コカイン所持はどのような罪が成立する?逮捕された場合の対処法を解説

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コカインの所持は「麻薬及び向精神薬取締法」という法律によって禁止されている行為です。

コカインは医療用としても利用されており、目的が明確であり許可を得ている場合は違法ではありません。しかし、自分が使用する目的で所持している場合は、違法であり刑罰の対象であるため注意しなければいけません。

この記事では、コカインの所持で成立する犯罪や使用等、さまざまな成立要件について詳しく解説します。コカインに関する疑問や不安を抱えている人は、ぜひ参考にしてください。

コカイン所持で成立する犯罪

コカインの所持は「麻薬及び向精神薬取締法」という法律によって処罰されます。コカインの所持は第28条で禁止されており、所持した場合の罰則規定もあるため注意しなければいけません

まずは、コカインの所持で成立し得る犯罪の種類について詳しく解説します。

コカイン製造

コカインを製造して所持していた場合は、麻薬及び向精神薬取締法第20条に禁止されている行為であり、処罰対象になります。条文では以下のとおり明記されています。

(製剤及び小分け)
第二十二条 麻薬製造業者又は麻薬製剤業者でなければ、麻薬を製剤し、又は小分けしてはならない。ただし、麻薬研究者が研究のため製剤し、又は小分けする場合は、この限りでない。

引用元:麻薬及び向精神薬取締法|第20条

つまり、コカインを製造(製剤)するためには、麻薬製造業者もしくは麻薬製剤業者でなければいけません。これらに該当しない人がコカインを製造もしくは小分けした場合は、麻薬及び向精神薬取締法20条に違反していることとなり、処罰対象になり得ます。

麻薬及び向精神薬取締法20条の法定刑は「7年以下の懲役(同法第66条)」に処されます。罰金刑がないため、執行猶予付判決が下されなければ、刑務所へ収容されることになるため注意してください。

日本国内においてもっとも利用者数の多い薬物は、大麻です。この大麻を製造した場合の刑罰は「7年以下の懲役」です。また、覚せい剤の製造の場合は「1年以上の有期懲役」です。比較すると、コカイン製造は大麻と同等であり、覚せい剤よりも厳しいと判断できます。ただ、覚せい剤の場合は有期懲役が確定している点に注意が必要です。

コカイン所持

単純にコカインを所持していた場合は、麻薬及び向精神薬取締法第28条に違反していることになります。条文では以下のとおり明記されており、コカインを所持するためには免許や許可が必要となります。

第二十八条 麻薬取扱者、麻薬診療施設の開設者又は麻薬研究施設の設置者でなければ、麻薬を所持してはならない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。

引用元:麻薬及び向精神薬取締法|第28条

つまり、違法麻薬として自分で使用するために所持する行為は認められていません。同条に違反した場合の法定刑は、製造と同じであり「7年以下の懲役」に処されます。

コカイン施用

コカインを施用(使用)した場合は、麻薬及び向精神薬取締法第27条に違反していることになります。同条ではコカインの施用について以下のとおり明記しています。

第二十七条 麻薬施用者でなければ、麻薬を施用し、若しくは施用のため交付し、又は麻薬を記載した処方せヽんヽを交付してはならない。但し、左に掲げる場合は、この限りでない。

引用元:麻薬及び向精神薬取締法|第27条

コカインは強力な精神刺激薬であり、医療用として用いられることもあります。そのため、医療用等の正当な施用方法以外の目的で施用する行為は、麻薬及び向精神薬取締法第27条に違反していることになるため注意しましょう。また、コカインの施用をした者の法定刑は「7年以下の懲役」です。

違法薬物として利用されることが多い覚せい剤の使用をした場合は、10年以下の懲役です。そのため、覚せい剤の使用とコカインの使用を比較した場合、刑罰は軽めであることがわかります。ちなみに、日本国内でもっとも多い違法薬物である大麻は、使用を取り締まる法律はありません。

コカイン譲渡

麻薬及び向精神薬取締法では、「麻薬営業者ではない限り、麻薬を譲渡してはいけない」と書かれています。つまり、麻薬営業者以外のものがコカインを譲渡すると、まう悪及び向精神薬取締法第24条に違反していることになります。

とくに、営利目的で第24条に違反した場合は、通常よりも重い刑罰が下されてしまうため注意しなければいけません。

単なる譲渡の場合は「7年以下の懲役」ですが、営利目的で譲渡した場合は「1年以上10年以下の懲役または、1年以下の懲役もしくは10年以下の懲役及び300万円以下の罰金」です。

