証拠隠滅をするとどんな罪に問われる?成立要件や対処法を詳しく解説

証拠隠滅をするとどんな罪に問われる?成立要件や対処法を詳しく解説
証拠隠滅をするとどんな罪に問われる?成立要件や対処法を詳しく解説

他人の刑事事件の証拠となり得る物を隠滅・偽造・変造した場合は、証拠隠滅等罪という犯罪になってしまいます。同罪が認められた場合は、逮捕・起訴されて実刑判決を受ける可能性もあります。

この記事では、証拠隠滅等罪の内容や成立要件、今後の対処方法などについて詳しく解説しています。証拠を隠滅してしまった人、証拠に関して不安を抱えている人は本記事を参考にしてください。

証拠隠滅を行った場合の罪

犯罪の証拠を隠滅した場合、刑法によって定められている「証拠隠滅等罪」によって処罰される可能性があります。ただし、犯罪を犯した本人が証拠隠滅をした場合や、犯罪を犯した家族が証拠隠滅した場合は罪に問われません。

まずは、証拠隠滅を行った場合にどういった罪に問われる可能性があるのか、について詳しく解説します。

証拠隠滅等罪

犯罪の証拠を隠滅した場合は、証拠隠滅等罪に処される可能性があります。証拠隠滅等罪とは、刑法で以下のとおり定められています。

第百四条 他人の刑事事件に関する証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造し、又は偽造若しくは変造の証拠を使用した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

引用:刑法|第104条

つまり、証拠隠滅等罪に問われた場合は3年以下の懲役または30万円位かの罰金に処されるため、相当重たい罪であることがわかります。

ちなみに、証拠隠滅とは以下のような場合が該当します。

  • ひき逃げ事件の対象車両であることを知って修理を行った
  • 裁判で証人もしくは参考人となり得る人を匿う行為

上記のような行為を行った場合は、証拠隠滅等罪に問われてしまう可能性があります。ただ、特別難しく考える必要なく、「事件の証拠になると知って隠滅した場合は証拠隠滅等罪になり得る」と考えておけば良いでしょう。

その他法律に抵触する可能性もある

証拠隠滅等罪の他にも、証拠を隠滅するための行為に対してその他の犯罪が適用される場合があります。

たとえば、証拠となり得るものを壊した場合は器物損壊罪に問われるでしょう。ちなみに、器物損壊罪は以下のとおりです。

第二百六十一条 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

参考:刑法|第261条

たとえば、犯罪に使われた道具を勝手に破棄する行為は、器物損壊罪に該当し得ます。器物損害罪に問われた場合は、3年以下の懲役または30万円以下の罰金に処されます。

他にも、証人や参考人となり得る人を脅かして「絶対に言うなよ!」などと脅かした場合、強要罪や脅迫罪に問われます。また、証人や参考人を暴行したり殺害したりした場合、暴行罪や傷害罪(傷害致死罪)、殺人罪等に問われることもあるでしょう。

自分の犯罪の証拠を隠滅した場合は罪に問われない

証拠隠滅等罪は、自分が行った犯罪に対しては適用されません。改めて本罪の内容を確認すると、以下のとおり記載されています。

第百四条 他人の刑事事件に関する証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造し、又は偽造若しくは変造の証拠を使用した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

引用元:刑法|第104条

上記の通り「他人の刑事事件に関して」証拠を隠滅した場合に適用される法律です。よって、自分の証拠を隠滅した場合は証拠隠滅等罪にはなりません。

そもそも、犯罪を犯した者の心理として、「自分の犯行を隠したい」と考えるのは当然です。また、自分の犯行を隠すために、証拠を隠滅するのも当然であるため、あえて罪には問わないのが証拠隠滅等罪です。

親族の犯罪に関する特例あり

証拠隠滅等罪は、親族による犯罪に関する特例として以下の通り定めています。

(親族による犯罪に関する特例)
第百五条 前二条の罪については、犯人又は逃走した者の親族がこれらの者の利益のために犯したときは、その刑を免除することができる。
引用元:刑法|第105条

