教員が逮捕されると免許はどうなる?起こり得る影響や正しい対処法を解説

NO IMAGE

教員という職業は未成年を対象とした職であり、生徒から見たあなたは身近な大人・見本となるべき人です。そのような人が犯罪を起こし、罪に問われてしまえば受け持っている学級の生徒等にも多大な影響を与えかねません。

そのため、教員はさまざまな法律によって犯罪を起こした場合の処分について定めています。たとえば、教員は逮捕されただけでは免許を剥奪されることはないものの、禁錮刑以上の刑罰が確定すると、免許の失効・免職となるため注意しなければいけません。

この記事では、教員が免許を失効・免職となる基準について解説しています。また、禁錮刑以上の刑罰が確定しないようにするための対処法についても解説しているため、ぜひ参考にしてください。

教員は逮捕されただけで免許剥奪とはならない

教員免許を取得している人や教員として働かれている人が、何らかの犯罪を起こした場合、直ちに免許が剥奪されるわけではありません。逮捕は、あくまでも犯罪を起こしたと疑われる人の身柄を拘束するための手続きであるためです。

教員免許が剥奪されるタイミングは、「禁錮刑以上の刑罰が確定した時点」です。法律における「逮捕」や「禁錮」、「確定した時点」というのは明確な基準が定められています。

まずは、教員がどのタイミングで免許を剥奪されてしまうのか、について詳しく解説します。

「逮捕」だけでは免許を剥奪されない

教員が何らかの事件を起こし、逮捕された場合、直ちに教員免許が剥奪されるわけではありません。そもそも、逮捕とは被疑者の身柄を拘束するための手続きであり、刑罰が確定するまでは、推定無罪が原則です。

逮捕とは、犯罪を起こしたと疑うに足りる事情がある人物であって、逃亡の恐れもしくは証拠隠滅の恐れがある場合に認められる身柄拘束を行うための手続きです。そのため、そもそも犯罪を起こしたからといって、全員が逮捕されるわけではありません。

また、世間一般的な認識として「逮捕=犯罪を起こした人」と思われがちですが、これは大きな間違いです。

確かに、認識のとおり犯罪を起こしたと疑うに足りる証拠がなければ、逮捕状は発布されません。しかし、刑事事件においては有罪判決が確定するまでは、推定無罪の原則が働きます。

つまり、「逮捕された」という事実のみで被疑者を犯人扱いし、免許等を剥奪することは許されません。そのため、教員が逮捕されたとしても、直ちに免許が剥奪されることはないため安心してください。

「禁錮刑以上が確定した時点」で教員免許が剥奪される

教員免許は、刑事事件において「禁錮刑以上が確定した時点」で剥奪されます。これは、教員職員免許法という法律によって定められている事実であり、同法では「禁錮刑以上の刑に処された者に対して、授与しない」と書かれています。

また、学校教育法という法律では「禁錮刑以上に処された者は、教員となることができない」と書かれているため、いずれにせよ教員となることはできません。

法律で言う「禁錮刑以上に処された者」や「禁錮刑以上が確定した者」というのは判決が確定した状態を指します。

法律上、刑罰が確定するまでは「推定無罪の原則」に従い、犯罪者ではないと見なされます。つまり、判決が確定した時点で教員免許を剥奪されたり教員となることができなくなったりします。

判決の確定は、裁判官からの言い渡し(判決)を受けてから14日経過した時点です。つまり、15日目に判決が確定し、禁錮刑以上であれば教員免許が剥奪されます。

刑事事件における刑罰の種類

刑事事件における刑罰の種類は、軽いものから順番に以下のとおりです。

  • 科料(1,000円以上1万円未満の金銭納付)
  • 拘留(1日以上30日未満の身柄拘束)
  • 罰金(1万円以上の金銭納付)
  • 禁錮刑(刑務作業が義務付けられていない刑罰)
  • 懲役(30日以上の身柄拘束であり、刑務作業が義務付けられている)
  • 無期懲役(期間の定めがない懲役刑)
  • 死刑(死すことが刑罰)

