喧嘩の現場から逃げた場合は逮捕される?身元特定された後の刑事手続きの流れと弁護士に相談するメリットを解説

喧嘩の現場から逃げた場合は逮捕される?身元特定された後の刑事手続きの流れと弁護士に相談するメリットを解説
喧嘩の現場から逃げた場合は逮捕される?身元特定された後の刑事手続きの流れと弁護士に相談するメリットを解説

喧嘩をして逃げた場合でも、被害者などの目撃証言や防犯カメラ映像から簡単に身元特定されます。そして、「喧嘩くらいで警察は動かないだろう」「一発殴ったくらいで逮捕されるわけがない」などと油断していると、ある日いきなり警察が自宅にやってきて任意の出頭要請を求められたり逮捕されたりしかねません

たとえば、喧嘩の詳細次第ですが、傷害罪や殺人未遂罪などの容疑で逮捕されてしまうと、数日~数週間にわたって身柄拘束付きの取調べを強いられるだけではなく、有罪判決が下されて前科がつくリスクにも晒されるでしょう。

ところが、喧嘩にはさまざまな経緯・事情があるはずです。たとえば、「喧嘩相手が先に手を出して反撃したが怖くなって逃げてしまった」「酔っぱらっていたので因縁をつけられた相手に手を出してしまった」という場合には、相手方との示談交渉や事情聴取への対応方法など次第で、軽い刑事処分を目指すことも不可能ではありません。つまり、喧嘩をして何かしらの犯罪行為に及んでしまった場合には、「逃げ得」を狙うのではなく、できるだけ早いタイミングで防御活動に専念した方が、結果として刑事責任を軽減できるということです。

そこで今回は、喧嘩の現場から逃げてしまった人や、過去の喧嘩が原因で逮捕されるのではないかと不安を抱える人のために、以下5点について分かりやすく解説します

  1. 喧嘩をして逃げた場合に問われる可能性がある犯罪の構成要件と法定刑
  2. 喧嘩をして逃げても警察にバレる理由
  3. 喧嘩が警察にバレた後の刑事手続きの流れ
  4. 喧嘩をして逃げた場合に生じるデメリット
  5. 喧嘩をして逃げた場合に弁護士へ相談するメリット

「たかが喧嘩」と高を括っていると、重い刑事責任を追及されるだけではなく、学校生活や社会人生活などにも悪影響が生じかねません。できるだけ早いタイミングで刑事事件に強い弁護士に相談したうえで、喧嘩にまつわる刑事事件についてスピーディーな解決を目指してもらいましょう。

目次

喧嘩で逃げた場合に問われる犯罪類型

喧嘩をして逃げた場合、以下の犯罪類型に該当する場合には警察に逮捕される可能性が生じます。

  • 暴行罪
  • 傷害罪
  • 殺人未遂罪
  • 器物損壊罪
  • 決闘罪
  • 凶器準備集合罪
  • 公務執行妨害罪
  • 現場助勢罪
  • 強盗罪・恐喝罪・窃盗罪などの財産犯

暴行罪

喧嘩をして逃げた場合、暴行罪の容疑で逮捕される可能性があります

暴行罪の構成要件

暴行罪とは、「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったとき」に成立する犯罪類型のことです(刑法第208条)。

暴行とは、「人に対する物理力の行使」を意味します。具体的には、暴行には「『人の身体に対する不法な一切の攻撃方法』が含まれて、性質上傷害の結果を惹起するべきものである必要はない」とするのが判例です(大判昭和8年4月15日)。また、暴行罪における「暴行」は、物理力が人の身体に接触する必要もないとされています。

たとえば、以下のような行動はすべて暴行罪で逮捕される可能性があります。

  • 着衣をつかんで引っ張る行為
  • 執拗に騒音を与えて意識を朦朧とさせたり脳貧血を起こさせたりして息を詰まらせる行為
  • 相手に向かって塩をふりかける行為
  • 相手を威嚇する目的で相手に向かって石を投げつける行為
  • 狭い室内で包丁などの兇器を振り回す行為

分かりやすく表現すると、「喧嘩の最中に暴行行為に及んだが相手に怪我をさせなかった場合」「暴行行為に及んだ結果たまたま相手を怪我させてしまったが、最初から怪我をさせるつもりがなかった場合」に、暴行罪が成立すると言えるでしょう。

暴行罪の法定刑

暴行罪の法定刑は、「2年以下の懲役刑もしくは30万円以下の罰金刑、または、拘留もしくは科料」です。

拘留とは、1日以上30日未満の範囲で刑事施設に拘置する処分のことを意味します。また、科料とは、1,000円以上10,000円未満の範囲で金銭を取り上げる刑罰のことです。

暴行罪の法定刑は比較的軽く設定されているので、微罪処分や不起訴処分獲得の難易度は高くありません。その一方で、喧嘩で暴行行為に及んだことを反省もせずに示談交渉を進める意欲さえない状況なら、実刑判決が確定するシチュエーションも想定されます。

したがって、「喧嘩をしたが暴行罪程度なら重い刑事処分が科されるわけはない」と油断するのではなく、現場から逃走後、警察から連絡が来る前の段階で弁護士へ相談することを強くおすすめします

傷害罪

喧嘩をして逃げた場合、傷害罪の容疑をかけられて逮捕される可能性が生じます

傷害罪の構成要件

傷害罪とは、「人の身体を傷害したとき」に成立する犯罪類型のことです(刑法第204条)。

傷害とは「生活機能の毀損、健康状態の不良変更」を意味するのが判例です(大判明治45年6月20日)。また、傷害結果はかならずしも暴行行為によってもたらされる必要はなく、いわゆる「暴行によらない傷害」も考えられます。

たとえば、以下のような行動等はすべて傷害罪で逮捕されるリスクを有するでしょう。

  • 喧嘩相手を素手で殴ったり武器を使って怪我をさせる行為
  • 髪の毛をひっぱったり剃刀を使ったりして切る・抜く行為
  • 執拗に暴行を重ねて失神させる行為
  • 残虐な暴行行為等によって喧嘩相手にPTSDを生じさせる行為