つまり、犯罪を犯した者の親族が当人を守る目的から証拠を隠滅しても、罪には問わないというのがこの法律です。たとえ犯罪者であっても、身内を守りたい、証拠を隠滅してなんとかしてあげたいと考えるのは当然です。そのため、刑を免除します。

ちなみに、親族による犯罪に関する特例の範囲内は、以下の通りです。

  • 配偶者
  • 直系血族
  • 同居の親族

上記以外の者の場合は、証拠隠滅等罪に問われる可能性があるため注意してください。

証拠隠滅等罪が適用されるための要件

証拠隠滅等罪が適用されるための要件は、以下の通りです。

  • 他人の刑事事件の証拠であること
  • 証拠を隠滅・偽装・変造した場合

それぞれ、具体的にどういった事例が該当するのかについて解説します。証拠隠滅等罪の具体的要件について見ていきましょう。

他人の刑事事件の証拠であること

証拠隠滅等罪は、「他人の刑事事件であること」を前提に処罰対象となります。つまり、本人や親族等が証拠隠滅を行った場合は、証拠隠滅等罪は適用されません。

また、「刑事事件であること」記載されているため、民事事件や行政事件で証拠を隠滅しても同罪が適用されることはありません。

証拠を隠滅・偽造・変造すること

証拠隠滅等罪が適用されるためには、証拠となり得る物を隠滅・偽造・変造していなければいけません。

隠滅とは、隠したり壊して消し去ったりする行為を指します。たとえば、証拠となり得る物を勝手に処分する行為や証人となり得る人を脅かして喋れないようにしたり殺してしまったりする行為です。

偽造とは、新たな証拠となり得る物を勝手に作ってしまう行為を指します。たとえば、証拠となり得る文章を偽造した場合が該当します。この場合も、証拠隠滅等罪の要件を満たします。

変造とは、証拠を勝手に変えてしまう行為を指します。たとえば、証拠となり得る文章の一部を変えてしまう行為です。本来の形であれば証拠になり得た物であるにも関わらず、変造してしまうことによって証拠として使えなくなってしまいます。

隠滅・偽造・変造した証拠を使用しても成立

他人が得するために、隠滅・偽造・変造した証拠を使用する行為も証拠隠滅等罪に該当します。たとえば、Aが犯人であるにも関わらず、証拠を隠滅・偽造・変造してあたかもBが犯人であるかのように見せる行為を指します。

証拠隠滅等罪に問われた場合の対処法

証拠隠滅等罪に問われた場合の正しい対処法は、すぐに弁護士へ相談をする方法です。

証拠隠滅等罪に問われると、最悪の場合は逮捕されて懲役刑や罰金刑に処されてしまう可能性があります。また、逮捕された場合は長期間に亘って勾留される可能性があり、日常生活にも多大な影響を与えます。そのため、早めに弁護士へ相談をするのが得策です。

直ちに弁護士へ相談をするのが得策

証拠隠滅等罪は逮捕・勾留の可能性がある犯罪です。そのため、疑われた場合は、早急に弁護士へ相談をして早期の釈放を目指すのが得策です。

万が一逮捕された場合は、以下の流れで事が進んでいきます。

  1. 逮捕
  2. 逮捕後48時間以内に検察官へ送致
  3. 送致から24時間以内に勾留有無の判断
  4. 勾留請求が認められれば最大20日間の勾留
  5. 刑事裁判を受ける
  6. 判決に従う

逮捕された場合は、初めに72時間程度は勾留される可能性があります。その後、検察官や裁判所の判断で最大20日間の勾留が続きます。これまで長期間の勾留が続くと、勤務先や学校等日常生活にも多大な影響を与えることになるでしょう。

弁護士へ相談をすることによって、弁護士が警察等へ事情を説明して、たとえば「故意はなく証拠を隠滅してしまった」などと伝えてくれます。こういった背景が認められれば、証拠隠滅等罪が成立せずに早期の釈放を目指せるでしょう。

また、取り調べを受ける際もどういった対応を取れば良いのかについて、具体的なアドバイスを行ってくれます。そのため、弁護士へ相談をしたほうが良いです。

証拠隠滅等罪に関するよくある質問を紹介

証拠隠滅等罪に関するよくある質問を紹介します。

Q.証拠隠滅等罪で逮捕される可能性はありますか?