禁錮刑はちょうど中間の刑罰です。

教員が犯罪を起こして逮捕された場合であっても、科料や拘留、罰金刑であれば教員免許を剥奪されることはありません。

刑罰には「執行猶予」を付けることができます。執行猶予とは、刑の執行を猶予することを指します。執行猶予期間中に罰金刑以上の刑罰が確定しなければ、刑罰は消滅します。しかし、禁錮刑に執行猶予付き判決が付いた場合は、教員免許は剥奪されるため注意してください。

逮捕〜刑罰確定までの流れ|教員免許剥奪の流れ

教員免許は逮捕されただけでは剥奪されません。あくまでも、禁錮刑以上の刑罰が確定した場合に初めて剥奪されるものです。

実際に、犯罪を起こして逮捕され、教員免許が剥奪されるまでの流れについて詳しく解説します。

逮捕

初めに、犯罪を起こすと逮捕されてしまう可能性があります。逮捕とは、犯罪を起こしたと疑われる人物が逃亡の恐れや証拠隠滅の恐れがある場合に限って、一時的に身柄を拘束するための手続きを指します。

多くの人は「犯罪を起こした=必ず逮捕される」と勘違いをしていますが、必ず逮捕されるわけではありません。あくまでも、犯罪を起こした事実が認められ、逃亡もしくは犯罪の証拠隠滅の可能性がある場合にのみ認められる行為です。

ちなみに、逮捕をして捜査を行う事件を「身柄事件」と言い、逮捕せずに捜査を行う事件のことを「在宅事件」と言います。

身柄事件・在宅事件いずれの場合であっても、その後の手続きに変わりはなく、禁錮刑以上の刑罰が確定する可能性もあれば不起訴処分となる可能性もあります。また「逮捕されたから禁錮刑以上が確定する」といったこともありません。

ここでは、「逮捕=短期間の身柄拘束を行うための手続き」と思っておいてください。

勾留請求・長期間の身柄拘束

逮捕をして取り調べを行う身柄事件の場合、初めに逮捕から48時間以内に検察官へ事件を送致しなければいけないと定められています。その後、事件を引き継いだ検察官は、さらに24時間以内に引き続き被疑者の身柄を拘束するかどうかを判断します。

勾留の必要があると判断された場合は、裁判所へ連れて行かれて勾留質問を受けて裁判官が勾留の有無を判断する流れです。

裁判官が、勾留の必要があると認めた場合は、初めに10日間の身柄拘束が認められます。ただし、実務上はさらに10日間の身柄拘束が認められるため、実際は20日の身柄拘束が発生すると考えておいてください。

この時点での身柄拘束期間は23日間であり、教員として働かれている人であれば、当然ながら学校へ行くことができません。もちろん自宅へ帰ることも許されないため、さまざまな影響がで始めるでしょう。

在宅事件の場合、送致までの期間に定めはありません。通常、2カ月〜3カ月程度で書類送検されます。

起訴・不起訴の判断

身柄事件の場合、勾留期間中に検察官が起訴するか不起訴とするかを判断します。在宅事件の場合は期限に定めがなく、書類送検から2カ月〜3カ月程度で起訴・不起訴の判断が行われます。

なお、この時点で教員免許の剥奪は発生しません。仮に、起訴された場合であっても、刑罰が確定するまでは教員免許は失わないため安心してください。

犯罪を起こしたとしても、必ず起訴されるわけではありません。とくに軽微な犯罪の場合は、被害者との示談交渉が成立している、初犯であるなどさまざまな条件を元に不起訴となる場合が多いです。

起訴には「正式起訴」と「略式起訴」の2種類があります。正式起訴は、通常通り刑事裁判を受けなければいけません。比較的軽微な犯罪である場合や被害者の処罰感情が低い場合は、略式起訴が選択される場合もあります。

略式起訴は、刑事裁判を行うことなく略式命令にて刑罰が確定する流れです。刑事裁判が行われない分、早期に事件が終了する点がメリットです。一方で、裁判が開かれないため。弁解の機会を与えられない点がメリットです。