とくに懲役刑に加えて罰金刑が下されるケースとしては、営利目的でコカインを譲渡し、相当な売り上げを上げていた場合です。

コカイン輸出・輸入

許可者以外のコカインの輸入や輸出は、麻薬及び向精神薬取締法にて禁止されている行為です。輸入については、同法14条に明記されています。輸出については、同法17条に明記されている禁止行為です。

麻薬及び向精神薬取締法に違反して輸入や輸出を行った場合は、「1年以上10年以下の懲役」に処されます。また、営利目的の輸出入の場合は、「1年以上の有期懲役および500万円以下の罰金」に処されます。

コカイン所持で問われる罪の重さ

コカインの所持とは、「コカインを持っている状態」を指します。コカインの所持をしている人は、さまざまな目的を持っているはずであり、その目的によって罪の重さは変わります。

たとえば、自分が使用する目的で所持していて、実際に常習的にコカインを使用している場合は「コカイン施用」として処罰されます。

輸出入を目的として所持していたり、販売を目的として所持していた場合は、単なる所持よりも重い罪に処されるため注意しなければいけません。次に、コカインの所持で問われる罪の重さについても詳しく解説します。

初犯でも実刑判決の可能性がある

コカインの単純所持の場合、法定刑は「7年以下の懲役」です。罰金刑がないため、執行猶予付き判決が下されなければ、初犯であっても実刑判決が下されることになります。

執行猶予とは?
執行猶予とは、刑罰を直ちに執行せずに一定期間猶予させることを言います。たとえば「懲役3年執行猶予5年」の判決が下された場合、「懲役3年」があなたに下された判決です。ただし、直ちに懲役刑を執行せずに5年間執行を猶予することを執行猶予と言います。執行猶予判決が下されると、あなたは社会に戻って日常生活を送ることができます。そして、執行猶予期間中に罰金刑以上の刑罰が下されなければ、「懲役3年」の刑罰が執行されることはありません。

なお、傾向としてはコカインの単純所持の初犯であれば、執行猶予判決が下されることが多いです。ただ、他の薬物含め乱用歴がある場合や営利目的等で所持していた場合、捜査に非協力的(入手ルートを話さない等)の場合は実刑判決もあり得ます。

製造・輸出入目的の所持は重い

コカイン所持の中でも製造や輸出入を目的とした所持の場合は重く、初犯であっても実刑判決が下される可能性が高いため注意しなければいけません。

まず、コカインを製造(製剤)した場合の法定刑は「7年以下の懲役」です。輸出入を行った場合は「1年以上10年以下の懲役」です。

通常、コカインを製造したり輸出入を行っている本人もコカイン使用者であるケースが多く、過去の乱用歴等も含めて処罰されます。このことからも、厳しい判決が下される傾向が強いです。

また、コカインの製造や国内外への輸出入は他のコカイン乱用者を増やす原因にもなるため、より厳しく取り締まる必要があると判断されます。

国外へコカインを輸出してしまった場合、輸出先の国で処罰されることもあるため注意しなければいけません。輸出先の国によっては、一発で死刑判決が下されることもあります。

営利目的の所持はもっとも重い罪

コカインを営利目的で所持もしくは製造等した場合は、もっとも重たい処罰が下されます。

たとえば、営利を目的とした所持の場合は「1年以上10年以下の懲役または1年以上10年以下の懲役および300万円以下の罰金」に処されます。単純所持の場合は、7年以下の懲役であるため比較すると重い罪であることがわかるでしょう。

また、営利目的でコカインを輸出入した場合は、「1年以上の有期懲役または、1年以上の有期懲役および500万円以下の罰金」に処されます。単純な輸出入の場合は、「1年以上10年以下の懲役」となるため、とても重い罪であることがわかります。

有期懲役とは?
有期懲役とは、期間の定めがある懲役刑を指します。つまり、無期懲役ではない懲役刑であり、最長は20年です(併合罪は最長30年)。

1年以上の有期懲役の場合、上限は20年であるため言い換えれば「1年以上20年以下の懲役」です。3年を超える懲役刑の場合は、執行猶予が付くこともありません。そのため、実刑判決となる可能性がとても高いため注意しましょう。

コカイン所持で逮捕された場合の流れ

コカイン所持で逮捕された場合、そのまま逮捕されてしまう可能性があります。そのまま、長期間身柄を拘束されて刑事裁判を受け、判決に従って刑に服する流れとなるでしょう。

