裁判官の面前で説明したいのなら、略式手続きは選択するべきではないでしょう(公開の刑事裁判を選択したからと言って、反論内容が受け入れられる保証はありません)。

実刑回避

弁護士は、逮捕・起訴された事件について実刑判決を回避するための防御活動を展開してくれます

そもそも、懲役刑・禁錮刑という実刑判決が確定した場合、判決確定から刑務所に収監されて刑期を全うするまでは社会生活に復帰できません。現在の勤務先からは懲戒解雇処分を下される可能性が極めて高いですし、刑期満了後に就職活動・転職活動をするにも、前科があることを理由に仕事が見つからないということにもなりかねないでしょう。

これに対して、執行猶予付き判決を獲得できた場合には、取消し事由等が発生しないまま執行猶予期間が無事に経過することによって、何の刑事処罰も科されずに刑事責任が消滅します。前科によるデメリットを被る以外、日常生活にはほぼ支障は生じません。

ただし、執行猶予付き判決を獲得するには、「3年以下の懲役刑・禁錮刑・50万円以下の罰金刑の言渡しを受けたとき」という要件を満たす必要があります(刑法第25条第1項)。そのため、特に強盗罪などの重大犯罪で逮捕されたときに執行猶予付き判決の獲得を目指すなら、犯人の性格・年齢・境遇・犯罪の軽重・情状・犯罪後の情況(監督者の有無等)・示談の状況などについて力を入れて主張・立証するべきでしょう。

刑事責任以外に生じ得る法律問題や実生活への影響にも配慮してくれる

逮捕されたら、刑事責任以外に発生する可能性があるトラブルに対処するためにも、弁護士に相談することを強くおすすめします

たとえば、刑事事件を起こしたことを理由に配偶者から離婚を申し入れられた場合、離婚調停・離婚裁判において慰謝料・養育費・親権・財産分与等の問題について話し合いを進めなければいけません。また、現在の勤務先から下された懲戒処分の内容に不満があるなら、労使交渉によって処分の撤回等を求める必要にも迫られます。さらに、事件のことが大々的に報道されたりネット上に個人情報が流出・拡散されてしまった場合には、削除要請や慰謝料請求などの法的措置を採らざるを得ないこともあるでしょう。

刑事事件を専門にしている弁護士は、被疑者が置かれた状況ごとに「刑事責任以外の法的問題」にも丁寧に対応してくれます。刑事手続き中や刑事手続き終了後にどれだけ諸方面に配慮できるかで社会復帰や更生可能性が変化するので、逮捕されたらすみやかに弁護士までご連絡ください。

逮捕されたらすぐ弁護士へ連絡を!早期の防御活動次第で今後の人生が左右される

逮捕されたらすることは「弁護士への連絡」です。極論を言えば、優秀な弁護士に相談さえすれば、可能な限り有利な状況を作り出すことができます

ただし、逮捕後の刑事手続きは厳格な時間制限のなか粛々と進められてしまうので、相談するタイミングが遅れるほど挽回が難しくなりかねません

刑事事件に強い私選弁護人に心当たりがあるのなら即時に連絡をするべきですし、弁護士の見つけ方が分からないのなら当番弁護士制度を有効活用しましょう。

刑事事件でお悩みの場合はすぐにご相談ください。

刑事事件で重要なのはスピードです。ご自身、身内の方が逮捕、拘留されそうな場合はすぐにご相談ください。

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