傷害罪の法定刑

傷害罪の法定刑は、「15年以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑」です。

また、人を傷害した場合において、被害者が死亡してしまったときには、傷害致死罪として「3年以上の有期懲役刑」で処断されます(刑法第205条)。

執行猶予付き判決を獲得するには「3年以下の懲役刑・禁錮刑または50万円以下の罰金刑の言渡しを受けたとき」という条件を満たさなければいけないので(同法第25条第1項)、喧嘩をして傷害罪・傷害致死罪で逮捕・起訴された場合には「被害者との示談成立」は不可欠です。

したがって、「単なる喧嘩で少し相手に怪我をさせた程度だから実刑判決はないだろう」と安易に考えるのではなく、できるだけ早期に弁護士へ相談のうえ示談交渉をスタートさせて、少しでも刑事責任が軽くなるように尽力するべきでしょう

殺人未遂罪

喧嘩をして逃げた場合、殺人未遂罪の容疑で逮捕される可能性も生じかねません

殺人未遂罪の構成要件

そもそも、殺人罪とは、「人を殺したとき」に成立する犯罪類型のことです(刑法第199条)。そして、殺人未遂罪とは、「殺害行為に及んだが死亡結果が発生しなかったとき」を処罰対象とする未遂犯を意味します(同法第203条)。

確かに、「単なる喧嘩で殺人未遂罪なんて成立するはずがない」と思われるかもしれません。しかし、喧嘩相手に対する暴行の程度や兇器、人数や体格差などの諸般の事情を総合的に考慮した結果、「人の死亡結果を惹起する具体的・客観的な危険性があった」と判断された場合には、暴行罪・傷害罪ではなく殺人未遂罪を成立させるのが実務的運用です(同法第43条本文)。

たとえば、喧嘩が以下のような事情を有する場合、殺人未遂罪で逮捕される可能性が生じます。

  • 刃物などの殺傷性の高い兇器を用いて喧嘩相手に怪我をさせる行為
  • 気絶をしているなど、喧嘩相手がまったく反抗できない様子なのに執拗に暴行等を繰り返す行為
  • 「殺すぞ」などの文句を言いながら喧嘩相手の首を絞める行為

なお、喧嘩について殺人未遂罪の容疑で逮捕されるのは、「暴行行為時等に『喧嘩相手を殺す』という故意があったこと」が客観的に認定された場合に限られます。取調べへの供述内容や公判で提出する証拠等次第では「故意がなかったので殺人未遂罪は無罪(傷害罪が適用される)」という判断を獲得できる場合があるので、かならず刑事弁護を専門に取り扱っている専門家までご相談ください

殺人未遂罪の法定刑

殺人未遂罪の法定刑は、「死刑または無期懲役もしくは5年以上の懲役刑」です。殺人未遂罪と殺人既遂罪は同じ法定刑の範囲内で量刑が決められます。

ただし、殺人未遂罪は喧嘩相手の死亡結果が生じていない(あるいは、実行行為と死亡結果との間の因果関係が存在しない)ので、喧嘩時の行為態様や示談の成否、再犯の可能性などを総合的に考慮した結果、刑が任意的に減軽される可能性があります(刑法第43条本文)。

つまり、喧嘩中に及んだ行為について殺人未遂罪で逮捕・起訴されたとしても、未遂の任意的減軽や正当防衛などを適切に主張立証すれば、執行猶予付き判決の対象になる「3年以下の懲役刑・禁錮刑または50万円以下の罰金刑の言渡しを受けたとき」という条件を満たし、実刑判決を回避できる可能性が生じるということです。

長期間刑務所への服役を強いられると社会復帰・更生が遠のくばかりなので、喧嘩について殺人未遂罪の容疑をかけられたときにはかならず刑事事件に強い弁護士までご相談ください

器物損壊罪

喧嘩をして逃げた場合、状況次第では器物損壊罪の容疑で逮捕される可能性が生じます

器物損壊罪の構成要件

器物損壊罪とは、「他人の物を損壊したり、傷害したりしたとき」に成立する犯罪類型のことです(刑法第261条)。

損壊には、物を物理的に壊す行為だけではなく、物の効用を害する一切の行為が含まれます。また、傷害とは、動物を客体とする損壊行為のことです。

たとえば、喧嘩をしたときに以下のような状況が発生すると、器物損壊罪で逮捕される可能性が生じます。

  • 喧嘩相手のネックレスや腕時計などの所有物を壊す行為
  • 抵抗できない喧嘩相手の衣服等に対して放尿する行為
  • 喧嘩相手の持ち物に対して落書きをする行為
  • 暴れ回って喧嘩とは無関係の第三者の所有物や店舗の備品などを壊す行為

器物損壊罪のポイントは、喧嘩の当事者以外の第三者の所有物を損壊したときにも刑事訴追される可能性があるという点です。たとえば、喧嘩相手を被害者とする暴行罪・傷害罪とは別に、モノの所有者を被害者とする器物損壊罪も成立し得るため、示談交渉のコストが増えてしまいます。また、傷害罪等の容疑で逮捕・勾留された後、器物損壊罪で再逮捕・再勾留されると、身柄拘束期間が長期化するリスクにも晒されかねません。

したがって、特に傷害罪等とは別に器物損壊罪でも立件されたときには、できるだけ早いタイミングで複数の被害者との間で示談成立を目指す必要があると考えられます。刑事事件に慣れた弁護士なら喧嘩当時の状況を丁寧に聴き取って想定される被害者全員との間で示談交渉を進めてくれるので、喧嘩をして逃げた場合にはそのまま公訴時効完成を狙うのではなく、弁護士までお問い合わせください。

器物損壊罪の法定刑

器物損壊罪の法定刑は、「3年以下の懲役刑または30万円以下の罰金刑、科料」です。

理屈上、器物損壊罪で逮捕・起訴されて実刑判決が下される可能性も否定できませんが、初犯で被害額も高額ではないケースなら罰金刑で済むケースがほとんどです。

なお、器物損壊罪は親告罪なので、告訴権者による刑事告訴がなければ逮捕・起訴されることはありません(刑法第264条)。たとえば、喧嘩をして逃げた場合に財物所有者が告訴状を提出したとしても、その後示談が成立して告訴を取り下げてもらえれば起訴処分の可能性はゼロになるので、すみやかに弁護士へ相談のうえ、器物損壊罪の被害者との間でも示談交渉を進めてもらいましょう