次に、コカインで逮捕されてしまった場合、どのような流れで事件が進んでいくのかについて詳しく解説します。

逮捕・身柄を拘束

逮捕とは、何らかの犯罪を犯した人の身柄を拘束するための手続きを指し、以下3種類の逮捕があります。

  • 逮捕状を請求して通常通りの逮捕を行う「通常逮捕」
  • コカイン所持が発覚し、その場で逮捕される「現行犯逮捕」
  • 指名手配犯などを発見した場合に逮捕状がなくても逮捕ができる「緊急逮捕」

コカインの所持による逮捕の場合、通常は「通常逮捕」もしくは「現行犯逮捕」となるでしょう。通常逮捕の場合は、警察官等が内偵捜査を行い、証拠を集めて逮捕状を請求して逮捕する流れとなります。

現行犯逮捕の場合は、たとえば街中で警察官から職務質問を受け、コカイン所持が発覚して逮捕されるという流れが一般的です。

なお、「逮捕=警察官が行うもの」と考える人が多いですが、実は警察官以外でも逮捕権を有している人はいます。とくに麻薬(コカイン)の場合は、麻薬取締官(いわゆるマトリ)と呼ばれる厚生労働省に所属する職員に逮捕されることが多いです。

いずれにせよ、「逮捕」であることに変わりはなく、その後の手続きに大きな差異はありません。

警察に逮捕された場合は、そのまま留置所に入れられるケースが大半です。しかし、検察や麻薬取締官に逮捕された場合は、そのまま拘置所へ連行されるケースが多いです。

検察官へ事件を送致し勾留の有無を判断

逮捕された場合は、逮捕から48時間以内に検察官へ事件を送致しなければいけません。ただし、在宅事件(逮捕せずに事件を取り扱うこと)の場合は、送致までの期間に決まりはないため、通常1〜2カ月程度で送致(書類送検)されます。

身柄付事件で送致された場合は、送致から24時間以内に検察官が引き続き身柄拘束を行う必要があるかどうかを判断する必要があります。「身柄拘束の必要がある」と判断された場合は、そのまま裁判所へ行って勾留質問を経て裁判官が勾留の有無を判断する流れです。

最長20日間の身柄拘束

勾留請求が認められた場合、初めに10日間の勾留が可能となります。しかし、一般的にはさらなる勾留請求が認められるため、実際は20日間程度の勾留となるケースが多いです。

ここまでで最長23日間の身柄拘束が発生しているため、学校へ行けない、出勤できないといった社会的影響も発生し始めるでしょう。

起訴・不起訴を判断

身柄事件の場合(身柄拘束が発生している事件)は、勾留期間中に被疑者を起訴するか不起訴とするかを決定しなければいけません。在宅事件の場合は、期限に定めがないものの、通常書類送検から2カ月〜3カ月程度で判断されます。

起訴された場合は、保釈請求を行うことができます。保釈請求が認められれば、ある程度の縛りはあるものの、保釈金を支払って社会に戻ることができます。

もし、保釈請求が認められなかったり、保釈金を支払うことができなかったりした場合は、保釈は認められず拘置所内で裁判を待つことになるでしょう。

とくに前科がなく、罪を認めて反省をしている場合は保釈請求は認められやすい傾向にあります。ただし、保釈期間中に再度コカインを使用した場合などは、即時身柄拘束をされてしまうため注意しましょう。

起訴された場合は刑事裁判・判決に従って刑に服する

起訴された場合は、刑事裁判を受けることになります。数回の公判を経て最終的に判決が下される流れです。

判決に不服がある場合は控訴や上告が可能ですが、最終的に確定した刑に従って服することになります。実刑判決であれば刑務所に収容されますし、執行猶予付き判決が下されればそのまま社会へ戻ることができます。

コカインで逮捕された場合の対処法

コカインで逮捕されてしまった場合、初めに正しく対処することによってその後に起こり得るさまざまなリスクを回避できます。そのため、これから紹介する正しい対処法をぜひ参考にしてください。

直ちに弁護士へ相談をする

まずは、すぐに弁護士へ相談をして適切な弁護活動を行ってもらいましょう。

逮捕された場合は、初めに一度だけ当番弁護人を呼ぶことができます。その後、勾留請求が認められれば、国選弁護人を付けることも可能です。しかし、当番弁護人や国選弁護人は、タイミングとしてはとても遅いです。