ちなみに、略式起訴は50万円以下の罰金にのみ適用されます。そのため、略式起訴が選択された時点で、教員免許が剥奪される可能性はありません。

正式起訴された場合は刑事裁判を受ける

正式起訴された場合は、刑事裁判を受けます。刑事裁判では、有罪か無罪かを判断し、有罪である場合はどの程度の量刑に処すかを決定します。

判決|禁錮刑以上確定で教員免許剥奪

刑事裁判を経て、最終的に判決が下されます。判決にて禁錮刑以上の言い渡しがあった場合は、教員免許が剥奪されてしまう可能性が高い状況です。

先ほども解説したとおり、教員免許が剥奪されるタイミングは「禁錮刑以上が確定してから」です。そのため、判決が言い渡されて14日経過した時点(15日目)で教員免許が失効すると考えれば良いです。

なお、正式起訴されて刑事裁判を受けた場合であっても、禁錮刑未満の刑罰が確定した場合は、教員免許は剥奪されません。

教員が逮捕された場合のリスク

教員免許は禁錮刑以上の刑罰が確定しなければ、教員免許は剥奪されません。つまり、逮捕されただけでは教員免許を失わず、とくに影響はないように思えるかもしれません。

しかし、教員という立場にある人が「逮捕」をされてしまうことにより、さまざまな影響が起こり得ると考えられます。たとえば、以下のような影響が懸念されます。

  • 長期間の身柄拘束による影響
  • 懲戒処分が下される可能性
  • 禁固刑以上の刑で免職となる

次に、教員が逮捕された場合のリスクについて詳しく解説します。

長期間の身柄拘束による影響

逮捕された場合は、初めに72時間(3日間)以内の身柄拘束が発生します。さらに、勾留請求が認められればプラス20日間で合計23日間の身柄拘束、正式起訴されて保釈請求を行わなかったり認められなければ、さらに長期間の身柄拘束が行われます。

教員の場合、23日間以上も出勤できなければさまざまな影響が出始めるでしょう。代わりの教員が入ったとしても、身柄拘束が長引けば長引くほど影響が大きくなります。

仮に、禁固刑未満の刑罰が確定して釈放されたとしても、実際に発生してしまった影響を変えることはできません。そのため、可能であれば逮捕自体を回避できるように行動したほうが良いでしょう。

懲戒処分が下される可能性がある

教員免許自体は禁固刑以上の刑罰確定で剥奪されます。しかし、とくに私立教員の場合は、逮捕された時点で懲戒処分が下されてしまう可能性もあるため注意しましょう。

懲戒処分の種類はさまざまではあるものの、最悪の場合懲戒免職となる可能性もあります。一度懲戒免職となってしまえば、再度教員として働くのは難しいでしょう。

禁錮以上の刑が確定すると免職となる

禁錮刑以上の刑が確定した場合、教員免許が剥奪されてしまうため、無条件で免職となります。また、学校教育法という法律でも禁錮刑以上で免職にすると記載されており、必ず職を失うため注意しましょう。

教員免許の剥奪を回避するための対処法

教員免許の剥奪を回避するためには、禁錮刑未満の刑罰が確定することもしくは、不起訴処分を得ることが大切です。このいずれかの処分を得るためには、これから解説する対処法を実践してみてください。

直ちに弁護士へ相談をする

初めに、犯罪の疑いをかけられた時点で、直ちに弁護士へ相談をしましょう。弁護士へ相談をすることによって、早期に適切な弁護活動を開始してもらえます。

逮捕後や勾留確定後もしくは起訴後は、国費で弁護人を付けられる制度があります。しかし、不起訴を得るもしくは禁錮刑未満刑罰を得るためには、できるだけ早めに弁護士に相談をしておく必要があります。

そのため、実費ではあるものの自分の好きなタイミングで呼べるうえに刑事事件に強い弁護人を選任できる私選弁護人を検討しましょう。また、できるだけ早めに弁護人へ相談をし、早めに弁護活動を行ってもらってください。

被害者がいる場合は示談交渉を進める

被害者がいる場合は、できるだけ早めに示談交渉を進めておきましょう。示談交渉は、通常代理人(弁護士)が行います。そのため、できるだけ早めに弁護士へ相談し、示談交渉を開始しておかなければいけません。

示談交渉が完了することによって、被害者は嘆願書というものを作成してくれます。嘆願書は検察官等に対して「示談交渉が成立しているため、寛大な処分でお願いします」といった内容の書面を提出します。

嘆願書は法的効力のある書面ではないものの、被害者の処罰感情や被害弁済が行われている場合は、寛大な処分が決定しやすいです。また、とくに身柄事件の場合は起訴・不起訴までの期間が短いため、できるだけ早めに進めておいたほうがメリットは大きいです。

教員免許の剥奪に関するよくある質問

教員免許の剥奪に関するよくある質問を紹介します。

Q.前科が付くと教員免許は剥奪されますか?