決闘罪

喧嘩をして逃げた場合、「明治22年法律第34号(決闘罪ニ関スル件)」という古い法律への違反を理由に逮捕される可能性もあります。

決闘罪の構成要件

決闘罪(決闘罪ニ関スル件違反)として逮捕されるのは以下のような場合です。

  • 決闘を挑んだとき
  • 挑まれた決闘に応じたとき
  • 実際に決闘をしたとき
  • 決闘の立会人になったとき、立会人になることを約束したとき
  • 事情を知って決闘の場所を提供したとき
  • 決闘に応じないことを理由に相手の名誉を毀損したとき

決闘とは、「当事者の合意に基づいて身体・生命への危険を生じさせる暴行行為に及ぶこと」を意味します。たとえば、不良仲間や暴力団同士で何かしらのトラブルが発生したときに、殴り合いの喧嘩での勝敗でトラブルを解決するようなケースが挙げられます。

なお、ボクシング・空手・柔道などのスポーツで立ち会う場合には形式上「決闘罪の構成要件」には該当しますが、正式なスポーツとして行われる以上、正当行為として違法性阻却されるので逮捕されることはありません(ただし、元ボクサー同士が試合以外の場面で示し合わせて殴り合いの喧嘩をした場合には決闘罪の処罰対象となります)。

また、決闘によって人を死傷させたときには、殺人罪・傷害致死罪・傷害罪・殺人未遂罪などの刑法犯と比較して重い方の法定刑の範囲内で処断されます(同法第3条、第6条)。

決闘罪の法定刑

決闘罪(決闘罪ニ関スル件違反)の法定刑は行為主体ごとにそれぞれ規定されています。

  • 決闘を挑んだとき:6カ月以上2年以下の懲役刑
  • 挑まれた決闘に応じたとき:6カ月以上2年以下の懲役刑
  • 実際に決闘をしたとき:2年以上5年以下の懲役刑
  • 決闘の立会人になったとき、立会人になることを約束したとき:1カ月以上1年以下の懲役刑
  • 事情を知って決闘の場所を提供したとき:1カ月以上1年以下の懲役刑
  • 決闘に応じないことを理由に相手の名誉を毀損したとき:3年以下の懲役刑・禁錮刑または50万円以下の罰金刑(名誉毀損罪)

決闘罪(決闘罪ニ関スル件違反)で逮捕された場合も、「捜査機関に対して丁寧に反省の態度を示しつつ、決闘時に怪我をした人がいるなら被害弁償を済ませること」が基本的な防御方針になります。

特に、不良グループや反社会的組織との関わりのなかで喧嘩に巻き込まれた場合には関与者全員が決闘罪で刑事訴追されるリスクも少なくないので、逃走中の場合にはできるだけ早いタイミングで弁護士までご相談ください

凶器準備集合罪

喧嘩に関与して逃げた場合、凶器準備集合罪の容疑で逮捕される可能性もあります

凶器準備集合罪の構成要件

凶器準備集合罪とは、「2人以上の者が『他人の生命・身体・財産に対して共同して害を加える』という目的で集合した場合において、凶器を準備したとき、または、凶器の準備があることを知って集合したとき」に成立する犯罪類型のことです。また、「これらの人を集合させたとき」には、主犯格の人物に対して凶器準備結集罪が成立します(刑法第208条の2)。

たとえば、かねてから因縁の深い喧嘩相手に暴行を加える目的で複数人が凶器をもって集まったときには、実際に暴行行為に及ばなくても凶器準備集合罪で逮捕されます。

凶器準備集合罪の法定刑

凶器準備集合罪の法定刑は「2年以下の懲役刑または30万円以下の罰金刑」です。

また、主犯格に対して適用される凶器準備結集罪の法定刑は「3年以下の懲役刑」に引き上げられています。

公務執行妨害罪

喧嘩をして逃げた場合、状況次第では公務執行妨害罪の容疑で逮捕される可能性も生じます

公務執行妨害罪の構成要件

公務執行妨害罪とは、「公務員が職務を執行するときに、これに対して暴行または脅迫を加えたとき」に成立する犯罪類型のことです(刑法第95条第1項)。

たとえば、喧嘩の現場にかけつけて制止しようとした警察官に対して凶器をちらつかせたり、過去の喧嘩について任意の事情聴取を求めるために自宅にやってきた警察官に暴力を振るって逃げようとした場合には、喧嘩とは無関係に公務執行妨害罪で逮捕されてしまいます。

公務執行妨害罪の法定刑

公務執行妨害罪の法定刑は「3年以下の懲役刑・禁錮刑または50万円以下の罰金刑」です。

なお、公務執行妨害罪の保護法益は「公務員によって執行される職務それ自体」なので、示談交渉の余地は残されていません。そのため、公務執行妨害罪で逮捕された場合に軽い刑事処分を目指すなら、取調べに対して真摯に反省の態度を示すなどの防御活動が不可欠でしょう。

現場助勢罪

喧嘩をして逃げた場合、現場助勢罪の容疑で逮捕される可能性も生じます

現場助勢罪の構成要件

現場助勢罪とは、「傷害罪または傷害致死罪に該当する行為が行われるにあたって、現場において勢いを助けたとき」に成立する犯罪類型のことです(刑法第206条)。実際に人を傷害しなくても現場助勢罪は成立します。

たとえば、喧嘩の犯行現場において煽るような声をかける野次馬的な行為が現場助勢罪の処罰対象です。

現場助勢罪の法定刑

現場助勢罪の法定刑は、「1年以下の懲役刑または10年以下の罰金刑・科料」です。

なお、喧嘩に対して野次馬の範囲を超えて関与した場合には、「傷害罪または傷害致死罪の幇助」として処罰されます(刑法第62条第1項)。幇助犯の量刑は、諸般の事情を総合的に考慮したうえで、正犯の刑から減軽されます(同法第63条)。

【注意!】喧嘩をしたときに相手の財物を奪うと何かしらの財産犯が成立する

喧嘩のシチュエーション次第では、窃盗罪・強盗罪・恐喝罪等の容疑で逮捕される可能性もあります

まず、窃盗罪とは、「他人の財物を窃取したとき」に成立する犯罪類型のことです。窃盗罪の法定刑は、「10年以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑」と定められています(刑法第235条)。たとえば、喧嘩相手がその場に落とした財布からお金を抜き取ったようなケースでは、窃盗罪が成立し得ます。