そのため、自分のタイミングで自由に呼ぶことができる私選弁護人を選任することをおすすめします。

私選弁護人は実費で費用が発生するものの、逮捕前もしくは逮捕直後など自分の好きなタイミングで自由に呼ぶことができます。また、自分で弁護人を選任できるため、コカイン等の麻薬事件に強い弁護人へ依頼できる点もメリットです。

入手ルートを正直に話す

可能であれば、コカインの入手ルートを正直に話しましょう。

警察官や麻薬取締官としては、入手ルートからの根絶を目指したいのが本音です。そのため、「どこから・誰から入手したのか」はとても欲しい情報です。

入手ルートを正直に話すことによって、少なからず反省している態度を示すことも可能であるため、できれば入手ルートを正直に話したほうが良いでしょう。

麻薬等の取引は反社会勢力が関わっていることも多く、入手ルートを話すことによって自分の身に危険を及ぼす可能性もあります。この場合は、その旨を正直に伝えたうえで、言いたくても言えないとしっかり伝えましょう。

二度と使用しないことを誓う・具体的な改善策を伝える

コカイン等の麻薬は常習性が強いです。そのため、本人が二度と使用しないことを近い、具体的な改善策を伝えることで「再犯の可能性は低い」と判断されやすくなります。

たとえば、親や配偶者などの監護を受ける。病院等で治療を受ける。といった具体的な解決策を伝えることが大切です。

ただし、これまでに何度も同じ容疑で逮捕されていたり前科がついたりしているような場合は、「二度と使用しない」と伝えても信じてもらえません。そのため、しっかり麻薬等との関係を断つことを誓い、具体的な解決策を提案するように心がけましょう。

コカインの所持でよくある質問

コカインの所持でよくある質問を紹介します。

Q.コカインの所持についてまったく身に覚えがありません。罪に問われてしまうのでしょうか?

A.所持の意思がなければ、罪に問われることはありません。

何らかの間違いでコカイン等の麻薬を結果的に所持してしまっている状態が起こり得るかもしれません。たとえば、何らかの粉であるという認識(コカインであるという認識はない)でコカインを渡されて、直後に警察官から職務質問を受けてしまったような場合です。

上記の場合、基本的にはコカインの所持に関する罪に問われることはありません。ただし、コカインを所持していた事実がある以上、捜査の対象となってしまう可能性はあるため注意しなければいけません。

その後に、本当にコカインであることを認識せずに所持していることが明らかになった場合は、犯罪の疑いは晴れます。もちろん、何らかの罪に問われることもないため安心してください。

Q.コカインと覚醒剤や大麻では罪の重さは異なりますか?

A.「所持」の観点で見ると、大麻→コカイン→覚せい剤の順番で罪が重くなります。

まず、大麻所持によって問われる最高刑は「5年以下の懲役」です。コカインは「7年以下の懲役」、覚せい剤は「10年以下の懲役」という順番になります。

その他、使用したり営利目的で所持していたりなど、さまざまな事情を考慮したうえで判決が下されるため、実際の判決は異なる場合があります。とくに薬物等は「使用目的の所持」が多く、使用罪でも問われる可能性が高いためです。

Q.コカインを使用していた場合、さらに罪は重くなりますか?

A.別々の罪であるため、さらに罪が重くなる可能性があります。

コカインは、本記事冒頭でも解説したとおりさまざまな罪状があります。そのため「使用罪」と「所持罪」の2つが成立する可能性があります。

たとえば、コカインの所持で逮捕されて後の検査で使用が発覚した場合、それぞれの罪で立件されて罪に問われます。それぞれ法定刑は「7年以下の懲役」であるため、最長で10年6カ月の懲役となる可能性があるでしょう。

まとめ

今回は、コカインの所持について詳しく解説しました。

コカインは麻薬及び向精神薬取締法という法律によって所持や使用を禁止されている麻薬です。許可を得ずに所持していただけで所持罪が成立し、使用していた場合は使用罪の罪に問われます。

また、営利目的であればさらに重い罪に問われる可能性があるため注意しなければいけません。

コカインの所持は、法律によって禁止されている行為です。違法薬物には絶対に手を出さないように注意しましょう。

刑事事件でお悩みの場合はすぐにご相談ください。

刑事事件で重要なのはスピードです。ご自身、身内の方が逮捕、拘留されそうな場合はすぐにご相談ください。

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