A.前科がついただけでは教員免許は剥奪されません。

前科は、刑事事件において有罪判決が下された場合に付きます。そのため、罰金刑等でも前科として残ります。しかし、教員免許の剥奪条件は「禁錮刑以上の刑罰が確定した時点」です。そのため、前科=教員免許剥奪 ではありません。

ただし、教員採用試験等において前科の有無が影響する可能性はあるため注意してください。採用するしないは各自治体もしくは学校法人の自由であるためです。

Q.一度剥奪された教員免許は、二度と戻ってこないのですか?

A.剥奪された教員免許は二度と戻りません。

教員免許所有者が禁錮刑以上の刑罰に処されると、免許は失効します。一度失効した免許が復活することはありません。ただし、一定期間経過後に再取得は可能です。

とはいえ、教員免許を再取得したとしても前科が消えるわけではないため、採用にて不利となる場合があるため注意しましょう。

Q.執行猶予付き判決が下された場合も免許剥奪となりますか?

A.執行猶予付き判決であっても、免許が剥奪されます。

刑事事件における刑罰には、執行猶予を付けられます。執行猶予とは、刑罰の執行を直ちに行わず、一定期間猶予することを言います。

たとえば、「禁錮1年執行猶予3年」であれば、直ちに禁錮1年の刑罰を執行せずに、3年間猶予します。3年間の間で罰金刑以上の刑罰が下されなければ、禁錮1年という刑罰は執行されません。

しかし、たとえ執行猶予期間中に何もなく禁錮刑が執行されなかったとしても、刑罰が確定した時点で免許は剥奪され、復権することもありません。

Q.前科がある場合は教員免許を取得できませんか?

A.前科があっても、教員免許の取得は可能です。

前科があっても教員免許の取得は可能ですが、一定の条件があります。条件とは「刑の言い渡しの効力が失われるまで」です。

刑の言い渡しの効力が失われるタイミングは、景気を満了してから罰金刑以上に処されることなく10年経過した時点です。執行猶予付き判決の場合は、執行猶予期間が満了してから10年で改めて教員免許の取得が可能です。

なお、有罪判決で前科は付きますが、禁錮刑未満の場合はそもそも免許剥奪の対象ではないため、教員免許の取得ができます。

Q.児童を対象にわいせつな行為をした場合、教員免許はどうなりますか?

A.児童わいせつ等を理由に教員免許の失効・取り上げを受けた者は、例外的に取り扱われます。

教員は未成年者を対象にした職業であるため、児童わいせつ等の罪を犯した場合は特別な扱いを受けます。まず、児童わいせつ等を理由に教員免許を失効もしくは取り上げられた者は、特定免許状失効者として扱われます。

特定免許状失効者は再度教員免許を取得する際に厳正な審査を受けなければいけません。そのため、通常の再取得と比較して相当厳しくなります。

まとめ

今回は、教員が逮捕された場合のリスクについて解説しました。

教員はその職業の性質上、一般的な会社員よりも厳しく対応されます。とくに教員はさまざまな法律によって規制されており「禁錮刑以上の刑罰で失効する」や「禁錮刑以上の刑罰確定で免職となる」と法律によって定められています。

そのため、教員として働かれている人は「禁錮刑以上とならないこと」に注力し、行動しなければいけません。今回解説した対処法などを踏まえ、まずは弁護士へ相談をしたうえで禁錮刑以上の判決を回避するよう尽力してください。

刑事事件でお悩みの場合はすぐにご相談ください。

刑事事件で重要なのはスピードです。ご自身、身内の方が逮捕、拘留されそうな場合はすぐにご相談ください。

刑事事件コラムカテゴリの最新記事

PAGE TOP