次に、恐喝罪とは、「人を恐喝して財物を交付させたとき」に成立する犯罪類型のことです。恐喝罪の法定刑は、「10年以下の懲役刑」と定められています(同法第249条)。たとえば、喧嘩で負けた相手に対してさらに暴行を加えられるかのような畏怖の感情を抱かせて、現金を交付させたようなケースでは、恐喝罪が成立するでしょう。

さらに、強盗罪とは、「暴行または脅迫を用いて他人の財物を強取したとき」に成立する犯罪類型のことです。強盗罪の法定刑は、「5年以上の有期懲役刑」と定められています(同法第236条)。たとえば、最初から金銭を奪うつもりで喧嘩をしかけて相手方の反抗を抑圧する程度の暴力をふるい、財布などを奪ったケースでは、強盗罪に問われかねません。

ただし、喧嘩のタイミングで相手の財物等を奪った場合には、「どの段階で財物を奪う意思を生じたのか」「喧嘩中の暴行等がどのような目的で行われたものなのか」「財物を奪う意思をどの段階で抱いたのか」などの諸般の事情によって適用される犯罪類型が異なる点に注意が必要です。したがって、お金などを奪って喧嘩現場から逃げた場合には、かならず弁護士へ丁寧に事情を話したうえで、できるだけ有利な刑事処分を獲得できるような防御方針を展開してもらいましょう

喧嘩で逃げた場合は逮捕されない?警察にバレる理由4つ

「喧嘩をしても逃げてしまえば問題ない」「ただの喧嘩程度で警察は動かない」というのは間違いです。

なぜなら、喧嘩の現場から逃げた場合でも、以下のような端緒が原因で捜査機関に犯行が露呈するからです。

  • 喧嘩相手が被害届や告訴状を提出する
  • 喧嘩の現場を目撃した第三者が通報する
  • 喧嘩の現場周辺の防犯カメラ映像から犯行と身元が特定される
  • 喧嘩の現場を録画した動画や画像データがインターネットやSNSで拡散される

喧嘩相手が被害届・告訴状を提出する

喧嘩相手提出した被害届・告訴状が受理された場合、警察が喧嘩の現場から逃げた加害者を捕まえるために何かしらの捜査活動をスタートする可能性が高いです。

被害届とは、「喧嘩で何かしらの被害を受けた場合に、当該被害について警察に申告するための書類」のことです。また、告訴状とは、「喧嘩の被害者が犯罪被害について警察に申告するとともに、犯人の処罰を求める意思表示をするための書類」を意味します。被害届と告訴状の法的効果には多少の違いがあるとは言え、どちらが提出されたとしても警察が喧嘩事件について認知することに変わりはありません。

そして、喧嘩で生じた被害が大きい場合のように、喧嘩加害者について刑事責任を追及するのが相当と判断したときには、喧嘩の加害者と名指しされた人物に対して任意の出頭要請がかけられたり通常逮捕手続きに着手したりするでしょう。

喧嘩の現場から逃げた場合でも、被害者が被害届・告訴状を提出する前に示談成立を実現すれば刑事事件化自体を回避できます。逃げ回っているよりも加害者側から積極的に防御活動に動き出した方が大きいメリットを得られることもあるので、すみやかに刑事事件や示談交渉に強い弁護士までご相談ください

喧嘩現場の目撃者が通報する

喧嘩の現場を目撃した第三者にその場で110番通報されてしまうと、警察が何かしらの捜査活動をスタートする可能性が高いです。

たとえば、居酒屋で酔っ払った流れで大人数で喧嘩をして相手を怪我させてしまった状況において、居合わせた他の客や従業員に通報されてしまうと、数分程度で警察官がかけつけます。警察官がやってくる前に逃げた場合でも、通報された以上はそれなりの捜査活動が行われるでしょう。

喧嘩の暴力沙汰で相手を怪我させてしまったとしても、現場から逃走してしまうと、「逃亡や証拠隠滅のおそれがある」ことを理由に逮捕状が請求されやすくなってしまうだけです。

そのため、喧嘩の現場で110番通報されてしまった場合には、警察官の到着を待って素直に事情を伝えたり、すぐに弁護士へ連絡をして現場での対応方法を相談するべきだと考えられます。

喧嘩現場周辺に設置された防犯カメラ映像から身元特定される

見ず知らずの人と喧嘩をして現場から逃げた場合でも逮捕リスクに晒されたままです。

なぜなら、街中いたるところに監視カメラ・防犯カメラが設置されていますし、多くの自動車にはドライブレコーダーが搭載されているので、喧嘩の現場や逃走中の様子はかならずどこかの映像記録に残されているからです。

たとえば、逃走に使った自動車のナンバープレートや駅で使用したICカードの記録、店舗で使用したクレジットカードの明細情報などから、喧嘩加害者の身元は簡単に特定されます。

したがって、「喧嘩をして人に怪我をさせても公訴時効完成まで逃げ切れば問題ない」という発想は間違いです。逃走期間が長いほど検挙されたときに生じるデメリットは大きくなるので、現段階で弁護士へ相談のうえ、被害者との示談交渉や自首の可否を検討してもらいましょう

インターネットで拡散された動画がきっかけで喧嘩事件がバレる

SNSや動画投稿サイトの普及によって、動画拡散がきっかけで刑事事件の犯人が検挙されるケースが増えています。

たとえば、繁華街で喧嘩をしている様子が通行人などに撮影されてTwitterやTikTokなどで炎上すると、動画を閲覧した視聴者から警察に複数の情報提供が行われます。また、ニュース番組などで報道されるケースもあり得るでしょう。このような経緯で悪質な喧嘩事件が警察に認知された場合、本格的な捜査活動が進められて犯人逮捕にまで至ります。

特に、SNS経由で喧嘩をめぐるトラブルが炎上した場合、刑事責任を追及される前に社会的制裁が加えられる可能性も否定できません刑事事件に強い弁護士に相談すれば、ネット上に流出した個人情報の削除請求や、誹謗中傷や名誉棄損に対する慰謝料請求なども並行して対応してくれるでしょう。