A.証拠隠滅等罪は、逮捕される可能性がある犯罪です。

証拠隠滅等罪は、刑法第104条によって定められている犯罪行為です。その行為を行った時点で、逮捕・起訴される可能性がありますし、有罪判決を受ける可能性がある犯罪です。

有罪判決が下った場合は、最大3年以下の懲役または30万円以下の罰金に処されます。とくに重大な証拠を隠滅した場合は、罪が重たくなるため十分に注意してください。

Q.誤って証拠を隠滅してしまった場合は罪に問われますか?

A.誤って証拠を隠滅してしまった場合は、罪に問われません。

刑法上の罪は、基本的に故意がなければ罰せられることはありません。故意とは、「〇〇をしよう」という意思です。証拠隠滅等罪であれば、「証拠を隠滅しよう」と考えた意思がなければ成立しません。

この点は、弁護士の弁護活動でもよく使われる手法のひとつです。「証拠を隠滅してしまったのは事実ではあるものの、隠滅しようとする意思はなかった」と話を進めることで、証拠隠滅等罪の不成立を目指します。

Q.犯人に依頼されて証拠を隠滅した場合は罪に問われますか?

A.犯罪の証拠であることを認識して処分した場合は、罪に問われます。

証拠隠滅等罪は、「他人の刑事事件の証拠を隠滅した場合」に適用される法律です。そのため、犯人自らが証拠を隠滅したとしても、罪に問われることはありません。

しかし、犯人が第三者に依頼をして、依頼を受けた人が犯罪の証拠であることを知った上で隠滅等した場合は、証拠隠滅等罪に該当し得ます。この場合、当然、逮捕・起訴の可能性があるため十分に注意してください。

ただし、犯人に脅されて証拠を隠滅した場合、「脅迫による行為」であるため罪に問われない可能性が高いです。あくまでも、証拠隠滅等罪は忖度をしたり頼まれたりして証拠を隠滅した場合に適用される法律であることを覚えておくと良いでしょう。

Q.証拠隠滅等罪は具体的にどのような事例が該当しますか?

A.証拠隠滅等罪の具体例について解説します。

証拠隠滅等罪とは、「他人の刑事事件の証拠を隠滅・偽造・変造した場合」に適用されます。この前提を元に、具体例を見ていきましょう。

  • ひき逃げの証拠となる車両を故意に修理した場合
  • 詐欺事件に使われた携帯電話を壊した、もしくは処分した
  • 殺人現場になった場所の清掃を行った
  • 証人を脅かして証言しないようにした
  • 証拠となり得る文章を改ざんした

上記のような例が証拠隠滅等罪に該当します。ただ、上記はあくまでも一例です。いずれにせよ、他人の刑事事件の証拠を隠滅等する行為は禁止であると考えておけば良いでしょう。

まとめ

今回は、証拠隠滅等罪について解説しました。

他人の刑事事件の証拠となり得る物を隠滅・偽造・変造した場合は、刑法104条に定められている「証拠隠滅等罪」になり得るため注意しなければいけません。

ただし、本罪は本人や親族が行った行為であれば罰せられません。あくまでも他人の刑事事件であることが前提です。

たとえば、お付き合い関係にある男女が証拠を隠滅してしまった場合が該当します。配偶者であれば罪に問われないため、婚姻関係にあるかないかといった基準で罪に問う・問わないが変わってきます。

もし、証拠隠滅に加担してしまったのであれば、今後、逮捕の可能性も否定はできません。早急に弁護士等へ相談をした上で、早めに手を打っておいたほうが良いでしょう。早め早めの行動で起こり得る悪影響を少なく済ませることができます。

刑事事件でお悩みの場合はすぐにご相談ください。

刑事事件で重要なのはスピードです。ご自身、身内の方が逮捕、拘留されそうな場合はすぐにご相談ください。

刑事事件コラムカテゴリの最新記事

PAGE TOP