喧嘩で逮捕されるときの刑事手続きの流れ

ここまで紹介したように、喧嘩の現場から逃げた場合でも犯行・身元は簡単に特定されるので、逃げ切りを狙うのは得策ではありません。

そして、過去の喧嘩トラブルが警察に発覚した場合、以下の流れで刑事手続きが進められるのが一般的です。

  • 喧嘩トラブルが原因で警察に後日逮捕される
  • 喧嘩が原因で逮捕された場合、警察で48時間以内の身柄拘束付き取調べが実施される
  • 喧嘩をめぐる事件が送検されて検察段階の取調べが実施される
  • 喧嘩をめぐるトラブルについて検察官が公訴提起するか否かを判断する
  • 喧嘩をめぐるトラブルについて公開の刑事裁判が開かれて刑事責任が決定される

喧嘩を理由に警察に通常逮捕される

喧嘩の現場から逃げた場合でも、暴行罪・傷害罪等の容疑が固まったときには「通常逮捕」されます。

通常逮捕とは、「裁判官が事前に発付する逮捕状に基づいて実施される強制的な身柄拘束処分」のことです(刑事訴訟法第199条第1項)。

逮捕状の発付を受けた警察官が自宅等にやってきた場合、その場で身柄拘束処分が実行されて警察署に連行されます。たとえば、「会社があるから別の日にして欲しい」「後日出頭するので今日は見逃して欲しい」「警察に連行される前に会社に電話連絡させて欲しい」などの言い訳は一切通用しません。

喧嘩は公訴時効が完成するまでいつ逮捕されるか分からない

「喧嘩の現場から逃げたから逮捕されることはないはず」と思い込むのは間違いです。なぜなら、公訴時効が完成するまでは常に刑事訴追されるリスクを抱えたままだからです。

公訴時効とは、「犯罪が終わった時から一定期間が経過すると犯人は刑事責任を追及されなくなる」という法制度のことを意味します(刑事訴訟法第253条)。これは、犯罪行為から一定期間が経過すると証拠を収集することが難しくなりますし、時の経過によって犯罪の社会的影響が減少し、犯人に対して刑罰を加える必要性も消滅していると考えられるからです。

ただし、以下のように、犯罪類型ごとに公訴時効期間は異なる点に注意しなければいけません(同法第250条)。過去の喧嘩についてどのような犯罪類型が適用されるかは捜査機関の判断次第なので、できるだけ現段階で弁護士へ相談のうえ、公訴時効完成による”逃げ切り”を狙うべきか否かについてアドバイスを求めましょう

犯罪類型 公訴時効期間
暴行罪 3年
傷害罪 10年
殺人未遂罪 25年
器物損壊罪 3年
喧嘩相手を怪我させて逃げた場合について考えてみましょう。たとえば、今すぐに弁護士へ相談したうえで警察に出頭した場合、自首による減軽や逃走期間の短さが考慮された結果、反省の態度が認められるとして軽い刑事処分を獲得しやすいでしょう。これに対して、公訴時効完成による逃げ切りを狙ったが失敗に終わり、数年が経過した後に傷害罪で逮捕された場合、犯行からの数年間(逃走期間中)に積み重ねた「仕事・結婚・出産・育児などのライフステージ」がすべて無に帰することになります。確かに、逃げ切りに成功すれば刑事責任はゼロですが、そもそも逃げ切りの可能性はゼロに近いですし、逃げ切れなかったときのデメリットが過大だということを忘れてはいけません。

逃亡のおそれがなければ任意の出頭要請がかけられる場合もある

喧嘩の現場から逃げた場合でも、100%通常逮捕手続きに移行するとは限りません。なぜなら、逮捕状を発付するかどうかは、「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」だけではなく、「逮捕の必要性(身柄を押さえる必要性、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるか否か)」などの諸般の事情が総合的に考慮されるからです(刑事訴訟法第199条第1項、犯罪捜査規範第118条)。たとえば、喧嘩で被害者に怪我をしたことが明らかな状況であったとしても、逃亡や証拠隠滅のおそれがなく、被害者の処罰感情が薄いような状況なら、逮捕状の請求を回避できる可能性が生じます。

ただし、通常逮捕処分に基づく身柄拘束処分がされないからといって、喧嘩トラブルについて警察が一切関与しないというわけではありません。

たとえば、喧嘩トラブルが以下のような要素を有する場合、警察から任意の出頭要請を求められて事情聴取に応じる必要に迫られるでしょう(刑事訴訟法第197条第1項、同法第198条第1項)。

  • 身内同士での喧嘩で既に話し合いでの解決が済んでいる
  • 見ず知らずの人との喧嘩でも示談が成立している
  • 一対一の喧嘩のように、共犯者と口裏を合わせる心配がない
  • 反社会的勢力や半グレとの関わりがない
  • 喧嘩相手に生じた損害が軽微
  • 住所や職業がはっきりしているので逃亡のおそれがない
  • 前科・前歴がない
  • 警察からの呼び出しに素直に応じて事情聴取にも誠実に回答している

なお、任意の出頭要請や事情聴取に応じる義務はないので、「スケジュールが合わないから」「過去の喧嘩について今さら話をしたくないから」「警察は嫌いだから」などの理由で拒絶しても差し支えありません。

ただし、あまりに警察からの出頭要請等に応じなければ、「逃亡・証拠隠滅のおそれがある」ことを理由に逮捕状が請求されて、結果的に強制的な身柄拘束付きの取調べが実施されるだけです。外部と一切連絡をとれない状況で留置施設・拘置所と取調べ室の往復を強いられるのと比べると、ある程度の融通の利く状況で任意ベースの取調べに応じた方がメリットは大きいはずです。したがって、過去の喧嘩について警察から出頭要請をかけられたときには、弁護士に今後の供述方針等について相談したうえで、呼び出しに対して誠実に対応することを強くおすすめします。

喧嘩をして間もないタイミングなら現行犯逮捕される可能性も否定できない

喧嘩をしている最中に110番通報されて警察官がかけつけた場合には「現行犯逮捕」処分によって強制的に身柄が押さえられます。

現行犯逮捕とは、「現行犯人(現に罪を行い、または、現に罪を行い終わった者)に対する逮捕処分」のことです(刑事訴訟法第212条第1項)。喧嘩の現場で違法行為に及んでいることが明らかな状況を現認されて身柄拘束処分が実行されるため、通常逮捕手続きのように裁判官が発付する令状は必要とされず、犯罪行為を確認した人なら誰でも現行犯逮捕に着手することが許されます(同法第213条)。

ただし、「現行犯逮捕は喧嘩の現場で実施されるものだから、喧嘩の現場から逃げた場合には現行犯逮捕はあり得ない」というのは間違いです。なぜなら、以下に該当する人物が喧嘩の渦中で犯罪行為に及び終わってから間もないと明らかに認められるときには「準現行犯人」として令状なしの逮捕処分の対象に含まれるからです(同法第212条第2項)。

  • 喧嘩の加害者として追呼されているとき
  • 喧嘩で使用した兇器などの証拠物を所持しているとき
  • 衣服に血痕がついていたり身体に怪我をしていたり、喧嘩で暴行行為等に及んだことを示す顕著な証跡があるとき
  • 「犯人だ!」と誰何されて逃走しようとするとき

このように、喧嘩の現場から逃走して間もないタイミングならいきなり巡回中の捜査員などに準現行犯逮捕される可能性もゼロではないので、すぐに弁護士へ相談をしたうえで警察に出頭し、丁寧に事情を説明することをおすすめします

喧嘩で逮捕されると警察で48時間以内の取調べが実施される

過去の喧嘩について暴行罪や傷害罪などの容疑で逮捕されてしまった場合、警察に身柄を押さえられたうえで強制的に取調べが実施されます

警察段階で実施される取調べの制限時間は「48時間以内」です(刑事訴訟法第203条第1項)。48時間以内に得られた証拠物や供述内容・反省の態度等を総合的に考慮したうえで、微罪処分に処するか送検するかが決定されます

なお、逮捕処分に基づく取調べが実施されている間は、自宅に戻ったり弁護士以外の第三者と面会・連絡をすることは許されません。

喧嘩で警察の取調べを受けた後は検察官に送致される

警察段階で微罪処分を獲得できない限り、喧嘩をめぐるトラブルは警察から検察官に送致されます

事件を引き取った検察官は、原則として「24時間以内」の取調べを実施したうえで、当該事件を刑事裁判にかけるか否かを判断します。

ただし、「警察段階の48時間と検察段階の24時間の合計72時間以内の取調べ」では公訴提起するか否かの充分な証拠が揃わないようなケースでは、例外的に勾留請求が行われる可能性が高いです(刑事訴訟法第206条第1項、第208条)。

検察官による勾留請求が認められた場合、喧嘩の加害者の身柄拘束期間は「10日間~20日間」の範囲で延長されます(当然ながら、逮捕・勾留期間中は、外部と一切連絡が取れない状況が継続します)。

以上を踏まえると、喧嘩が原因で検察官送致されてしまった場合には、「不起訴処分獲得を目指すこと」も重要ですが、「勾留請求を回避してできるだけ身柄拘束期間を短縮化すること」も欠かせないポイントになるでしょう。取調べ中の態度や供述内容次第で勾留請求回避を実現するのは難しいことではないので、かならず刑事事件を専門に取り扱っている弁護士のアドバイスを参考にしてください

喧嘩について公訴提起するか検察官が判断する

身柄拘束期限が到来するまでに、検察官が喧嘩をめぐるトラブルについての最終的な方針を決定します。具体的には、暴行罪・傷害罪などの被疑事実について刑事裁判にかけるか否か(起訴処分か不起訴処分)を判断するということです。

起訴処分とは、「喧嘩に関する暴行罪・傷害罪などの事件を公開の刑事裁判にかける旨の訴訟行為」のことです。日本の刑事裁判の有罪率は約99%とも言われているので、検察官が起訴処分を下した時点で有罪が確定すると覚悟しなければいけません。

これに対して、不起訴処分とは、「喧嘩に関する暴行罪・傷害罪などの事件を刑事裁判にかけず、検察官限りの判断で刑事手続きを終結させる旨の意思表示」のことです。不起訴処分を獲得すれば刑事裁判にかけられることもないので、前科がつくことはありません。

喧嘩について刑事裁判が開かれる

喧嘩をめぐるトラブルについて検察官が起訴処分を下した場合、公開の刑事裁判で審判を仰ぎます

刑事裁判が開廷されるタイミングは起訴処分から1カ月~2カ月後です。保釈請求が通れば起訴後すぐに身柄が解放されますが、保釈請求が却下された場合には起訴後勾留が続いた状態で刑事裁判を迎えなければいけません。

公訴事実に争いがなければ第1回公判期日で結審に至りますが、否認事件などの争いがある場合には複数の公判期日を経て弁論手続き・証拠調べ手続きが進められます。

最終的に、公判で得られた証拠等を総合的に考慮した結果、裁判官が判決を下します実刑判決・執行猶予付き判決・罰金刑のいずれが言い渡されても「前科」扱いになりますが、実刑判決以外なら「服役を回避できる」というメリットを得られます。

したがって、喧嘩をめぐるトラブルが刑事裁判にかけられた場合には、「実刑判決回避」を目標に防御活動を展開することになるでしょう。

喧嘩で逃げた場合に弁護士へ相談するメリット4つ

喧嘩の現場から逃げた場合、警察から連絡があるか否かにかかわらずできるだけ早いタイミングで弁護士へ相談するべきでしょう。

なぜなら、刑事事件の実績豊富な弁護士への相談によって、以下4点のメリットが得られるからです。

  1. 喧嘩の被害者との間ですみやかに示談交渉を開始して民事的解決を実現してくれる
  2. 喧嘩の現場から逃げた後に自首するべきか否かを判断してくれる
  3. できるだけ有利な刑事手続きや軽い刑事処分獲得を目指して尽力してくれる
  4. 会社や学校にバレるリスクへの配慮をしながら弁護活動を展開してくれる

弁護士は喧嘩相手との間で早期に示談交渉を開始してくれる

喧嘩の現場から逃げた場合、できるだけ早い段階で被害者と示談を成立させるのが重要な防御活動となります。

示談とは、「喧嘩の被害者や物を壊された第三者との間で締結する和解契約」のことです。加害者が被害者に対して示談金(被害弁償・慰謝料)を支払う代わりに、「被害届・告訴状を取り下げること」「処罰感情がない旨を捜査機関・裁判所に伝えること」「捜査機関に対して被害届・告訴状を提出せずに民事的解決だけで済ませること」が条件とされます。

つまり、喧嘩相手との間で早期に示談が成立すれば、暴行事案や傷害事案などの刑事事件化自体を回避できるということです。また、すでに被害届・告訴状が受理された後でも、示談が成立していることを理由に微罪処分・不起訴処分・執行猶予付き判決を得やすくなるでしょう。

ただし、加害者・被害者間で直接話し合いをしようとしても、感情的になって冷静な合意形成が難しい場合が少なくありません。また、被害者側から相場をはるかに超えた金額を提示されて足元を見られることもあるでしょう。特に、逮捕処分などの刑事手続きは厳格な時間制限のうえで進められるので、交渉に時間を要すると刑事処分がどんどん重くなってしまいます。

したがって、喧嘩の現場から逃げた場合にできるだけ軽い刑事処分獲得を目指すなら、示談実績豊富な弁護士に交渉を任せて穏便な合意形成を目指すのが適切だと言えるでしょう。

弁護士は警察から連絡がくる前に自首するべきか否かを判断してくれる

喧嘩の現場から逃げた場合、弁護士に相談すれば「自首」の可否を冷静に判断してくれます。

自首とは、「捜査機関に犯罪行為が発覚する前に、犯人自身が捜査機関に犯行を申告すること」です。自ら犯人として出頭した姿勢に鑑みて、判決内容や刑事処分の内容の任意的減軽を期待できます(刑法第42条第1項)。

たとえば、喧嘩の現場から逃げた後、被害者が警察に被害届を提出する前に自首をすれば、微罪処分・不起訴処分・執行猶予付き判決の獲得可能性が高まります

弁護士に相談すれば、「自首をする際にどのような供述をするべきか」「自首をする前に被害者との間で示談交渉を進めるべきか」などについてアドバイスを期待できるでしょう。

弁護士はできるだけ軽い刑事処分獲得を目指して尽力してくれる

弁護士に相談すれば、喧嘩当時のシチュエーションや刑事手続きの推移を踏まえたうえで、できるだけ軽い刑事処分獲得を目指して尽力してくれるでしょう。

正当防衛を丁寧に主張立証してくれる

喧嘩当時の状況次第では、正当防衛を主張できるケースがあります。

正当防衛とは、「『急迫不正の侵害に対して、自己または他人の権利を防衛するために、やむを得ずにした行為』については違法性が阻却されて無罪になる」という制度のことです(刑法第36条1項)。また、防衛行為が程度を超えた過剰なものになったとしても、「過剰防衛」として任意的減免を期待できます(同法第36条第2項)。

たとえば、喧嘩相手が先に手を出してきたから反撃した場合、相手がナイフを使って威嚇してきたから一発殴って抵抗した場合などでは、正当防衛を主張して不起訴処分や無罪獲得を目指す余地が残されているでしょう。

ただし、喧嘩をして暴行罪・傷害罪などで逮捕・起訴された場合、正当防衛による無罪主張を根拠付けるには丁寧に事案の詳細を法律要件に当てはめる作業が不可欠です。かならず刑事事件での無罪獲得実績を有する弁護士までご相談ください。

微罪処分獲得に向けて尽力してくれる

喧嘩の現場から逃げた後に逮捕されたとしても、弁護士に相談すれば微罪処分獲得に向けて尽力してくれます

微罪処分とは、「警察による捜査が開始した事件について、送検せずに警察限りの判断で手続きを終結させる事件処理類型」のことです(刑事訴訟法第246条但書、犯罪捜査規範第198条)。微罪処分を獲得できれば、逮捕による身柄拘束期間を大幅に短縮化できるだけでなく、前科も回避できるというメリットが得られます。

ただし、喧嘩をきっかけに立件されたすべての事件が微罪処分の対象になるわけではありません。微罪処分を獲得するためには以下の要素を満たす必要があるので、かならず刑事手続きの初期段階から弁護士にサポートしてもらいましょう。

  • 暴行罪、傷害罪などの比較的軽微な犯罪類型に該当すること
  • 暴行や傷害などによって生じた被害・損害が軽微であること
  • 素行不良者ではないこと(前科・前歴がないこと)
  • 身元引受人がいて更生を目指す環境が整っていること
  • 喧嘩の被害者との間で示談が成立していること
  • 自らの犯行に対して真摯に反省の態度を示していること

在宅事件扱いを目指して尽力してくれる

喧嘩の現場から逃げた場合でも、弁護士は在宅事件処理を目指して尽力してくれるでしょう。

在宅事件とは、「逮捕・勾留という身柄拘束を受けることなく、捜査段階や裁判手続きが進められる事件処理類型」のことです。普段通りの生活を続けながら呼び出しがかかったタイミングで出頭すれば良いだけなので、会社や学校にバレる確率を大幅に軽減できます。

在宅事件処理の対象を目指すには、「逃亡や証拠隠滅のおそれがないこと(=留置の必要性がないこと)」を捜査機関に対して示さなければいけません。たとえば、勤務先や現在の住所を示すのは当然として、犯行について否認をせずに任意の出頭要請には誠実に対応する必要があります。

なお、在宅事件の対象となったからと言って無罪放免が確約されるわけではありません。なぜなら、在宅事件は「被疑者を身柄拘束するか否か」という観点で有利な扱いを受けるものでしかないからです。そのため、適切な防御活動を展開しなければ、「任意の捜査→書類送検→在宅起訴→刑事裁判」という流れで有罪判決が確定することも充分にあり得ます。

したがって、在宅事件処理を獲得した場合でも、軽い刑事処分獲得に向けて示談交渉や正当防衛などの防御活動を適宜尽くすべきだと言えるでしょう。

不起訴処分獲得を目指して尽力してくれる

喧嘩の現場から逃げた後、逮捕・送検された場合でも、弁護士は不起訴処分獲得に向けて尽力してくれます

検察官が起訴処分を下した場合、ほとんどのケースで有罪判決の言い渡しが確定します。つまり、検察官による不起訴処分を獲得できれば、有罪判決を回避し、前科によるデメリットも避けることができるということです。

喧嘩の現場から逃げてしまった人のなかには、「喧嘩で相手を怪我させてしまったことは間違いないのだから、刑事責任の追及は免れられない」と思い込んでいる人も少なくないでしょう。しかし、不起訴処分は以下3類型に分かれるので、罪を犯したこと自体に間違いはなくても不起訴処分を獲得できる余地は残されています。

  • 嫌疑なし:喧嘩で相手を怪我させたという事実自体が存在しない
  • 嫌疑不十分:喧嘩で相手に怪我を負わせたことを証明するだけの充分な証拠が存在しない
  • 起訴猶予:喧嘩で相手に怪我をさせたこと自体は間違いないが、反省の態度・示談の成立などの諸般の事情を考慮すると、刑事裁判にかける必要がない

したがって、喧嘩で何かしらの違法行為に及んでしまった場合でも起訴猶予処分を獲得すれば前科はつかないので、検察官の公訴提起判断までの限られた時間内に被害者との示談成立を目指してもらいましょう

検察官の公訴提起判断までに示談成立が間に合わなければ起訴処分が下されます。そして、刑事裁判で有罪判決が確定すると、以後「前科者」としてさまざまなリスクを抱えながら今後の人生を歩まなければいけません。

  • 前科情報は履歴書の賞罰欄に記載しなければいけない
  • 今後の就職活動・転職活動が困難になる
  • 前科を理由に就業が制限される職種・資格がある(士業・警備員・金融業など)
  • 逮捕歴や前科は「法定離婚事由」に該当するので、配偶者の離婚申し出に逆らえなくなる
  • 前科を理由にビザやパスポートの発給制限がかかる場合がある(海外旅行できない)
  • 将来的に何かしらの犯罪行為に関与してしまった場合、再犯を理由に判決や刑事処分の内容が重くなる可能性が高い

軽い判決内容獲得に向けて尽力してくれる

喧嘩から逃げた後、逮捕・起訴された場合でも、弁護士は少しでも軽い判決内容に向けて尽力してくれます

そもそも、どのような犯罪類型が適用されるかは喧嘩の状況次第ですが、いずれにしても実刑判決だけは何としても回避しなければいけません。なぜなら、実刑判決が確定すると刑期を満了するまで社会生活から断絶されるので、服役後の社会復帰が困難になるからです。

したがって、検察官による起訴処分を回避できなかった場合には、(正当防衛による無罪を主張するようなケースを除いて)執行猶予付き判決か罰金刑の獲得を目指すことになります。そのためには、被害者との示談・反省の態度を示すこと・更生に向けた環境の整備・自首による減軽などのさまざまな情状を効果的に主張立証する必要があるので、かならず刑事事件を専門に扱っている弁護士を選任するようにしてください。

検察官が起訴処分を下す段階で「公判における罰金刑の求刑」が確定している場合には、略式手続きによって簡便に刑事手続きを終結できます。略式手続き(略式起訴・略式裁判・略式命令)とは、「100万円以下の罰金刑が下される簡易裁判所管轄の刑事事件について、検察官の提出する書面の審理のみで判決に至る裁判手続」のことです(刑事訴訟法第461条)。略式手続きを選択して罰金を納付した時点で刑事手続きから解放されるので、数カ月に及ぶ裁判手続きを省略して社会復帰を目指すタイミングを前倒しできるというメリットが得られます。ただし、略式手続きを選択すると公開の刑事裁判で正当防衛の成否や事実認定自体を争う機会を失うというデメリットが生じる点に注意が必要です。検察官から略式手続きの打診があったときには、弁護士へ相談のうえ、「罰金刑で手打ちとするのか、刑事裁判で争う道を選択するのか」について冷静に判断してもらいましょう

会社や学校にバレずに喧嘩事件の解決を目指してくれる

喧嘩の現場から逃げた場合、逮捕・前科などの刑事責任の処遇について配慮するのは当然ですが、同時に、「刑事手続きに巻き込まれることによって生じる社会生活への影響」にも注意が必要です。

たとえば、社会人が喧嘩が原因で逮捕・勾留されてしまった場合、長期間に及ぶ身柄拘束期間は欠勤が続くので、会社にバレるのは避けられません。また、防御活動が失敗に終わり有罪判決が確定してしまった場合には、勤務先の就業規則にしたがって何かしらの懲戒処分(戒告・譴責・減給・出勤停止・降格・諭旨解雇・懲戒解雇)が下されるでしょう。

また、学生が喧嘩をして刑事訴追された場合も、学則・校則にしたがって何かしらの処分が下されるでしょう。譴責や注意などの軽い処分で済めば良いですが、学校サイドの考え方次第では停学処分や退学処分などの重い処分もあり得ます。

刑事弁護に慣れた専門家に相談すれば、逮捕・勾留という身柄拘束処分に対して適切に対抗したうえで学校バレ・会社バレの危険性を最大限軽減してくれます。また、学校や会社から下された処分内容に不満があるときには、別途交渉をして処分の撤回等を求めてくれるでしょう。

喧嘩で逃げた場合でも弁護士への相談は必須!早期の示談交渉で立件回避を目指そう

喧嘩をして現場から逃げた場合、公訴時効が完成するまで逃げ回る道を選択するのはおすすめできません。なぜなら、加害者の身元は簡単に特定されるものですし、逃げ回った期間が長いほど刑事処分が重くなるリスクを伴うからです。

警察から過去の喧嘩について問い合わせがあったか否かにかかわらず、現段階で加害者側から防御活動を展開しておけば、自首や示談交渉などの数多い選択肢から状況に応じた対応方法を判断できます

弁護士へ相談すれば、「過去の喧嘩について被害届を出されて逮捕される可能性はあるのか」「喧嘩が原因で逮捕されたらどうなるのか」などの基本的な質問にも丁寧に回答してくれるので、遠慮なくお問い合わせください。

刑事事件でお悩みの場合はすぐにご相談ください。

刑事事件で重要なのはスピードです。ご自身、身内の方が逮捕、拘留されそうな場合はすぐにご相談ください。

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